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【女王の力】

「古の約を此処に成す。我に名を与えしはハイエルフシユナ。与えし名はエリザベス。その名を受け入れ契約とする。」


 エリザベスの宣言の後、魔法陣が小さくなり光となってシユナの胸の中に消えた。


シユナ「あっ・・・」

「どうした、シユナ!大丈夫か?」


シユナ「すいません、大丈夫です。魔力が体から吸い出された後、別の魔力が流れ込んできたようで驚いてしまいました。」


エリザ「妾とシユナの魔力が交換されて(ちぎり)が結ばれたんじゃ。」


「これでお前はシユナの従魔になったのか?」


エリザ「な、お前言うな!エリザベスじゃ!お前が考えたんじゃろうが!エリザと呼べ!それに従魔ではない!妾は精霊の女王じゃぞ!魔物ごときと一緒にするな!」


「お前こそ!お前言うな!俺はシグレだ!それにうちのツバキはグレイパッセルだ!始祖だぞ!魔物だろうが最高の女だ!俺の女にケチを付けるな!」

ツバキ「シグレ様・・・」


エリザ「何がグレイ・・・グレイパッセル?始祖?」


 エリザがぐるっと見回してツバキの所で止まった。


ツバキ「お久しぶりです。」

エリザ「あの時の小鳥か!そうか生き延びていたか。」

 ツバキがこくりと頭を下げた。


「ツバキ知ってたのか?」

ツバキ「はい。自我が芽生えて間もない頃、この世界の理を教えて頂きました。」


エリザ「そうか。人型を覚え、この男に尽くしているのか。これも縁じゃな。エリザベスじゃ。エリザで良い、宜しくな。」

ツバキ「はい。ツバキと。」


「ツバキが世話になってたならしょうがない。エリザと呼んでやる。

 で、エリザ。お前は何が出来るんだ?」


エリザ「男――シグレだ!――シグレ。妾はエンシェントドライアド。この大地を育む精霊の女王じゃぞ!」


 はぁーとエリザが大きな溜息をつく。

『何か馬鹿にされてるようでムカつくな。』


エリザ「解りやすく言ってやろう。お前達の言う属性という物なら妾のそれは樹木、草、大地の豊饒、その全てを統べる〈緑〉じゃ。」


「緑?緑魔法なんてのが有るのか?初めて聞いたよ。」

サクラ「あっ、シグレ様!オークが5匹やって来ます。」


「オーク?丁度良い。エリザ、オークが来る。何匹でも良い、狩れるか?」

エリザ「ふん。妾の契約者はシユナじゃ。」


「シユナ!」

シユナ「はい。エリザベス様、お願いします。」


エリザ「エリザで良い、()など要らん!どれ仕方ない。良く見ておけよ!」


 姿を現したオークに向かってエリザが右手を差し出す。すると地面から蔦が伸びオークに巻き付いた。


「「「「「ギャギャギャ・・・」」」」」

 オークが枯れて(?)、枯れたとしか言えない状態から土塊のようになって崩れた。


「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」

 俺も含めてみんなの目が点になっていた。


「なにをしたんだ?」

エリザ「ん?あやつらの養分を吸い取ったんじゃ。死ねば養分と成って土に返る。それを強制的にしただけじゃ。ひゃっひゃっひゃ。」


「エグいな・・・」

サクラ「はい・・・」

アカネ「なんて言うか・・・」

ナナイ「これは・・・」

ツバキ「変わっていませんね。」

ボタン「恐い・・・」

フジナ「なんとも・・・」

シユナ「言葉が・・・」


エリザ「ああそうか。これではお主達の稼ぎに成らんのだろ?次は趣向を変えるか。うん。楽しくなってきたの!」

 何故かエリザのノリが良くなっている。


『此奴、なんやかんや言ってるわりに現し身を手に入れて浮かれてるんじゃないのか?』

 

サクラがゴブリンがいるというのでその場所に向かった。


エリザ「おお子鬼か。どれ、〈シルフィー〉!」

―― ポン!

「呼んだ?おババ様。」


「うぉ!吃驚した!」

 長い青い髪の女の子が突然エリザの前に現れ空中に漂っている。

 薄い衣を纏っていて胸がデカい!確実にGは有る。


エリザ「おババ様と言うなといっておろうが!まったく、胸ばかり大きくなりおって!エリザベスじゃ。これからはエリザと呼べ!」

シルフィー「はーい!」


エリザ「シルフィー、あの子鬼を狩ってくれ。」

シルフィー「はーい!―― フーーー!」


 シルフィーが3匹のゴブリンに向かって息を吹きかける。


―― ザン!ザン!ザン・・・!

「「「ギャー、ギャギャ・・」」」

 ゴブリンが切り刻まれてしまった。


シルフィー「これで良い?」

エリザ「ああすまんな。」

シルフィー「じゃあね!」

 フッと女の子が消えた。


 またみんなの目が点になっている。言っておくが俺もだ。

「ただ息を吹いただけで・・・圧倒的な力だな。エリザ、今のは?」


エリザ「妾の眷属。風の精霊の最高位、シルフィーナじゃ。」


「つかぬ事を聞くが、エリザには眷属が他にもいるのか?」

エリザ「ん?最高位ならお主らの言う4元素の風に水、火に土それに・・・一々覚えておらん!

 精霊は最高位から高位、中位、下位にわかれておるが、最高位は全て妾の眷属じゃ。

 その最高位の精霊が各々の属性の眷属を従えておる。それが高位じゃ。その高位の眷属が中位を、そして中位が下位を眷属にしておるんじゃ。」


 思わずサクラ達とグルッと視線を合わせてしまった。


「シユナ。何か凄い奴と契約したみたいだな。」

シユナ「はい。私もそんな気がします。」


エリザ「なんじゃ今更。妾は精霊の女王と言ったじゃろ?妾の眷属の力は妾の力じゃ。どうじゃ、凄いじゃろ!」

 エリザが胸を張って反り返った。


「そんなペッタンコの胸を強調されてもな。」

エリザ「胸を強調したわけじゃないわ!そもそも胸の事を言うな!」


シユナ「シグレ様。エリザがこうして召喚されていても魔力が減っていかないんですが?」


エリザ「魔力が必要なのは妾を呼び出す時じゃ。それに、妾の魔法は妾の魔力を使っておるからシユナの負担にはならん。

 まあ、1番魔力が必要なのは最初に精霊を召喚する時じゃな。階位によってまるで違うからの。」


「そうなんだ。良くエリザを呼び出せたよな。」


エリザ「お主が手を添えてたからじゃろうが!シユナを通じてお主の魔力が流れてくるのは解っておったわ!

 そもそも、妾を呼び出せる魔力の持ち主がこの現界にいたことが驚きじゃ!」


「それでか!随分魔力が無くなっていったんだ。しかし、自覚が無いんだが俺ってそんなに魔力が有るのか?」


エリザ「有るのかじゃと?まったく、無自覚とは恐ろしいの。」


「そんなにか・・・」


エリザ「いいか、お主らの言う精霊魔法とは妾達精霊を現界に召喚する魔法じゃ。召喚される精霊の階位は召喚者の魔力量と質で決まる。言っておくが妾が現界の者と契約を結ぶのはこれが初めてじゃ。嬉しく思えよ!」


シユナ「はい。エリザで良かったと心から思っています。宜しくお願いしますね、エリザ。」


エリザ「うん。シユナはやはり良い子じゃのう。妾に任せておけ。

 ところでシグレ。」

「なんだ?」


エリザ「腹が減った。何か食べさせろ。美味しい物じゃぞ!」

「・・・・・」



 身長130cmと少し。どう贔屓目に見ても小学校高学年のツルペタ超絶美形少女?幼女が魔物の湧く森の中俺達の後ろをトコトコと付いてくる。両手に鮭お握りを持ち、口いっぱいに頬張って・・・シュールだ!


エリザ「シグレ!この鮭お握りは美味いな!――モグモグ――気に入ったぞ!もっとないのか?」

「ほら!」


エリザ「おおーシグレ!シグレは良い奴じゃの!しょうがない。仲良くしてやろうかの。」

「何がしょうがないだ!目的は食い物だろ!」



「数が多い!アカネ、シユナ弓で先制だ!」

「「はい!」」

「残りはフジナも入れて前に出よう。ツバキも魔法は無しだ。」

「「「「「はい!」」」」」



「シユナ。前の2匹エリザに!」

シユナ「はい!エリザお願いします!」


エリザ「ん?モグモグ、【蔦鞭】」

―― バシッ!バシッ!

「「ゲ、ギャ・・・」」


「オークを蔦の鞭で1発って・・そんな事も出来るのかよ!」


エリザ「シグレ?」

「なんだよ?」

エリザ「喉が渇いた。」

「・・・・・ほら水筒!」



サクラ「シグレ様。そろそろ四の鐘が鳴ります。」


「そうか。じゃあ今日はこの辺にしよう。フジナ、シユナどうだった?」


フジナ「はい。まだまだですが10年ぶりに思いっ切り体を動かせてすっきりしました。」

「そうだな。横になってることが多かったって言ってたもんな。」


シユナ「私は、まだみなさんに付いていくのがやっとですね。」

「そんな事ないぞ。弓は十分なレベルだし、何より此奴が大きいな。」


 チラッとシユナの横でボタンと戯れているエリザに視線を送った。

『ボタンと大きさの対比が凄いな。』


「今日1日で2人ともレベルが20になったし、色々確認できたことが大きいな。

 予想通りパーティースキルのおかげで経験値の共有もフジナとシユナが入っても出来てたし。それとシユナはエリザが魔物を倒せば経験値が得られる事もわかったしな。

 この後はギルドに寄って素材を売って馬車を置いたらファビアナが言ってた店に行こう。」

「「「「「「「はい。―い。」」」」」」」


「エリザ。」

エリザ「何じゃ?」

「ご苦労さん。」

エリザ「労うとは殊勝じゃの。」

「・・・・・・」――「なんじゃ?」


「お前は帰らないのか?」

エリザ「帰る?何処に?」


「・・・お前の家だよ。呼び出される前にいた場所だよ!」

エリザ「なんで?」


「・・・もう狩りは終わったんだよ!今日は終わりなの!」

エリザ「おお、それはご苦労じゃったの。お疲れ!」

 何故かビシッと片手をあげている。


「・・・・・・・・」


エリザ「ええじゃろうが!もう何万何千と里におったのじゃ!そりゃ偶に現界に来る事もあったが、こうやって召喚されて現界に来たのは初めてなんじゃ!少しくらい自由にしても良いじゃろ!妾だって現界の美味しい物をもっと食べたいんじゃ!もう少しくらい居ても良いじゃろ?シユナ!シグレが虐める・・・」

 エリザが泣きながらシユナに抱きついた。


シユナ「シグレ様。もう少しだけ、私がちゃんと面倒を見ますから!」


「はぁー良いよ、解ったよ。じゃあ戻ろうか。」


エリザ「決まりじゃ!ほれ、お主らの家に案内せい。なに妾の事は気にするな。美味しい物と美味しい紅茶が有れば良いぞ。」

 既に涙の痕跡も無い。


「おいエセ幼女!さっきの涙は何処に行った?」

エリザ「気にするな。小さい事を気にしてると禿げるぞ!」

「この・・・・」



 結局ギルドに行く途中、エリザに服を買った。もちろん子供服だ。

 なんとなく居座られる気がしたからだ。


 服を買ってる間にすっかり夕方になりギルドにはそこそこの冒険者がいた。


「あ、シグレさん。ご苦労様です。素材の買い取りですか?」

 昨日と今朝で馴染みになった受付嬢が気軽に声を掛けてきた。


「お願い出来るかな。奥のカウンターで良い?」

「はい。向こうにお願いします。」


 ギルドの造りは何処も一緒だ。奥のカウンターに素材を出していく。ゴブリンは魔石だけだが肉として売れるオークはそのまま収納に入れて持ってきている。

 5匹を超えたところで倉庫に行けと言われた。


「話には聞いていましたが、1度にこんなに持ってきた方を初めて見ました。」

「はは、査定宜しく頼むよ。」


 倉庫を出るとサクラ達はテーブルに座っていた。そのサクラ達の所に向かう途中エリザが大きな声でしがみついてきた。


エリザ「お兄ちゃん!」

「お兄ちゃん?・・・・」


エリザ「お兄ちゃん!あの大っきな醜男が虐めるの!」

「醜男?虐める?」


 足にしがみつくエリザから視線を上げると確かに190cmくらいの醜男がエリザの後ろに立っていた。


「お前かこのガキを連れてきたのは?」

「だったらどうした?」


「此処はガキの来るとこじゃんねえんだ。ガキの遊び場じゃねえ!迷惑なんだよ!」


「うちのエリザがお前に何かしたのか?」

「目障りなんだよ!」


「なんだ、何かしたわけじゃないのか。なら余計なお世話だ。エリザ。行くぞ。」

「待て!」

 

「なんだ?」

―― ガシ!

「詫びろ!詫びて2度と連れてくるな!」

 振り向きざま、右の二の腕を掴まれた。


「断る。エリザ。シユナの所に行ってな。」

 トコトコとエリザがシユナの所に向かった。スキップでもしそうなくらい緊張感が感じられない。


「てめぇー!俺様を誰だか知らねえのか?」

「知らない。それよりいい加減腕を放して貰おうか。俺は男につかまれて喜ぶたちじゃないんだ。」

 左手で大男の手首を掴みゆっくりと力を込めていく。


「・・・小僧!俺様と力比べするつもりか?」

「そんなつもりはない。掴まれるのが嫌なだけだ。」


「くっ・・・」

―― ギ、ギリ、ギギギ・・・

 手首を捻り上げていく。

「・・・て・・・てめえ・・・」

―― ギギギ・・・


「ハイハイ!そこまでだよ!」

 声が聞こえ視線を向けると、ギルドのカウンターからネスティーが出てきていた。


ネスティー「ゼー!止めときな。お前にどうにか出来る相手じゃないよ。」

ゼー「副マスター。」


ネスティー「ゼー、依頼を失敗して苛立ってるのはお前の勝手だが八つ当たりするんじゃないよ!

 お前が手を出してるのはゴブリンロードの骨を喰らった〈骨喰〉だ。八つ当たりで命を落としたいのかい?」


ゼー「な、なんだと?〈骨喰〉?こんな小僧が骨喰なのか?」

ネスティー「そうさ。この家業、歳は関係ない。実力が全てさ。言っとくが骨喰は既にB級だよ。ギルドが正式に認めてる。

 今なら見なかった事にしてやる。引きな!」


ゼー「く、・・・離せ。離せ!」

 ネスティーの顔を立てて離してやる。

ゼー「チッ・・・」

 踵を返して野次馬の中にゼーが消えていく。


ネスティー「すまなかったね。以前はあんな奴じゃなかったんだが、なかなかB級に上がれないところに今日はジャイアントスパイダーの依頼に失敗してね。荒んでるのさ。」


「ああー恐かった。助かりましたよ、間に入って貰って。」

ネスティー「何言って・・・まったく。ところで、その子は?昨日はいなかったけど?」


 ネスティーがシユナの膝に乗って果実のジュースを飲んでいるエリザを見ている。

『このやろう人に面倒事押しつけて暢気にジュース飲んでんじゃねえよ!』


エリザ「お兄ちゃん!エリザ恐かった!」

ネスティー「お兄ちゃん?」


「あ、ああ、歳の離れた妹なんだ。わけ有って今日から一緒にいる事になったんだ。」

 ネスティーの視線が、俺とエリザ、そしてナナイを順に廻っていく。ナナイが視線でそう言うことだからと言ってる気がする。


ネスティー「・・・そう言うことにしておこう。まあ骨喰がいれば大丈夫だろ。まったく退屈しない男だね。ナナイが羨ましいよ。」


ナナイ「あげないわよ、ネスティー。」

ネスティー「ふん。その気になったら奪い取るさ。あたしとあんたの仲だからね。」


 この日の戦果でフジナとシユナはE級になった。そして、エリザにせがまれてエリザの冒険者登録をした。

 この世界では12歳から冒険者登録が出来るらしい。もっとも、単独(ソロ)では認められてない。B級以上のいるパーティーに所属する事が条件になる。

 カードが出来て確認するとエリザの歳は12歳、そして俺達に無い項目が1つ記されていた。


保護者 シグレ(B級)


大変励みになります評価やブクマを宜しくお願いします。

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