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⁑ これが噂に聞く転生ってやつなのか?

気が付くと…そこは白い空間だった。



…ここは何処だ?


漫画に出てくるような台詞が浮かんだ。


そんなシチュエーション…本当にあるんだな…


不思議と冷静に、そんな事を考えながら…

僕は必死に、状況を探りながら記憶を辿った。



口には酸素吸入器らしきものがつけられていた。


…病院か?


まあ、普通に考えて…

「ここは何処だ」なんて思う場所は、

大概、病院くらいだろうな。


何で病院にいるんだっけ…



僕は目を閉じた…


身体中が、何とも言えずに重くて怠かった。

手を動かしたいと思っても、儘ならないくらい。


うーん…

僕は…一体どうしちゃったんだっけ…



そういえば…


有り得ないような景色が…僕の頭に蘇ってきた。


…空を…飛んだ?



僕は、結構な高さから…

街の景色を見下ろしたような気がする。

街灯やネオンが、とても綺麗だったのを覚えていた。


それは、ほんの一瞬だったのかもしれないが…


たぶんそれを最後に、意識が無くなったんだろうな。



過去に、迷走神経反射を起こして

失神した事が、何度かあった。


その時もそんな感じで、

ある時突然に、記憶が無くなって…

気がついたらとき、ホントに「ここは何処?」ってなったからなー

たぶん今回も、そうなんだろう…



でも…空を飛んだ景色が見えたって事は…

どうしちゃったのかな…

どっかから落ちたのか…吹き飛ばされたか…



考えているうちに…

僕はだんだん疲れてきてしまった。

そしてまた…そのまま眠ってしまった。




「…だな」

「…どうしよう…」

「とりあえず、意識が戻ってくれれば…」


誰かの話し声を聞いて…僕はまた、目を覚ました。


ゆっくり目を開けた僕の視界に、

2人の知らない人物が映った。


「リューイ!」

「気が付いた!!」


「…」


「リューイ…分かるか?」


「…」


えーと…

はっ?


「リューイ!!」

「…落ち着けカイト…まだ触るな」


2人のうち、白い服を着た人物の方が…

僕に被り寄ろうとしたもうひとりを制して、

僕の片手に、何やら機械を巻き付けた。



「…うーん…まだまだ正常値には程遠いが…とりあえず意識が戻ってよかった」


彼は、機械から目を上げると、僕の顔を覗き込んだ。


「リューイ…俺らが分かるか?」


「…」


わかりません。


僕は黙って…小さく首を横に振った。


「リューイ!!」

もうひとりの方が、怒ったような表情で…

叫ぶように言った。



だから…その…

リューイってのが、わかりません…



「…記憶が混乱してるのかな…」


僕はまた、必死に記憶を辿った。


いや…そんなに必死にならなくても、

流石に自分の名前くらいは覚えていた。



氷威…

ひょうい…っていうのが、僕の名前。


まあ…「い」は似てるっちゃ似てるけど…



白い服の人物が、静かに…ハッキリと言った。


「戦闘の事は…覚えてる?」

「…??」


銭湯ですか?


「…」


僕はまた、小さく首を横に振った。


「俺が分かるか?…分かるよな、リューイ!!」 


もうひとりの人物は、

さっきから、怒ったようになったり、

泣きそうになったりしていた。


余程、心配してくれている様子は伝わったが…

いかんせん…僕の知らない人だったのだ。



僕は…ゆっくりと…小さく首を横に振った。


「…っ」


「やっぱり…記憶が混乱してるらしい…」


白い服の人物は、

何やら注射を、僕の腕に打った。


服装の感じからしても、立ち振る舞いからしても…

恐らくこの人は、お医者さんなんだろうな。



「もうしばらく様子を見るしかないな…」


ふと見ると…

もうひとりの人物は、僕の顔を見つめながら、

ポロポロと涙を零していた。


「…」


僕はそれを見て…居た堪れない気持ちになったが…


やっぱり、いかんせん…知らない人だったのだ。

どうしてあげる事も出来なかった。



白い服の人物が、ゆっくりと語り始めた。


「リューイ…お前は覚えてないのかもしれないけど…今回は、今までに無く厳しい戦いだった」


はあ…



「お前は、カイトを庇って、敵の攻撃をマトモに食らってしまったんだ」


…何の話ですかねー



「普通なら即死してもおかしくない状況だった…でも、お前は元々の能力レベルが高いからね…それが幸いした」


ほおー



「反射的に、無意識のうちに…自己防衛機能が発動されたんだろうな…」


もう…何がなんだか…

サッパリ分かんないんですけど…



「お前にもしもの事があったら…俺は…」


さっきから泣き崩れていたもうひとりが…

両手で顔を覆った。


白い服の人物が、彼の肩に手を置いた。


「大丈夫…意識が戻ったって事は、とりあえず生命の危機は回避した…」



僕は、そんな2人の様子を見て…

何とも言えない気持ちになった。



僕は…たぶん…違うんだけどなー



はあーっと、小さく溜息をついて…

僕はまた、目を閉じた。



そして…ふと、

ある考えが、僕の頭に浮かんだわけだ。



もしかして…

これが噂に聞く「転生」ってやつなんですかねー?




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