⁑日本酒完成披露会(5)
まさにたけなわな宴も、そろそろお開きの時間となった。
僕とカイトには演奏の…そしてノエルとヴィンセントには日本酒の…それぞれ絶賛の感想を述べながら、徐々にお客さんが店を後にしていった。
「いやあ…本当に楽しかった…」
「次は本当に、キーファーさんにお願いしますよー」
「…っ」
最後に…千鳥足のキーファーと、それを支えるカジミアを見送って…店には、店主とヴィンセントとノエル…僕とカイトの5人が残った。
テーブルやらグラスやら、食器やらの片付けに忙しいヨハンを、ヴィンセントとノエルが手伝っていた。
僕とカイトは、楽器や機材を片付けた。
「ふうー」
撤収した荷物を、ポーンと自分の部屋に送ってから…僕らは端っこのテーブルに腰掛けて、ひと息ついていた。
「今日はお疲れ様だったね」
言いながらヨハンが、人数分のエールを出してきた。
「まだ飲むのか」
「あははは…だって、ヨハンさんにとっては、今やっと仕事終わりですもんね」
「そーいう事…」
ほどなくノエルとヴィンセントも交えて…僕らは改めてエールで乾杯した。
ヴィンセントは、残り物のつまみを集めて、きれいに盛って出してくれた。
「今日は本当にお世話になりました」
「いやいや、楽しかったよ…久しぶりに集まってくれた皆とたくさん話も出来たし…何より、また良いものを聞かせてもらったし」
「本当に驚いたよ」
「そっか…ノエルさんは初めて聞いたんですもんね」
「リューイ、君はすごい人だ」
「えっ…」
僕の肩をバシッと叩きながら、ノエルは続けた。
「日本酒もそうだが、今日聞かせてくれた音も素晴らしかった…リューイは強いだけじゃなく、俺たちの知らない色んな事が出来るんだな…尊敬するよ」
「いや…そんな事はないです…」
僕は、とても恐縮して肩をすくめた。
ホントに、そんな、すごい事じゃないんだけどな…
このステーションに…たまたま僕が知ってる、音楽とか日本酒が無かったってだけで
「今のリューイさんはね…以前のリューイさんとは、ちょっと違うんですよ」
ヴィンセントが、ノエルに言った。
「それは…どういう事だ!?」
「地球っていう所から来たんですって」
「はあ?」
「俺も、そんな話は初めて聞いたぞ」
ヨハンも身を乗り出して言った。
「あーまあ…その…話せば長くなるし…果たして信じて頂けるか分からないような話なんですけどね…」
僕は彼らに、事の次第を一応説明してみた。
地球の、僕がいた日本にも…ヴィンセントの店のように、美味しい食事が出来る場所がある事…ファクトリーと同じような食品工場がある事…この店のリーディングと同じ「朗読」っていう文化がある事なども語った。
「じゃあ…今のリューイの中身は…元々は別の世界の人だったって事なのか?」
「そうなんです…キーファーさんには偽物リューイって呼ばれてますよ」
「うーん、確かに…俄には信じられないな…」
ノエルは訝しげな表情で唸るように言った。
「俺は、何となく腑に落ちた感じがするけどな…」
それに引き換え、ヨハンは納得したような表情で、頷きながら言った。
「以前のリューイだったら、リーディングさえ人前では絶対にやらなかっただろう…」
更にヨハンは、カイトに向かって続けた。
「カイトはどうなの?…その…偽物でもいいのか?」
「ああ」
カイトはキッパリ即答した。
僕はちょっと顔を赤らめた。
「…だったら…いいんだけどさ」
「んーまあ、確かに…こないだの2人の様子を見た限りでは…とても睦まじい感じはしたな」
ノエルにそう続けられて…僕は更に顔を赤くした。
「でも…だったら本物は、どうなったんだ?」
「…えっと…それは…」
そう訊かれて…口籠もってしまった僕は、カイトの方をチラッと見た。
「本物は…いるよ」
「えええっ!?」
「そ、そうなんですか!!」
しれっと答えたカイトの言葉に、誰もが驚愕した。
カイトは、ゴクゴクとエールを飲みながら…イマイチよく分からない感じで続けた。
「本物はな…入念に手筈を整えて、このリューイをその身体に呼んたんだ」
「…??」
「だから今となっては、間違いなくこっちの方が、完成した完全なリューイだ!」
「??」
「…??」
「…で、あの…本物のリューイさんは、どこにいるんですか?」
ヴィンセントが、少し緊張した面持ちで言った。
カイトは、少し座った目付きでニヤッと笑いながら…皆を見回して言った。
「本物は…君たちの頭の中にいる…」
「…」
「……」
何となく黙ってしまった面々は…チラチラと顔を見合わせて、小さく溜息をついていた。
いやまあ、言ったらホントにそうではあるんだけど…
何かちょっと、メンドクサイ酔っ払いが語り倒してるみたいに思われちゃってるじゃん




