⁑コア部屋大改修に向けて(2)
「…!!!」
フリッツは…くちびるを塞がれた感覚と、そこから自分の中に何かが飛び込んできた感覚に…思わずビクビクッと身体を震わせた。
よし、入ったな…
僕はシュッと彼から離れた。
「もう…目を開けて大丈夫です…」
「…っ」
彼は、ゆっくり目を開けた。
「何を、したの?」
「…な、内緒です」
僕は必死で平静を装いながら言った。
「治癒能力…感じられるように…なりました?」
「うん…今までに無かった何かが入ってきたけど…これが、そうなのかな」
「はい、たぶんそうだと思います」
そして僕らは…何事も無かったかのように…皆の待つ部屋に戻った。
「リカルドさん、見てみてください」
言われてリカルドは、再びフリッツの頭の上を見た。
「おおおーある!…治癒能力が見える!」
「本当ですか?」
「すげー…どうやったの?」
「…秘密です」
「えーすごく気になる…それ、俺にもちょうだいー」
「ダメです!」
「何でー?」
「リカルドさんがケガしたら、ちゃんとエルンが治してくれますから!」
「ちぇーっ」
口を尖らせながら、リカルドは頭の機械を外した。
「上手くいったな…」
キーファーが、ニヤニヤしながら僕に言った。
僕は少し顔を赤らめながら…彼に向かって勢いよく目配せをした。
絶対…絶対に、カイトに言わないでくださいよ!!!
果たしてそれが伝わったかどうかは分からないけど。
「後は、その治癒力を…最大限に強くしよう」
そう言いながらリドリーは…フリッツを椅子に座らせた。
「…どうすれば、いいんですか?」
「また、リューイの出番だな」
「…」
僕は、例の録音再生機を取り出した。
「今から流す音を聞きながら…目を閉じて…その、新たに感じる力に集中してみてください」
「…?」
フリッツは、半信半疑な様子で目を閉じた。
「…!!」
ほどなく、僕の再生機から…例のメロディーが流れ出したのを聞いて、フリッツはまた、とても驚いた様子で身体を震わせた。
「な、何なんですか?…この音…」
「ま、いいから…集中してみてー」
「…」
言われた通り…集中している様子のフリッツの身体から…じわじわと陽炎のようなものが浮かび上がった。
「うん…いい感じで進化してるんじゃない?」
リカルドが言った。
「そうだな…これでフリッツが強い治癒力を使えるようになったとして…融合する守備力は、どういう形にしたらいいんだろうか」
そう言ったリドリーに向かって、僕は言った。
「あの、メダルの形ではダメなんですか?」
「…あー」
「もしくは、リカルドさんがかぶってるヤツみたいにするとか…」
「メダル型の、もっとデカいのを作るか…」
キーファーは続けた。
「首にかけるんじゃなくて、背中に背負うタイプにしたら…もっと効率がいいんじゃないかな」
「なるほど…」
「じゃあ、そこはキーファーに任せていいね」
「しょうがないなー」
そう言いながらも…やっぱり彼の目は、創作意欲に掻き立てられているように見えた。
「ふうー」
集中を続けていたフリッツが、大きな溜息をついた。
「お疲れ様でしたフリッツさん…今日はこれくらいにしておきましょう」
「今日はって何?…まさか、明日もやれって事?」
「やればやるほど…強くなりますから」
「…そうなのか…」
リドリーは、奥の部屋から録音再生機とイヤホンを1セット持っくると…それをフリッツに渡しながら言った。
「これ、持っていって…戦闘部隊に配った余りだから、今聞いたのと同じ音が聞けるはずだ」
「…」
「それがあれば、いつでも集中出来ます!」
フリッツは…
ちょっぴり…えーっていう表情になった。
「頼むよ…あの金属を取り出せるのはフリッツだけなんだからさ…」
「…」
「いったん取り出してくれたら…その先の量産までのシステム作りは任せてくれ」
リドリーが、キッパリ言い切った。
最強に治癒力を高めたフリッツが…
キーファーの作る機械に込められた守備力を…その治癒力を使って…融合させながら、タングステンを取り出す。
そして、その取り出したものを、リドリーがデータ化して…いくらでも量産出来るように…するって事だ。
「何とかなりそうだねー」
「ああ…」
いつの間にやら、トントン拍子に話が進む中…言われるがままに振り回されている感じのフリッツは…何となく釈然としない表情を隠し切れなかった。
しかも、
すごく疲れる集中まで課せられちゃったし…
そんな彼に向かって、僕は言った。
「このステーションのコアの運命は…言ったら、フリッツさんの手に全て委ねられてるって事ですね!」
「…!!!」
そこにいる皆が、一斉にフリッツを見た。
「そういう事ー!」
「頼んだよ、フリッツ…」
「もの凄く強くなっといてくれよな!」
「……」
フリッツは、肩をすくめながら…苦笑した。




