⁑コア部屋大改修に向けて(1)
ギイィィ〜ギイィィ〜
キーファーの工房から、そんな妙な音が聞こえていた。
(何だよな…全くあの音にならないな…)
「はあ…」
溜息をついて、彼は弓を置いた。
彼の胸の辺りに、小さくなっていた青い炎が、ホッとしたようにボワッと広がった。
さぞかし喧しかった事だろう…
そしてその炎は、更にキーファーを追い立てるように、大きく燃え上がった。
「わかってるよテディ…例の仕事だろ?」
面倒くさそうに言いながら、彼は二胡を片付けると…作業台の…例の金属の塊の前に座った。
「うーん…」
メダルに仕込まれたのと同じ守備力を…この金属に融合させる…
そんな事が…本当に出来るんだろうか…
「キーファー…ちょっと来れるか?」
フォーンから、リドリーの声が響いた。
「あ、ああ…」
顔を上げてそう答えた彼は、その金属の塊を握りしめて、工房を出た。
「何か良い策を思い付いたのか?」
デベロッパー階の、リドリーの部屋に入るなり…キーファーは、肩をすくめながら言った。
「策は無いが…この金属のデータを取る事は出来た」
「本当か!…流石だな…」
リドリーは、いつものような小さいUSBを、彼の前に差し出した。
いや、それを本当にUSBと呼んでいいのか、分からないけど…
「これがあれば、いちいちコアを取り出さなくても、あの金属を量産出来る」
「そうなのか…そしたらアレだな…フリッツはもう用無しって事か」
「そういうわけじゃない…ただ、その…融合させた金属を、この形に落として量産が可能だって事が実証出来たってだけだ」
「…ふうん」
「要は、用無しどころか…やっぱりフリッツに一肌脱いでもらうってのが、いちばんの方法なんじゃないかと…俺は思う」
「融合させながら…取り出させるって事か…」
「ああ…そう言う事だ」
そこまでは辿り着いたものの…やはり2人は暗礁に乗り上げてしまった。
「とりあえず、リカルドに…その、フリッツの力を分析してもらったらどうだ?」
散々悩んだ挙句に、キーファーはそう提案した。
「そうか…そうだな…もしかしたら、そこにヒントを見出せるかもしれない…」
「もしフリッツが…微かにでも治癒能力を持ち合わせていれば…それを強化する事で、出来るようになるかもしれないんじゃないか?」
そのとき、キーファーの頭には…あのMTRの仕組みが思い浮かんでいた。
あのボタンが金属で…隣のボタンに守備力…
で、纏めながら、あの音を微調整する機能を、フリッツがやってくれたらいいって事だ。
(あんな、ワケの分からない機械を作った経験が、こんな風に活かされるなんてな…)
キーファーは思いながら…フリッツとリカルドを連れて来るようフォーンで僕を呼んだ。
「何で僕まで?!」
釈然としない気持ちで、僕はフリッツとリカルドを連れて…彼らの元に飛んできた。
「いや、いざとなったら、お前に直々にフリッツを進化させてもらおうと思ってさー」
キーファーが、しれっと言った。
「そうだな…まだフリッツは、アレを持っていないし」
リドリーが納得したように言った。
「アレって何ですか?」
「それは後で説明するから…とりあえずはリカルド、フリッツの能力を、分析してくれないか?」
「あーわかったー」
そう言ってリカルドは、例のマイク付きヘッドホンを装着すると、フリッツの頭の上をジッと見つめた。
「ふうん…」
「治癒能力があるか?」
「…残念ながら、無いね」
「えーそうなのか…」
「コアを見分ける力は特出してるんだけどなー」
「…すいません」
フリッツは、シュンとした。
僕は、ふと思い立って、リカルドに訊いた。
「エルンが作った、治癒能力強化ブレスレットを着けたら、治癒能力が作動したりしないんですか?」
「あーアレは、元々持ってる人にしか効かない」
「そうなんですね…」
僕は、少し考えてから…続けた。
「僕には、治癒能力…少しはあるんですよね?」
「リューイは少しあるよー言ったらジョシュアの半分以下だけどね」
「だったら…僕のその、治癒能力を…フリッツさんに分けてあげる事は、難しいんですかね?」
「…」
「…そんなの、やった事もないし…考えた事も無かったな…」
皆、黙ってしまった。
しばらくして、キーファーが言い出した。
「ふうん…確かに、偽物のとんでもないパワーを持ってすれば、出来なくは無いかもしれないな…」
彼は、ニヤッと笑いながら…続けた。
「カイトには…内緒にしといてやるよ」
「えっ…!?」
そ、それって…もしかして…
「たぶんね…それがいちばん手っ取り早い方法なんじゃないかと…俺は思うが?」
「えーどんな方法ー??」
リカルドが、前のめり気味で言った。
「もし、そんな方法があるなら…是非とも試してみてくれないか?」
フリッツも声を上げた。
「…」
僕は、顔を真っ赤にしながら…一同の顔を見渡した。
「…わ、わかり…ました」
そして僕は、フリッツの腕を掴んで言った。
「内緒の方法なので…2人だけにしてください」
「えっ…」
「キーファーさん、絶対言わないでくださいよ!」
僕はビシッとそう言うと…目を丸くしたフリッツを引っ張って…その部屋を出た。
「えー気になるー」
リカルドが言った。
「残念ながら、内緒だな」
「ちぇー」
廊下に出た僕は、辺りをキョロキョロと見回して、人気の無いのを確認した。
「目を…瞑っててください」
「わ、わかった」
僕は…自分の中のコアの中から、治癒能力を…意識して、前面に引っ張り出してきた。
そうして目を閉じた彼に…そっと口付けた。




