⁑BGM作成(2)
録り直す事にした…
っていうか…リズムを譜面に起こしての…カイトに叩いてみてもらう事にした。
l ○ l
l● ● l
みたいな…
とてもオリジナルな譜面になっちゃったけど…
「このタイミングで、ここと…ここを叩けばいいんだな」
「…そ、そう」
それでもカイトは、シュッと理解した。
それどころか…まるで打ち込んだように、正確なテンポで叩いていくのだった!
1曲録り終わったところで、僕は思わず彼に訊いた。
「何で…カイトは、そんなにズレないで叩けるの?」
カイトは…逆に、
えっ?…っていう表情になった。
「あ、いや…聞こえないか?」
「…は?」
「うーん…そうか…」
カイトは、どう説明したら良いのか、悩んでいる様子だった。
「要は…時間を刻む音を…聞けないか?」
「…?」
「その音を…少し調節して…合わせてるだけなんだ」
「…!!!」
まさかの、体内メトロノーム機能ですか!?
「…そんな事が…出来るんだ…」
「んーまあ、元々は、攻撃のタイミングを合わせるときなんかに使うんだけどね…」
「…」
そーれは…先程の、僕が録音したヤツは、さぞかし気持ち悪かった事でしょうね〜
「お前も…意識すれば聞こえると思うよ?」
「…」
いや…僕のその能力開発は、一先ず置いておこう…今それに時間をかけるのは勿体無いからな…
リズム隊の録音は、カイトに任せよう。
そんなワケで…
とても正確な打楽器セクションの上に、とても息の合ったベースが乗せられた。
どっちも、打込み音源かと見紛うほどの出来だった。
逆に、その上に自分の拙いギターをかぶせていくのが、申し訳ないくらいだった。
それでも、言ったらその…完璧なリズム隊のおかげで、上物も上手に聞こえるってもんだ。
僕は、気を取り直して…そこにギターのコードと、グラスでのメロディーを録音していった。
「お前の声は入れないのか?」
「うん…」
カイトは、出来上がった音源を聞きながら言った。
「ちょっと寂しいんじゃないのか?」
「今回は、ヴィンセントさんの店のBGMっていうコンセプトだから、これでいいんだ」
「何っていう何だって?」
「…ま、いいから…行こう、聞いてみればわかるよ」
その場で色々説明するのがメンドクサかった僕は…録音機を持って、カイトを連れてタウンに飛んだ。
「いらっしゃい…お疲れ様です」
「おーお先に」
「何だ、歩いて来たのか?…珍しいな」
「…」
既に割と出来上がってる感じの…エルンとキーファーが、僕らを振り向いた。
僕らは…その隣に座った。
「最初はエールでいいですか?」
「…って事は、今日も紹興酒に合う中華の日ですか?」
「紹興酒に合うのも出ますけど…今日のメインは、こないだリューイさんに教えてもらった海老料理です」
「やったー」
とりあえず僕らは、エールで乾杯した。
そして今日もまた、カイトの好きなネギメンマと…鮮やかな青菜がフワフワの卵と一緒に炒めたものが出てきた。
もちろん、紹興酒も!
「いただきます!」
やっぱり美味しかった。
炒め物も、中華風の味付けで…紹興酒によく合った。
卵は…あるんだよな…
前にも出たし…カツ丼とか
でも…前にエルンに連れてってもらった地下には、あの変な動物しかいなかったよな…
ふと改めて思った僕は…ヴィンセントに訊いた。
「これって…鶏の卵…ですよね?」
「にわとり…?」
えっ…
「これ…誰が産んでるんですか!?」
「卵はね…フードファクトリーで作られてるんだ」
「えええっ!?」
「ずっと昔に、他所のステーションから、卵を作るコアをもらったんですよ」
「…そ、そんなコアが…あるんですね…」
コアが産み出した養殖卵だったのか…!!!
このステーション…いやこの世界…
まだまだ僕の知らない事が、いっぱいありそうだ…
「あの機械の調子はどうだった?」
キーファーが訊いてきた。
「あっ…そうだった」
僕は慌てて、持ってきた録音機を取り出した。
「これ…ここでBGMに使ってもらおうと思って…」
「ビージーエム?」
「キーファーさんの機械で作ったんです。半分はカイトが弾いてくれたんですよ」
「へえええーっ…カイトが!?」
エルンが、目を丸くして驚いていた。
僕は、スピーカーに向かって、再生のスイッチを入れた。
ほどなく、曲が流れてきた。
「…なるほど…こんな風になるのか…」
キーファーは、しみじみ聞き入っていた。
「これはね、集中して聞くんじゃなくて…食べたリ飲んだり、お喋りしながら…何となく耳に入ってくる用です」
「何だそれ…」
「そう言えば…こないだもリューイさん、そんな事言ってましたよね…前にリューイさんが居た所では、料理が美味しくなる音が流れてるって」
「そうそう!…いや、音楽なんて無くても美味しいんですけど…更に、何ていうか…雰囲気が良くなるための、オマケみたいなもんです」
それでも、面々は…やっぱり黙って、その曲に聞き入ってしまっていた。
BGMが流れてるっていう感覚に、要は慣れてないんだろうなー
「この、トントンっていう音…いいな」
エルンが言った。
「だろ?…俺が作ったんだ」
キーファーが、ドヤ顔で答えた。
「この…ボンボンって感じの音も良いですね…それが、そのトントンっていう音と、とても合ってますね」
ヴィンセントも続けた。
「でしょう?…やっぱりベースとドラムが入ると、全然違うんですよ」
僕は、前のめり気味で答えた。
ハッと思って、隣を見ると…
カイトが、それはそれはドヤ顔になっていた。




