⁑楽しい交流のあと
それからステーションに戻った僕らは、再びレオとジョシュアと交代した。
そして、50時間の楽しい交流が…無事終わった。
ウィルフリードと名残惜しそうに、別れの握手を交わしたウェイは、取り巻きと共に、自分のステーションへと戻って行った。
ほどなく、長い歩道が収納され…派手な中国ステーションは、ゆっくりと離れていった。
それが、また赤茶色になって…小さい点になって…すっかり見えなくなってから…僕らはようやく中に戻った。
ウィルフリードが僕に声をかけた。
「向こうに行ってこれたんだろ?」
「はい…とても楽しかったです!」
彼はそれを聞いて、穏やかに微笑んだ。
それからウィルフリードは、その場にいる全員に向かって続けた。
「皆、お疲れ様、おかげで良い交流が出来た…どうかゆっくり休んで欲しい」
皆がホッとした表情で、小さく頷いた。
そして僕らは…部屋に戻った。
買ったもの…いや、コアと交換して貰ったものが…ちゃんと部屋に届いていた。
僕は、紹興酒やカップラーメンを、キッチンの棚に片付けた。
それから、鉛筆を持って…早速試し書きをしようと思ったところで、大変な事に気付いた。
「ねえ、カイト…」
「何?」
「カッターとか、ナイフとか…持ってる?」
「…何だそれ」
あーもう…また伝わらないヤツか…
僕は彼に鉛筆を見せながら…また丁寧に言い直した。
「これを削りたいんだ…そのための道具が欲しいんだけど…」
カイトは、僕の手から鉛筆を取ると…しみじみ見ながら続けた。
「どう…削ればいいんだ?」
「……」
説明が難しかった。
致し方なく…僕は、例の黒板に…尖らせた鉛筆の絵を描いてみせた。
「この中に、黒い芯が入っていて…それをこんな風に、削って出したいんだ」
「…ふうん」
呟きながらカイトは…その鉛筆の尖の方に…そっと自分の手を翳した。
シュッ…
「えええっ!?」
次の瞬間…まさかの、カイトの手の動きに合わせて…鉛筆の尖が削れ始めたではないかー!!!
「な、何…カイト、そんな事出来るの!?」
「あくまで戦闘向けの力だけどな…こんな細かい作業にこれを使うのは初めてだ…」
謙遜しながらも、カイトは鮮やかな切り口で…とてもきれいに鉛筆を尖らせていった。
「すごい…」
「ふうー…これでいいか?」
「ありがとうカイト!!」
僕は…まるで、電動鉛筆削り機で削ったような、使うのがもったいないくらいに尖った鉛筆を、しみじみと眺めながら思った。
そうか…この世界には、切る能力があるからナイフは必要ないんだな…
「タウンに行くか?」
カイトが僕に訊いた。
「そうだね…今日はきっと、ヴィンセントさんも張り切ってるだろうね」
試し書きは、帰ってからにしよう…
そうだ、せっかくだから…カップラーメンを、ヴィンセントさんにもお裾分けしよう
食べた事無いかもしれないからな…
そして僕らは、お土産物を持って…タウンに飛んだ。
「あれ…?」
僕が、店の外に着地したので…カイトはちょっと驚いていた。
「いや…いつもビックリさせちゃうからさ…ウィルフリードさん方式にしようと思って」
「何だそれ…」
そして僕らは…あたかも歩いて来ましたっていう雰囲気を醸し出しながら…ヴィンセントの店のドアを開けた。
「あ、いらっしゃい…お疲れ様ですー」
僕らはいつものように、カウンターに並んで座った。
「歩いて来るなんて、珍しいですね」
言いながらヴィンセントは、すぐにエールを出してくれた。
僕らは顔を見合わせて、ふふっと笑った。
「今日はヴィンセントさんに、お土産を持ってきてみました…」
言いながら僕は…例のカップラーメンを、彼の目の前に差し出した。
「あ、これ…並んでるのは見た気がしますけど…何なんですか??」
ヴィンセントが、それを手に取ってしみじみと眺めているのを見て、僕はニヤッとしながら言った。
「あとで、味見してみてください…ヴィンセントさんが作るのには敵わないと思いますけど…」
「…わかりました、ありがとうございます」
そして、今日のお料理が出てきた!
「これは…!」
「ちょっとズルいんですけどね…あまりにも珍しかったんで…袋から出して温めただけです」
言い訳されながら出てきたそれは…鶏の足を、柔らかく煮込んだものだった!
「もみじだ!」
「もみじ…!?」
まさに中華の中の中華だ〜
しかも本物の鶏肉なんて…あの、打上げの日以来なんじゃないか?
「いただきます…」
僕はすぐに、それにがっついた。骨がいっぱいあるので、とてと食べ辛いんだが…周りのプニプニした肉が、たまらなく美味しかった。
「あ、これ必須ですね…」
言いながらヴィンセントは、紹興酒の瓶とグラスも出してくれた。
「あーもう、最強に合います!」
モリモリ食べ進める僕の隣で…カイトは眉間に皺を寄せて、それを眺めていた。
「美味いのか…それ?」
「えっ…すごく美味いよ!」
「…何かちょっと…グロテスクじゃないか…?」
「あー確かに…見た目が気になる人もいるかもしれませんね…無理しないでください」
「えー食べないのー?…こーんな美味しいのに…もったいないなー」
「じゃあカイトさんは…コレはどうですか?」
今度はヴィンセントは…茶色い細長四角の物と、ネギが一緒にテカテカに炒められた物を出した。
「ネギメンマですね!」
またもすぐに言い当てた僕に向かって、ヴィンセントがしみじみ言った。
「…偽物のリューイさんは、本当に色んな食べ物を知ってるんですねー」
「あ、いや…たまたま、過去に地球で食べた事があるってだけですよ」
「地球って…本当に色々な食べ物があるんですね」
そうかもしれないな…
ヴィンセントさんを、連れて行ってあげたい…
何なら、地球の誰かに転移させてあげたいなー
「美味い!」
そんな事を考えていた僕の隣で、カイトは躊躇う事なく、ネギメンマをガツガツと食べ始めた。
全く…好き嫌いが分かりやすいなー
子どもみたいだ




