【やっぱり宴会?】
「おいおい!どこの会員制サロンだよ?」
クランハウスに帰るとリビングが変貌を遂げていた。
穴の空いたソファは革や高級そうな生地に張り替えられ、よく見ると床材まで張り替えられている。
内装がブルックリン調?とでも言うのか、古きアメリカやロンドンの趣に大変身だ。
「こりゃ凄いな・・・」
サクラ「はい・・・別なところにきたのかと思いました。」
「もうあれだな、此処はリビングじゃ無くサロンだな。」
アカネ「サロン?ですか?」
「まあ高級なリビング、人が寛ぐ社交場かな。」
ティナ「只今戻りまし・・・えっ!」
「「「「「ただいま・・・・」」」」」
ティナ達の顎も外れたようだ。
リビングの端っこでロブランが腕組みをしている。
「やっぱりロブランは凄いね!・・って何か悩んでる?」
ロブラン「ああ、シグレ。お帰り。いやな、ここ!ここのレリーフが今一気に入らん!」
レリーフと言われ指さされたところを見ると、どうやら窓枠にほられた細工を指しているようだった。
「えーっと、俺には中々凝った造りで良いと思うけど、ロブランに任せるよ。」
ロブラン「そうか!ならやっぱり作り直す!」
「そう?うん。宜しく。」
職人恐るべしだ!
この後帰ってきたロレン達も顎を外し、あれから馬車に籠もっていたファビアナ達がクランハウスに顔を出したときも盛大に驚いていた。
そして、各々大変貌を遂げたリビングに腰を下ろし一息も二息も付いている。
「あっそうだ。だれか昨日立替たお金を使って食材とお酒なんかも買ってきてくれないか?申し訳ないんだが俺はこの後来客があるんだ。」
ファビアナ「なら、うちが行ってこよう。ずっと馬車の中で寝てたから体を動かしたい。」
アニス「寝てたのはファビアナだけでしょ?でも良いわ、行ってくるわよ。」
ツバキ「シグレ様。私も付いていって良いですか?収納があった方がたくさん運べますから。」
「「「「「あっ、私も!」」」」」
結局、男共を残しエルネスさんを含む女達全員が買い出しに行った。
これから商談が有るのでシユナを残そうと思ったが、エリザが行きたいと言い張ったのでついて行かせた。まあ後で決まったことを伝えれば良いだろ。
女達が出かけ、男達だけで新生リビングでツバキが淹れていってくれた珈琲を楽しんでいるとアンマリーがやって来た。
アンマリー「アラー!スッゴいわね!こんなクランハウス見たことないわよ!もうゾクゾクしちゃう!」
アンマリーが大声を上げて入ってくると、芙蓉峰の男達の視線が一気に集中した。
アンマリー「あらー!可愛い坊やが一杯居るじゃない!ウフ!」
―― ガタッガタッガタッ!
ロレン、ガエン、ステアム、ハノーク。アラクネを目の前にしてもビビることがなかった4人が一斉に立ち上がり身構えた。
ガエン「な、この筋肉ダルマは?」
―― ピク! アンマリーの目頭が一瞬動いた。気がする。
アンマリー「あん?お前、今なんて言った?」
速い!気づいた時にはアンマリーはガエンの目の前に立ち、ボタンより大きな体をくの字に曲げガエンの顔を覗き込みながら素の低音で脅しを掛けていた。
ガエン「ヒッ・・・いえ、あの・・すいませんでした!」
「アンマリー、頼むからうちのクランの男を食べるのは勘弁してくれ。」
アンマリー「あん、ちょっとおどけただけじゃな~~い。アンマリーよ。よ・ろ・し・く・ね!」
ガエン「あ、はい!宜しくお願いしま・・・」
うん、ビビってる。最後声が聞こえなかったぞ。
アンマリー「そっちの3人も宜しくね!」
「「「よ、よろしくっす!」」」
ロレン達のキャラが変わってるな。そのうち「Yes!ma’am!」とか言い出しそうだ。
ロブラン「なんじゃ、アンマリーじゃないか。」
アンマリー「あら?ロブランじゃないの。」
「何だ2人は知り合いなのか?」
アンマリー「そうね、古い付き合いよ。ああ、あなたモーガン商会に雇われてたんですもんね。その縁で?」
ロブラン「ああ、此処の管理人に、シグレに拾って貰った。」
アンマリー「良かったじゃない。シグレちゃんになら雇われて正解よ。」
「過分な評価だな。まあでも、おかげでこんな上等なリビングで寛げる。俺の方が雇って正解だったよ。
あっ!アンマリー後ろ、さっきからずっと立ってるんだが?」
そう言って20代後半のイケメンに視線を送った。
さっき一緒に入って来たはずなのにアンマリーの背中に隠れて存在を忘れていた。
アンマリー「あら~~ごめんなさいね!トマスちゃん。」
トマス「いやいや、気にしないでください。あのシグレさんですね?僕はブーア商店のトマス・ブーアと言います。」
「シグレです。まあどうぞ座ってください。アンマリーも座って。」
アンマリー「はーい!あら?そう言えばシグレちゃんのお嫁ちゃん達は?」
ロレン「お嫁ちゃん?」
ガエン「シグレの?」
ステアム「嫁って言ったな?」
ハノーク「言った。間違いなく・・」
「えっ!ああ、みんなで買い出しに行ってるんだ。えーと、それでトマスさん、話は聞いたのかな?」
トマス「アンマリーさんから聞きました。見本も見せていただきました。」
アンマリー「トマスちゃんは最近まで大店にいたんだけど、一念発起して独立したの。大店時代から私達小さな店に良くしてくれる良い子なのよ。
シグレちゃん、大きな商売をさせてあげて!アンマリーからのお・ね・が・い!」
だから、そのハートの目はやめてほしい。
「あ、ああ・・条件は?条件は聞いたかな?」
トマス「聞きました。問題ありません。」
―― カチャ、カチャ!
収納から出した珈琲をカップに入れて2人の前に出す。
アンマリー「あらこの香りの良いのは何?」
「珈琲だ。俺が見つけた物だ。まあ飲んでみて。苦かったらこのミルクか砂糖を好みで入れると良い。」
アンマリー「あらら・・・苦いけど、良いんじゃない!素敵ね!」
トマス「本当だ!これは・・・シグレさん!これを見つけたって言いましたよね!これを商売にする気は無いんですか?」
「ああごめん。これはもう契約しちゃったんだ。セグルド領主のアルバータス侯爵とアムガルド商会とね。早ければ今日にも侯爵がこれについて公布を出すはずだ。」
トマス「ご領主とアムガルド商会ですか・・・それじゃ無理か。」
名前を聞いてトマスがシュンとしてしまった。
アンマリー「それであの堅物と会ってたのね。」
「そう言うことだね。トマスさん。珈琲はもう無理だけど、ショーツは任せて良いかな。」
トマス「あ、はい!宜しくお願いします。」
「なら、もう1つあるんだ。」
そう言って出したのはブラトップだ。
トマス「これは・・・」
アンマリー「そう言えばお嫁ちゃん達が着てたわね。ショーツに気を取られて・・あたしとしたことが迂闊だったわ。
細い肩紐のインナーに内側のこのカップ・・・これでお胸を受けるのね。体の線に合わせたサイズで着るとお胸の揺れも抑えられるわけか。」
「流石だね。ブラトップって呼んでる。うちの嫁達も1度着たら止められないって言ってるよ。」
ロレン「嫁?」
ガエン「嫁って言ったな?」
ステアム「シグレが言った!」
ハノーク「間違いない!」
『仕舞った!つい口に出た・・・・』
アンマリー「シグレちゃん、とんでもない隠し球を持ってたわね。」
トマス「こ、これも扱わせていただけるんですか?」
「トマスさんが良ければ。」
トマス「是非!是非お願いします!」
アンマリー「このカップの素材が解らないわ。この薄さでこの弾力・・・これはなに?」
「あー企業秘密だ。」
言えない。サクラ達にも言ってないんだ。このカップ部分の素材がフォレストメンダーの羽を支えてる軟骨だって。
大門も採取が嫌で商品にしなかった曰く付きだ。
「こっちはショーツより安く出来る。そうだな売値は大銀貨1枚。儲けは俺が銀貨2枚、トマスさんが経費分を入れて銀貨5枚、小売りが銀貨3枚でどうかな?」
トマス「問題ありません!いや、本当にありがとうございます。独立したばかりで目玉商品を探していたんです。このショーツとブラトップはうちの主力商品になります。」
この後細かな話を付け明日の午後商業ギルドで契約を交わすことにしてアンマリーとトマスさんは帰っていった。
ロレン「シ~グ~レ~!」
「な、何だよ?」
ロレンとハノークが俺の左右に陣取り、ガエンとステアムが前のテーブルに腰掛けた。
囲まれた!
ガエン「嫁?いつから嫁?」
「えっ?・・・何の話だ?」
ハノーク「ほう?誤魔化す気か?」
ステアム「ハッキリ聞いたぞ!うちの嫁達もってな!」
「気のせいじゃないのか?」
ガエン「おい!」
「「おう!」」
―― ガシ!
両腕をロレンとハノークに掴まれた。そして、何故か俺の両肘を上に持ち上げる。この体勢だと脇の下が・・・
ステアム「さあ吐いて貰おうか!」
―― コチョコチョコチョ・・・・・
「ギャハハ・・・止めろ!お前ら・・・ギャハハ・・・脇の下は止めろ・・・や、止めろギャハハ・・・アハハ・・はぁはぁ・・」
ロレン「いつからだ?」
ハノーク「いつから嫁って言ってる?」
「はぁはぁ、気のせい・・ギャハハ・・・止めろ・・・アハハ・・・だから脇の下は・・・アハハ・・はぁはぁ・・」
ステアム「さあ、吐け!吐いて楽になれ!」
「はぁはぁ・・・最近だ。最近宣言したんだ。」
ガエン「お前!エリザもか?」
「ち、違う!エリザは妹だ!信じてく・・・ギャハハ・・・や、止めろ・・・脇の下は・・・ギャハハ・・・はぁはぁ・・」
ロレン「本当だろうな?」
「本当だ。本当なんだ・・・」
ファビアナ「何やってるんだお前達?」
顔を上げると買い物に出ていた女達がファビアナを先頭にリビング入って来ていた。
「ふぁ、ファビアナ助けてくれ!此奴らをなんとかしてくれ!」
ロレン「ファビアナ。面白い情報があるんだ!」
「や、止めろお前ら!話すんじゃない!」
ハノーク「なんと!シグレはサクラちゃん達にお嫁さん宣言をしたんだ!」
ファビアナ「知ってるぞ。買い物の最中に聞いたからな。」
「「「「「えっ?」」」」」
ファビアナ「サクラ達は馬車の中では旦那様と呼んでるらしいぞ。」
「「「「「えっ?」」」」」
ファビアナと一緒に帰ってきたサクラ達がファビアナの後ろで視線を泳がせていた。どうやら、嬉しくて黙っていられなかったらしい。
結局その後クランハウス獲得とサクラ達のお嫁さん記念と言うわけのわからない理由で宴会になった。
俺は嫁宣言を出汁に野郎4人に囲まれていた。
「さっきから人の事を肴にしてるが、ロレンはどうなんだよ?お前だってカタリナ達をどう思ってるんだよ?」
ロレン「えっ?それは――」
ハノーク「そうだー!ロレン、どうなんだ?」
ガエン「そうだ!そうだ!もうやったんだろ?」
ロレン「お前ら!やった言うな!」
ステアム「違うのか?」
「ロレン。白状しろ?」
ハノーク「ん?誰のおっぱいが一番デカいんだ?」
ガエン「おう、そうだ言ってみろ!」
ロレン「えっ・・・シュゼだよ。」
ステアム「シュゼか!」
「うちはナナイだ!赤い連檄はどうなんだよ?」
ガエン「ファビアナは見たとおりのボン・キュ・ボンだ。」
ステアム「アニスが残念――」
―― ガンガンガン!
「「「痛い!」」」
アニス「ガエン、ステアム、ハノーク!お前ら正座!」
「「「えー、何でだよ!」」」
「ハハハ・・正座しろ!お前ら!」
―― ガン!
「痛い!」
アニス「シグレくんも!」
ロレン「ハハハ!ざまあみろ!」
―― ガン!
「痛い!」
アニス「ロレンもよ!みんな此処に正座!」
「「「「「Yes!ma’am!」」」」」
ティナ「シグレ様・・・普段あんなに頼りになるのに。」
サクラ「あれで甘えん坊なのよ。」
ナナイ「そうそう。」
ツバキ「私達以外には、あまり素の自分を見せませんからね。」
アカネ「ああいうのも珍しいわよね。」
カタリナ「ロレンもそうかな。」
シュゼ「真面目。堅すぎるところがある。」
アージア「ああやって騒ぐのはロレンも珍しいね。」
ファビアナ「しかし、シグレは面白い男だな。酒を飲んでないのに飲んでる奴以上に酔って見えるぞ。」
ボタン「シグ兄楽しそう。」
フジナ「あれも旦那様の一面なんですね。」
ロレーヌ「いいなー、旦那様か。」
シユナ「ロレーヌも旦那様と呼べば良いじゃないですか。」
イデリナ「ところで、シグレ殿はやっぱり大きな胸が好きなのか?」
「「「「そうなんですか?」」」」
エリザ「そうじゃ。妾のようにタワンタワンが好きなのじゃ!」
「「「「「・・・・・・・」」」」」
紫蘭玉樹のジト目がエリザに向けられる。
エリザ「な、何じゃその眼は!」
ナナイ「そうだ!此処のお風呂広かったじゃない?みんなで一緒に入ろうか?」
ティナ「良いですね!」
「「「「「「「「「「サンセーイ!」」」」」」」」」」
―― カコン!
「ふーーーー。此処の風呂も広くて良いけど、もう少し情緒が欲しいな。」
ハノーク「何だ情緒って?」
「どうせ入るなら、より気持ちよくってことさ。」
ガエン「良く解らんが、これより気持ちよくなるなら歓迎だな。」
ステアム「今でも十分だけどな。」
ロレン「ああ、ちょっと前じゃ考えられないよ。不思議だな、シグレと会ってからもの凄い早さで環境が変わってる気がする。」
女達がクランハウスのお風呂に行くと聞いてようやくアニスの説教から解放された。
それならと俺達も男風呂にはいっていた。
ガエン「あの馬車本当に使って良いのか?」
「良いだろ。この敷地内の物全部くれるって言ったんだから。」
ステアム「シグレ達はいつセグルドを発つんだ?」
「明後日だ。良いかロレン?」
ロレン「ああ、そのつもりだ。」
ハノーク「その後はどうするんだ?」
「うちはサラケスの百層宮を20階層まで潜ったらセグルドに戻ってくるつもりだ。」
ロレン「うちはまだ決めてないが、この辺も面白そうなんだよな。まあ、南の森は嫁達が行きたがらないと思うけど。」
ガエン「おっ?ロレンも観念したか?」
ロレン「したよ!とっくに腹は括ってんだ。ただ、なんとなく気恥ずかしくてさ、言い出せなかったんだよ。」
「はは、面と向かって言うのは照れるよな。」
男達とのんびり湯に浸かっていた気がしたが、お風呂を出てもサクラ達はまだ上がってなかった。
湯上がりに相変わらず何の果実か解らないジュースを飲んでリビングのソファに座っているといつの間にかうつらうつらと寝入っていたようだ。
「シグレ様。シグレくん・・・起きんかシグレ!」
「あ、ああ、みんな・・・」
サクラ「お待たせしました。馬車に戻りましょう。」
「ああ・・そうだね。」
サクラ達に起こされ立ち上がると、ロレンやハノーク達もその辺のソファで寝ていたらしい。それぞれパーティーの女達に起こされ馬車に連れて行かれて宴会が終わった。
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