【エンゲージリング】
大門屋敷でお昼を食べ、商業ギルドにやって来た。そして商業ギルドの事務員立ち会いのもと、ショーツとブラトップの特許申請を行う。
コールが言った通り、既に商業ギルドは〈特許〉を条文化しており〈透けるように細い糸とゴムを使った股間からお尻に張り付くような下着〉と〈程良い弾力のカップで胸の動きを抑える下着〉の2つの特許はスンナリと認められた。
続いて、トマスとはショーツとブラトップの販売に関する魔法契約を行った。
驚いたのは、昨日アムガルド商会のじいさんと商談をしていたせいか商業ギルドの応対が非常に良かったことだ。言葉遣いもやたらに丁寧だし、トマスは最後まで吃驚困り顔だった。
契約を終わらせトマスに初回分の商品をクランハウスの倉庫に置いていると告げるとさっそく馬車を手配して取りに来るという。
「なんならクランハウスに使っていない荷馬車があるから使っていいよ。ただ、馬は貸し出せないけど。」
トマス「じゃあ馬を借りてきます。それでも馬車の分は安くなりますから。」
「儲けたら馬を飼うといい。荷馬車はそのまま貸し出しておくから。」
トマス「本当ですか!ならいっそ先行投資して・・・」
そう言い残してトマスが足早に去って行った。
「さて、クランハウスに戻った後、俺はもう一度大門屋敷に行きたいんだけど?」
結局、再び全員で大門屋敷に来ている。
フジナとアカネはアデラの葉の成分抽出を再開し、サクラは出来上がった畑に手を入れている。
ナナイとボタンはデザートを作るそうだ。
俺はツバキとシユナ、エリザと錬金部屋にいた。
「エリザ。見てて楽しいか?」
エリザ「ああ、面白いの。ところでこれは何じゃ?」
「通信の魔道具だ。大門が作ったのがあったんだが、珍しく機能に満足しなかったようなんだ。」
ツバキ「思い出しました。魔導石を使ったので魔力に問題は無いのに上手く通話できないと言ってたと思います。」
「その辺も錬金台帳に書いてあったよ。で、俺なりに考えて出した答えが【通信】の付与だ。」
この世界の通信の魔道具は迷宮で採れる〈反響石〉なるものを使っている。この石は魔力で紐付けした石同士が反響し合う。この性質を使って通話を行うが、通話距離が伸びると魔力がとんでもなく必要になるのが欠点だった。
そこで、大門は魔導石を一緒に錬金することで魔力を補ったが、逆にノイズが強くなり上手く通話できなくなったと錬金台帳に書いていた。
大門の走り書きを見て、俺は反響石に【通信】を付与し魔導石と一対にしてみた。ついでにFMアクリを某○イフォンの形に成形しその中に埋め込んだ。
「どれ、2つ出来たからやってみるか。エリザ、これを持って2階に上がって何か話してみてくれ。」
エリザ「おお、どれどれ。」
パタパタパタとエリザが駆けていった。
エリザ《聞こえるか?シグレ!どうじゃ?》
《聞こえる。聞こえるよ!エリザ悪いけどそのままパーティーボックスに入って話してくれないか?》
エリザ《おう、待っておれ!》
エリザ《シグレ!どうじゃ?》
《聞こえる!良いぞ!エリザ、ありがとう。戻ってきて良いぞ!》
使えることが解って、アクリルに白く色を付けた物と無色の物、合わせて6個のアクリルフォン・・・〈アクリフォン〉を作った。
シユナ「どうして6個なんですか?」
「クランの各パーティーに1個で合計4個。クランハウスに1個。無色の奴は予備だ。」
ボタン「スイーツが出来たよ!」
ボタンの声が聞こえる。
「良し。スイーツを食べようか!」
「なんと・・・随分作ったね?」
サクラ「これ全部2人で作ったの?」
ボタン「ふふ、凄いでしょ!」
ダイニングテーブル一杯とは言わないが、かなりの数のスイーツが並べられていた。
ナナイ「さあ、好きなのを食べて!」
もの凄い勢いでなくなっていくスイーツを見ながら俺は珈琲を飲んでいる。
「うーーん、素晴らしい!」
アカネ「何がですか?」
「えっ?そうだ、食べ終わったらみんなに話があるんだ。」
「「「「「「「「はい!はーい!」」」」」」」」
スイーツが見る間になくなってしまった。
ナナイ「シグレくん、後片付けも終わったよ。」
「そう。じゃあみんな椅子に座って。」
サクラ「どうしたんですか改まって?」
「うん。この間の話。俺はみんなをお嫁さんだと思ってるって話なんだけど、もう一度ハッキリ言っておこうと思ってさ。
サクラ。アカネ。ナナイ。ツバキ。ボタン。フジナ。シユナ。エリザ。
俺はみんなを俺のお嫁さん、奥さんにします。俺が死ぬまでこの世界で一緒に居て欲しい。・・・良いかな?」
ナナイ「みんな良いに決まってるじゃない!」
全員が涙を流していた。いや、エリザ以外だ。
「そうか。ありがとう。サクラ!」
サクラ「はい!」
「ここに来て。」
俺の前に来たサクラの左手を取って薬指にリングを付けた。
「全部のリングを転移出来るように改良して宝石を埋め込んだんだ。それと左手の薬指にするのは・・・その、俺の世界ではエンゲージリングって言って結婚すると指輪を贈ってこの指にするんだ。」
サクラ「・・・旦那様!」
サクラに抱きつかれた。まだ待ってるので優しく引き剥がしてキスをして席に戻した。
同じようにアカネ、ナナイ、ツバキ、ボタン、フジナ、シユナ、エリザと指輪を付けていく。
「最後に、サクラこの指輪を代表して俺に付けてくれないか?」
サクラ「はい!」
サクラが俺のところに来て俺の左手にマスターリングをはめた。
「これで俺達は夫婦だ。」
「「「「「「「「ふぁい・・・」」」」」」」」
「サクラ。もう一つ協力してくれないか?」
サクラ「もちろんです。何でも言ってください。」
サクラを招き寄せ肩に手を乗せサクラの目をジッと見た。
サクラ「旦那様?・・・」
「サクラ。今から奴隷契約を解除する。」
「「「「「「えっ!」」」」」」」
「俺達は指輪を交換して夫婦として繋がった。だからパーティースキルは解除されないと思うんだ。サクラ良いかな?」
サクラ「はい!」
奴隷契約の解除を唱え、親指の血をサクラの奴隷紋に押しつけた。
「やっぱり!」
ステータスは何も変わっていなかった。
サクラ「大丈夫です!変わってません、旦那様!」
再びサクラに抱きつかれた。もう一度キスをしてサクラを席に戻す。
「良し!アカネ!」
アカネ「はい!」
それから順番にシユナまで奴隷契約を解除していった。
ナナイ「でもどうして?奴隷にならないとパーティーに入れなかったのに?」
「スキル【パーティー】は奴隷を前提にしてるのかずっと考えてたんだけど、エリザがパーティーに加わったとき確信したんだ。奴隷は前提じゃないってね。
スキルの【パーティー】が要求してたのは心の繋がりの深さなんだと思うんだ。奴隷契約は気持ちの迷いを無くす効果があったんだと思う。」
アカネ「でも、これで心からみんなひとつに、旦那様と夫婦になれたってことですね。」
「そうだね。でも外では旦那様呼びは・・・それとエリザは妹な!」
エリザ「まったく締まらん奴じゃ!そもそも妹なら同じ指に指輪をしてたらおかしいじゃろうが!」
「そこは、1人だけ別は可哀想だからで良いんだよ!」
「「「「「「ふふふ・・・」」」」」」
再びクランハウスに戻るとエルネスからトマスが商品を取りに来たと伝えられた。
そしてお客様だと言われリビングを見るとエイステンとリーズ、ティナの母親のクリスティーがティナ達と珈琲を飲んでいた。
「あれ侯爵、奥様も、ティナの母上クリスティーさんも来てたんですか?
そう言えばご挨拶がまだでした。ヒイラギのシグレです。」
クリスティー「こちらこそ、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。ティナの母のクリスティーです。娘、ティナがお世話になりました。」
「特別なことはしてませんよ。お気遣い無く。」
エイステン「シグレくん、今回は本当に色々世話になったね。」
リーズ「本当にお世話になりました。珈琲なんて事業も提案して貰って。私からもお礼を言わせてください。
それにあの下着・・・あんな素敵な物までいただいてしまって。」
「あの下着は嫁達の為に考えたことですから。」
リーズ「嫁達?」
リーズが鋭く反応してしまった。そこにフジナがスッと出てきて左手を翳した。
リーズ「なに?どういう事?ルシ・・フジナ!」
フジナ「ふふ、向こうでゆっくりお話ししましょうか。リーズ様。」
リーズ「だから様は止めなさいって言ってるでしょ!エイス、ちょっと失礼します。」
ティナ「あ、リーズおばさま、私も!」
リーズとクリスティーそしてティナ達が席を立ち、うちの嫁達と他のソファで車座になってしまった。
うん。女子会だ。
エイステン「はは、いいね女達は。シグレくん報告が来たよ。ライナーは朝早く野営地を発って昼には王都に無事入ったそうだ。」
「そうですか。賢明な判断だと思います。」
エイステン「僕もそう思う。無駄に血を流す必要は無いからね。
君からポール殿に提案したとおり、ブルーポピも偽装してデランドのお土産として運んだけど何事もなくて良かったよ。」
リーズ「あっ?奴隷紋が消えてる!いつから?」
リーズの声にエイステンが反応を示す。
エイステン「いつ?」
「・・・今日、さっき出かけたとき。あー、ヘンウッド侯爵もちゃんと気づきましたね。」
エイステン「はは、デランドからの贈り物は面倒くさい物が多いんだ。あの時一番面倒くさい物って言えば1つしか無いからね。」
「リンデン公爵の動向はわかりませんか?」
エイステン「あれ、君の方も解らないのかい?」
「追跡を止めました。いつまでもやってられませんよ。」
エイステン「そりゃそうだ。ところでこの後はどうするんだい?」
ティナ「あ、石の色がそれぞれ違うんですね!素敵!」
エイステン「へー、違うんだ?」
「まあ、それぞれのイメージで・・・うぉっほん!
1度サラケスに戻って百層宮をもう少し攻略したらまた戻ってきます。あまり時間は掛けないで戻るつもりです。なにせクランハウスをいただいちゃったんで。」
エイステン「うん!それは良い!待ってるよ。」
ロレン「侯爵様!」
ガエン「侯爵様!おい、ちゃんと挨拶しろ!」
「「「いらっしゃいませ。」」」
ゴツイ3人が綺麗に45度腰を折ってるよ。
エイステン「はは、此処にいるときは気にしないでくれ。」
ハノーク「そう言う訳にいきません!」
エイステン「はは、まあ気楽に。ロレンくんも世話になったね。」
ロレン「こちらこそ。良い経験をさせて貰いました。」
「「「「「「「キャーー!」」」」」」」
エイステン・ロレン「な、なんだ?」
いつの間にかカタリナやファビアナ達も加わって女達は大盛り上がりしていた。
リーズ「へー左手の薬指ね・・・」
リーズが呟きながらゆっくり視線をエイステンに向けた。
「ふーん!」とカタリナ達レナスの疾風の女達も振り向く。
エイステン「あれ?なんか背筋がゾクッとしたんだけど。」
ロレン「侯爵様もですか?俺もです・・・」
不穏な空気を感じ取った侯爵が『気をつけて帰ってくれ!』と言い残しリーズとクリスティーを連れ帰る。
ナナイ達がエルネスと夕飯の準備を始めたので赤い連檄とレナスの疾風、紫蘭玉樹とロブランをリビングに集めた。
ファビアナ「何だ?シグレ?」
「明日俺達はサラケスに戻る。俺は百層宮を20階層まで潜ったらもう一度戻ってくるつもりだが、いつ予定が変わるか解らない。まあ、あんまり予定通り行ったこともないんだけど。」
アニス「まあ、そう言うものよね。」
「そこで、これを渡しておく。」
収納から白色のアクリフォンを出して、赤い連檄、レナスの疾風、紫蘭玉樹、ロブランに渡した。
ロレン「これは?」
「俺が作った通信の魔道具だ。呼びにくいんで〈アクリフォン〉って呼んでくれ。
使い方は後ろを見てくれ、番号が書いてるだろ?ロブランが0、此処クランハウスだ。あとは、俺が1、ロレンが2、ファビアナが3、ティナが4だ。
魔力を意識して握りながら話したい相手の番号をイメージしてくれ。例えばこうして〈3〉・・・《ファビアナ!》」
ファビアナ「おっ!・・・」
「そのままこうやって耳に当てて話せば良い。」
ファビアナ「・・・《聞こえるか?》」
《聞こえる。》
「番号は口で言わなくても頭で意識すれば大丈夫だ。それとこんな使い方も出来る。」
《《《《みんな聞こえるか?》》》》
ロレン《ああ、聞こえた。》
ティナ《凄いですね。》
「全部の番号をイメージすれば1度に全員と話せる。」
ロブラン「シグレ、お主錬金術師なのか?」
「そうだ。錬金が出来る。今更だがクラン内の秘密にしてくれ。」
ティナ「距離はどの位まで届くんですか?」
「正直解らない。ただこのアクリフォンには魔導石を仕込んである。――」
アニス「魔導石!」
「声が大きいよアニス。」
アニス「あ、ああごめん。ついつい。」
「魔導石が魔力を補助してるからどんなに使っても魔力の心配はない。おそらく距離も片方がミサロニア帝国にいても問題なく話せると思う。それとアクリフォンで点が赤く光ってないか?」
ロブラン「光っておるの。」
「光ってるのは小さな魔石灯だ。16個円状に埋めてある。通話や魔力が繋がったアクリフォンの方向の石が光る。クラン同士の位置を探すために付けてみた。」
ロブラン「なるほど。光ってる石に向かっていけば見付けられるわけか。考えたな。」
ファビアナ「またとんでもない物を作ったもんだな。」
「いいか?このアクリフォン、それとセルフボックスのリング。これはうちのクランだけの装備だ。無くしたり秘密は絶対漏らさないでくれ。」
ティナ「とんでもない物過ぎて恐くて言えませんよ。」
「うちはツバキに持たせておくつもりだ。パーティーごとの管理は任せる。」
「ロブラン。済まないが商売の商品をここに置かせて貰う。トマスから商品の要請があったらアクリフォンで連絡してくれ。」
ロブラン「構わん。エルネスにも言っておこう。」
「頼むよ。それとロブランとエルネスさんにこのリングを渡しておく。後で付けたらセルフボックスって言ってみてくれ。どんな物か解る。」
ロブラン「セルフボックス?・・・」
「それと、ファビアナ達は昨日うちの石鹸を使ってみなかったか?」
「「「「「「それーー!」」」」」
うぉ!女子全員の合唱だ!
「あれも俺が作ってる。此処の倉庫に置いていくから自由に使ってくれ。それとあの下着も後でツバキに必要な分を言ってくれ。もうすぐ店先に並ぶけどみんなから儲ける気は無いから。
そうだ男達にもあのボクサーパンツを置いていくよ。良かったら使ってくれ。」
カタリナ「流石シグレくん!大好き!」
ロレン「おいおい・・・」
ガエン「昨日のあのパンツか?あれは良い!助かる。」
「はは。それとファビアナ。此処のことは任せる。必要なら預けたお金を使ってくれ。ああ、お酒は月の初めに運営費で買って無くなったら自腹な。」
ファビアナ「まあ、妥当だな。でも良いのか?私に任せて?」
「問題ない。信用出来ない奴と組んだりしないよ。そうだ、ロブランとエルネスさんにひもじい思いはさせるなよ。」
ファビアナ「任された。」
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