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【護衛依頼終了】

 馬車の金庫には白金貨500枚分が溜め込まれていた。


 この後、2日ほど後になるが、俺達はギアドやアルノル達襲撃者のカードに入っていたお金も手に入れている。


 初日に襲撃してきた寄せ集め軍団は冒険者ギルドのカードを持っていたが、まあ悲しいくらい微々たる額しか入っていなかった。襲撃した後の取らぬ狸の皮算用に胸を躍らせていたのは間違いない。


 ギアド一味については、手下の中に白金貨1・2枚溜め込んでる者が数名いた程度で、殆どは金貨大銀貨数枚程度しかカードには入っていなかった。

 特に悲惨だったのがギアドだ。(かしら)だったはずなのに手持ちでポケットに大銀貨3枚が入っていただけでカードにいたってはゼロ、何も入っていなかった。おそらくコティスが持たせてくれなかったんだろう。

 そのコティスのカードには白金貨で170枚分が溜め込まれ、金貨12枚を拡張ポーチに入れていた。


 アルノル一味は商業ギルドのカードを持っていたが、商店主と登録されていたアルノルのカードに白金貨で220枚と少しのお金が入っていただけで手下共のカードは全て空だった。因みに手下共は所持金もゼロだ。

 これは推測でしかないがお金の私有が認められていなかったんだろう。カルト教団では普通に当たり前の事だから。アルノルのカードに入っていたお金もデュラト聖道国に送る物資用の資金だったのかも知れない。


 金庫のお金を半分にしてレナスの疾風にはアルノルの分を、俺達も金庫の半分と主にコティスの分をもらい、残りの襲撃者とギアド一味の分はまとめて折半した。


 馬車はギアドの性格が幸いして想像以上に清潔だったので掃除はまったく必要なかった。

 大きな家具以外の要らない物は2階の収蔵庫を物置がわりに使う事にしたらしい。

 その家具類も、目の前に積まれた金庫の半分の白金貨250枚であからさまに上機嫌になったカタリナが、2階のドレッサーを残して全ての家具を買い換えると宣言していた。


 馬車には後部にも扉があり商品を入れる場所が設けられていたが、中には引き馬用の手入れ道具と飼い葉が入っていた。


 そして俺は別なところに感心していた。

 逃げる事を想定してなのか、車輪や車軸の造りが他の馬車と違っていたからだ。

車輪は太く2重に鋲で補強され、車軸も太く車軸を支える金具も補強されていた。なにより板バネが使われていた事に驚いた。これでかなり振動が抑えられているはずだ。

 当然ながら構造の分重くなっているのでサービスで重量軽減の魔法を掛けておいた。もちろん内緒でだ。




「侯爵様。馬車を確認しました。」


エイステン「何か特別な物が有った?」


「はい。金庫にこれが入っていました。」

―― カタ!

 金庫から出てきたブルーの小瓶をテーブルの上に出した。


エイステン「・・・やっぱりギアドも関わっていたのかな。」


「いえ、それはないと思います。金庫からこれが出てくるまでサクラは臭いがしなかったと言ってました。」


エイステン「偶々手に入れた?」


「あくまでも俺の推測ですが、ギアドはモーガン商会がブルーを扱っていたのは知ってたんじゃないですかね。」


エイステン「どうしてそう思う?」


「これを金庫にしまっていたからです。()()()()にでもするつもりだったかも知れません。

 あの時の彼奴は盗品しか頭になかった。だから単独で俺達を襲撃した。此のブルーはモーガン商会と交渉するつもりで持ってたんじゃないかと。」


エイステン「()()()()か。ギアドの目的はお金ってことだね?」


「彼奴が組んでいた女、コティスはお金に五月蠅かったそうです。コティスが金の臭いを嗅ぎつけてギアドを焚き付けてたかも知れません。」


エイステン「コティスに煽られてか。有りそうだね。他にはなかったのかい?」


「ブルーはそれ1本です。それとこれです。―― ドサ!」


エイステン「これは?―― パラパラ ――台帳か!マメな事していたもんだ。

 しかし・・・面倒な物を残してくれたものだ。」

「俺もそう思います。」


ロレン「何が面倒なんだ?」


「取引相手が書いてあるのさ。」

ロレン「ああなるほど・・・」


エイステン「見たんだよね?感想は?」


「モーガン商会とリンデン公爵が多いですね。()()()()()()()()()()です。」


エイステン「はは、そうだね!僕も()()()()()()()だよ。」


―― ガシャガシャ・・・トントン、カチャ!

クレイマン「侯爵様失礼します!」

 大きな音がして息を切らせたクレイマンが駆け込んできた。


エイステン「どうした、そんなに慌てて?」

クレイマン「王立騎士団が到着しました!」


エイステン「えっ!もう来たの?まだお昼前だよ!」


クレイマン「既に北門から入場し宿営先の練兵場に向かっています。」


エイステン「はぁ・・・シグレくん、ロレンくん。馬車に戻っていつでも引き渡せるようにしてくれるかい。生真面目な彼奴の事だすぐここに来ると思うから。」


 彼奴というのはティナのお父さんヘンウッド侯爵の事だろう。

「「解りました。」」


エイステン「ああそれと、お昼ご飯は遅くなるからね。彼奴は融通が利かないから。手続きが終わるまで無理だからね。」

 話しているエイステンが既にあきらめ顔だ。これは時間が掛かると考えた方が良さそうだ。


「ははは、了解です。ロレン行こう。」



 それから30分もしないうちに

「屋敷の方が騒がしいな。」


サクラ「はい。少し前に騎士の方が沢山来たようです。」


クレイマン「シグレ!ロレン!出てきてくれ!」

 クレイマンに呼ばれ馬車の外に出た。


エイステン「ライナー、彼がシグレくんだ。そしてロレンくん。2人のパーティーにはここまで良くやって貰ったよ。」


 エイステンがライナーと呼ぶ騎士は身長が180cmくらい、見事なブロンドの短髪で燻し銀のような落ち着いた鎧を着込んでいた。


ライナー・ヘンウッド 侯爵 レベル63 43歳


『ティナのおやじさんレベル高けーな!それにイケメン・・敵だな。』


ライナー「王立騎士団第2中隊隊長のライナー・ヘンウッドだ。」


「冒険者ヒイラギのシグレです。」

ロレン「レナスの疾風のロレンです。」


ライナー「サラケスからセグルドまでご苦労だったな。此処からは我々が責任を持って預かる。」


ロレン「では、こちらに。―― 此の馬車です。後ろの扉の鍵はアルバータス侯爵様が持っています。」


ライナー「了解した。ティルダ!」

ティルダ「はい!警護に就け!」

「「「「「はい!」」」」」」

 号令一下、同行した騎士が規律正しく持ち場に動く。流石、王立騎士団!と感心しておこう。


ライナー「エイス。2人と少し話をしたい。」

エイステン「じゃあ屋敷に行こう。2人も来てくれ。」

「「はい。」」



 4人で侯爵屋敷のあの広い応接間に入った。


ライナー「改めてここまでご苦労だった。襲撃者の中にアルノルという男がいたらしいが?」


「はい。マルド村で待ち伏せしていた奴らの指揮を執ってました。」


ライナー「そうか。儂の部下だった。2年前まで副官をしていた。」

エイステン「えっ!」

 驚いた。エイステンのみならず俺もロレンも驚いていた。


ライナー「突然騎士団を辞め王都から姿をくらましていた。

〈牙折りのアルノル〉何処で見付けたのか鋏のような鍔で剣を折るのが得意だった。倒したのは――」

「ロレンです。」

 ライナーの視線がロレンに向いた。


ロレン「倒したと言っても左腕を怪我してて使えなかったんです。それでやっとでした。」


ライナー「それでも大したものだ。元部下の不始末、本来なら儂が裁いてやりたかったが世話になった。礼を言う。」

 王立騎士団の中隊長、なにより公王国の侯爵様がなんの躊躇もなくロレンに頭を下げている。


ロレン「あ、いや・・・」

 そりゃ恐縮するよね。


ライナー「それとシグレでいいか?娘が、ティナが世話になった。デランドから聞いたよ。ずいぶん無謀な事をしていたのを窘めてくれたそうだな。それに指導もしてくれたとか、君にも礼を言いたい。」

 俺にも頭を下げる。

「それは、気にしないで下さい。」


ライナー「情けない父親でね、妻や娘に酷く当たる自分の親1人どうにも出来なかった。」


エイステン「出来なかったって、とうとう決心したのか?」

 何かに気づいたようにエイステンが言葉を返した。


ライナー「ああ、だからクリスティーを連れてきた。すまんな、落ち着いたら迎えに来る。」


エイステン「ああ話が見えないよね。こいつ奥さんを同行させてきたんだ。うちに暫く逗留させてくれって。

 ライナーと父親の仲が最悪でね。いよいよケリを付けるん・・だろ?」

ライナー「エイス、内々の事だ。」


エイステン「はは、すまんすまん。さて、ライナー受け取りにサインをくれ。それをもって依頼は完了だ。

 シグレくん、ロレンくん。君たちの昇格試験の評価だが・・・金貨1枚でSを付けるがどうだ?」


「良いですね。金貨1枚なら安い物です。でも天下の侯爵様が金貨で良いんですか?

 そうですね1人白金貨1枚出したら評価Sの他に何を貰えますか?」


エイステン「んーそう来たか。僕としてはBで良いから払わないを想定してたんだけどね。此処は素直に評価を付けるか。」

「それでお願いします。」


ライナー「お前、相変わらず下らんやりとりが好きだな!面倒くさい事を言わずサッと書いて渡す事はできんのか!」

 呆れ顔でライナーがツッコミを入れてきた。


エイステン「此のやりとりが面白いんじゃないか!お前やデランドと違って頭の構造が単純じゃないんだよ!」


ライナー「シグレも図に乗るから変につき合わなくて良いぞ。」

エイステン「余計なお世話だよ!」


 なるほど、このやり取りでデランドも含めて気の置けない友人関係だと言う事が良く解る。


「ヘンウッド卿、1つ質問して良いですか?」

ライナー「なんだ?」


「どうして到着が早かったんですか?」


ライナー「ああそれか。エイスにも聞かれたが実は理由という理由はない。」

「はぁ・・・」


ライナー「はは、すまんすまん。儂の隊は速さを信条にしてる。普段から行動は素早く行軍も無理なく速くだ。これを徹底した訓練の結果、他の隊より最低1日分は先に動ける。」


「兵は神速を貴ぶ。ですね。」


ライナー「兵は・・・?その言葉は?」


「〈兵は神速を貴ぶ〉用兵は迅速に行動する事が大切という俺の国の言葉です。」


ライナー「兵は神速を貴ぶか。良いな!気に入った!使って良いか?」


「気に入ったのならどうぞ、構いませんよ。」


ライナー「面白いな!シグレ、落ち着いたらお前とは色々話しがしてみたい。」


エイステン「まてまて、まさかティナをやるとか言い出すんじゃないだろうね?止めてくれよ。付かず離れずだ。なあシグレくん。」


 エイステンが視線で()()()()()()()()()()()と聞いている。

 どうやら昨日の意図は伝わっていたようだ


「そうして貰えると助かります。」


エイステン「シグレくん。これが依頼の達成報告書。こっちが2人の昇格試験の評価だ。これをギルドに提出してくれ。ああ、当然護衛の報酬も出るからね。

 それと、サラケスのデランドが王宮政務局からの成功報酬を肩代わりする事になってる。急がなくても良いが報告を兼ねてサラケスに戻って欲しい。」


「承知しました。」

ロレン「問題ありません。」


エイステン「良し。これを以って君たちの依頼は終わりだ。ありがとう。助かったよ。」


「依頼を全うしただけです。」

ロレン「無事に済んで良かったです。」



 4人で馬車蔵に戻った。

 騎士団が荷の積まれた馬車を馬車蔵から出そうとしている。


エイステン「ライナー!デランドから君にと預かっていた物が有るんだ。クレイマン、僕の馬車から降ろして奥方が乗ってきた馬車に入れてやってくれ。」


 クレイマンが騎士を数人引き連れてエイステンの馬車に入り少し大きめの宝箱のような物を引き出しライナーの馬車に入れた。


ライナー「デランドが?」

エイステン「珍しい物だから王都に着くまで開けるなと言ってたよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と笑ってたぞ。」


ライナー「はぁ?彼奴が寄越す物は面倒くさい物しか・・・・ないんだ。そうか、滅多に手に入らない物か。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()王都に戻ったら、デランドには無事に薬師院の金庫に入れたと言ってやる。」



 王立騎士団を見送るとエイステンが拡張ポーチから小箱を取りだし俺に差し出した。


エイステン「こっちはデランドから君にだ。ルシエラさん護衛の報酬だそうだ。」


 硯箱ほどの細かな細工のほどこされた箱を受け取った。

「確かに。」


エイステン「さてこれからどうする予定だい?」


「取り敢えず街に出て馬車溜まりに場所を確保します。ギルドに行ったり色々やる事があるので。」


エイステン「そうか。セグルドにも美味しいお店が沢山有る。楽しんでいってくれ。」

「稼いだ分がなくなりそうですね。」



 用意を済ませロレンの馬車と馬車蔵を出ると侯爵屋敷の大きな玄関にリーズともう1人女性が立っていた。

 亜麻色の髪に意志の強そうな目はティナによく似ている。言えばもう1カ所、ティナの薄い胸は母親譲りだな。


クリスティー・ヘンウッド レベル42 38歳


ルシエラ「クリスティー!」


 2人の前で馬車を止め、ルシエラを馬車から降ろした。

 ルシエラは5分ほどで戻ってきた。


「もう良いの?」


ルシエラ「はい。リーズとは今朝沢山話しました。クリスティーもリーズから聞いていましたから。挨拶だけで十分でした。」


 後で聞いた話だが、ライナーの妃クリスティーはルシエラとリーズの高等学術院の後輩らしい。卒業後ルシエラは薬師として、クリスティーは魔法師として王宮に入ったためとても仲が良かったそうだ。

 話しの最後に、ルシエラがお互い結婚では苦労したようですと笑った。


評価やブクマをしていただけると大変励みになります。

宜しくお願いします。

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