⁑楽しい交流(2)
それから、僕とフリッツは…中国人の2人から、金属についての説明を受けた。
彼らは、タングステンという金属を提案してきた。
僕は全然聞いた事が無かった。
「漠然と、金がいちばん硬いのかなーって思ってましたけど…」
「いや、金はね…安定はしてるが、残念ながら硬さを求める物質ではないんだよね」
「そうなんですね…」
「ウチの外壁はタングステンあるよ」
「ホントですか!」
「その周りを、金で飾ってるあるよ」
「そうなんですか…」
あの外壁の金色は…本物の金だったのか…
「その…タングステンってやつの、作り方を教えて頂きたいんですが…」
フリッツが身を乗り出して言った。
「安心してください、今回そのタングステンを含めた、何種類かの金属の製造に必要なコアも…既にそちらに送られてる手筈となっております」
「本当ですか…ありがとうございます」
「取り出す方法を教えるあるよ」
「よろしくお願いします」
フリッツは…その、妙にマンガに出てくる中国人みたいな喋り方をする人物を、宇宙船の中のような機械の前に連れていった。
それから先の、その3人の会話の内容は…あまりにも専門的過ぎて、残念ながら僕には全く理解不能だった…
「フリッツさんって…すごいですね」
僕は、すごすごと彼らの側を離れると…ウィルフリードに囁いた。
「彼は専門チームのリーダーだ」
「そうなんですね!」
「コアの色々な力を…それぞれ必要な所に振り分ける事に関するスペシャリストだ」
「へええー!」
まだまだ僕の知らない、色んな能力を持った人がいるんだな…
「なるほど、分かりました…ありがとうございました」
「どういたしましてあるよ」
どうやらフリッツは、しっかり理解したらしい。
それからその中国人は、大袈裟に身振り手振りをつけながら続けた。
「このステーションは、ちょっと地味あるよ…」
そう言って彼は…フリッツの肩をグイッと引き寄せながら、僕の方を見て、ニヤッと笑った。
「せっかくこんなに美人がいっぱいいるのに…勿体ないある」
「…」
「…っ」
何だこの人…ヤバい人か???
「あ、ありがとうございます…その件についても、前向きに検討します…」
フリッツは、苦笑いしながら…失礼のないように、そっと彼の手を振り解いた。
ガタンガタンと…鈍い音が響いていた。
まだコアの交換が続いているらしかった。
「守備力が、著しく進化したようだな」
ウェイが、ウィルフリードにそう言った。
「どうぞ、存分に活かしてください」
ウィルフリードが、少しドヤ顔で答えているのを見て…僕はクスッと笑った。
「あとは、また色々と…コア以外のものも、ゆっくり交流させて頂きたいと思います」
「よろしくお願いするよ…ウチの皆も、今日の交流をとても楽しみにしていたからな」
…と、エレベーターから、戦闘部隊ではない人たちが、チラホラと最上階に降りてきた。
「リューイ、持ち場に戻ってくれ」
「あ、はい…」
ウィルフリードに言われて…僕は元の持ち場へ戻った。
結局…何もお役に立たなかった気がするなー
カイトが僕に言った。
「終わったか?」
「うん」
「あとは、一般のレイス達がステーションを行き来する際のチェックをするのが、俺たちの仕事だ」
「…わ、わかった…どうすればいいの?」
カイトは、小さい機械を僕に渡しながら続けた。
「出て行く人に、これを…翳してくれ」
「…翳すだけ?」
「ああ…戻るときにも翳す」
「…なるほど」
「それで…誰が向こうに行っているか…戻ってきたか…ウィルフリードの部屋に集計されるようになってる」
「…へええー」
色々と、便利機能があるもんだなー
「向こうから来る人のチェックは、俺とヒューがするから、こっちはお前とルイスで頼んだぞ」
「わかった」
ほどなく、エレベーターから降りて待っていた人たちが…ワラワラとこっちへ向かってやってきた。
彼らは行儀良く…並んで機械を翳されるのを待ち…翳された順に、向こうのステーションへと進んでいった。
「いってらっしゃい」
ルイスが、ニッコリ笑いながら、彼らに声をかけていた。
何か…
どっかの夢の国みたいな光景だった。
まるでテーマパークに行くように、他所のステーションに遊びに行けるなんて…想像して無かった。
きっと…例の桜のステーションとも…こんな風に、平和に交流してたんだろうなあ…
そして同じように、向こうのステーションからも、お客さんがチラホラとやってきた。
カイトとヒューに手を翳され…彼はは僕らにも会釈しながら、エレベーターの方へと進んでいった。
皆…割と派手な格好だった…
しばらくすると、ヨハンとヴィンセントがやってきた。
「お疲れ様です!」
ヴィンセントは、笑顔で言った。
「紹興酒、いっぱい仕入れたきてくださいね!」
僕は、彼に機械を翳しながら、力強く言った。
「はい、もちろんです…他にも、リューイさんやカイトさんが好きそうなもの、いっぱい探してきますね」
「よろしくお願いします、いってらっしゃい」
僕も思わず、笑顔で手を振ってしまった…
カイトとヒューは…もうちょっと愛想良くしてもいいのにって思うくらいに、無表情だった。
あの2人は、間違いなく接客業には向かないな…
密かにそう思いながら…僕はクスッと笑った。
リカルドもやってきた。
「もうちょっとしたら、交代するんだろ?」
「はい…そうみたいです」
「そしたら、俺を目掛けて飛んできて。それまでに下見しといてやるからさー」
「ホントですか」
「しっかりガイドしてやるよ、それまで仕事頑張って」
「分かりました、楽しみにしてます!」
「じゃ、後でねー」
「いってらっしゃい!!」
僕はまた…夢の国のキャストのように…
大きく手を振って、笑顔でリカルドを見送った。




