⁑思い出の交流(3)
それから…もう少し店を見て回るという彼らと別れて…僕らは、来た道を戻った。
しっかりと手を繋いで…川沿いの薔薇園をのんびり歩きながら…僕はカイトに言った。
「ウィルフリードとマテルさんも…ここに来るのかな…?」
「ああ…言ったらそのための交流だからな」
「…ふふっ」
「本当に…美しいステーションだな…」
「そうだね…」
僕は、空を見上げた…
どういう造りになっているのか見当もつかなかったが…そこは本当に…空に見えた。
「そろそろ戻らないとな」
「うん…何なら、ルイスさん達にも…ここを教えてあげたいよね」
「あーあいつらは、どうかな」
「ルイスさんも乙女だから…きっと喜ぶと思う」
「ルイスはそうだとしても…ヒューがどうだか」
「あははは…照れ屋さんぽいもんね」
そして…玄関口へ続く階段の前まで戻ってきた僕らは、名残惜しい気持ちで、僕らはその街並みを振り返った。
「またいつか…来れるかなぁ…」
「ああ…」
…と、そのとき…
なんと、キーファーが…その階段を降りてきた。
「おう、リューイ、カイト…お疲れ」
「キーファーさんもワイン仕入れに来たんですね!」
「あ…いやまあ…それもあるけど…」
キーファーは、少し顔を赤くしながら続けた。
「…その…テディが…ずっと、ここに来たいって言ってたから…」
「なるほど!」
「本当なら、ちゃんと身体が生きてるうちに…一緒に来てやれれば良かったんだけどな…」
「…」
キーファーの胸元に、青白い炎のようなものが、フワフワと浮かんでいた。
それはまるで…嬉しくて楽しくて仕方ない様子で、仄かにピンク色がかって、チラチラと揺れていた。
「今のテディさんも…すごく嬉しそうですよ」
「えっ…お前…見えんの!?」
「あ、はい…」
「俺には見えない」
カイトがブスッとしながら言った。
「言ったら、僕の中にもテディさんがいますからね…その余波か何かで見えちゃってるんじゃないですかね」
「そうか…」
キーファーは…その、楽しそうに燃える炎を、右手でそっと押さえながら、空を見上げた。
「それにしても…何て素晴らしい所なんだ」
キーファーのその言葉に反応するように…胸の炎が、より一層ユラユラと燃え盛るのが分かった。
「あの…桜のステーションに…少し似てるな」
「…」
そう言えば…その桜のステーションにも、太陽と水があったって、言ってたな…
ここはまるで本当に、ヨーロッパのイメージだけど…桜のステーションは、間違いなく日本だったんだろうな…
「楽しんできてください…」
「…うん、ありがとう」
そして僕らは、彼を見送った。
明るい外から、薄暗い階段に入った。
階段を上りながら…僕はカイトに言った。
「カイトは…その、桜のステーションには行かなかったの?」
「ああ…」
「前のリューイと、一緒に行ったら良かったのに」
「…」
それを聞いて、彼は僕を振り向いた。
「あいつは、不思議なくらいに他所のステーションには行きたがらなかった」
「…」
「今から思えば…理解できるけどな」
「…」
そっか…本物は、本物だから…自分のシマから出られなかったって事か。
僕の身体の中の、あんな欠片でさえ…他所のコアに近付いたときの、あの拒絶反応は凄まじかったもんな…
「行きたがらないくせに…妙に相手の事に詳しかったのも、今なら頷ける…あいつには、他所のステーションの様子が、手に取るようひ視えていたんだろうな」
「…」
僕はふと思い出した。
「本物さんも、歌を歌ってたんだよね?」
「…ああ」
「じゃあきっと…もっともっと、歌や音楽が盛んなステーションが…他にもあったのかな…」
「…そうなのかもしれないな」
そうして僕らは…渡された廊下を通り、警備に出ていた新人くん達のチェックを受けて、自分達のステーションに戻った。
ウィルフリードと…マテルがいた。
「リューイ、カイト…おかえり…調子はどう?」
マテルは僕らを見付けると…少し心配そうな表情で、駆け寄ってきた。
「ケガはなかった?」
「はい…おかげさまで…」
「向こうのステーションはどうだった?」
「はい…街並みも、川も、薔薇も…すごく綺麗でした」
ポーッとして、目をキラキラさせながら答える僕に、マテルは、ニコッと微笑んだ。
「楽しんでこれたみたいだね…本当によかった」
「…はい」
僕は、少し顔を赤ながら、大きく頷いた。
「じゃあ行くか…」
ウィルフリードが、マテルの肩を叩いた。
「うん」
「カイト、後は頼んだ」
「任せとけ…ゆーーっくりしてこいよ」
「ふふっ…」
そして僕らは、2人の背中を見送った。
「あ、でも…今から行くと…キーファーさん達と鉢合わせちゃうんじゃないの?」
僕は、コソコソと…カイトに言った。
「あー…そうかもな」
姿勢を正して、自分の持ち場に戻りながら、彼は続けた。
「ま、いいんじゃない?…どうせ2人の世界に没頭してんだろうから、周りなんか気にならないだろ」
「…」
ウィルフリードって…
プライベートでは、カイト以上なのか?




