⁑思い出の交流(1)
「うわあー」
そのステーションの、玄関口から続く階段を降りていくと…何とそこは…まさかの、外だった。
いや…実際には、外に見えるように造られているだけなのかもしれないのだか…
とにかく、その天井には青空が広がり…そこには、太陽が照っていたのだ。
そして、緑も豊かな、開放感あふれる…美しい街並みの風景が広がっていた。
「何てきれいなんだろう!」
「ああ…とてもきれいだ…」
カイトも、初めて見るそのステーションの景色に、感動しているようだった。
「本当に…ヨーロッパみたいだ…」
「え、どこだって」
「地球にも、こんな風に美しい国があるんだ」
「へえ…」
ま、実際に行った事は無いんだけどね…
僕らは、その美しい街並みを…並んで歩いて行った。
ほどなく、割と大きな川が流れていた。
キチンと舗装された川岸には、規則正しく緑が植えられ…それはまるで、セーヌ川やベニスの風景を彷彿とさせた。
いや…それも実際に行った事は無いんだけど…
「水が…流れてるな…」
「川だよ」
「かわ?」
川も初めて見たのか…
海なんか見たら、卒倒しちゃうかもしれないなー
「すごくきれいだね…」
「ああ」
僕らは、その…澄んだ水の流れを見つめながら…どちらからともなく、そっと手を繋いだ。
「…」
それから僕らは、その川沿いを、のんびりと歩いた。
しばらく行くと、まさにその川沿いの植え込みに、綺麗に手入れされた、花壇のようなものが見えてきた。
「…薔薇だ!」
「…っ」
僕らは早足になった。
近付くにつれ、その花壇は大きくなり…やがて目の前に広がったその風景は…まるでベルサイユの宮殿の庭のように、美しく壮大だった。
いやもちろん…それも行った事ないけど…
「うわあー」
「…」
僕は思わず、感嘆の声を上げた。
黙っているカイトも…心の中で感動しているように見えた。
僕らはまた、繋いだ手に、ギュッと力を込めた。
「カイトの…望みが叶ったね」
「…あ、ああ」
「僕の望みでもあったけど…」
「…」
色とりどりの、鮮やかな薔薇に囲まれたエリアを…僕らは、その…株ごとに、色も香りも違う薔薇の花を楽しみながら巡った。
カイトが、ポーッとしながら呟いた。
「こんなに美しいものが…他にあるだろうか…」
そんなにか…
本当に、生まれて初めて薔薇を見たんだな…
「地球にも、薔薇があったよ」
「そうなのか!」
「薔薇だけじゃない…あの、キーファーさんが出した桜もあったし…他にもたくさん花が咲いてた」
「…ふうん」
カイトは、呟くように続けた。
「行って…みたいな…その、地球って所に」
「…」
僕は思いを馳せた。
カイトと一緒に…地球の、景色の美しい場所を巡れたら…どんなに楽しいだろうな…
一緒にバンドもやって…
打上げで、一緒に居酒屋で…エールじゃなくて、ビールを飲みたい…
僕はまた…彼と繋いだ手に、ギュッと力を込めた。
しばらく進むと、向こうの方に…人が行き交う、タウンのような景色が見えてきた。
「薔薇は満喫したし…何か面白いものがあるか、見に行ってみよう」
「そうだな…」
そして僕らは、その賑やかそうな街並みに向かった。
「うわあーこっちも素敵だねー!」
お洒落な建物だけでも見応えがあるのに…また何とも洗練された店構えの店が、ズラッと並んだその街並みは…まさにパリやフィレンツェを連想させた。
もちろん、あくまでもイメージなんだけど…
「うちのタウンや工房とは、えらい違いだな…」
「あーそれ、ヴィンセントさんやキーファーさんに言ったら怒られるよー」
と、噂をすれば何とやら…
目の前の店から…大荷物を抱えた、ヴィンセントとヨハンが出てきた!
「あっ…」
「…」
カイトは思わずグッと口をつぐんだ。
「あーリューイさん、カイトさん!」
僕らの姿を見付けたヴィンセントが、駆け寄ってきた。
「君らも来たのか」
言いながらヨハンも後に続いた。
「すーごい荷物ですねー!」
「ちょうど良かった、これからワインを選びに行くところだったんですよ」
「そうなんですか…」
「でも…ご覧の通り…もうこれ以上持ち切れなくなっちゃって…」
「どんだけ買った…いや、仕入れたんですか」
「だって、美味しそうな面白いものがたくさんあり過ぎて…」
「そしたら…ひとまずそれ、運びましょうか」
「いいんですか?」
「だって、これからワイン選ぶのに、両手が空いてる方がいいんじゃないですか?」
「…それは…そうなんですけど」
彼がハッキリ返事をするのを待たずに、僕は、彼が持ってる大荷物に手を翳した。
「ヴィンセントさんのお店でいいですか?」
「あ、はい…すいません、お願いします」
僕はそれを、難なくシュッと運んだ。
「鮮やかなもんだなー」
横で見ていたヨハンが、捲し立てるように続けた。
「いやーすごいな、リューイ…流石だなあー」
「…」
若干棒読みな感じでそう言う彼に向かって、僕は溜息をつきながら言った。
「そんなお世辞を言ってくれなくても…運びますよ」
「あ、ええっ…いいの?」
またもワザとらしそうに、ヨハンは言った。
そして僕は…
ヨハンの荷物も、彼の店に運んであげた。




