⁑イタリアン(2)
続いて…何やらグツグツと湯気をたてている、グラタン皿が出てきた。
目を丸くしながらカイトが訊いた。
「これは…何だ?」
「これも、あのステーションの名物料理みたいです…熱いので気を付けてくださいね」
「…っ」
その中には、四角い平べったいものの上に赤いソース、そして更にその上に、チーズがとろけてグツグツしていた。
「ラザニアだ!!」
「さすがリューイさん、向こうの人もそう言ってました」
「ラザ…ニア?」
「パスタの仲間だよ」
「パスタって…あのパスタ?…これが!?」
「そうなんですよ」
カイトとキーファーは、その平べったいパスタを見て、何とも訝しげな表情をしていた。
「いやとにかく食べてみてください、絶対美味しいですから」
言いながら僕は、率先して、それをふうふうしながら口に入れた。
「うわあぁ〜美味しいーー!」
僕は歓喜の声を上げた。
「どれどれ…」
僕の様子を見たカイトとキーファーも、後に続いた。
「ほお…!」
「うん…美味いな」
「あーまたこれが…白ワインと最強ですねー!」
僕は、ゴクゴクふうふうモリモリと、飲み食べ進めながら、続けた。
「頑張っていっぱい運んだ甲斐がありました!」
そんな僕の様子を見て、ヴィンセントは、ニコッと微笑みながら言った。
「リューイさんが、そんな風に幸せそうに食べてくれるのを見ると、僕もとても嬉しいです」
「そうだな…偽物リューイは、本当に美味そうに食べるよな…」
「本物さんはそうでも無かったんですか?」
「あいつは、常にどこか冷めてる感じがしてたからな…まあ、今になって思えば、それも理解できるけどな」
カイトが、黙々と食べながらしれっと言った。
「でも…僕と好みが一緒だったんでしょ?」
「それも、今となっては伏線だったんじゃないかと思うな…俺は…」
「…」
「お前のためのね…」
そうか…
僕がこの世界に来て、好きなものを食べて元気になれるように…本物さんはそこまで気を遣ってくれてたって事なのか
「…カイトの言う通りかもね」
僕は、美味しいラザニアの味を噛み締めながら…ほっこりした気持ちになった。
「あとは、赤ワインを美味しく飲んで頂くために、お肉も焼きますね」
言いながら、ヴィンセントの手元から、ジューーッという音とともに、香ばしい肉の焼ける匂いが漂ってきた、
「ああ〜この匂いだけでも、飲めそうだな」
「うんうん…」
僕は、激しく力強く同意した。
ほどなく、こんがり焼かれた肉が出された。
そしてヴィンセントは、赤ワインを開けて、また4つのグラスに注いだ。
「いただきます!」
そのワインも、それはそれは美味しかった。
そして肉も…柔らかくて旨味がギュッと詰まった、何とも言えない美味しい肉だった!
えっ…でも、この肉は…
やっぱり、あいつの肉なのかな…?
ふと思って、僕は訊いた。
「あの…この肉は…いつもの、ここ産の肉ですか?」
「はい、そうです」
「でも、いつもと味も食感も違う気がします」
「俺もそう思う」
「うん…てっきりあのステーションから仕入れてきたんだと思った」
カイトとキーファーも続けた。
「ふふっ…」
それを聞いて…珍しくヴィンセントが含み笑った。
そして、勿体ぶった様子で言った。
「実は、僕も…例のリューイさんの音を聞く機械をもらったんですよ」
「そうなんですか!…でも、それとこの肉と…何の関係があるんですか?」
ヴィンセントは、静かに語るように続けた。
「…僕は基本、料理くらいしか出来ません…もちろん、あのメダルのおかげで、守備に協力するくらいは出来るようになりましたけどね…」
「…!」
僕はハタと思い付いた。
「ヴィンセントさんも進化しちゃったんですね!」
「…」
彼は、少し恥ずかしそうに、小さく頷いた。
「いつもの肉を…少し変化させる事が出来ました」
「ええーっ!?」
「そんな能力があるのか!?」
カイトとキーファーは、飛び上がって驚いていた。
そうか…!
ヴィンセントさんの、特殊な料理能力が進化して…あの変な生き物の肉を、高級牛肉の味に変化させちゃったんだな
「さすが、ヴィンセントさん…すごいです!」
「リューイさんの音のおかげです」
「へええーそうなのか…そしたらこの先、もっともっと美味いもんが食べれるようになるって事だな」
キーファーは、その高級牛肉をしみじみ味わいながら、呟くように言った。
「ふふ…そのようになれるよう、精進します」
そんな能力が存在するとは…
それにしても、ヴィンセントさんって…本当に、根っからの料理人なんだなぁ…
「あと…ちょっと手を出してもらえますか?」
「?」
僕は、ヴィンセントに向かって右手を出した。
それをそっと握った彼は…少し考えた様子で、言った。
「もう少し、骨を強くした方がいいみたいですね」
「ええっ…そんな事も分かるんですか?」
「元から何となく、その人の好みは見えてたんですけど…こうして実際にその人に触れると、その人の身体の状態が見えるって事が、今分かりました」
「…」
料理人だけでなく、栄養管理士能力もあるのか!
「カイトも見てもらいなよ!」
僕は隣のカイトを振り向いた。
「…」
渋々な感じで、カイトが出した右手を、ヴィンセントはそっと握った。
「うーん…」
「俺は完璧だろ?」
「えーと…だいたい良いんですけど」
彼は、少し言い辛そうに続けた。
「肝臓が…もう少し休ませて欲しいって、訴えてるような気がします」
「…っ」
あはははっ…
やっぱりねー




