【領地事業】
食事を終え俺達はロブランとクランハウスの改築について話し合っていた。
うん。こういうの楽しくて良いな。
エリザ「のうシグレ、敷地内が殺風景で好かん。少し手を入れても良いか?」
「ああ考えてみてくれ。土地があるからオウコやコハクを放し飼いにしたいと思ってるんだ。」
エリザ「それも良いの!よし任せておけ。シユナ行くぞ!」
エリザがピョコンと座っていた椅子から飛び降り外に駆けていった。あれだけ見れば普通に唯の子供だ。
シユナ「はいはい。待ってください!」
エルネス「シグレ様。侯爵様がいらっしゃいました。」
「了解。エルネスさん、ファビアナとロレン、それとティナを呼んでくれないか。」
エルネス「承知しました。」
エルネスさんがファビアナ達を呼びに行くと入れ替わりにエイステンが入ってきて向かいに座った。
エイステン「色々始めたみたいだね。」
「建物は立派だが年季が入ってるからね。どうせ直すなら使い勝手を良くしようと思ってさ。とんだ出費だよ。」
エイステン「ははそりゃ大変だ。でも回収出来る見込みもあるんだろ?」
「そう言うことです。」
ロレン「シグレ!呼んでるって・・・侯爵様。」
ファビアナ、ロレン、ティナが俺達の周りに座った。
「すまないが契約の内容を聞いて欲しくて呼んだんだ。
さて、条件は珈琲の販売を侯爵家が独占すること。そして珈琲の特許料としてクラン芙蓉峰に売り上げの1割を支払うこと。どう?」
ロレン「クランに?」
ティナ「シグレ様が見つけた物ですよ?」
「良いんだよ、ティナ。」
エイステン「特許料って言うのは?」
「ああ、アイデアや製法の使用料ってことさ。」
エイステン「面白いね。しかし、2つ疑問があるんだ。1つ目、何故僕に?2つ目、どうして君が販売しないんだ?」
「2つ目から。俺は紙の販売をしているが――」
ファビアナ「そんな事までしてるのか?」
「あ、ああ。紙はただ卸せばそれで済むんだ。だけど、この珈琲は栽培して販売まで持って行く必要がある。
栽培するには人が必要だ。そして珈琲を栽培すれば栽培する人に収入を作る。販売するまでの過程でも収入を得る人が増える。人を食べさせる事業になる。」
エイステン「なるほど。それが1つ目の答えでもあるって事だ。」
ファビアナ「全然解らない!どういう事だ、ティナ?」
ティナ「領地経営です。おじ様が珈琲を事業として興せば、おじ様の領地で収入を得る人も増える。領地経営者としては嬉しいことなんです。」
ファビアナ「シグレはそんな事を考えてたのか・・・」
「ハッキリ言えば、セグルドのために侯爵に話しをしたわけじゃない。偶々物がセグルド周辺にあった。つまりセグルド周辺の農家で栽培が出来るから、俺は薄い利益だけ貰って面倒な事を侯爵に押しつけようと思ったのさ。」
エイステン「おかげで僕は先々の収入が見込めるんだからなんの問題も無いね。
僕としては領地経営の手助けをして貰って大助かりだよ。これで売り上げの1割じゃ申し訳ないくらいさ。
でもどうして君個人じゃなくクランの収益にするんだい?」
「クラン経営のための安定収入の確保が建前で、クラン芙蓉峰がそこらのクランと違うことを見せつけるためさ。
芙蓉峰は珈琲の収入で金に困ることはない。つまり俺達芙蓉峰は金じゃつれない動かない。
それに此処を欲しがってる商人にも商売の大きさで手を出せないと思わせるためですよ。」
エイステン「ははは・・・・なるほどね!やはり距離感は大事だね。
ここに来るまでずっと考えていたんだ。この珈琲はとんでもない商品になると自信を持って言える。つまり、大きな事業になるって事だ。
栽培には土地がいる。それは僕の役割だ。商品にして販売する権利を僕が持つとして販売自体は商人を使う必要がある。
シグレくん、商業ギルドグランドマスターの商会を使うけど良いかな?」
「俺もそうしてほしいと思ってました。まあ色々ありましたが、俺には一番信用出来る商会です。」
エイステン「少し時間をくれないか?話を付けてみるよ。簡単で良いどんな流れで販売までいける?」
「栽培・収穫で1つ。それを回収・加工が1つ。そして販売です。」
エイステン「解った。君はいつまで此処にいるのかな?」
「決めてはいないんですが、もしかしてサラケスで首を長くして待たれてないですかね?」
エイステン「忘れてた!」
うん。本当に忘れてた様だ。
エイステン「デランドから早く君たちを戻せって催促されてたたんだ。
でも良いか!報告は終わってるしデランドの用事は王都からの報酬を渡すだけだから。
そうだな、あと2日で話を詰めよう。そうすれば3日後には此処を発てる。」
「了解です。ツバキ!」
ツバキ「はい。用意しています。」
ツバキが自分の収納から水筒を1つ出した。
「珈琲を入れてます。本当は奥様へのお土産用にと思ったんですが商談にでも使って下さい。それと必要なら此処に連れてきてくれればご馳走します。あ、但し今日はもう勘弁で!」
エイステン「はは、了解だ。貰っていくよ。」
エイステンが馬車に戻るというので見送りに一緒に玄関を出た。
「何だこれは・・・」
エイステン「僕は何処に来たんだっけ?」
玄関の前には草花が生い茂る庭が広がり、色気のない土壁を何の木か解らない木が覆い隠している。
「あれ?厩舎の前に牧草地?が出来てる。オウコとコハクが居るよ!あ、ロレンのバトルホースも草を食んでる。はは、厩舎の中の馬も出したんだ。って、おい!」
エリザ「どうじゃシグレ!これで少しは落ち着けるようになったぞ。」
「エリザがやったのか?」
エリザ「そうじゃ!ふふん!」
お得意のペッタンコアピールだ。
シユナ「エリザが乗り乗りで。」
エイステン「シグレくん。この子は何者なんだい?」
「俺の妹です。断じて妹です。ただ、ちょっとだけ〈緑魔法〉が使えるだけです。」
エイステン「ちょっとだけって、それに緑魔法って言うのも・・」
クレイマン「侯爵様。ずっと馭者席に居たんですが、木って育つのが早いんですね。」
クレイマンって天然?ああ、脳筋なのか!
エイステン「違うから!クレイマン、それ違うから!ああもう行こう。じゃあシグレくんまた連絡するよ。」
やってしまった物はしょうがない。気を取り直して中に入るとアニスが待ち構えていた。
「なんだ?」
アニス「シグレくん。私達を宿に送って欲しいの。でね、その途中で家具屋によって欲しいんだけど。」
「ああ了解。構わないよ。」
アニス「カタリナに聞いたのよ。シグレくん、ベッドとか色々買うから収納に仕舞ってくれない。明日からあの馬車に泊まりたいの。良いでしょ?良いよね!ありがとう!さすがシグレくん!」
「あ、はい。てか、俺何も言ってないっすけど・・・」
圧が強い・・・
ファビアナ達と一緒にティナ達も宿泊先のエイステンの屋敷に帰ることになり、何故かクラン全員馬車に乗りアニスが全て仕切る家具選びに付き合ってそれぞれを送っていった。
クランハウスに戻るとロブランはさっそく改築の材料を買い付けに出ていて留守だった。
改築の費用は珈琲の儲けが入ったら回収することにして俺が全部立て替えている。元手はギアドの馬車からいただいた白金貨だ。
クランハウスに戻った俺達はそれぞれの馬車で夕食をとる事をエルネスに告げ馬車に引き籠もった。
ツバキ「旦那様。珈琲です。」
「ありがとうツバキ。ふーー、しかし毎日色々あってどうして落ち着かないのかな。」
サクラ「見てると楽しそうですけど?」
「えっ?そう見える?」
アカネ「はい。とっても。」
「うーん、おかしいな・・・あっそうだ。ロレンとエルネスには明日の朝はゆっくり顔を出すからって言ってあるから。」
「「「「「「「・・・はい。」」」」」」」
エリザ「なんじゃ?何かあるのか?」
「あーーーーー!やっぱり朝風呂はいいな!」
―― カラカラ・・・
サクラ「おはようございます。旦那様。」
「おはようサクラ。やっぱりサクラが1番だったね。」
サクラ「そうですね。でもすぐにみんな来ますよ。モゾモゾしてましたから。」
―― カラカラ・・・
アカネ「おはようございます。旦那様。」
「「「「「おはようございます!」」」」」
「おはようみんな。」
エリザ「ふぁーー・・シグレ、おはようなのじゃ。」
「おはようエリザ。」
朝風呂に集合したみんなと順番に朝の挨拶、キスをしていく。
「エリザ!ん・・・」
エリザ「ん・・・しかし、朝から風呂とは贅沢じゃな。」
「みんながゆっくり寝てる日は朝風呂にしてるんだ。」
エリザ「ゆっくり寝てる日?お主のせいじゃろうが!全員に4回じゃぞ!恐れいったわい!」
サクラ「そう言えば、エリザは初めてでしたね?」
アカネ「エリザは昨日のようなのは嫌?」
エリザ「嫌ではないが・・・毎日では体がもたんわ!」
ナナイ「ふふ。安心して。今のところは毎日じゃないから。」
ツバキ「予定では6日に1回ですね。」
ボタン「まあ時々シグ兄が暴走するけどね。」
エリザ「何じゃそれは!」
ナナイ「それよりシグレくん。不思議に思ってることがあるんだけど?」
「なに?どんな事?」
ツバキ「時間じゃないですか?」
ナナイ「そう!フジナとシユナが加わってから尚更なんだけど、人数が増えてるのにしっかり睡眠の時間が取れてるのよね。」
アカネ「あ、それ私も感じてました。」
エリザ「【時空間魔法】じゃろ。シグレが誰かと睦み始めると、重なっとる2人だけ時間の流れがかわっとった。」
「気づいてたんだ。正直言うと意識して時間の流れを変えてるわけじゃ無いんだ。夜だけ、みんなとイチャイチャしてる時だけ俺の周囲の時間が速く流れる感じなんだ。」
サクラ「凄いですね。でも意識してないって事は旦那様が意図して時間の流れを変えることは出来ないんですか?」
「いまは出来ないな。まああんまりそこまで踏み込むつもりがないのもあるけど、どうして夜だけなのか解らないよ。」
エリザ「ふん。シグレの願望じゃろう。シグレは夜の手抜きが一切無いからの。」
ボタン「シグ兄は1人ひとりしっかり時間を掛けるもんね。」
「まあそうだけど・・・」
フジナ「そう言えば旦那様。旦那様がデザインしたショーツを販売するんですよね?」
「そのつもりだよ。。」
シユナ「珈琲のように侯爵様に販売させるんですか?」
「いやどこか適当な服屋に直接卸そうと思ってる。販売価格の条件を付けてね。そうだ、シユナなら幾らで売る?」
シユナ「私ですか?普通の女物の下着は銀貨1枚。旦那様のショーツは素材が良いですから・・・」
ナナイ「そうなのよ!デザインもだけどあの素材が良いのよね。」
フジナ「そうですね。初めて穿いた時肌触りに吃驚しました。」
「あれこそアラクネの糸だよ。」
ボタン「そうなの?」
「あのショーツはアラクネの糸を2種類の太さで錬金してるんだ。1本はギリギリ透けない太さ。もう1本はレース、模様部分に使ってるのは透けるほど細い糸なんだ。」
ツバキ「売り出せば真似をされそうですね。」
「それでも良いよ。ただ、アラクネを安定して手に入れることが出来ないだろうね。結果的にデザインは真似されるだろうけど素材は無理だと思ってる。」
フジナ「なら、高級品として売った方が良いかもしれませんね。」
「安くするなら幾らでも安くは出来るんだけど、やっぱり高級品で行くのが正解かな?」
シユナ「なら大銀貨5枚ではどうですか?貴族や金持ちの奥方が顧客になりますし、平民でも無理をすれば買えなくはありません。
それに、他の商店がアラクネを手に入れて同じ物を作ってもあの仕入れ値を考えれば大銀貨5枚では元が取れないでしょうから。」
「やっぱり、その辺かな。」
エリザ「安く出来るならすれば良いではないか。」
「あのショーツを安く売れば今下着を作ってる職人の仕事を取り上げそうだからね。そういうのは避けたいんだ。」
エリザ「ふん。変わった奴じゃな。」
サクラ「ふふ・・・それが旦那様ですよ。エリザ。」
「あっそうだ。サクラ達にお願いが有るんだ。ショーツをカタリナやファビアナ達クランの女達に使って貰って。ツバキ、予備はどの位有る?」
ツバキ「持ってきたのでは少し足りないかも知れません。」
「なら俺の次元収納で複製するよ。ティナにはティナの母親とエイステンの奥さん用も渡してやって。きっと彼女たちから貴族の奥方に情報が流れるから。」
「「「「「「「はーい!」」」」」」」
「さて、朝ご飯を食べたらクランハウスに顔を出すか。」
「「「「「「「「はい!―い!うむ!」」」」」」」」
「何だこれは?」
「「「「「「「「・・・・凄い!」」」」」」」」
エルネス「おはようございます。シグレ様。」
「おはようエルネスさん。」
エルネス「シグレ様。先ほど侯爵様のお使いの方が見えて、10時に訪ねてくるそうです。」
「了解です。で、それは良いんだけどこれはロブラン?」
エルネス「はい。昔から1度火が付くと何を言っても止まらなくなります。昨日も材料を買ってくるなり手を付け始めて、おそらく1晩中。」
クランハウスに入って目を見張った。キッチンと食堂がまったく別物になっていたからだ。
食堂の5人掛けのテーブルは広く長く作り替えられ、1人ひとりの間隔が広くなっている。
テーブルにはクロスが敷かれ、椅子には昨日は無かった背もたれが付いている。
キッチンもアイランドテーブル付きの最新システムキッチンのような変貌を遂げている。元々かなりの広さが有ったので10人くらいが1度に食事の用意を始めても十分過ぎる余裕がある。
何より内装が工場の食堂だった風情が小洒落たレストランに変わっていた。
ナナイ「最新の魔導コンロが付いてる!」
ボタン「ナナ姉。魔導オーブンも魔導冷蔵庫も新しくなってる!」
ツバキ「この魔導冷蔵庫随分大きいですね!」
ロブラン「シグレ。おはよう。」
「おはようロブラン。これ一晩でやったのかい?」
ロブラン「大したことじゃない。それより、今日中にこのリビングも片付けるつもりだ。良いか?」
「それは構わないけど、ちゃんと休んでくれよ。無理はしないでくれ。」
ロブラン「無理などしておらん。むしろモーガンが無くなってからすることが無くて休みすぎた。このくらいで丁度良い。」
ロレン「うぉ!何だこれは?」
「「「「キャーー!凄い!」」」」
ファビアナ「おうシグレ!おはよう・・・ってなんだ?」
アニス「わぁ・・・これロブランがやったの?」
「「「うぉい!」」」
ティナ「おはようございます。来る途中・・・えっ?どうなったんですか?」
イデリナ「ティナ様。馬車を固定・・・」
「「「「おはよう・・・・」」」」
遅れてクランハウスに入ってきたロレン達と馬車でファビアナ達を拾って来たティナ達も食堂を見るなり我が目を疑った表情をしていた。
新しくなったダイニングの椅子に全員で座り、ツバキが淹れてくれたコーヒーを飲んでいる。ツバキはエルネスに珈琲の入れ方を指導していたようだ。
ティナ「そうでした。シグレ様。エイステンおじ様がこの後こちらに来るそうですよ。」
「ああ伝言が届いてた。」
ティナ「その後はどうされるんですか?」
「サクラ達に服を買ってやろうと思ってるんだ。」
サクラ「昨日のお返しですね。」
ティナ「あっ・・・そうだったんですか・・」
「えっ?なに?ティナは何を納得してるの?」
イデリナ「そうか・・・それでみんな石鹸の匂いがしてたんだ。」
カタリナ「ふふ、実はうちも朝風呂に入ってきたの。」
シュゼ「そう。うちも服を買いに行く。」
「レナスの疾風も?」
ロレン「あ、ああ・・・昨日随分儲けたからな。」
アージア「ロレンが買ってくれるの!」
ロレーヌ「楽しみです!」
ティナ「なら、たまには私達も買い物を楽しみましょうか?」
イデリナ「ティナ様。私達は服など無くても構いません。」
ティナ「イデリナ。お金は私達が稼いだ物を使うのです。そのくらいの楽しみが無ければ息が詰まりますよ。」
「俺も良いことだと思うぞ。」
イデリナ「そうですね。解りました。」
「ファビアナ達は?」
アニス「今日は馬車の中を仕上げることになってるの。と言うことだからシグレくん。昨日の家具宜しく!」
―― グイッ!
「えっ!」
俺は拉致されるようにアニスに新たに赤い連檄の住処になる拡張馬車に連れて行かれた。
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