⁑理系男子の階(2)
そんな訳で…僕は(一応お断りしてから…)
キーファーとリドリーを、その部屋へご招待した。
「調子はどうだ?」
いつもの感じで、ウィルフリードは2人に言った。
「…何だよな、当分遊んで暮らせると思ってたのに」
「今度は何ですか…」
諦めた様子の2人は…とても怪訝な表情で、そこにいる皆を見回した。
「地下のコアを囲む外壁を強化しようと思う」
「…それで?」
ウィルフリードに向かって、臆する事もなくキーファーはいつもの調子で言った。
「先日の交流で、原料になる金属を仕入れた」
「ほうほう…」
「それだけでも、かなりの効果は期待出来ると踏んでいるんだが…リューイが、更に面白い事を言い出してね…」
「まーたお前かー」
「…っ」
ウィルフリードさん…
僕に責任転嫁するのやめてくださいー
「正直…僕には不可能だと思うんですよ…その、コアの力を金属に融合させるっていうのは」
フリッツが、申し訳なさそうに言った。
「専門家がそう言ってんのに…今度はお前は、何を企んでるんだ?」
「企んでるとか、嫌な言い方だなぁもう…」
僕は続けた。
「ただ単に…こないだ皆で発動したレベルの守備力を、この最強の金属に混ぜ込んだら、もっとすごーく強くなるんしゃないかなって…ちょっと思っただけです!」
「…」
「なるほどね…」
「一理はあるだろう?」
ああー
甘い低音ボイスが味方してくれてる…
「その…金属を取り出すための力は、フリッツが持ってるのか?」
「ああ…」
「ふーん…」
リドリーは、握った手を顎にあてながら…熟考体制に入った。
「そうだな…コアを融合させるためのコアを作るか…またはフリッツに、守備力を融合させながらコアを取り出す力を備えてもらうか…」
「ええっ…ぼ、僕はそんな事出来ないよ」
「キーファー、どう思う?」
リドリーに振られて、腕を組んで考えていたキーファーは言った。
「うーん…あの、リューイに作った録音機は、言ったら音と音を融合させてるわけだから…その理屈で考えたら、金属とコアを融合させるってのも、不可能では無いような気がするな…」
「要は…音を治すと一緒で…治癒力を使って、その…守備力コアで金属を施術する…って考えたらいいのか」
「……」
????
僕にはサッパリだ…
「出来そうじゃんー」
チャラ男くんがしれっと言ってのけた。
「とりあえず、やってみよう…その金属を少し取り出してもらえないか?」
キーファーは、フリッツに言った。
「わ、わかりました」
ウィルフリードは、僕に向かって言った。
「地下へ…行けるか?」
「行けますけど…」
貴方だって出来るじゃん…
心の中で思いながらも…僕は、そこにいる全員を、一気に地下のコアの部屋にすっ飛ばした。
「うわっ…」
「ビックリしたー」
「見事なもんだな…」
「本当に…記憶が無いのか?」
「…はい」
だからその低音ボイス、ヤバいって…
そしてフリッツは、その部屋の一角にあるコンピューターのような機械の側に行くと…手を翳して、何やら操作を始めた。
しばらくすると…
彼の手に、銀色の四角い金属が幾つも現れた。
僕らはすぐに駆け寄った。
「へえーこれがその、最強金属か…」
「これで、この部屋を囲むんですね…」
そのうちのひとつを受け取ったキーファーは、それをしみじみ眺めながら言った。
「ありがとう…とりあえず持って帰って試してみる」
「よろしくお願いします…何か手伝う事があったら、呼んでください」
「俺は、これを分析してみる…データ化出来れば、融合の手掛かりになるかもしれないからな」
リドリーも言った。
「じゃあ俺たちは戻る…リューイ、頼むよ」
「わかりました」
僕はまた…2人を元の場所へと、お帰り頂いた。
残った4人は、何やら話しながら…ウロウロとその部屋全体を見回していった。
おそらく、改修のイメージを相談しているんだろう…
僕は…久しぶりに見る、光り輝くコアの前に立った。
「リューイ…」
僕の隣に来たウィルフリードが、呟くように言った。
僕は、答えなかった。
彼が呼んでいるのが…偽物の僕なのか、それとも目の前に光り輝く本物なのか…定かではなかったから…
黙って、心の中でコアと対話している様子の、彼の横顔を見ながら…僕は、囁くような声で言った。
「貴方は…最初から分かってたんですか?」
「…何を?」
「リューイの事…」
「…いや」
ウィルフリードは僕の方を見て、続けた。
「お前に…話したい事があると、言っただろう?」
そういえば…部屋に呼ばれた事があったな…
だいぶ前の話だけど
「もう…その必要は無さそうだな」
「えっ…」
僕は振り向いて…ウィルフリードの目を見た。
彼は黙って…微笑んでいた。
やっぱりこの人は、知っていた…いや、気付いていたんだな。
本物のリューイは…リューイの身体を借りた、このコアそのものだったって事に。
「ここへ来てくれてありがとう…偽物リューイ…」
「…っ」
僕らは静かに、ふふっと笑い合った。




