⁑フリッツの奮闘
交流先で、テディと一緒に美しい景色を堪能して…更に、美味しいイタリアンを満喫したキーファーは…とてもご機嫌なご様子で、自分の工房に戻った。
「よーし、今日はこれを完成させるぞ…」
胸の中のテディに向かって宣言すると…彼は作業台の前に、ドッカリと座った。
そして、背負うタイプの守備力発動機の、仕上げに取り掛かった。
彼の胸から…スッと青い炎が抜け出た。
それは、作業台の片隅に置いてあった、録音再生機の所へ飛んでいった。
ほどなく、例のメロディーが流れた。
「サンキュー」
手を休めないまま、彼は呟くように言った。
炎は、照れくさそうにチラチラと燃えると…またすぐに、キーファーの身体に戻った。
そして、薄い陽炎のように形を変えて…彼の身体全体を、優しく覆った。
そんなテディの協力と、メロディーの相乗効果のおかげで…その晩、彼は夜通し作業に没頭した。
翌日…僕はまた、キーファーに呼ばれた。
「別に、僕は居なくてもいいんじゃないですか?」
「いや、立ち会ってもらった方がいいだろう?」
「…」
「地下に行ってくれ…フリッツと、リドリーも一緒に頼むよ」
「…」
要は、タクシーの運転手みたいな役割ですね…
釈然としないながらも…僕は皆さまを地下へお連れした。
「フリッツ、調子はどうだ?」
「はい…何だか、力が漲ってる感じがします」
「それは頼もしいな…」
言いながらキーファーは…手に持っていた機械を、フリッツに背負わせた。
「な、何ですか…これ…?」
「なるほど、この形状なら取り込み易そうだな…」
フリッツがそれを背負った姿を見て、リドリーが言った。
何て言うか…特殊清掃のプロの人たちが、そんな感じの噴射機を背負ってるって言うのが、僕の中のイメージだった。
「守備力発動機だ!」
キーファーは、ドヤ顔で続けた。
「仕組み的には、あのメダルと同じだけどな…背負って、身体に密着する面を大きくする事で、最大限の力を効率よく、身体に取り込めるはずだ」
「…」
「で、その…取り込んだ守備力を、漲るパワーで、金属に注入してくれ」
「…そんな事…出来るかな…」
フリッツは、少し心細そうな表情で呟いた。
「今のフリッツさんなら、出来ますよ!」
僕は力強く言った。
特に何の根拠は無かったんだけど…
「お願いします…」
「…」
フリッツは、3人の顔を見回すと…意を決したように、大きく頷いた。
「分かりました…やってみます」
そして彼は…壁沿いの機械のそばに立った。
ほどなく…彼の身体から、陽炎のようなものが、ユラユラと湧き出した。
同時に…背中に背負った機械から、じわじわと暖色の光が滲み出てきた。
まさに優しい色合いのその光は…機械からフリッツの身体へと流れ、彼の身体を更に包んでいった。
「うんうん…いい感じに入ってるな…」
「ああ…あとはフリッツ次第だ」
キーファーとリドリーは、両手の拳を握りしめながら、彼の背中を見つめていた。
やがて…フリッツが壁の機械に向けて翳した手に…その暖色の光が到達した。
彼の漲るパワーの効力で、どんどん光が集結していき…やがて彼の両手は、凝視出来ないくらいに、眩しく光り輝いていった。
「すごい…」
「いいぞ、フリッツ…その調子だ…」
僕らは、固唾を飲んで彼を見守った。
「…んんん…っ」
唸り声を上げるフリッツの手から…その眩しい光が、機械に向けて放たれた。
あまりの眩しさに、僕は思わず両手で目を覆った。
「…っ」
やがてその光は…段々と小さくなっていった。
僕は両手を下におろした。
「…たぶん…出来ました」
まだ少しだけ、光の残っているフリッツの手の中に…先日と同じような、金属の塊が見えた。
「おおおー」
「やったな…すごいぞフリッツ!」
僕らは駆け寄って、それを見た。
前回より…幾分、暖色がかっているように見えた。
「何て言うか…暖かい色だな…」
キーファーの目にも、同じように映っているらしい。
「そうですね…」
「守ろうとする力だからな…自然と柔らかい色合いになるのかもしれないな…」
僕らは、ほっこりした気持ちで、微笑みながら顔を見合わせた。
「ふうー」
フリッツが大きな溜息をついた。
「よくやった…ありがとう、フリッツ!」
リドリーは、彼の肩を叩きながら、力強く言った。
「いいえ…お役に立てて良かったです…何より、リューイのおかげですよ」
「えっ…」
「治癒力を分けてくれた上に、あの不思議な音で、僕のパワーを上げてくれた…」
言いながら彼は、とても清々しい表情で僕に向かって右手を差し出した。
「ありがとう」
「そんな事は無いです…フリッツさんが、ものすごく頑張ってくれたんです」
僕は、その手をギュッと握りしめながら答えた。
「よし、じゃあ俺は早速、これをデータ化する」
「ああ、よろしく頼んだ」
リドリーは頷きながら僕の方を見た。
あ、また送って欲しい感じですね…
僕は、シュッと…リドリーを彼の部屋に飛ばした。
「リューイ、ついでにこれも工房に持ってってくれ」
キーファーは、フリッツの背中の機械を下ろしながら、何でもないように言った。
「はいはい…」
言いながら僕はそれを、彼の工房に飛ばした。
「で、僕らはどうしますか?」
「タウンだな」
「えっ…」
「フリッツ慰労会だ」
「…」
何だかんだ理由をこじつけて飲もうっていう文化は、どこも一緒なんだな…




