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⁑ ストアに行く

エルンは、僕の頭に手を翳した。

肩くらいまでの僕の茶色い髪が、長くて真っ直ぐなストレートになった。


「…スゴい…」

「言っとくけど、そんな見た目が変わっても、皆その人を認識する能力があるからね、すぐにリューイだって分かるよ」


「…そーなんですかー?…それじゃ意味ないなー」

「…」


「いちいちリューイさん〜って言われるのが、ちょっと困るっていうか…」

「…なるほどね、まあ…だったら当面、部屋に籠っていられるように、ストアで色々調達してくるか…」


「ストア…」


…たぶん、スーパーみたいな所なんだろうな…



そしてエルンは、また僕を連れて部屋を出た。

エレベーターで、今度は割と下の階のボタンを押した。


横に、Storeと書いてあった!



エレベーターを降りると…まさにそこは、郊外にある巨大なスーパーの様な場所だった。


「食料品も、消耗品も、生活に必要な物は…皆ここで揃う筈だよ」


「…」

僕は、目を丸くしながら…その店内を見渡した。



…とはいえ、当面…何が必要なのかも、あまり見当がつかなかった僕は、エルンに訊いた。


「何を買ったらいいんですかね…」

「買ったら…?」


「え?買うんじゃないんですか?」

「…買う…?」


いや、よくよく考えたら…お金も無い。

っていうか、この世界のお金がどんなんで、どんな単位なのかも分からないじゃないか…


「買う…って、どういう意味かな…」

逆にエルンが僕に訊いてきた。



もしかして…買う…んじゃないのか?


僕は、丁寧に言い直した。

「…どうやって、ここにある品物を、頂けるんですか?」


「欲しい物を選べばいいのさ…」

「ええっ?…お金を払わなくていいんですか?」


「…」


エルンは小さく溜息をついて、

笑いながら僕の顔を見て言った。


「違う世界から来たっていうのは、あながち嘘じゃないのかもしれないな…」



彼はとりあえず、食料品がたくさん並んでいるコーナーに、僕を連れて行った。


「ほら、ボタンがあるだろう?欲しいものがあったら、いつものように手を翳せばいい」

「…」



そこに並んでたのは、パンとような物と…あとは、レトルト食品のような物や、トレーに乗っている物…

要は、インスタント食品的な、既に出来上がっている物ばかりだった。



「野菜だけ〜とか、肉だけ〜とかは、無いんですか?」

「タウンで料理を作って出すレイス達は使うが、基本的に、部屋で自分で調理する場合は使わないな…彼らは、こないだ見せた貯蔵階から調達している」


なるほど…

料理するのは専門の人だけって事ですかねー



「これ…あんまり買い過ぎ…いや、貰い過ぎて、腐って食べられなくなったりしませんか?」

「コアを使った保存技術が進歩したからね、半永久的に大丈夫な筈だ」


へええー

そんな所にも、あの水晶玉のパワーが使われているのか…



僕は並んでる商品(って呼んでいいのかもわからんが)を、じっくり見ていった。


見ただけでは、味の想像がつかないような物もあったが…とりあえず、適当に選んで手に取ろうとした。


「あ、いや…欲しい物のボタンに、手を翳せばいいんだ」

「えっ…」


「これが欲しいの?」

「あ、はい…」


「だったら、ほら、ここに…」

エルンは、その商品が並んでいる…下のボタンを指差した。


「…」

僕はそこに、手を翳した。


ボタンが点滅して、ピピッという音がした。


「他には?」

「えっ…これでいいんですか?…持って行かないで」


「ああ、選んだ物は、勝手に部屋に届く」

「ええー?」


お金払わないどころか、

宅配サービスもしてくれるなんて…!!


じゃあ遠慮なく…

と思って僕は、気になる商品を、次々ピピッとしていった。



「…随分たくさん選んだな…」

少し呆れた顔で、エルンが言った。


「他に何か欲しい物はある?他のコーナーも行ってみる?」

「…他には何があるんですか?」


「本とか…服もあるよ」


本か…確かに、この世界の事を勉強するために、何か参考になる本も欲しいな…


そして僕は、ふと思い立って訊いた。


「CDとか、ありますか?」

「…CD?」


「あ、えーと…音楽が聞ける物…」

「…音楽…?」



バンドやってたくらいだから、僕はとにかく音楽が大好きだった。


そうだ、この世界の音楽って、どんなんだろう…


何ひとつ希望を持てない事が多過ぎる中で、

それを考えたら…とても久しぶりに、ワクワクする気持ちが湧き上がった。



「音楽って…どんな物だろう?」

エルンは、首を傾げた。


「えっ…」

僕は…目が点になった。


「楽器とか…無いんですか?」

「…楽器…?」


「音を出す道具です!」

「さっきのピピッとか、知らせる音を出す技術はある」


「そんなんじゃなくて、綺麗なメロディーを奏でる道具です!」

「…?」


えええっ…

この世界には、楽器が無いのか!?


「…じゃあ、歌とか、歌わないんですか?」

「…歌…?」


「歌もわかんないの!?」

「…」


「声でメロディーを奏でるんですよー!?」

「…本を読むんじゃなくて?」


「…」


そういえば…

確かに、あのTVみたいなヤツからも、何の音楽も流れてこなかったよな…


あのタウンだって、あんなに小洒落た場所なのに、BGMのひとつも無かったし…



なんて事だ…

この世界には…音楽っていう認識が無いのか!?




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