表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

139/172

⁑利き酒大会

翌日、約束通り…

僕らはヴィンセントの店に集まった。


エルンとリカルド…リドリーも呼ばれていた。

またもカウンターは満席になっていた。



「レオの調子はどう?」

「ああ、ちょうどさっき…ジョシュアに付き添われて自分の部屋に戻ったところだ。そろそろ訓練に復帰してもいいんじゃないかな」


「そうか、よかった…」


「ふうーおかげで、ようやく俺も、安心してワインが飲める…」

「すいません、お先に飲んじゃって」

「いやいや…それは全然いいんだ…リューイ達も大変だったんだし…」



「しかもエルンさん、すいません…今日はワインの日じゃないんですよ」

「えっ…そうなの?」


「何か、美味い酒の味見をして欲しいんだってさー」

「美味い酒?」


ヴィンセントは、カウンターに…3本の瓶を並べた。


「あ、それって…あれだろ?…キーファーが隠し持ってたやつだ!」

エルンが思い出して言った。


「だから、隠してる訳じゃないって言ってんのに」

「そうか…今日はそれを飲ませてもらえるのか」


それはそれで、ちょっと嬉しそうに、エルンの目がパーッと輝いた。



「ただ飲むんじゃなくて…どれがいちばん美味しいか、意見を聞かせて頂きたいんです」


言いながらヴィンセントは…ズラッと並べた小さいグラスに、その3本の日本酒を、順々に注いでいった。



「実はね、エルンさん…キーファーさんの隠し在庫が、残り少なくなってきちゃったんですよ」

「だから、その隠しってのやめろって!」


いちいち突っ込むキーファーの事は気にも留めず、僕は続けた。


「で、この度…ヴィンセントさんとノエルさんに協力してもらって…ここで日本酒を製造してもらえる事になったんです」

「へええー…本当か!?」


「それで…今日は皆さんに、試作品の味見に、協力して頂こうって言う日なんです」


「なるほど…」

「そう言う事なら喜んで協力するー」



それからヴィンセントは…小さめのプレートに、3つの小鉢が乗ったものを、それぞれの前に出した。


「そのお酒に合いそうな物も用意しました」

「うわあー…」


僕はまた、それを見て…目をキラキラと輝かせた。


ひとつは、ナスの揚げ浸し…きっと、太陽のコアのおかげで、美味しいナスが出来たんだろう…

もうひとつは…こないだは鞘ごと出てきた枝豆が、今日は玉子焼きの中に入っていた。大根おろしも添えられていた。


そして…

進化したヴィンセントさんの作った、お刺身!!



「ひとつは、キーファーさんが待ってきてくれたものです…で、こっちの2つが試作品」

彼は、日本酒のグラスも…皆の前に並べた。


「キーファーさんのがいちばん美味しいのは間違いないと思います…この、どっちが皆さんのお口に合うか…飲み比べてみてください」


「よ、よーし…わかった」

エルンは、とても真剣な表情で、その並んだ3つのグラスを睨み付けた。


「そんなの…違いが、俺に分かるかな…」

リドリーは、少し自信なさげに呟いた。


「別にそんな難しく考えんなよー」

隣のリカルドがリドリーの肩を叩いた。


「美味いか不味いかくらい、わかんだろー」

「はい、本当に…そんな感じで、気楽に味わってください」

ヴィンセントも言った。



「いただきます…」

そう言って僕は、何はともあれ…その3種盛りを味見していった。


「ああ〜美味しいー」


他の面々も、後に続いた。


「うん…美味いな」

「こーれは、この酒が、ものすごく合うな…」



「やっぱりコレがいちばん美味いな」

カイトが、その中のひとつのグラスを持ちながら言った。


「コレがキーファーのだろ?」


「えっ…違うよカイト…」

「ええっ!?」


カイトは、とても驚いた表情でグラスを見た。


「カイトは本当に味覚が雑だな…」

ププッと笑いながら、キーファーも、美味しいつまみを食べながら、3つのグラスを丁寧に味見していった。


「…」


キーファーの表情が、だんだん真剣になっていった。



「全部美味いー!」

「そうだな、俺もそう思う…」

リカルドとリドリーが言った。


「それぞれ微妙に違うけど、それぞれ美味いな…」

エルンも言った。


「ワインもそうだ…ここで作られるワインも悪くないけど、他所のステーションのワインは、いちいち味が違って、それが美味いんだ…」



「確かに…エルンの言う通りだな…」

すっかり難しい顔になって、少しずつ味わっていたキーファーが続けた。


「酒だけ味わう分には、俺のがいちばんかもしれないが…この、料理と合わせると…むしろこっちの方が美味い気がするな…」


「だろ?」

カイトは、それみろと言った表情で言った。



「リューイさんはどうですか?」

「…」


僕も、悩んでしまった。

キーファーの言う通りだと思った。


キーファーの日本酒も、もちろん美味しかった。

だが、飲み比べてみると…試作品の、どちらかというと辛口に仕上がったやつの方が、より料理に合う気がした。


かと言って…若干甘口の方も、悪くなかった。



「これは…選べませんね…」

「…」


散々悩んで…僕は言った。


「両方、商品化する事は出来ないんですかね?」

「そうだ、どっちも良いー」

「…そうだな…俺も、そう思うな」


皆、口々に言いながら…ヴィンセントの方を見た。



ヴィンセントは、少し困ったような顔で言った。


「出来ない事は…無いと思いますけど…」


「要は、小っちゃいヴィンセントの…1号と2号を作ればいいんだろ?」

「そうですね…」


「ヴィンセントとリドリーが、ちょっと頑張れば済む話なんじゃないのか?」

「…」


「えっ…俺もか…」

リドリーは、少しハッとした様子で呟きながら、ヴィンセントと顔を見合わせた。



その他5人は…期待に満ちた、キラキラした眼差しで、2人を見つめていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ