⁑ 交流再開(1)
「はぁ…はぁ…はぁ…」
身体中のコアを使い果たした感じで…僕はその場に、ドサッと崩れ落ちた。
「リューイ!」
カイトが僕に駆け寄った。
「大丈夫か?」
「…ん、大丈夫…ちょっと疲れただけ…」
カイトに支えられて、僕は何とか立ち上がった。
「すごいパワーだったね…あんなの初めて見たわ」
ルイスが目を丸くしながら言った。
「ここまでの力を出す事が出来るとは…俺たちにもまだまだのびしろがあるって事だな…」
「…」
ヒューに言われて、カイトは大きく頷いた。
そして僕らは…再びウィルフリードの力で、最上階の室内に戻された。
「レオ!」
血まみれで仰向けに横たわるレオの横で、ジョシュアが必死の形相で、彼に向かって手を翳していた。
駆け寄ろうとした僕の腕を、カイトがギュッと掴んで止めた。
「あいつに…任せておけ」
「…」
ジョシュアの身体から、陽炎のようなものが湧き上がっていた。
「大丈夫だ…」
「…」
「安全確認が取れたので、そろそろ交流を再開しても大丈夫ですよー」
リカルドの宣言のもと、専門チームのメンバーが、バタバタと動き始めた。
「…何とか…出血は止まりました…」
溜息をつきながらジョシュアが言った。
「そうか…」
ウィルフリードも、安堵の溜息をついた。
「医療センターに運ぼう…」
「僕も、一緒に行っていいですか?」
「…わかった」
そしてウィルフリードは、2人に向かって…そっと手を翳した。
あの人が、手を出して動かすなんて珍しいな…
ほどなく2人の姿が、ユラユラと消えた。
あ、そうか…
ケガ人だから、優しく慎重に運んでるのか…
いつもの調子ですっ飛ばしたら、傷口が開いちゃうかもしれないもんな…
それからウィルフリードは、僕らに向かって言った。
「お疲れ様だったね、ありがとう…リューイとカイトはいったん下がった方がいいな」
「…俺は大丈夫だけど?」
カイトが強がった表情で言ったのを見て、僕も続けた。
「僕も…平気です…」
「お前はちょっと休んだ方がいいだろ」
「ううん…大丈夫…」
僕は、しっかりと足を踏ん張りながら言った。
「カイトと…一緒がいい」
「…」
「しょうがないな…」
ふふっと笑いながら、ウィルフリードは小さく首を横に振った。
「リカルド、本当に安全なんだろうな」
「ああ…もう、邪魔の気配はこれっぽっちも無い…当初の予定通りで大丈夫だ」
それを聞いた彼は、僕らに向かって続けた。
「ルイスとヒューに外を頼もう…お前たちは、私の後ろについてくれ」
「了解…」
そして、何事も無かったかのように…交流は再開された。
予定より、だいぶ時間が遅れてはしまったが…
いつものように、相手方の首脳陣が…今日はルイスのチェックを通ってやってきた。
「ごきげんよう、ウィルフリード…まさか邪魔が入るとは、微塵も思っていませんでした」
「そちらに被害はありませんでしたか?」
「こちらまでは届かなかったようです…ケガをされた方の容態はいかがですか」
「ありがとうございます…命は取り留めました」
「それはよかった…」
「予定通りの交流を、よろしくお願いします」
「こちらこそ…皆この日を楽しみにしておりました。ウィルフリードにも、以前のように…私たちのステーションの景色を楽しんで頂きたいと思っております」
彼らは、穏やかに微笑みながら握手を交わした。
とても丁寧な口調で喋る、その相手方のいちばん偉そうな人物は…まさにヨーロッパの皇帝のような風貌をしていた。
僕は、少し離れた場所に就くカイトを見た。
僕の視線に気付いた彼は、穏やかに微笑んだ。
それからまた、ガコンガコンという音と共に、コアの交流が始まった。
また、前回同様…向こうのステーションを訪れる人たちが、最上階にポツリポツリとやってきた。
今回も、ヨハンとヴィンセントが一緒にやってきた。
彼らは僕の姿を見て駆け寄ってきた。
「大変でしたね…ケガはないですか?」
「はい、僕らは大丈夫です…守備に力を貸してくださってありがとうございました」
「もう交流は中断になってしまうかと思いました」
「あんな事があったし、皆結構な力を使い果たしちゃったから、今回は訪問を見合わせる人も多いだろうなー」
そう呟くヨハンに向かって、僕は言った。
「それでも行くんですか?」
「当然よ、あんな良いワインがいっぱいある所、絶対見逃せないだろう?」
「あははは…」
思わず笑いながら…僕は思った。
とりあえず、無事交流に漕ぎ着けて、本当によかった…
そうだ、エルンはどうしてるだろう
レオの診察があるだろうから、抜けられなくなっちゃったかもしれないな…
「ヴィンセントさん」
「…何ですか?」
「ワインをいーっぱい選んだら、遠隔操作で運びますから、呼んでください」
「…えっ?」
「またいつか、こことの交流のときまで…エルンが満足出来る量のワインを仕入れてきてください」
「…なるほど、わかりました」
「いってらっしゃい!」
そうして僕はまた、テーマパークのスタッフの笑顔で彼らを見送った。
「エルンが満足出来る量って…相当だろうな…」
彼らの後ろ姿を見ながら、カイトが呟いた。
「…」
何なら、僕の遠隔操作の限界が試されるかも…




