【蠢きすぎる森終演】
ジャイアントスパイダーの巣の下で1人残った俺は討伐したアラクネを収納に仕舞い昼ご飯の用意を始めた。
収納から6人掛けのテーブルを5台と椅子を30脚出して並べていると、
ファビアナ「何だこれは?」
セルフボックスから出てきたファビアナの第一声だ。
「お前テーブルと椅子を知らないのか?」
ファビアナ「殴るぞ!これも人数分持ってきたのか?」
「持ってこなかったら出せないだろ?」
やの付く職業の人かと言った目付きで顔の下から睨まれた。恐いよファビアナ。
アニス「まあまあファビアナ。アラクネを4匹収納してる時点でおかしいんだから今更よ。」
ファビアナ「まあそうなんだが・・・」
「お昼はこれを持ってきたぞ。ジャーン!ハンバーガー!」
ティナ「ハンバーガー?聞いたことが無いんですが?」
「まあ、食べてみてくれ。」
昨日の夜から仕込んでいたハンバーガーだ。ナナイ、ツバキ、ボタンにバンズ用の丸いパンを焼いてもらい、それに丸いハンバーグとレタス、タマネギにトマトを挟んでデミグラスソースをかけている。
ファビアナ「う・・美味い!」
アニス「ほんとだ。美味しい!」
「「「美味え!」」」
ロレン「こりゃ美味しいな!」
「「「「美味しい!」」」」
ティナ「美味しい!こんなの王都にもありません!」
イデリナ「美味い・・」
「「「「美味しいです!」」」」
「いっぱい有るから、遠慮無く食べてくれ。」
初の異世界ハンバーガーは大好評だ!
「そう言えばティナ。さっきまた目眩がしてたようだけどレベルが上がったんだろ?」
ティナ「はい。ここに来る前は22だったんですが、一気にレベル31になりました。」
ファビアナ「おお、レベル差の恩恵だな。あたしにもあったな、そんな時期が。」
「へー、ファビアナにも可愛い頃があったんだ?」
ファビアナ「どう言う意味だ!殴るぞ!」
イデリナ「私もレベル35になった。他の4人はレベル33だ。これもティナ様がアラクネに止めを刺せたからだ。」
ティナ「ナナイさんのおかげです。最後を譲ってくれたから。」
ナナイ「あらそうだった?大事なのはティナちゃんに止めをさせる力が有る事よ。」
「そうだな。俺もそう思う。」
ロレン「シグレ。俺もさっきのアラクネでレベルが48になったんだ。」
カタリナ「私達は45になったわ。これもロレンのおかげよ。」
シュゼ「ん。頑張ってる。」
アージア「今日はご褒美を上げなきゃね。」
ロレーヌ「うんとサービスするわね!」
ロレン「お、おい、な、何言ってるんだよ・・・」
「「「「「「「はははは・・・・・」」」」」」」
「そうだ!言っとくけど、セルフボックスのリングのことはクラン以外は秘密で頼む。言いふらした奴は取り上げるからな!」
ロレン「こんな凄いリングの事なんかホイホイ言えるわけないだろ!
それより、このリングは何処で手に入れたんだ?」
「俺が錬金で作った。リングに拡張空間をしまってると思ってくれ。」
ロレン「錬金?シグレはそんな事も出来るのか・・」
ティナ「絶対秘密にします!こんな素晴らしい物を取り上げられたら・・・泣いてしまいます。」
カタリナ「そうね。トイレ事情だけで何度冒険者を辞めたいと思ったか。」
ロレン「えっ!そうなの?」
シュゼ「男にはわからない。」
アージア「そうよ!トイレタイムだけは苦痛なんだから。」
ロレーヌ「ロレンに聞かれたらっていつもビクビクだったわ。」
ガエン「流石にファビアナも近づけない――」
―― ガン!
ガエン「痛ってーー!」
ファビアナ「当たり前だ!私だって女だ!」
イデリナ「シャワーまで付いていたぞ。」
サクラ「私達はお昼休憩の時にササッとシャワーを浴びて下着を交換してるの。」
カタリナ「キャーー!それ最高!」
ロレン「おいおい・・・」
ガエン「これで臭いトイレに入らなくて済むな。ステアムの後は特に臭いんだ。」
ハノーク「そうそう。」
ステアム「しょうがないだろ!」
ファビアナ「しかし、トイレの中身は何処に流れてるんだ?」
「俺も解らない。ファンタジーだ!」
ファビアナ「ファンタジー?」
ツバキ「説明が難しい時に使う言葉です。」
ロレン「ついでに聞いて良いか?さっきロレーヌの魔法が突然変わったのはどういう事なんだ?それもファンタジーなのか?」
「そうだ。って言いたいがそれにはちゃんとした理由が有る。ついでだからみんなに話しておこう。但し、これもクラン内の秘密だ。」
ロレン「もちろんだ!」――「「「「はーい!」」」」
ファビアナ「良いなお前ら!」――「「「「「うぉい!はい!」」」」
ティナ「もちろんです。」――「「「「「はい!」」」」」
「あらためて言うが、俺は渡り人だ。」
ファビアナ「えっ?」
ファビアナが、ハンバーガーを咥えながら驚いている。
「ファビアナは知らなかったっけ?」
ファビアナ「そうだったんだ・・・」
「と言う事で、俺には少々変わったスキルがある。例えば、薄々察してると思うが【鑑定】なんて言うのも持ってる。」
アニス「やっぱり!魔物のレベルを叫んでるからもしやと思ってたのよね。」
「それと、鑑定の他に錬金術も使えるんだが、この錬金術に関しては俺より遙か前にこの世界に来た渡り人、俺と同じ国から来た先輩が残した知識を引き継いでるんだ。
その先輩は錬金術師で、人生の大半を掛けてこの世界を歩き廻って素材を集めては様々な物を錬金で生み出してたんだ。
そしてある時期から1カ所に留まって、彼がこの世界で紐解いた全ての知識を書物にまとめたんだ。
彼が言うには、この世界の魔法は1度廃れそして復活したが劣化してるそうだ。」
大門が残した書物の知識として1万年前の統一帝国のこと、魔法が廃れ復活されたが名付けまでには至らず構築に時間が掛かり威力も落ちていることをクランメンバーに教えた。
ティナ「名付けですか。凄い発見ですね。宮廷魔法師だった母も知らないと思います。公表したら魔法の概念が全て変わりますよ、シグレ様。」
「ティナ、俺は彼が残した知識を公表する気はないんだよ。」
イデリナ「何故だ?凄いことだぞ。宮廷魔法師として最高位も夢じゃない。」
「そういうのが面倒くさいのさ。基本的に俺は王族も貴族も好きじゃない。信用もしていない。まぁ、個人的に知り合って話せば別だがな。」
イデリナ「そうだったな・・・」
ファビアナ「うちには魔法使いはいないが、そんなに簡単なことで魔法が変わる物なのか?名前を付けるだけなんだろ?」
エリザ「変わる。名を付けない方がおかしいんじゃ。人は名前で相手をイメージしておるじゃろ?シグレと呼びながらシグレの姿形を思い浮かべないか?」
アニス「確かに・・・だとしたら、あたしの【回復魔法】も名付けで変わるの?」
エリザ「例外はない。」
「うちでは回復魔法は【ヒール】で統一してる。」
アニス「ヒール?」
「俺の国でそう呼んでたんだ。覚えやすくて良いだろ?」
思いついたようにアニスが腰の鞘から短剣を抜き掌を切った。
アニス「【ヒール】!」
アニスの掌の傷がスーッと消える。
アニス「早い!治りも良い・・凄いな!」
「ついでだ、これからのことも有るから言っておこう。俺の妹エリザは〈精霊〉だ。」
ファビアナ「なんだ精霊か。」
「「「「「「「「「「えーーーーーーーー!」」」」」」」」」」
ペッタンコのお子ちゃまがピースサインをしている。誰が教えたんだ?
ティナ「精霊?普通の子供にしか見えませんが?」
「だよな。【精霊魔法】の術者はシユナ。シユナがエリザベスと名前を付けて契約したんだ。
契約したと言っても命令で動くようなエリザじゃないから、シユナの願いを聞き届ける形で力を貸してくれるんだ。」
みんなの視線を浴びてシユナがペコッと首を折った。
ロレン「それでか!さっきエリザちゃんが空に浮かぶ子を呼ぶ前、シユナさんが『お願い』って言ってたんだ。」
「空に浮かぶ子?エリザ誰かを呼んだのか?」
エリザ「氷の最高位〈雪姫〉じゃ。」
ティナ「雪姫?氷の最高位?」
「こう見えてエリザは精霊の女王なんだ。」
エリザ「こう見えてとは何じゃ?こう見えてとは!」
「ごめんごめん、悪かったよ。エリザには眷属の精霊がいて、その精霊を呼び寄せることが出来る。そして、呼び出された精霊はエリザに力を貸してくれるのさ。氷に風に火の精霊に・・・まあ、沢山いるらしい。」
ファビアナ「じゃあ、全ての属性魔法が使えるのと一緒じゃないか!とんでもないなんてもんじゃないだろ!」
「ああ、だから秘密なのさ。エリザは俺の妹だ。宜しく頼むよ。」
サクラ「シグレ様!」
「どうしたサクラ。いきなり大きな声を出して。」
サクラ「巣から出てきます。」
「えっ?」
巣穴を見上げると黒い物が穴から湧き出していた。
ファビアナ「ジャイアントスパイダーだ!洞窟から出て来るぞ!」
アニス「どうして・・・これ?」
アニスが手にしているハンバーガーを見て声を上げた。
「そうか!腹を空かしてるんだ!アラクネがいたから巣に籠もってたけど、アラクネのいなく無くなってハンバーガーの臭いに誘われたんだろ。良し!」
大急ぎでテーブルと椅子を片付け残っていたハンバーガーを全て出して地面にばら撒き、ついでにオークも出してみた。
キキ、キキと泣きながらアラクネの幼体より少し大きな黒くて毛むくじゃらな蜘蛛が3カ所の穴から出るは出るわ。そして、出てきた順からハンバーガーやオークに群がっていく。
ジャイアントスパイダー レベル16~18
「みんな誘い出せるだけ誘い出してから狩っていこう。洞窟の中に入らなくて済むぞ!」
「「「「「「「「「「おーー!」」」」」」」」」」
ファビアナ「もう1度確認するぞ!ジャイアントスパイダーは大きく膨れた尻側を傷つけるなよ!そこが金の元だ。狙うのは腹から上だ!」
「「「「「「「「「「おーーー!」」」」」」」」」」
結局この後、100匹狩ったところで終わりにした。
ジャイアントスパイダーはまだまだ巣穴から湧いて出ていたが狩り尽くす必要も無い。当面必要な数が確保出来れば、アラクネも討伐したので他の冒険者もジャイアントスパイダー狩りを再開出来るからだ。
俺達が蠢く森を出てセグルドに戻ったのは4時前だった。
「あっファビアナさん!狩りは?ジャイアントスパイダーはいかがでした・・・」
ファビアナ「ああ、大変だったよ。副マスターを呼んでくれないか?」
「じゃあやっぱり・・・」
ネスティー「どうした?」
ナナイ「ネスティー、納品よ。倉庫に行って良い?」
ネスティー「倉庫?・・・良いだろ。行こう。」
ネスティーを先頭に俺とナナイ、ファビアナにロレン、そしてティナが倉庫に向かった。他のメンバーは食堂でノンビリするそうだ。
ネスティー「で、わざわざ倉庫に来てどんな物を見せてくれるんだ?」
「まずはお待ちかねのジャイアントスパイダーだ。」
収納から100匹のジャイアントスパイダーを出した。
ネスティー「な、何だこの量は・・・」
「まだだ。次は此奴だ。」
出したのはアラクネの幼体20匹だ。
ネスティー「アラクネの幼体だと・・・親は?親は見なかったか?」
ナナイ「見たわよ。」
「此奴のことだろ?」
アラクネの成体、雄雌2匹ずつを出した。
ネスティー「な・・・4匹も・・倒したのか?」
ファビアナ「倒さなかったらあたし達は此処にはいないですよ。」
ネスティー「そうだね・・・そうか此奴らが産卵で浅い場所に出てきてたのか。それでフォレストメ――ネスティー!――何だナナイ?」
ナナイ「それだけは言わないで!」
ネスティー「あ、ああ、嫌いなんだ・・・クラン芙蓉峰の指名依頼、ジャイアントスパイダーの糸袋納品と森の調査両方の達成を認める。ご苦労だった。」
フーッと一息ついて倉庫を出ようとしてあることを思いだした。
「ネスティー。これを。」
渡したのはゼーのカードだ。
ネスティー「これは・・・ゼーか。」
「1人で森に入ったようだ。俺達が現場に着いた時はフォレスト、黒い奴に群がられてた。狩ったオークを背負ってたらしい。オークの肉の下に居たよ。」
ネスティー「短慮を直せとあれほど言ったのに。もう少しでB級になれたものを・・・」
「ああ、残念だ。」
カウンターに戻り全員がカードを出した。カードの数が多くて受付嬢も大変そうだ。
「報酬の分配はどうしますか?」
「ああ分配か。ファビアナ、ロレン、ティナ。分配なんだが均等に4分割で良いか?」
ロレン「それならお前のところが損するだろ?」
ファビアナ「そうですよ。幼体もジャイアントスパイダーも狩った数が一番多いのに。」
ファビアナ「ああ、少し多くとれよ。」
「いや、人数が多いのはうちの事情だ。それに結構な金額になるからパーティーが喰っていける分は十分貰える。均等に割ってくれ!それで良い。」
「解りました。ではパーティーに均等に分配しますね。ただ、申し訳ありませんが精算は明日にして欲しいと副マスターが言ってました。」
「別に良いけど何かあるの?」
「アラクネや幼体が非常に珍しいので、買い付けに来る商人が食いつくだろうと言ってました。その結果で精算したほうが芙蓉峰のみなさんにも取り分が多くなりますから。」
「了解した。じゃあ明日の午後の方が良いな。ゆっくり来るよ。」
「ありがとうございます。それではみなさんのカードをお返しします。
ファビアナさん、赤い連檄の分です。ロレンさん、レナスの疾風の分です。ティナさん。こちらが紫蘭玉樹のです。
紫蘭玉樹のみなさんは今回の依頼でD級に昇格しています。パーティーもD級となりました。」
「やったな、ティナ!」
ティナ「これもシグレ様のおかげです。でもまだまだ、私達の目標はC級になる事なんです。」
「無理するなよ。」
「シグレさん。これがヒイラギのみなさんの分です。それで、エリザさんのこのフォレストメンダー463匹なんですが、魔石は無いんですか?」
「ああ魔石は回収出来なかった。」
「そうですか。まあフォレストメンダーから魔石を持ってくる人はいないんですけどね。」
「そうなの?」
「あれに手を突っ込めますか!」
恐い!
「そうだね・・・」
「それと、今回の依頼でエリザさんがF級になっています。」
「随分早くない?」
「副マスターの指示です。」
「ああ・・・了解です。」
「そうでした。アルバータス侯爵から伝言がありました。明日の午前中にお屋敷に来て欲しいそうです。」
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