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【護衛依頼5日目】

 俺達はコルを出てから2時間走り続けて休憩を取っていた。

 コルの東門を抜けてすぐ、夜目が利くアカネとツバキを馭者にして俺の馬車を先頭にして駆け抜けてきた。

 俺とロレンはギアドの馬車の引き馬だった2頭のバトルホースに騎乗してだ。鞍を付けての乗馬は初めてだったがコルの街の大通りに出る頃には【乗馬】スキルを取得していた。相変わらず我ながらチートだ。因みにロレンはレナス村に居るときに練習していたらしい。


 夜の街道を走りきるために魔石カンテラを馬車の周りに下げ、侯爵とロレンの馬車には劣化防止と腐食防止の魔法も掛けている。もちろん秘密にだ。これで耐久力は格段に上がる。後は時速30kmの振動を我慢するだけだ。俺の馬車はタイヤとサスペンションで快適だけど。


エイステン「此処までくればニムの野営地までは20kmかな。しかし、日が落ちて此の速さで走らせたのは初めてだね。」


「どうしてコルの街を出ようと思ったんですか?」

 疑問だった事を此処で聞いてみた。


エイステン「えっ?動きが監視されてると思ったらムッとしたのさ。実は結構短気なんだよ。弱いくせにね。ははは・・・」

「はぁ。」

 意外な答えに気の抜けた返しをしてしまった。思慮深い人だと思っていたエイステンが実は直情型だったとは・・・


ロレン「侯爵様!シグレ!」

 馬の世話を終えたロレンが近づいてくる。


エイステン「さて、彼にも全て話して今後の事を決めようか。」




―― マルド村 朝6時 ――


―― ガラガラガラ・・・・

 荷馬車に男が3人。マルド村の西、ニムの野営地側から村の門に近づいてくる。


「止まれ!止まれ!」


門番「こんな早くどこから来た?」

「ニムの野営地からだ。此の村で待ち合わせしてたが遅れちまってな。夜通し走ってきたんだ」


門番「そいつはご苦労だったな。身分証を見せてくれ。」

「ああ、ほれ3人分だ。」


門番「どれ・・・中に入って良いぞ。」


「・・・そうだ、貴族の馬車が3台通っていかなかったか?」


門番「貴族の馬車?今日この門に来たのはお前らが1番だ。」


「そうか。馬車溜まりは何処にある?」


門番「入って道を真っ直ぐだ。宿屋がある。その横だ。」


 村に入った荷馬車が馬車溜まりを見付けると真っ直ぐに1台の箱馬車に近づいていく。

 箱馬車の側では数人の男が焚火台を囲んでいた。


―― ガラガラ。


「アルノル様は?」

「あれお前ら、ニムにいたんじゃ?」

「いいから!アルノル様だ!」


アルノル「どうした?お前達なんで此処にいる?」

「ニムの野営地にアルバータス侯爵の一団が現れたんです。」


アルノル「なんだと?」

「夜の9時頃です。馬に水を飲ませまてすぐ出て行きました。」


アルノル「見間違いじゃないのか?」

「間違いありません!あれは――」

―― ガラガラガラ・・・・・


アルノル「おい?」

「あれです!彼奴らです!」


アルノル「莫迦な・・・もう来たって言うのか。鳥は?連絡はなかったのか?」

「何も来てません。」

「アルノル様、村をそのまま出るようです!」


アルノル「予定を変えたのか・・・どうしてお前達が先に着いた?」


「おそらく追い抜いたんです。俺達は一度も休まずに来ましたから。此奴が【回復魔法】を使えたんで馬に掛けて飛ばして来ました。」

 説明していた男が横に立つ若い男を指さした。


アルノル「暗闇で見逃したか。でも何故?今日セグルドに入るつもりか?・・・どっちにしろセグルドに行かれるのは拙いな。

 みんなを起こせ!予定を変える。すぐに出るぞ!」

「「「「「はい!」」」」」



―― 10時間前 ――


エイステン「と言うわけだったんだロレンくん。」


ロレン「事情は解りました。簡単には話せない事も理解しました。それは良いんですが、これからどうするんですか?」


エイステン「それだよね。シグレくん、君の最悪の脚本は村を、()()()()()()()()()()()()()()だったね。」


クレイマン「な、そんな事出来るのか?」

 有り得ない。と言わんばかりにクレイマンに睨まれた。


「出来ます。ブルーを使えば。」


エイステン「そうか!敵さんが持ってない方がおかしかったよ!迂闊だった!」

 腑に落ちたらしいエイステンが捲し立てる。


エイステン「何食わぬ顔で僕たちを迎え入れ、襲撃の前にブルーで村人を骨抜きにすればいいんだ。」


「はい。()()()()()()()()()()のが第1で拘束する必要はありません。」


エイステン「おまけに僕らもブルーでおかしくなれば一石二鳥だ。しかし自分たちにも・・・ああそうか、使い慣れてれば最初から対処する方法を持ってる可能性もあるか。」


 実は使()()()()()()()()()()()()だけがわからない。ツバキの一族もその方法の会話を聞いていないからだ。

『出来れば後学のために聞いてみたいもんだな。』


「ただあくまでも俺の予想です。ですから、向こうの出方で対応するつもりでした。」


エイステン「ブルーを使うと仮定すると既に村が抑えられてる事はないね。あの村は冒険者も行き来が多い。行動するのは僕らが着いてからだ。」


「俺もそう思います。既に村に入り込んでるとは思いますがまだ手は出してないはずです。ですから、侯爵様とロレンはセグルドへ急いで貰います。奴らは俺が引き受けます。」


 俺の言葉を聞いたロレンが僅かに考えて口を開いた。

ロレン「待ってくれ。俺も残る。荷を、馬車はカタリナ達に任せて侯爵様と一緒に行かせる。

 俺にも依頼を受けた意地がある。〈骨喰〉に任せましたでは終われない!」


エイステン「いや、もちろん僕も残るよ。」

クレイマン「侯爵様!」


 侯爵の言葉にクレイマンが激しく動揺していた。麻薬であるブルーを使われるかも知れないと聞かされては侯爵の命を第1に考えているクレイマンにすれば当然だろう。


エイステン「クレイマン。今回のブルーポピに関する件は公王国政務局で決まった事だ。その責任者として僕がいる。僕にもこの件を受けた責任があるんだよ。」


 クレイマンがなんとも言えない表情をしている。この侯爵様は短気な上に頑固らしい。きっと、こうなった侯爵様をクレイマンでは説得出来ないんだろう。


クレイマン「・・・お命は必ずお守りします。シグレ!何か考えろ!いいな!」

「なんで俺に?」


クレイマン「お前の方が悪そうだからだ!儂は悪事が苦手だ!」


「悪事って・・・酷いな。ふぅーー、ならやりますか!

 どうするか・・・村の中は不確定要素が多すぎる。なら、村から引きずり出しましょう。」


ロレン「引きずり出す?どうやって?」


「おそらくニムの野営地にも奴らの見張りがいるはずです。」

 居る。ツバキから受けた情報の中に2日ほど前からニムの野営地を動かない馬車が居る事は掴んでいる。


「これから、できるだけ速くニムに行きます。そこで馬に水を飲ませてすぐ出ましょう。」


エイステン「待ってくれ・・・ああ、僕たちがすでにニムに来た事を教えるわけだね。」


「そうです。見張りは焦るでしょうね。コルから連絡は来ていない。なのに目の前に来ている。鳥を飛ばしたくても夜じゃ無理です。どうしてもマルド村に伝えに行きたくなると思いませんか?」


エイステン「そう言うことね。奴ら自身にマルド村の一味に連絡させるわけか。」


「はい。それと奴らを一カ所に集めたい。」

エイステン「あっ、なるほどね!それで僕らは?後を付けていくのかい?」


「いえ。出来るだけ速度を上げてマルド村の手前に行きましょう。その方がまとまった休憩が取れます。

 そして、ニムの野営地に居た連中がマルド村に入ったら間を置かず我々もマルド村を通過します。考える余裕を与えなければ、奴らは追ってくるしか手はなくなります。」


クレイマン「そんなに上手く行くのか?」


「迷いや弱気は棄てて下さい!上手くやるんです!此処からは俺達のターンなんですから!」

エイステン「ターン?」

「順番って言う意味です。」


「マルド村から引きずり出したら奇襲を掛けて追い込みます。その為にもマルド村からセグルドまでの地形をもう1度確認したいですね。出来るだけ詳しく。」


エイステン「ふふ。それは僕の仕事だね。まず村を出ると―――――――」




アルノル「用意を急げ!」


「アルノル様!我々は?夜通し走った為さすがにこれ以上は馬が・・・」

アルノル「後ろの馬車に乗れ。」


「アルノル様、手筈は?」


アルノル「奴らも必ず休憩を取る。良いか、奴らの休憩に出くわしたら馬車の進路を塞ぐように止めろ。馬車を飛び出したら魔法を使える者はすぐ準備しろ!良いか、全て殺せ!ヘルブラン、後ろの馬車はお前が率いろ。時間を掛けずに終わらせるぞ!」


ヘルブラン「承知しました。」


アルノル「行くぞ!」



―― ガラガラガラ・・・・


アルノル「しかし、何故予定を変えた?コルの子爵邸に入った事は連絡が来ていた・・・」


―― ガラガラガラ・・・・


「ツバキ。この馬車か?」

ツバキ「はい!この2台です。襲撃の手筈を話していたそうです。」


「良し!ボタン。馬車を出せ。」

ボタン「はーい!コハク!オウコ!」


 林の影に潜んでいた俺達は死角から馬車を出して2台目の馬車の後ろに付けた。


―― ガラガラガラ・・・・

「ヘルブラン様!後ろに馬車が!」


ヘルブラン「どこから湧いた・・・」

―― ガラガラガラ・・・・


「ボタン、オウコを奴らの馬の左に付けろ!」

ボタン「はい!行け!コハク!オウコ!」


 ボタンの合図でコハクとオウコは一気に後ろの馬車に並ぶ。コハクとオウコと馬車の性能の違いだ。


「アカネ!前の馬車だ!」

アカネ「はい!【風壁】」


「オウコ!ぶちかましてやれ!」

オウコ「ブルルーー!」

―― ガン!  ダン!


 前の馬車の馬がアカネが作った風の壁にぶつかり弾かれ右の草原に飛び込んで行く。不整地に入った馬車が勢いよく横転した。

―― ダダン!ガラ!ドガンザザザ・・・


 オウコが馬車の馬に横から体当たりをぶちかました。オウコに弾かれた馬が更に右の馬にぶつかり街道を外れ勢いよく右の草原に飛び出すと、足がおぼつかなくなった馬が転びその馬にぶつかった馬車が大きく跳ね上がり横転する。

―― ダダン!ガラ!ドガンザザザ・・・



 俺達は横転した先頭の馬車の側にコハクとオウコを留めた。

 既に横転した馬車の側にエイステンとロレンも待ち構えている。

 俺も2人に歩み寄ってエイステンの隣に立った。


―― ギッギッバタン!

 横転し歪んだ扉を開けて中から男が出ようと足掻いていた。

アルノル「く・・・」


エイステン「早く出て来てくれないか。聞きたい事があるんだ。」

 侯爵の容赦のない声が響く。


アルノル「貴様はエイステン・アルバータス・・・」

 強かに打ったのか男は左肩を押さえながら近づいてくる。


エイステン「記憶にないが会った事が有ったかな?」


ヘルブレン「あ、アルノル様!ご無事ですか?」

 2台目の馬車から出てきた男は頭から血を流しながらアルノルと呼んだ男の側に駆け寄った。


エイステン「さて、君らは何者なのかな?見た感じは冒険者と言うよりは商人、いや宗教関係者か?」


 侯爵の宗教関係者という一言に頭から血を流してる男の表情が変わった。


エイステン「なるほど。やはりデュラト聖教の関係者か。」


アルノル「貴様に話す事はない!」


「「「「「わー・・ぎゃ・・がぁ・・・」」」」」

 2台目の馬車から出てきた男達がカタリナ達レナスの疾風とクレイマン達騎士に次々と切られていく。


アルノル「なっ・・・」

 その惨状にアルノルの視線が釘付けになっていた。


エイステン「証人は君ら2人も居れば十分だからね。」


「「「「「ぎゃー・・何だ此奴ら・・・おい・・・」

 先頭の馬車の男達もサクラ達に一掃されていく。


ナナイ「こっちは6人でした!」

クレイマン「9人です!」


「17人か。ニムに3人だからマルド村の制圧を14人でするつもりだったのか。」


ヘルブレン「何故知ってる・・・」


「当たりだった?鎌を掛けただけだ。もう1つ。ブルーを染み込ませた葉っぱでも燃やすつもりだったんだろ?」


ヘルブレン「誰から――」

アルノル「ヘルブレン!奴の手に乗るな。貴様は?」


「ヒイラギのシグレだ。」

アルノル「貴様か。」


「聞いて良いかな。どうやってブルーの影響を回避する――」

―― タン!  キン!

 ヘルブレンと呼ばれた男がエイステンに斬りかかって来た。

 動きを見切った瞬間にエイステンの前に行き骨喰で剣を受けた。


「良い判断だけど、そんなに甘くないよ。」

ヘルブレン「甘くない?お前が俺に勝てればな、D級!」


―― キン!キン!キン!・・・・

 速い!上手い!ギアドと良い勝負だ。


「残念!お前程度じゃ届かない!」

ヘルブレン「何だとーーーー!」


―― カン!  ザン!

ヘルブレン「あ、あ・・・」

 首から血を吹き出してヘルブレンが崩れていく。


「級なんて目安でしかないよ。それだけで実力を測ったつもりだから負けるんだ。さて、1人になったな。」


アルノル「ならどうした。捕らえるか?」


エイステン「気が変わったよ。君のような者は何も話さない。何より僕は気が短くて面倒が嫌いなんだ。連れて行くのは嫌だね!」


「だそうだ。」


ロレン「なら、俺にやらせて下さい。」


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