⁑思い出の交流(2)
それから僕らは、ヴィンセントとヨハンの後について、いわゆる地球の日本語で言う所の「酒屋」に入った。
「リューイに運んでもらえるから、貰い放題だな」
「でも、コアが残り少ないですけどね」
「あ、この2人が居てくれたら、何ならコアも使い放題なんじゃない」
「何言ってんですか…いくら何でも、それはあんまりでしょう!」
「…」
ヨハンは、ニヤッと笑いながら、僕らの方を見た。
ヨハンを制しながらも…ヴィンセントも、申し訳ないような表情で、僕らの方をチラッと見た。
「どうせ、俺たちが飲むんだからな」
カイトが言った。
それを聞いて、僕も観念した。
「大丈夫です…どうぞ遠慮なく、使い放題貰い放題してください」
「本当ですか?」
「さすが、太っ腹だな!」
そして2人は、目をキラキラと輝かせながら…所狭しと並ぶワインの瓶を、舐めるように見回していった。
ヨハンは、青い目のイケメン外国人の店員さんを捕まえて、何やら色々と質問をしていた。
「ウチのステーションでも、ワインが作れるんだよね?」
僕はカイトに訊いた。
「ああ…俺も詳しい事は分からないが、フードファクトリーで作ってるはずだ」
「ここのワインとは違うの?」
「そりゃあ全然違いますよ!」
僕らのやりとりを聞いたヴィンセントが言った。
「ウチのワインは、コアで作ってるから…結局のところ、全部同じ味になってしまうんです」
「へええー」
「もちろん、それはそれで…十分美味しいですけどね…それでも、ここの…ちゃんとブドウから作ってるワインには敵いません」
「そうなんですね…」
「この…ブドウから作った蒸留酒も美味いんだ!」
ヨハンが、透明な瓶を持ちながら言った。
「…」
僕は…酒に詳しいヒロから聞いた事のある…記憶の片隅にあった、イタリアのお酒の名前を思い出した。
「これは…もしかして…グラッパですか?」
「よくご存知ですね」
青い目の店員さんが、目を丸くして僕に言った。
「偽物リューイは、やけに酒に詳しいよな」
「僕もそう思いますよ」
「あ、いや…そういうわけでは…」
ゴニョゴニョ言いながらも…僕はそのグラッパの瓶を、自分用に確保した。
それからヨハンとヴィンセントは…何て言うか…もう「ここからここまでください」くらいの勢いで、容赦なくワインを選んでいった。
こーれは本当に、限界を試されそうだな…
僕は本気でそう思った。
「コアが足りるかなー」
ヨハンは自分の持っていたカードを、青い目の店員さんに差し出した。
ピーピーピーピー
残念ながら、コアのチャージ不足を告げる、けたたましい音が響いた。
「あー足んなかったー」
またワザとらしく言いながら、彼は僕らの方をチラッと見た。
「…」
カイトは黙って近寄ると…その機械にサッと手を翳した。
ピピッ…
無事、支払い完了の音が鳴った。
「ああ、ありがとうカイト!この恩は絶対に忘れないよ」
「そんな大した恩じゃない」
「あー何なら、もうちょっとイけるかな…」
「いや、さすがにコレくらいにしておきましょう」
そう言ったヴィンセントに向かって、僕は言った。
「エルンの分もあるから…もう少し増やしておいても良いかもしれませんね…」
「えっ…本当ですか?」
「エルンはどういうのが好きなんだろう?」
僕はカイトに訊いた。
「何でも良いんじゃないか?」
「えっ…」
「どうせ酔っ払って飲み散らかすんだから…」
「……」
貴方に言われたくない感ありますけどー
「じゃあ、この辺りをもう少し増やしておこうかな…」
ヴィンセントは、そう言いながら…既に選んだのと同じものを、何本かずつ選び足した。
「さすがに、これだけあれば大丈夫でしょう」
言いながら…ヴィンセントは自分のカードを、青い目の店員さんに手渡そうとした。
「僕が…払います!」
僕はそう言って、彼より先に…自分の手を翳した。
ピピッ
すんなり完済音が鳴った。
「ええー?太っ腹だな、リューイ」
ヨハンが言った。
「だって、ヴィンセントさんには、いつもものすごくお世話になってますから」
「あ、ありがとうございます…すいません」
「その代わり…また美味しいものをお願いします」
「わかりました」
それから僕は、自分用に選んだ分の支払いも済ませた。
青い目の店員さんは、心なしか、ウホウホとした表情をしていた。
「…」
さてと…コレからが正念場だ…
果たしてこれ全部、一気に運べるだろうか…
僕は、ズラーーッと並べられた大量の瓶を前にして、大きく深呼吸をした。
「…何が始まるんですか?」
青い目の店員さんが、ヒソヒソとヨハンに訊いた。
「この人がね…これ全部、一気にスポーンと運んでくれるから…しっかり見といてくださいね」
「これ全部一気にですか!?」
店員さんの目が、期待でキラキラと輝いた。
あーもう、
何でそーいうプレッシャーかけるような事言うかなー
思いながら…僕はしっかりと目を閉じると…例のメロディーを頭の中に流しながら、両手を広げた。
何なら…普段は奥ーの方に眠っている、テディや本物のコアも呼び起こした。
「んんん…」
そして僕は、最大限の力を込めた。
「はあーーっ!」
次の瞬間…そこにズラーーーッと並んでいた瓶が…まさに一気にシュッと消えた。
「!!」
「おおおー」
「!!!」
何とか…飛ばせたな…
「ふうー」
僕は、額の汗を拭いながら、安堵の溜息をついた。
パチパチパチパチ…
店員さんを含めた4人が、僕に向かって、盛大な拍手を送った。
「すごいなリューイ!」
「ありがとうございます!さすがです!」
「素晴らしい!ブラボー!」
店員さんが、青い目をキラキラと輝かせてそう叫んだ。
ブラボーって言ったよな…
やっぱここは、そーいう国なんだな…
そして僕らは…青い目の店員さんに見送られて、その酒屋を後にした。
「リューイさん、本当にありがとうございました…おかげで心置きなく仕入れる事ができました」
「全くだ…戻ったら早速飲みに来てくれよ」
ヴィンセントとヨハンが、嬉しそうに捲し立てるのを聞いて…僕はホッとしていた。
そんな僕に向かって…カイトがクスクスと笑いながら言った。
「お前のあんなに真剣な顔を見たのは初めてだ」
「…」
確かに…
今までのどの場面よりも、集中したかも




