⁑楽しい交流(1)
翌朝、いつものように体育館に集まった僕らは…ヴィルフリードの訓示を聞いてから…エレベーターで最上階に向かった。
「交流の警備なんて、何百時間ぶりだから…ドキドキしちゃうね」
ルイスがヒューに言った。
「そうだな…」
ヒューは、ボソッと答えた。
そうなのだ…今回は、彼らも出動してくれているのだ。
いつもの、コア同士の交流だけでなく…長い時間をかけて、お互いの文化や品物の交流も行うのだそうだ。
たぶん…紹興酒とかね
始めは…僕とカイト…ルイスとヒューの4人が外の警備を担当するが…後で、レオやジョシュア達と、交代する事になっていた。
「誰でも自由に、行き来出来るんですか?」
僕はウィルフリードに訊いた。
「もちろん出入りの審査とチェックはあるが…今回は基本誰でも行ける」
「交流先によって違うんですか?」
「それもあるし…交流時間にもよるな…今回は、50時間を予定している」
「…」
えーと…丸々2日間くらいか…
「リューイも、交代したら行って来ればいい」
「はい!…是非、そうします!」
そして僕らは最上階についた。
いつものように、専門チームの面々が…モニターの前に陣取っていた。
リカルドは居なかった。
彼の出動が必要ないって事は…邪魔が入る可能性が、ほぼ無いって事だよな…
僕は少しホッとしながら…風が吹き込む外を見つめた。
外を見るのは、あの日以来だった。
「大丈夫か、リューイ」
僕が、深妙な表情で外を見つめているのを見て…カイトが心配して僕の肩を叩いた。
「…大丈夫だよ、だって…今日は安全なんでしょ」
「ああ…たぶんね」
「違うステーションに行くの…すごく楽しみだよ」
「そうか…」
微笑んだ僕を見て…
カイトもホッとした様子で、僕の頭を撫でた。
「見えてきた」
「…」
モニターの隅っこに…別のステーションの画像が、小さく写り込んでいるのが確認できた。
「配置につくぞ」
「はい」
カイトの号令の元…僕ら4人は、外に向かった。
やがて、肉眼でも確認できるくらいに、相手のステーションが近付いてきた。
生温い風に吹かれながら…僕は、目を凝らしてそれを見つめた。
赤茶色っぽい点だったそれは…近付くにつれて詳細が判別出来るようになると…何というか、赤とか茶色とか金色とか…とにかく派手なイメージの外壁をしていた。
やっぱ、めっちゃ中国だよなー
心の中で思いながら…僕は少しワクワクしていた。
やがて…そのド派手な外壁が…轟音と共に大きく接近して…止まった。
そして隣接する外壁の一部が静かに開くと、いつものようにそこへ向かって、長い歩道が迫り出していった。
繋がった…
向こうのステーションから、10人くらいの団体が、こちらに向かって歩いてきた。
また、皆…何とも派手な服装だった…
カイトは彼らに会釈すると、そっと手を翳した。
問題無く…彼ら団体様は、ウィルフリードの元に近寄っていった。
「やあ、ウェイ…調子はどうですか?」
「久しぶりだね、ウィルフリード…おかげさまで、ウチは平穏無事が続いているよ」
2人の首脳陣は、親しげに握手を交わした。
ウェイと呼ばれた人物は…ウィルフリードよりは幾分年上の様相をした…まあ言ったら…まさにお金持ちの偉い中国人って感じだった。
「無理を言ってすいませんでした」
「いやいや…お宅には、いつも世話になってるからね…今日は、金属に詳しいメンバーを連れてきたよ」
「感謝します!」
そっか…元はと言えば、うちのコアの外壁強化のための交流なんだもんな…
言い出しっぺのくせに、うっかり忘れるところだった。
それからは、いつもの交流同様、専門チームの操作の元、ガタンゴトンという大きな音が響き…互いのコアが交換されていった。
そのうちに、ウェイに連れられた団体の中の数人が、ウチの専門チームの中の1人と、熱心に話を始めた。
「リューイ、ちょっとこっちに来れるか?」
ウィルフリードが、僕を呼んだ。
「あ、はい…」
カイトと目配せをして…僕は、彼の方に近寄っていった。
「例の…金属の話だ、お前も一緒に聞いておいてくれないか?」
「…は、はい…」
いや、言い出しっぺではありますけどね
そんな専門的な事は分かんないよー
思いながらも…僕は会釈をしながら、その話の輪に入っていった。
ウィルフリードが、彼らに僕を紹介した。
「ウチの戦闘部隊のNo.2です」
ええええーっ!?
「おお、よろしくお願いします」
「小さいのに頼もしいあるね」
「…よ、よろしくお願いします…」
僕は恐縮しながら、彼らと握手を交わした。
「あと…フリッツも、初めてか?」
ウィルフリードは、そこにいた、専門チームの人物を見ながら言った。
初めて見る人物だった。
いや、もしかしたら、前回の合流のときに、場を一緒にした事はあったのだろうと思うが…
「…はい…」
「僕の事…覚えてないの?」
その、フリッツと呼ばれた細身で赤い髪の人物は、意外そうな表情で言った。
「すいません…」
「こないだ、あんなに最前線で戦ってたから…てっきり思い出したもんだと思ってた…」
「…」
「リューイに記憶がないってのは、本当だったんだね…」
「…」
そういえば…
その手の台詞を聞くのは、久しぶりな気がするな…




