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⁑楽しい交流(4)

僕は…カップラーメンの他にも、おそらくヴィンセントさんが手を出さないであろう中華菓子なんかもカゴに入れていった。


荷物が多くなってしまったので…僕はお会計を済ませてから…便利能力を使って、それらを自分の部屋に送ってしまう事にした。



山積みの品物が、シュッと消えたのを見て…現地の店員さんは、とてもビックリしていた。


「お兄さん、すごいあるね!」

「…あ、ありがとうございます」


「わたしもそれ、出来るようになりたいあるよ」

「あはははっ…」



「俺も出来るようになりたいあるー」


両手にいっぱい荷物を持ったリカルドが、僕に強請るように言った。


「はあーしょうがないですね。」

僕は溜息をつきながら、彼に手を翳した。


「リカルドさん、自分の部屋を思い浮かべてください」

「やったーあるー」


「あとその、ちょっとイラッとくる喋り方やめてくださいね」

「分かったあるー」

「……」


そして僕は、彼の頭の中の…彼の部屋を目指して…その両手いっぱいの荷物を、すっ飛ばした。



「おおー」

「すごい、また消えたあるー」


リカルドと店員さんは、目を丸くして、パチパチと拍手をした。



そんな、店員さんとのやりとりも楽しんで…身軽になった僕らは、そこを出て…更にしばらく通りを進んでいった。



…と、とある店のショーウィンドウに…僕はまた、あるものを発見してしまった。



「…!」


「何か面白い物あった?」

立ち止まった僕に気付いて、2人が引き返してきた。


「見てください…」


僕は、そのショーウィンドウを指差した。


「…!」


2人はそれを見て、とてもビックリした。


それは…キーファーが作ってくれた、あのギターに、とても形が似ていた。



「二胡です…」

「…にこ?」


「まさに、あの…ギターの仲間です!」

「…確かに、似てるな」

「うん」


これがあるって事は…このステーションには、ちゃんと音楽があるんだ…


僕は、吸い込まれるように、その店の中に入った。

2人も後に続いた。



「すいません…」


狭い店の中には…色も形も様々な二胡が、たくさん並んでいた。


「おや…お隣さん、いらっしゃい」


少し年配の男性が…店の奥から出てきた。


「お気に召したものが、ございましたか?」


丁寧な口調で話すその男性に向かって、僕は言った。


「あの…貴方はこれを…弾けるんですか?」

「はい、弾けますよ」


「ホントですか!?」

僕は彼に詰め寄りながら続けた。


「お願いです…聞かせてもらえませんか?」

「…いいですよ」



若干、戸惑ってた表情を見せたものの…その男性は、ニッコリ笑うと…近くに立て掛けてあった二胡を、手に取ると…椅子に座って、細長い弓を構えた。


「あ、あの…録音させてもらってもいいですか?」

「…録音?」


あ、逆にここには録音する道具は無いのか…



僕は丁寧に言い直した。


「貴方が演奏する音を…帰ってから聞くために、記録しても大丈夫ですか?」

「なるほど…」


彼は理解してくれたようだ。


「少々恥ずかしいですが、大丈夫です」

「ありがとうございます!」


早速、僕は例の機械をシュッと持ってくると…録音のスイッチを入れた。


そして、彼に向かって頭を下げた。



彼はまたニコッと笑うと…

ゆっくりと静かに、その二胡を弾き始めた。


「……」

「…!!!」



美しい二胡の音色が…店内に響き渡った。

まさに…僕の記憶の中の二胡の音だった。


キーファー社製の楽器を僕が弾くっていう…ちょっと残念な演奏とは比べ物にならない…ちゃんとした音楽だった!



ああ…何て素敵な音…

そして、何て素晴らしい演奏なんだろう…


僕の目から…ポロポロと涙が溢れた。



もちろん、そんなものを生まれて初めて聞く2人も…それはそれは驚いた表情で、じっと聞き入っていた。



数分の演奏が終わった。


僕は、涙を流しながら…勢いよく拍手をした。

2人も同じく、大きな拍手を送った。


「とても素晴らしかったです…感動しました…ありがとうございました…!」


「いや確かに、素晴らしかった…」

「リューイの音とは、また全然違うな…」



男性は、とても嬉しそうに微笑みながら言った。


「こちらこそ…そんなに褒めてくださって、ありがとうございます」


彼はゆっくり立ち上がると…僕に右手を差し出した。

僕はその手を、両手で強く握った。



「折角だから、それ…もらっていけばいいのに…」

リカルドが言った。


僕は大きく首を横に振った。


「ううん…僕にはもったいないよ…とてもとても、こんな風には弾けないもの」



そして僕はまた、その男性に向かって言った。


「またいつかの交流のときに…聞かせてください」

「わたしなんかで良ければ、喜んで」


彼はニッコリと微笑みながら答えた。



何度もお礼を言って…僕らは、その店を後にした。


歩きながらカイトが、しみじみと言った。


「リューイが弾いてるあれと、形は似てるけど…まさか、あんな風に擦って、あんなに良い音が出るとはな…」

「…」


「楽器…って言ったよな…?」

「…!…うん」


カイトの口から、楽器なんて言葉が出るなんて!


「…他にもあるのか?…その…もっと違う音が出る楽器ってのが…」


僕はビックリした…

カイトが…そんな風に、楽器の事を訊いてくるなんて…


「あるよ!…もっともっといっぱいある!」

「…そうなのか…」



彼は、それ以上は言わなかった。


それでも、僕の中のカイトが…何となく、じわじわと熱くなっているような気がした。



きっと、あの二胡の音色は…

間違いなく、カイトの心にも響いたんだろうな…




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