【珈琲】
良い朝だ!
何度目だろ、この出だし。
でも、スッキリ爽やかな良い朝だ!
昨日は最高だった。フジナとシユナを美味しくいただいて、久しぶりのサクラ達には爆発してしまった。
一の鐘が随分前に鳴ったけどサクラ達はまだ寝てる。
『・・・思い出した。昨日は明け方まで頑張っちゃったんだ。』
ん。だって7日ぶりだったし。
オレハワルクナイモン!
そっとベッドを抜け出して朝風呂に向かった。
「あーーー最高だ!」
―― カラカラ・・・
サクラ「シグレ様。おはようございます。ん・・・」
「ん・・・おはようサクラ。やっぱりサクラは起こしちゃうか。」
サクラ「はい。私の気配探知は眠ってても有効ですから。それに、特にシグレ様の動きは気にしてるんです。」
「あらら、サクラからは逃げられないな。」
サクラ「そうですよ。ふふ・・それにみんなも、あっほら!」
―― カラカラ・・・
ツバキ「おはようございます。シグレ様。」
アカネ「シグレ様、おはようございます。」
ボタン「おはよう。シグ兄。」
フジナ「シグレ様。おはようございます。」
ナナイ「シグレくんおはよう。」
シユナ「おはようございます。」
「みんなおはよう!」
順番に我が家の挨拶のキスをして全員が湯船に浸かった。
シユナ「お風呂が贅沢なのに朝からなんて・・・信じられません。」
「うちは休みの日の朝はこうして朝風呂って決めたんだ。決めたんだけど中々思い通りに休みを取れてないんだけどね。」
ナナイ「そうね。でもちゃんとベッドの鬼は出るのよね。」
フジナ「ベッドの鬼?」
サクラ「昨日のようなシグレ様です。」
フジナ「確かに。まさかあんなに求められるなんて・・」
シユナ「でも・・・幸せでした。」
アカネ「良かったね。シユナ。」
ナナイ「しかし底なしよねシグレくんは。2人も増えたのに最後は私達全員気を失っちゃったし。」
ツバキ「昨日は特にでした。」
ボタン「うん。今までで1番だった。」
「それはほら、ずっと護衛で出来なかったから。それにフジナとシユナが加わって張り切ったというか・・」
ナナイ「ほんとにそれだけ?なんかチートを隠してない?」
「・・・実は言ってなかったけど――」
ナナイ「ウソ!ホントに有ったの?冗談のつもりだったのに!」
そう言われるとまた言いづらくなるんだけど・・
サクラ「どんなチートなんですか?」
「チートって・・【性豪】って言うスキルなんだけど、サクラ達とエッチを経験したら貰っちゃったみたいで。ははは。」
ナナイ「どんな効果が有るの?」
「えっ?なんか頑張れちゃうみたいな・・かな?」
「「「「「「「・・・・・・・」」」」」」」
サクラ「みんな!これからは真剣に体力増強に励みましょう!」
アカネ「気合いを入れてシグレ様のお相手をしないと!」
「「「「「「了解!」」」」」」
「いや、あの・・お願いします。」
朝風呂を堪能した後、ノンビリ朝の定番サンドイッチを食べて二の鐘を聞いて馬車の外に出た。
「そう言えば、ロレンとギルドに行く時間を決めてなかったな。」
ボタン「あ、シグ兄!カタリナさんが出てきたよ。」
ロレンの馬車からカタリナが降りてきた。
カタリナ「おはようシグレくん、みなさん。」
「おはよう。カタリナ、ロレンは?」
カタリナ「まだ寝てるのよ。疲れてるみたいで。」
「疲れた?昨日何かしたのか?」
カタリナ「えっ?う、うん・・・ちょっとね。」
―― パタパタパタ・・・
何故かうちの女子達が一斉にカタリナを取り囲む。
「もしかして・・・そう・・・ロレンから?・・・もう埒があかなくて・・・じゃあ強引に?・・・みんなで・・・ロレーヌは・・・一緒に・・・首尾は?・・・バッチリと・・・良かったです・・・エへへへ・・・」
「ねえねえ、なんの話?」
「「「「「シグレ様、くんには関係ない話!です!」」」」」
「えっ?あ、はい。すいません・・・・」―― 恐い。
ナナイ「シグレくん。カタリナが、ロレンが午前中は使い物にならないからギルドは午後2時でお願いだって?」
「了解。俺達は市場と家具屋に行って後は雑貨類を廻ってこよう。」
「「「「「「「はーい!」」」」」」」
大きな市場に向かい街を良く知るフジナとシユナを先頭にしてセグルドの街並みを見ながらゆっくり歩いていた。
「そうだ。フジナ、珈琲って聞いた事ない?」
フジナ「珈琲ですか?・・・聞いた事無いですね。どんな物なんですか?」
「あまり背の高くない木に赤い実を付けるんだけど、その実の種を乾燥させて煎って使うんだ。」
フジナ「赤い実・・・口にすると興奮するとか有りますか?」
「ああ、カフェインが入ってるから興奮するって言う人もいるね。」
シユナ「フジ姉様、〈赤の木〉の実かも知れませんね。」
「赤の木?」
フジナ「名前の通り赤い実を付けるので赤の木と呼ばれているんです。少し興奮する作用があるので食用にはなっていません。」
「おおーそれっぽいな。何処に行けば手に入るかな?」
フジナ「そうですね、私が小さい頃は薬草店にもあったんですが効果が微妙なので扱われなくなったはずです。」
シユナ「フジ姉様。火傷する前にセグルドに来た時、市場で野菜を売ってるおばさんが持っていました。」
「じゃあ市場に行けば買えるんだ?」
シユナ「それが、荷物を持つと疲れるので時々囓って疲れを紛らわせるんだと言ってました。」
「なら市場に行けば手に入りそうだな。良いぞ、希望が出てきた!」
セグルドの市場はさすが商売の街、サラケス以上に広かった。
「みんなも欲しいものがあったら買って良いからね。」
「「「「「「「はい。―い。」」」」」」」
大きな屋根しかない市場に端から入り順番に見ていく。
流石だと思ったのは、サラケスでは探すのに苦労した醤油や味噌、そして米を売っている店をすぐ見付けられた事だ。
さっそく野菜を買いがてら立ち寄った店で赤の木の実の事を聞いてみた。
「ん~~昔は疲れた時よく囓ってたもんだけど、最近はあんまり見ないね。」
こんなやりとりを何件か繰り返していると俺にとっては見なれた美味しそうな魚を見付けた。
「おっちゃん!この魚なんだけど?」
「これはサーモンキングだ。川に遡上してきた奴だ。」
『サーモンキング?キングサーモンじゃダメなのか?まあいいか。』
「やっぱりな!なあ、これ中が橙色とか?」
「ああそうだ。塩を振って焼くと美味えぞ!流石に生はこの時期しか並ばないんだ。」
「おっちゃん!このデカいの5匹全部くれ。」
「5匹?金貨1枚になるぞ?」
「問題ない。その代わり捌いてくれないか?全部3枚におろしてしてくれ。頭も骨も貰っていく。ハイよ!金貨1枚だ!」
『ヨッシャー!これでお握りの具ゲットだぜ!』
魚屋から3枚おろしを受け取って市場の散策を続けると、また面白い物を見付けた。
「おじさん。これ白味噌か?」
「良く知ってるな!この白味噌は入ってくる量が極端に少ないんだ。だから、この市場でも扱ってるのは俺くらいさ。売り切れたら今度何時入ってくるか解らないから早い者勝ちだぞ!」
「ならこの壷3つ全部貰うよ。」
サラケスで買ったのは赤味噌だ。俺は白味噌好きなので此処で出会えたのは実にありがたい。
フジナ「シグレ様は豪快な買い方をしますね。」
ツバキ「毎回こんな感じです。」
ナナイ「お店の人には受けが良いのよね。」
フジナ「店主は上客にはサービスしてくれますから。」
白味噌の壷を買い占めたところでボタンとシユナがやって来た。
ボタン「シグ兄、有ったよ!」
シユナ「持ってる方を見付けました!」
「良くやった!案内して!」
ボタンとシユナに手を引かれて行った先は野菜売りの店だった。
ボタン「ほら、あれだって。」
野菜の陳列棚の奥、どう見ても売り物を置くようには見えない場所に枝に付いたままの赤い実が有った。
「おばちゃん。その赤いのは赤の木の実だろ?」
「ああそうだよ。疲れた時に囓ってるんだ。多少は元気になる気がするからね。」
「見せてくれないか?頼む!」
「ああ良いけど。はいよ!」
野菜売りのおばちゃんから枝を受け取り、2つほど実を取って潰してみた。
「ビンゴ!これだ!」
中から見なれた珈琲豆が出てきて思わず叫んでしまった。
「うぉい!吃驚したね!なんだい、どうしたんだい?」
「おばちゃん。この実はいっぱい有るのか?」
「村に帰れば沢山有るよ。昔、薬師に卸すために植えてた物が自生して繁殖してるんだ。今は売れもしないのに沢山生えて困ってるのさ。」
「おばちゃん。俺が買い取ろう。この実だけで良いんだけど、どの位集められる?」
「そうだね・・・その頭陀袋で幾つになるかね。家の周りだけでもかなり有るから。」
おばちゃんが何でこんな物を?と訝しんでいる。
「おばちゃん1日の稼ぎは幾らだ?」
「えっ?そうだね、これ全部売って大銀貨3枚なら稼いだほうかね。」
「良し!俺がおばちゃんのこの野菜全部大銀貨3枚で引き取る。その代わり、村に戻って赤の木の実を集めてくれ。
そうだな、その頭陀袋1つ大銀貨3枚で引き取る。ただし実の赤い物で中のこの種だけで良い。どうだ?」
さっき出した種、珈琲の生豆を見せた。
「うーん・・・つり上げる気は無いんだけど種まで出すんじゃ人手がいるね。うちの家族に手伝わせるけど大銀貨3枚と銀貨5枚でどうだい?」
「はは上手いな。なら大銀貨4枚。良いか?」
「本当かい?良いよ、やるよ!」
おばちゃんが俄然やる気になったようだ。
「いつもって来れる?」
「そうだね・・・明日1日くれたら取れるだけ取ってきてやるよ。」
「じゃあ明後日また来る。」
前金がわりに大銀貨3枚で野菜を全部買って収納に入れた。
ナナイ「あっサクラこっちよ!」
サクラ「シグレ様がニコニコしてるようですが、どうしたんですか?」
ツバキ「お目当ての物が見つかったんです。明後日持ってきて貰う事になってご機嫌なんです。」
アカネ「良かった!サクラと奥に行ってみたんだけど中々見つからなかったの。」
「ふふ、さぁみんな!自由に好きな物を買ってきなさい。そうだお金を渡しておこう。ん?幾らが良い? 1人白金貨1枚で良いかな?」
―― ビシッ! ナナイに後ろからチョップを食らった。
「痛い・・」
ナナイ「はーい、浮かれない!」
フジナ「そうですよ。1人づつ白金貨なんて必要ありません。無駄遣いはいけません!」
「すいませんでした・・・」
アカネ「そうだ、奥の肉屋にミノの肉がありましたよ。」
「あの美味しい肉か?いいね買って帰ろう。」
その後ミノの肉と足りなくなってきたオリーブオイルや小麦粉、一緒に並んでいた大麦なんかを買い込んで市場を出た。
家具屋に向かい昨日の店長を呼び出して収納に入れていたベッドと買い換えるつもりで持ってきたダイニングセットやリビングのソファを引き渡し、新たにダイニングセットとソファセット、チェストとギアドの馬車で手に入れた白磁用の食器棚を購入した。
家具屋を出て2軒隣にあった雑貨店に入り此処でも細々と必要な物を買い足した。
ツバキ「この後はどうしますか?」
「そうだな、先にフジナとシユナのバトルドレスかな。」
ナナイ「そうね。2人にもダンジョンや魔物狩りに行って貰うなら必要ね。」
話をしながら雑貨屋を出て、歩きながらナナイに思い出した事を尋ねてみた。
「それでさ、以前ナナイが言ってたクランって何?チラッと聞こえてたんだけど。」
ナナイ「覚えてた?簡単に言えばパーティーの集合体ね。幾つかのパーティーが集まってクランを結成するの。
クランの利点は複数のパーティーを同時に運用出来る点ね。ただし、勝手には作れないわ。ギルドに申請して許可を貰う必要があるの。」
「ふーん、ギルドに申請が必要ね。って事は、ギルドからクランへの指名依頼なんてのも有りそうだね?」
ナナイ「勿論有るわね。有力なクランに成るほど、ギルドから割の良い依頼が入るみたいよ。
そうそう、クランの利点がもう一つあってクラン内のパーティーは6人以上でも良いの。例えば、うちならパーティーヒイラギは8人でも大丈夫になるの。当然この8人で狩りに行けば今まで通りパーティーの実績になるわ。」
「通常パーティーは6人。これは経験値の共有が6人までだからだよね。それがクランになると、経験値の共有は出来なくなるけどパーティーの人数制限が解除されるわけか。」
ナナイ「そう言うこと!」
「冒険者の経験値についてはクランで決めろって事か。何にしても俺達には好都合だよね。逆にクランの問題点は?」
ナナイ「維持が大変ね。クランの運営にギルドは一切口出ししないから、クランのトップが自由にやれるの。そのかわり、クランメンバー全員の責任を負う事になるわ。
パーティーリーダーなら最大5人の面倒ですむけど、大きなクランになると何十人、百人単位のも有るから当然いざこざも日常茶飯事ってクランも沢山有るのよ。」
「なるほどね。その点はうちなら問題無さそうだな。」
ナナイ「ただ、私が冒険者を休んでから規約が厳しくなってなければ良いけど。規約はしょっちゅう変わるから。」
「まずは聞いてみるさ。それからだね。」
セグルドの街を歩き目に付いた装備屋に入ってフジナとシユナのバトルドレスを買う。
「さて次は服屋かな。フジナやシユナの物も揃えてあげたいし。みんなも、もちろん買って良いからね。」
ナナイ「ふふ。なんとなくそう思ってたわ。」
サクラ「そうですね。」
アカネ「昨日は突然鬼が出ましたから。」
ツバキ「予感はしてました。」
フジナ「服は必要な物は持ってきましたよ。」
シユナ「私も持参した物で十分ですが?」
ボタン「鬼が出た翌日は服屋に行くみたいなの。ねぇシグ兄?」
「な、何言ってるんだボタンは!そうじゃなくて、みんなが綺麗なのが1番だからだよ。」
アカネ「そう言うことにしておきましょう。」
ナナイ「じゃあお店を選ぼうか。フジナ知ってるお店ない?」
フジナ「なら、向こうに良いお店が。」
サクラ「じゃあそこに行ってみましょう!」
フジナの記憶にあったお店はなくなっていたが、周辺にあった違う店でキッチリ1時間服を選び、馬車溜まりに戻ったのは三の鐘を過ぎてからだった。
お昼は作り置きしていたお握りを焼く。今日は買ってきた白味噌の焼きおにぎりだ。大好評だったと言っておこう!
昼食を済ませ一休みしたところでカタリナと約束した2時を迎えた。
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