⁑BGM作成(1)
それから数日後(いや、数十時間後か…)
訓練を終えた僕の部屋に、キーファーが、ドラムマシン的なものの試作品を持ってきてくれた。
「ありがとうございます、キーファーさん!」
「全く…おかげで退屈しないで済むのはいいが…次は何を作らされるんだか、ドキドキだよ」
そう言って笑いながら彼が差し出したのは…例のMTRよりひと回りくらい小さいサイズの、ボタンがたくさん付いた機械だった。
「とりあえず…思い付く限りの音を入れてみた」
「…」
僕は、そのボタンを…次々と押してみた。
ドンッ…カンッ…チリーン…ポンッ…
次から次へと、色々な音が鳴り響いた。
まさに、そこら辺にある物を端から叩いていったんだろうな…
「で、一応…こないだの録音機の要領で…重ね録りも出来るようにしておいた」
「本当ですか!?」
「ま、でも…元々ボタンがいっぱいになっちゃったから…それ用のスイッチが、あんまり入れられなかった」
彼は、下の方に並んだ、4つの形の違うボタンを指差しながら続けた。
「こっちの3つに録音して…この、ひと回り大きいボタンにまとめられる」
「…」
って事は…3つ重ねられるって事か。
要は…バスドラムとハイハットを先に録って…2回めにスネアとシンバル…3回めにタムとパーカッション…みたいな重ね録りが、この機械ひとつで出来るって事だ。
ま、それに近い雰囲気の音を…この入ってる中から選んでいく事になるんだろうけどね…
「こんなんで…いいのか?」
「とてもいいです!」
僕は、前のめり気味で言った。
キーファーは、ホッとした嬉しそうな表情になった。
「この機械の音と…カイトのベースが入ったら…もっともっと音楽の幅が広がります」
「そうなのか…俺にはよく分からんが…」
「ありがとうございました、さっそく試してみます」
「うん…他に、差し当たり注文は無いか?」
「えっ…あ、はい…」
いつも面倒臭そうにしている、キーファーさんの方からそんな事を言ってくれるなんて…
彼は…少し顔を赤くして、もじもじしながら続けた。
「だったら、あれを練習してみようかと…思ってる」
「えっ…もしかして二胡ですか!?」
「ん…そんな名前だったな…」
「…!!」
ええーっ!?
まさか…カイトに続いて、キーファーさんまでが、そんな事を言い出すなんて!
「キーファーさんが、あれを弾けるようになったら…もっともっーと広がりますよー!!」
僕は興奮気味に、更に前のめりながら言った。
「そ、そうなのか…」
「是非とも頑張ってください!!」
「わ、わかった…」
少し照れたように頷くと…
彼は、大人しく歩いて帰っていった。
弾けるように…なってくれるといいなぁー
ギターとグラスだけだと、どうしても音を延ばすのに限りがあるからな…
ストリングスの代わりになる二胡の音が入ったら、どんなにか幅が広がる事か。
「…」
実は、知らないだけで…この世界にも、音楽を好きになってくれる人が…もっといっぱいいるのかもしれない
そんな事を思いながら…僕はさっそく、その試作ドラムマシンで…パターンを考えていった。
まずはこれを使ってリズムを録音して…カイトにベースを弾いてもらって…
それからギターとグラスの音を重ねて…
そこで僕はふと…
こないだヴィンセントに話した事を思い出した。
そうだ、あのお店で流すBGMを作ろう!
曲は…何がいいかな?
「…」
しばらく考えて…とりあえず僕は、先日弾き語りで歌った童謡5曲を…インストで作る事に決めた。
あの選曲だったら…カイトも難なく弾けるだろう…
僕はまず、グラス楽器を鳴らしながら、それぞれの曲の構成を練っていった。
それをメモするのに…鉛筆とノートが、ものすごく役に立った!
決まった構成の…ベース用の譜面も書いて…
それを見ながら、僕は、さっきの新作試作ドラムマシーンで、5曲分のリズムを…次々と録音していった。
うーん…
小節ごとにパターンを録音出来ると楽なんだけどな…
ま、でも…それはまた今度でいいや
説明するのが難し過ぎる…
そんな感じで…完全に、全ての音をリアルタイム録音なので…テンポキープに若干の乱れはあるものの…
ま、恐らく素人さんにはバレないだろうと鷹を括って…僕は無事、5曲分のリズムを録り終えた。
そしてカイトを呼び出した。
「これに合わせて…この通りに弾けばいいんだな?」
「そう!」
カイトはすぐに理解した。
そして、譜面を見ながら…サラッと弾いてのけた。
「すごい!」
「こんな感じでいいのか?」
「いいよいいよ、すごくいい!…そしたら…もう本番って事で、録音しても大丈夫?」
「ああ…」
カイトは、本番も…全くのノーミスで弾き切った。
すごいな…
本当にこの人、音楽の才能があるんだな…
僕はしみじみと思った。
「…」
終わった後…カイトは、ちょっと眉間に皺を寄せていた。
「ありがとうカイト!」
「…あのさ…」
彼は、少し言い辛そうに切り出した。
「ときどき、あの…叩いてる音が少しズレるのは…あれは、わざとなのか?」
「…っっ!!」
ま、まさかのカイトに…
そこ、突っ込まれるなんてーーー!




