⁑ 訓練に参加する(2)
結局僕は、その体育館の隅っこで…
座り込んで、皆の訓練の様子を見ている事になった。
さっきのカイトのように、手から光を出す者…
そこにあるボールに手を翳して…それを触る事なく動かしている者…
両手の間にパワーを貯めて…
「何とか波」のように、それをすっ飛ばす者…
いやもうー信じられない!
ホントに漫画の世界だわ…ここ…
目の前に繰り広げられる、あまりのあり得ない光景の数々に、僕は我が目を疑い続けていた。
そうこうしているうちに…
突然、どこからともなく僕のすぐ横に、流れ弾がすっ飛んできた。
ドカンッ!
「うわあぁっ…」
僕は思わず、頭を抱えて震え上がった。
「…すいません、リューイさん…大丈夫ですか?」
「…」
震え慄く僕の様子を見て…
また皆がざわついた。
「あのリューイさんが、あんな緩い弾を避けられないなんて…」
「…ホントに記憶ないのかな…」
「まさかね…」
「…」
僕はそのまま、頭を抱えて震えていた。
駆け寄ってきたカイトが、僕の隣にしゃがみ込んだ。
「大丈夫か?」
「…怖い…」
「…」
僕は泣きそうになりながら言った。
「…すいません…やっぱり僕にはムリです…」
「…」
カイトは黙って、僕の肩を抱いて僕を立たせた。
そして、周りの皆に言った。
「いったんエルンに診せてくる…パワーの数値も調べてもらおう」
そして僕は、カイトに連れられて体育館を出た。
「まさか、リューイさんが、あんなになっちゃうなんてね…」
「以前の果敢さのカケラも無いじゃん…」
「全然パワー無かったよね…」
「カイトさん、可哀想…」
残った戦闘メンバー達が、そんな風に言い合っている声が、微かに耳に入ってきた。
「…本当にすいません、ごめんなさい…」
歩いている間中、僕は半泣きで…ずっとカイトに謝り続けていた。
「…仕方ないさ…まだ本調子じゃ無かったんだろう」
調子が良かろうが、悪かろうが…
少なくとも今の僕の…このリューイの身体には、そんなパワーがこれっぽっちも、ある気がしなかった。
そして僕らは、医療センターの中の、エルンの部屋に入った。
「訓練どうだった?」
「全然ダメだ…パワーの数値を調べてくれないか?」
「わかった…」
言いながらエルンは、また僕の腕に機械をつけた。
「うーん…基本的な数値は問題無いな…以前のリューイと変わらないよ…第一、それが皆無だったら、部屋の扉だって開けられない筈だろう?」
「…でも、全然出せなかったんだ」
「そうか…何が原因なんだろうなー」
カイトは、僕の目を見て言った。
「ある筈なんだよ、お前には…パワーが!」
「…」
そう言われても…全く自覚ないんです。
「自分でパワーをコントロールする方法を、きっと忘れちゃったんだろうなー」
エルンが言った。
「どうすれば思い出す?」
「うーん…とりあえず、いったん教習機関に行ってみるか」
エルンは、僕に向かって言った。
「戦闘部隊の…メンバーになるための勉強や訓練をしている機関があるんだけど、そこに行ってみる?」
「…」
正直言って、そんな力…使えるようになんか、ならなくてよかった。
戦闘部隊なんて、やりたくなかった。
あんな…ワケの分からない怖い訓練なんて、
むしろ僕は、もう行きたくなかった。
「その…力ってのを、どうしても…使えるようにならないとダメなんですか…?」
僕は、エルンに訊いた。
彼は少し考えてから、言った。
「いやまあ…お前はリューイだからね。当たり前に誰もが、お前にそれを期待してしまうけどな…世間一般的には、決してそんな事はないよ」
「…」
考えた末に…結局僕は答えた。
「…とりあえず、行ってみます…」
戦闘部隊をやりたくない…と言ったところで「その代わりに僕これやります」的な事を言えるわけもなかったのだ。
今の僕は、とにかくこの世界のことを知らな過ぎた。
カイトは、とても納得出来ない表情をしていたが…
「わかった…じゃあ、行ってみよう」
そう言って、僕を連れて再び、医療センターを出た。
並んで廊下を歩きながら…
カイトが小さい声で言った。
「お前…本当に何にも覚えてないんだな…」
「…はい」
僕は、彼に向かって続けた。
「信じてもらえないかもしれませんけど…僕は、リューイとは違う人間でした。ここじゃない、地球っていう星にいました…」
「…」
カイトは、目を丸くして僕を見た。
「事故で、たぶん…あっちの僕は、死んじゃったんだと思うんです。気がついたら、この、リューイの身体に…なっていたんです…」
そして僕は、強い口調で…
キョトンとしたカイトに、訴えるように言った。
「僕は…リューイじゃなくて、氷威なんです!」
「…」
突拍子もない事を言われて…
カイトの方も、思考の整理がつかないように見えた。
「…えーと…」
色々と考えた挙句に、静かに彼は言った。
「お前の言う事が本当なのか…それとも記憶が混乱してるだけなのか…残念ながら俺には判断つかないが…」
カイトは立ち止まって、僕の両肩に手を置いた。
「お前の身体が、リューイだって事は、紛れもない現実だ…お前の頭が、例えそれを認識出来ていないとしてもだ…」
そして彼は…下を向いて…
その手で、僕の両手を握りしめた。
「それでもお前は…俺の…リューイだ…」
「…」
その…寂しそうな、切なそうな言葉を聞いて…
僕は本当に、たまらない気持ちになった。
リューイ…
カイトがこんなにお前の事想ってんのに…
お前はホントに、何処いっちゃったんだよ…
僕はどうしたらいいんだよーーっ




