【精霊魔法】
「シユナ!2匹、弓で先制だ!」
シユナ「ハイ!」
「フジナ、残りを!」
フジナ「ハイ!お任せを!」
俺達はセグルド北の森に来ていた。フジナとシユナの冒険者としての力量をみるためだ。
そうそう、昨日の夜はサクラ達が懇切丁寧にフジナとシユナに夜のサービスの仕方を指導していた。
サクラ「まずは裏をこう・・・」
「あ・・サクラ良い・・」
フジナ「こうですか?」
「フジナ、下から上に・・そう!」
ボタン「手で包んでギューって!」
「ああ、気持ち良い・・」
シユナ「こんな感じでしょうか・・・」
「うっ、シユナも上手い・・」
フジナ「これは、みなさんで考えたんですか?」
アカネ「いえ、シグレ様に教えて頂きました。」
シユナ「シグレ様が?」
ナナイ「そうよ。全部シグレくんよ。」
「うぉナナイ、圧迫感が・・気持ち良いよ!」
ツバキ「そして、此処は特にシグレ様の弱いところです。」
「効く・・ナナイ、土踏まずをもっと踏んで!サクラ、脹ら脛をもう少し強めでお願い。ツバキも腰はグイグイ力任せに押して良いから。」
「「「はーい!」」」
フジナ「マッサージと言うんですか?」
ボタン「そう。指圧とも言うんだって。」
「シユナ、もう少し肩を揉んで貰って良いかな・・・」
シユナ「頑張ります!」
以前、なにかして欲しいことは無いかと聞かれたときマッサージをお願いした。それから、俺へのサービスはマッサージになっている。
俺を甘やかすからと毎日はしてくれないがサービスデーには念入りにマッサージをしてくれようになった。
当然、俺もマッサージの後は最高のお返しをしている。うん。昨日もみんな最高でした。
北の森に来る前、セグルドのギルドによって簡単な依頼がないか確認をした。
南の森でジャイアントスパイダー5匹・1匹大銀貨4枚・大至急!というのが有ったが検討する以前に却下された。理由は南の森だからだ。
結局北の森に常設依頼のオーク狩りに来ている。
「フジナ。水切りはどうだ?まだフジナの腕力じゃ重いと思ったから重量軽減を付与して重さを4分の1にしたけど?」
フジナ「重さは感じますがこのくらいの方が感覚が良いです。
護衛の最中から耳に聞こえてはいたんですが、シグレ様は古代魔法まで使えたんですね。流石です!」
「ツバキの縁で覚える事が出来たんだ。ああ、フジナ達にもスキルは振ってるから使えるはずだよ。」
フジナ「10年ぶりに目覚めたら世界が変わってたくらいに常識が変わっていきますね。」
ナナイ「でしょ?シグレくんの女になるってそう言うことよ!」
「おいおい・・・シユナはゲドの弓〈蒼〉はどうだ?」
シユナ「はい。良い弓過ぎて的を外せないと焦ってしまいます。」
アカネ「でも流石よね。2・3矢撃っただけで使いこなしてたから。」
シユナ「【遠見】のスキルのおかげです。視野が全然違います。」
アカネ「あっ!解る!」
「さて、ある程度振って撃って慣れてきた感じかな。なら次だな。
フジナ、この水切りは剣じゃなくて刀って言ったよね。で、居合いはまず剣では出来ない・・難しいと思う技なんだ。」
フジナ「どうしてですか?」
「水切りは、片刃で反ってるだろ?これが大事なんだと思う。ちょっと水切りを借りるよ。」
フジナから水切りを受け取って腰のベルトに刺し、30cm程の木の前で居合いの姿勢を取る。
「良いかい?」
―― シュン! パチン。
水切りを振り抜いて鞘に収めた。
―― ズ、ズ・・・ズン!
サクラ「いつ、木を切ったんですか?」
「居合いって、俺の記憶だと鞘から抜く時に鞘の中で刀の速度を加速させてるんだ。そして、定めた的に振ったら戻して納める。これが全て1つの動作なんだ。」
フジナ「鞘の中で加速させるんですか・・・動作は1つ。鞘に戻すまで・・・やってみます。」
フジナが同じ姿勢を取って15cmほどの木に向き合う。
―― シュ、ガツッ!
水切りが木の幹の半分ほどで止まった。
「うん。切れなかった理由がわかる?」
フジナ「まだ技術が追いついていません。」
「多分違うと思う。」
思っていた答えと違ったのか、フジナだけじゃなくナナイも他のみんなも驚いた表情をしている。
「この世界にはスキルがある。何故か【居合い】ってスキルまであった。そのスキルをフジナは持ってる。なら出来るはずなんだ。強引な理由だけどね。
でも、この世界のスキルってそう言うもんだと俺は思ってる。ただし、出来るって事と何処まで出来るかは別だよ。そこは得意不得意と努力の度合いかな。」
ナナイ「じゃあなんで出来なかったの?」
「疑っちゃダメなのさ。何故かスキルの無い世界から来た俺の方がスキルが有れば出来るって疑ってない。迷いがないのさ。」
ナナイ「迷いがない・・」
フジナ「もう一度やってみます。」
フジナが同じ大きさの木の前で姿勢を取った。
―― シュン! パチン!
―― ズン!
ボタン「出来た!」
ツバキ「フジナも凄いですが、シグレ様はやっぱり・・・」
「ツバキ。これはチートじゃないから。俺なりに考えた答えだから間違ってるかも知れないんだからね。」
フジナ「いえ、間違いなくシグレ様がチートです。疑うな。シグレ様を疑うなの一心で水切りを振ったら切れたんですから。」
「・・・えーと、【示現流】も同じでいけるはず。あの時の構えは示現流〈蜻蛉の構え〉って言って、示現流に二の振りいらずって言わせた構えなんだ。」
サクラ「二の振りいらずと言うのは?」
「一振りに全てを込めて振る。だから届かなかったら負けても仕方ないっていう全身全霊の一振りさ。
これは刀じゃなくても出来る。構えも我流でも良いと思う。必要なのはこの一振りに!って言う強い意識だと思う。」
ボタン「なら、私の〈鉈落とし〉も?」
「もちろん。ボタンの鉈落としなんか、そもそもが一撃必殺なんだから。」
この後サクラの気配探知でゴブリンやオークを見付けてはフジナ、シユナの経験値にしていった。
フジナは積極的に居合いを使って自分の技にする努力をし、結局午前中だけで2人のレベルは17になった。
そろそろ三の鐘だとサクラが言うので昼食をとる事にした。
休憩と聞くとさっそく女子達はセルフボックスに入る。フジナとシユナも同じだ。
10分後にパラパラと出てくるのはうちの定番だ。
フジナ「このセルフボックスは何より素敵なスキルですね。」
シユナ「私もそう思います。男の方を気にしなくて良いのが――」
ナナイ「そう!冒険者をやっててトイレ事情が1番大変だったのよ。」
サクラ「これだけでシグレ様から離れられません。」
「ええー!俺の価値ってセルフボックス分の価値なの?」
アカネ「ふふ。もちろんそれ以上ですよ。」
「あー良かった。セルフボックスがなかったらどうなるんだろうって真剣に考えちゃったよ。
しかし、此処は魔物が濃いね。午前中だけでゴブリンが23匹にオークが25匹だ。」
ナナイ「セグルドが商業の街になった理由の1つでもあるの。まず素材があって人が集まって、そこに物資も集まるようになって発展したって聞いたわ。」
「こんな森が四方を囲んでるならセグルドが栄えるのも頷けるな。」
今日のお昼は朝ご飯を炊いて作ったお握りだ。具は昨日買ったサーモンキングを切り身にして塩焼きにした。鮭お握りだ!
「うん!美味しい!」
サクラ「あ・・・美味しい!」
アカネ「この塩っ気が良いですね。」
ナナイ「ほんと、魚の塩焼きがなんとも言えないわね。」
ツバキ「これは・・・新発見です!」
ボタン「私も手伝ったの。たくさん作ったから!」
フジナ「ほんと美味しい!」
シユナ「これは幾つでもいけそうな感じです!」
大好評だった!
お昼を食べ終わり再び狩りを再開した。
「さて、シユナ!精霊魔法を試してみようか?」
シユナ「・・・はい。シグレ様のご命令なら。」
「命令じゃないが、まあやってみて。」
シユナ「はい。では――精霊よ私の前に・・・――はぁはぁ。」
「うん。シユナ、午前中に俺がスキルの事を言ったの覚えてる?スキルがあれば出来るはずだって。疑っちゃいけないって?」
シユナ「はい。聞いていました。」
「シユナは精霊を見た事ある?」
シユナ「有りません。」
「シユナは精霊を信じてる?居ると思える?」
シユナ「それは・・・正直、半信半疑です。先ほども言いましたが見た事がありませんから。」
ナナイ「あっ!そういうこと?」
ボタン「どういう事?ナナ姉!」
「気づいた?シユナ、精霊は居るんだ。居るんだよ!だって精霊魔法が有るんだ。この世界に精霊が居ないなら精霊魔法は存在しないはずなんだ。」
サクラ「あっ、疑っちゃいけない・・ですね?」
ボタン「私も解った!」
「そう言うことさ。シユナが精霊を呼び出せないのは精霊を信じていないから精霊が応えないんだよ。」
シユナ「私が信じていないから・・・ですか?」
「そう。シユナこっちにおいで。」
シユナを呼び寄せ背を向かせシユナの背中に俺の掌を当てた。
「俺の掌が解る?」―― 「解ります!とっても温かいです。」
「俺の掌を感じてるように、精霊も居ると信じてもう1度やってみようか。」
シユナ「はい!―― 精霊よ!応えて。応えなさい!」
『―― グン! なんだ・・・俺の魔力がシユナに流れていく・・うぉ・・・』
みんなには気づかれていないが、シユナの背中越しに俺の魔力がもの凄い勢いで吸い取られていた。
―― ポゥ!
シユナの前で緑の小さな光が灯った。そして、見る間に5mは有ろうかという大きな魔法陣に姿を変え浮かび上がった。
『とんでもねー!魔力の半分以上、いやもっと持ってかれてるな・・・あっ、魔力の動きが止まった!』
魔力の動きが止まると魔法陣がスーーーっと地面に降りて来た。
それは不思議な光景だった。
魔法陣が地面すれすれで止まると、その中央に泡状の緑の光が沸き立ち人型を造りだしていく。
そして、泡立つ光の明滅が治まると、緑の髪に緑の衣を纏った絶世と言っていい美少女が立っていた。
『でも幼女?だよね、絶壁だし、小さいし。』
身長130cmほどの幼女はシユナと同じ翡翠色の瞳をしている。
「懐かしい臭いのもとは、お主か?」
シユナ「臭い?臭いと言うのは?」
「あの樹の臭いに誘われて召喚の儀に応えたが、何故お主から・・・いや同じ臭いが他に5つ。
特に、おい!お前じゃ!そこの男、何故お前だけ臭いが強い?」
「えーと、その前に1つ聞いて良いか?君は誰?」
「男、妾を知らんのか?妾こそこの世界の精霊の女王〈エンシェントドライアド〉じゃ。おい男、頭が高いぞ!」
「左様ですか。で、その臭いって言うのはどういった臭いなんでしょ?」
「ん?質問の多い男じゃな。妾と共に古の時を過ごした大樹イグドラシル、お前達が言う〈世界樹〉じゃ。」
世界樹でピンときた。
「これですかね?」
収納から女神イサドラ様から渡された世界樹の雫の入った瓶を出した。
「それは・・・あの樹の雫。何処でそれを手に入れた?」
「これは俺が女神イサドラ様からいただいた物だ。」
「イサドラ様から?イサドラ様がお主にそれを渡したのか?盗んだんではあるまいな!」
「いやいや違いますって!俺はシグレ。渡り人だ。この世界に召喚される時女神イサドラ様からこれを預かったんだ。願いを叶えて欲しいってな。」
「召喚?・・・イサドラ様が・・・でなければあの樹の雫は・・・そうか・・・」
シユナ「あのー、呼んだのは私なんですが・・・」
「ん?ああすまんな。と言う事はお主と他の者の臭いは雫を浴びた時のか?」
シユナ「はい。シグレ様にあの雫で火傷を治して貰いました。」
「なるほどの。男、褒めてやる。」
「シグレだ!名前で呼んでくれませんかね。」
「ふん。男など・・・お主最初に妾を見た時失礼な事を考えたろ?解っておるのだ。男など胸の大きさでしか女を見ん!」
何か凄いコンプレックス抱えてそうだな。
「もしかしてエンシェントドライアド様は心が読めたりするんですか?」
「読めんでも解るわ!男共は昔から同じなんじゃ!だから嫌いじゃ!」
「そうか・・・心が読めないなら気を使う事もないな。
おい絶壁、呼び出したシユナと契約するのか?」
「き、貴様!絶壁?言うに事欠いて妾を絶壁と言ったな!
マンドラゴラの声で鼓膜を潰してやる!それにそれに・・・」
絶壁美幼女が真っ赤になって声を張り上げている。
シユナ「あのエンシェントドライアド様。落ち着かれてください。シグレ様の発言は私が謝りますから。」
「ふーふー・・・。お前は良い子じゃな。そうよな呼び出しに応じたのは妾じゃ。契約をせねばなるまい。良いじゃろ、あの男じゃないからな。」
「シグレだ!絶壁。」
「き、貴様は・・・」
サクラ「シグレ様。揶揄わないでくださいね!」
アカネ「そうですよ。まずは契約を進めないと。」
「はーい!」
「なんじゃ女どもには素直じゃな。そうか!よし契約をしよう。そうすれば男、妾にもかしずけよ?」
「サクラ達を良く見ろ。胸の成長が違いすぎだ。俺にお子ちゃま趣味はない!」
「ぎ、き、貴様は・・・」
ナナイ「シグレくん!話が進まないから。」
ボタン「そうだよシグ兄。楽しんでるでしょ?」
フジナ「シグレ様。まずは契約です。それからです。」
「はーーーい!」
「ふーふーふー・・・この・・・まあ良い。お主名は?」
シユナ「シユナ。シグレ様にいただいた名です。」
「そうか。気に入っておるようじゃな。シユナ、妾に名を付けろ。名付けをもって契約はなる。」
シユナ「名前ですか?名前・・・」
困り顔のシユナが俺を見る。
「まあ案としてだが、俺の世界で女王と言えば〈エリザベス〉だ。愛称はエリザ。」
「エリザベス・・・男、良い名ではないか。」
気に入ったようだ。
シユナ「では、名前はエリザベス。愛称はエリザです。」
この一言を切っ掛けにシユナとエリザベスの足下に魔法陣が現れた。
魔法陣から光が立ち上がる。
「古の約を此処になす。我に名を与えしはハイエルフ、シユナ。与えし名はエリザベス。その名を受け入れ契約とする。」
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