⁑ 初心者教習(1)
そんなわけで僕は…
教習機関と呼ばれる場所に連れて来られた。
さっきの体育館ほどの広さは無いが、似たような施設だった。
数人の若い男子が、先生らしい人に、まさに教えてもらっている光景が目に入った。
その様子を見守っている風の、いかにも指導者っぽい、割とガタイのいい人物に…カイトは声をかけた。
「あらーカイトにリューイ、ウチの子達を激励しに来てくれたの?」
「…」
何だこの人…
何で女言葉なのよ…
「そうだったらよかったんだけどね…実は…」
カイトは彼に、事情を説明した。
「ええーそうなの…リューイ、あたしの事も忘れちゃったのー?」
彼はそう言いながら、僕の腕に縋り付いてきた。
「…っ」
うーん…
何か別に、思い出さなくてもいいかな、この人は…
「彼は、この教習機関のリーダーのルイス」
「…すいません、よろしくお願いします…」
「ええー本当に?!」
「うん…とにかく、数値に問題は無いんだけど、全く力が使えなくなっちゃったんだよねー」
「…」
「だからさ、1から教えてやって貰えないかな…」
「リューイに1からって…変な感じだけど…」
僕は、そのルイスって人に向かって言った。
「すいません、リューイって人がどれほどだったのか分かりませんけど…今の僕は初心者なんです…」
「…そうなの…わかったわ…」
「じゃあ、よろしく頼むね、ルイス」
そう言い残して、カイトはそこを出ていった。
「ふうーん…そしたら、ホントに初歩からやりましょうか…」
「…はい、お願いします…」
ルイスは僕を、小さく区切られた部屋の1つに連れていった。
テーブルを挟んで、向かい合って椅子が2つ置いてあった。
彼はその1つに僕を座らせて…
自分も向かい側に座った。
「じゃあ…まずは自分の中のコアを意識する所から始めるわね…」
そう言って、彼がふっと手を上げると…
その部屋の灯りがスッと消えた。
「…」
「目を閉じて…」
「…」
「コアは…見た?」
「…あ、はい」
「コアを、頭の中に思い浮かべられる?」
「…はい…」
僕は、あの水晶玉を…一生懸命に思い出した。
「思い浮かべた?」
「…はい…一応…」
「もっと、強く…ずーっとそれを頭の中に思い続けてみて…」
「…」
言われるがまま…
僕は必死に、水晶玉を思い浮かべ続けた。
「…なるほど」
ふと、納得したように、ルイスが呟いた。
「とりあえず今日は、ひたすらずっと、それを続けててくれる?」
「えっ…」
そして彼は立ち上がって、ドアに向かった。
「2時間後にまた見に来るから、それまで頑張って続けてみて」
そう言ってルイスは、バタンと部屋を出ていった。
2時間も〜?
心の中で叫びながら…
僕は致し方なく…彼に言われた通り…
目を閉じて、また…あの水晶玉を思い浮かべ続けた。
部屋を出たルイスは、
フォーンでカイトに連絡をとった。
「…どんな感じ?」
「重症だわ…これっぽっちもオーラが出ないわ…」
「そうか…」
「タウンにいる子だって、ちょっとは光るのに…」
「…何とか…してもらえないか…」
「まあ、気長にやってみるわー」
それを聞いたカイトは、深い溜息をついた。
そしてそれを振り払うかのように、
激しい訓練に集中した。
「はい…よく頑張りましたー」
2時間後に、ルイスが再び部屋に入ってきた。
水晶玉を思い浮かべながら…
睡魔と闘っている感じで、若干ボーッとしていた僕に向かって、彼は言った。
「最後に、もう一度だけ、全力で集中して思い浮かべみてくれる?」
「…はい」
そして僕は、ものすごーく集中して…
またあの水晶玉を、頭に思い描いた。
あまりに何度も思い浮かべていたので、
目を閉じたときの暗闇に、その映像がポワーンと浮かび上がってくる感じがした。
「…ふむ」
ルイスは、少し笑って頷くと…
僕の肩をポンと叩いた。
「はい、お終い。お疲れ様…今日はこれくらいにしときましょう」
「…え、他に何か教えてもらえないんですか?」
「まずは、自分の中のコアパワーを感じる事が出来ないと、何にも先に進めないのよ」
「…」
「明日も同じ事するからね…」
「えっ…」
それはそれで…キツいなー
「普段、何もしてない時でも、なるべくコアを頭に思い浮かべる習慣をつけてね」
「…はい…」
僕は致し方なく、返事をしながら、ルイスに向かって頭を下げた。
「見学していく?」
「あ…はい」
そして僕は、ルイスの後をついて、その施設の中を見て回った。
同じような小部屋で、瞑想している者…
小部屋で、数人で何やら手を翳して、物を動かす練習をしている者…
そして広い場所では、まさに的に向かって光を放つっていうやつを、教えてもらってる風のグループもあった。
「あっ…リューイさんだ…」
その中のひとりが、僕を見つけて叫んだ。
「あっホントだ…」
「リューイさん…」
「何でこんな所にいるんだろう…」
その中には、昨日ヴィンセントの店で会った、ウィルと呼ばれた男の子もいた。
あーあー
また…芸能人を見る目だよー
僕は、気付かないフリをして…
小走りでルイスの後を追った。
今となっては…ウィル、
君の方が、よっぽど僕より凄いと思うよ…




