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【ウクの夜】

 午後4時。ギアド一味を一掃した俺達は、ギアドとコティスの死体を回収して目的の野営地ウクに入った。

 死体を燃やさず回収したのは、侯爵から盗賊の頭目ギアドを回収したいと言われたからだ。

 侯爵から死体をギアドの馬車に乗せて運ぶと言われたので、死体も馬車も俺の収納に入れてしまった。と言うのも、無駄にセグルドまで車列を増やしたくなかったし、討伐報酬として馬車を俺達が貰う事になったので楽な方法をとる事にした。

 そうそう、馬車を収納に仕舞うと侯爵達にはメチャクチャ驚かれた。


 アカネの魔法でボロボロになった幌馬車はギアドの配下と一緒に焼いた。因みに焼いた配下の中にコルの街から来たと言っていた冒険者もいる。

 幌馬車を引いていたバトルホースは怪我が酷かったので安楽死させ、バトルホースは馬肉の最上位らしいので解体してロレンと分けることにしている。

 商人の馬車を引いていた2頭のバトルホースはロレン達の馬車の後ろに繋いでいる。これも盗賊の討伐報酬になった。



 ウクの野営地には既に3台の馬車がいた。2台が商人、1台が依頼に向かう冒険者パーティーだ。3組とも明日ラツーに向かうらしい。

 昨日と同じようにクレイマンが見張りの確認をして侯爵の馬車に近づかないように釘を刺す。

 俺は冒険者にウクの野営地からコルの街までの様子を確認して馬車に戻った。


「さて、野営の準備を始めようか。ナナイ!」

ナナイ「なに?」


「大丈夫か?」

ナナイ「うん。ありがとう。大丈夫よ。」


「そうか。なら一緒に侯爵の馬車に行こう。」

ナナイ「そうね。報告しなきゃね。」


 昼食の休憩の時、侯爵には簡単に話して終わっていた。ラツーとウクの間はコル街道で1番距離が離れている事もあり、先を急ぐため詳しい話はウクの野営地でと言う事になったからだ。


 ロレンと一緒に侯爵の馬車に行きクレイマンを入れて報告を始めた。


エイステン「なるほど。斧使いナナイの元パーティーメンバーか。そう言えば泥使いの二つ名を聞いた事があったな。」


ナナイ「まさか2人が盗賊になってたなんて・・・」


エイステン「気にするな。と言うのは簡単だが、難しいよね。忘れる事だ。彼らと君の人生の分岐が違ったんだよ。」


ナナイ「ありがとうございます。侯爵様。」


エイステン「さて、これで襲撃は終わりかな。この後の旅が楽になりそうで良かったよ。」

 いつも笑顔のエイステンの表情が殊更に和やかだ。


「侯爵様。後で個人的にお話しがあります。」


エイステン「ん?ルシエラさんの事かな?良いよ。食事が終わったら来てくれ。」


「ありがとうございます。」



 夕食後の片付けも終わり見張りの手順を決めて侯爵の馬車へと向かった。


エイステン「待っていたよ。それで話というのは?」


「はい。襲撃は終わっていないかも知れません。」


 思いもしなかった話だったのか、エイステンは口に運んでいた紅茶を飲まずにおいてしまった。


エイステン「どういう事だい?今日の盗賊は本命なんだろ?」


「ギアドと対峙した時、奴は()()()()()()()()()()()()と言ったんです。」


エイステン「うん。やっぱり彼らが・・・()の事は?」


「口にしていません。もしギアドがそれに関係してるなら真っ先に口にするはずです。ギアドのあの軽薄さで黙ってるなんて出来ないはずです。」


エイステン「別々って言う事か・・・厄介だな。」


「はい。この先もっと大がかりに仕掛けてくる可能性があります。」


 実はセグルド直近のマルド村とその手前のニムの野営地に2日前から居座っている馬車が居る事を掴んでいる。其奴らがどうやって襲撃してくるつもりなのかもだ。


エイステン「はぁ、気の重い話だね。

 シグレくん。君が考えたなかで、1番最悪な襲撃方法は何だった?頭の中にはあるんだろ?」


「はい。―――――」


エイステン「そんな事が可能だと?」

「方法はあります。」


エイステン「参ったな・・・それが現実になったら、何としても生きてセグルドに帰りたいね。」


「大丈夫です。必ずお守りします。侯爵様も荷も。」


エイステン「シグレくん。君から見てロレンくんは信用出来るかい?」


「はい。間違いなく。」


エイステン「伝えずに対処は出来そうもないね。何処で話そうか?」


「ニムの野営地で。なるべく近づいてからで。」


エイステン「解った。・・・・それだけ?ルシエラさんの事は?そっちが本命の話だと思ってたんだけど?」


「えっ・・・・実は――」

エイステン「迫られた?」

「ど、どうして・・・」


 何故かエイステンが()()()()()()の顔をしている。

エイステン「ふふ、デランドからある程度聞いてたからね。

 シグレくん、僕が言うのも変な話だがルシエラさんの事は彼女が望むようにしてあげて欲しい。

 彼女が君の側に居たいというのならそうしてやってくれないか?彼女のなくした時間を取り戻してやって欲しいんだ。」


「侯爵様・・そうするつもりです。」


エイステン「君が彼女を治したんだろ?」


「・・・・・」

 唐突に真相を突かれ言葉をなくした。


エイステン「デランドがそれらしい事を臭わせてたし、なにより深読みは君の専売特許じゃないからね。

 長く眠っていたルシエラさんが目覚めてすぐ君について行きたいと言うんだ、なら彼女にそう言わせる物は何か?考えれば自ずと答えは出るよ。」


「この事は内密にお願いします。」


エイステン「解ってるよ。シグレくん、僕は君に凄く興味がある。例えば君の()()の正確さには()()()()()()()()()と思ってる。筋肉莫迦のデランドなら気づかないだろうけどね。

 もっとも、どうやって情報を集めているのか見当も付かないが、そんな事を根掘り葉掘り聞くのは却って君との関係を壊すだろう。だから聞かない。ただ覚えておいて欲しい。僕は君の味方のつもりだよ。」


「さすがですね。俺が知る限り、侯爵様が()()()()で1番気の置けない方です。」


エイステン「・・・なるほど、やっぱりそうだったわけか。」


「侯爵様。俺も侯爵様とは味方でいたいと思っています。」



クレイマン「帰りましたか?」


エイステン「ああ今戻ったよ。クレイマン、今日の彼はどうだった?」


クレイマン「遠目でしたが、あれでも本気だったのか些か測りかねます。」


エイステン「君の目をして解らないと?」


クレイマン「今日の技は得体が知れなさすぎます。」


エイステン「ははは。益々面白いね。彼は。」



―― ロレンの馬車 ――


ロレーヌ「お兄ちゃん。・・・お兄ちゃん!」

ロレン「ん!ああなんだ?」


ロレーヌ「もうどうしたのよ夕飯からずっと?」


ロレン「ああすまん。ずっとシグレの剣術を考えてたんだ。」


アージア「そう言えばあの女をシグレくんどやって切ったの?剣を振ったようには見えなかったんだけど?」


ロレン「俺にもよく見えなかった。剣、刀を抜いたのは解ったけど、俺に見えたのはゆっくりと刀を鞘に戻す動作だけだ。」

シュゼ「良く解らない!詳しく!」


ロレン「詳しくって言われてもな・・刀を抜いて鞘の鍔口に戻す。それが異常に早いんだ。それしか言えない。それに男の方を切ったあの構え。」

アージア「そっちは見えてたわよ。なんであの盗賊避けなかったんだろ?」


ロレン「あの男は自分の剣で受けて捌くつもりだったんだ。あれだけ開けっぴろげに上に構えてたんだ、どう考えたって剣筋は縦1本だ。俺だって同じことをすると思う。」

シュゼ「じゃあ何故捌けない?」


ロレン「捌くとか、その動作ごとあの男を切った。それしか答えがないんだ。」


カタリナ「ずっと考えてたのは、敵わないなーって思ってたの?」


ロレン「その通りさ。でもそれだけじゃない。敵わないまでも付いていきたい。越えられなくても並んでみたい。目指す物が出来てワクワクしてるんだ。」


シュゼ「うん。とっても前向き。」

カタリナ「良いわねそういうの。好きよ。」

アージア「応援してあげるわよ。向こうも応援団が多いしね。」

ロレーヌ「宜しくお願いね。お姉ちゃん達。」


「「「任せなさい!」」」

ロレン「なに?なんなの?」



「ただいま。」

「「「「「「「お帰りなさい!」」」」」」」


「みんな外に居たの?見張り番を残して順番にお風呂に入ったら?」


サクラ「もう少ししたら入ります。ナナイがお話がしたいって言うからシグレ様を待ってました。」


 サクラ達は見張りの間消す事のない焚火台の廻りに座っていた。

 俺も何故かこんな時の定位置に座る。


ナナイ「2年前に依頼中に怪我人を出したの。」

 俺が座るとナナイが静かに話し始めた。


 ナナイのパーティーは女3人男3人の6人。リーダーがナナイ。サブリーダーがコティス。ギアドは最年少で、解散する3年前D級で燻っていたのをナナイが拾ったそうだ。


 ナナイのパーティーに入ってからギアドはメキメキ腕を上げた。元々剣の素質があった上にナナイ達がキチンとフォローして成長させていたからだ。


 ところが腕やクラスが上がるにつれてギアドが増長を始めた。そしてナナイのパーティーに入って3年後、ギアドがB級に昇格するとリーダーであるナナイにも逆らう事が多くなったらしい。


 そして2年前、ナナイ達のパーティーは単独でオーガの巣の調査依頼を受けた。オークの上位と言われるオーガのレベルは平均すると52と言われている。そのオーガの巣がありそうだと言う報告を受けたギルドがナナイ達に調査依頼を出した。


 ナナイ達は調査をするだけで良かった。ところが、巣を発見した瞬間ギアドが暴走した。


 巣に飛び込んだギアドを放っておけずナナイ達も巣に突入した。

 数匹のオーガに囲まれていたギアドを確保してなんとか巣から脱出できたが、その時ギアドを庇った1人が大怪我を負った。

 安全地帯に戻ったナナイは激怒した。勢いのままギアドに殴り掛かろうとしたナナイを制しギアドを庇ったのがコティスだったらしい。


 ギルドに報告を済ませ拠点で激しい言い合いを繰り返し、結局ナナイのパーティーは解散を決めた。


「その怪我をしたメンバーはどうなったの?」


ナナイ「幸い元に戻ったけど引退して故郷に帰ったわ。」


ツバキ「あの男は拾って貰った恩を仇で返したんですね。」


ナナイ「私も莫迦だったの。ギアドの剣の腕だけでメンバーにしちゃったの。後で冒険者仲間に言われたわ、『彼奴は問題ばかり起こしてどのパーティーにも長く居つかなかった』ってね。」


アカネ「シグレ様とは大違いですね。」


「ん、そうかな?」


ルシエラ「そうですね。少なくともシグレ様は女神様の恩に義で応えてますよ。」


「えっ、そんな事まで話したっけ?」


ボタン「馬車の中で色々全部話したよ。」


「・・・そうか。まあ、もう一緒に居て貰うって決めたから良いけど。」


ツバキ「でも、どうして解散を?」


ナナイ「コティスが解散に拘ったの。もともと私とコティスで作ったパーティーたからギアドをパーティーから除名するなら自分も出て行く、だからパーティーは解散しろって。」


「あの垂れ乳、ナナイの物を壊したかったんだろうな。」


サクラ「ねぇナナイ、本当に垂れてたの?」

 あれ、サクラ気になってたのかな?

ナナイ「・・・最後に見た時は少しきてたかな。」


「腰や尻に無駄な肉が付いてたからな。この世界で太ってるのは貴族の莫迦息子か金持ちの商人くらいしか見た事がない。生活習慣の違いなんだろうが女の人は不思議と誰もおっぱいが垂れてると思った事がなかったんだ。あの女が初めてだよ。」


サクラ「シグレ様はあの一瞬でそこまで見てるんですか?」


「自慢じゃないが俺はエッチなんだ。女の人は上から下までちゃんと見る!」

 胸を張って応えてしまった。


ボタン「シグ兄がエッチなのは良く知ってるよ。ふふ・・」

ナナイ「確かに体を動かさなくなってたからなー。」


「ナナイに敵わない。そう思った瞬間があったんだろ。その原因が自分自身の怠慢だって気づいてなかったのさ。そしてドンドン思いが歪になった。そこに頭は空っぽだが剣の腕だけは良い若いのが入ってきた。すがるようにその男に頼ったんだろ。」


ツバキ「頼った?あの時の2人の様子では男が頼っていたように見えましたが?」


「共依存ってわかる?特定の相手同士で過剰に依存する事を言うんだ。多分それだと思う。」


ルシエラ「シグレ様は何処でそういったことを学ばれたんですか?」


「ん?俺の世界では誰でも知ってるよ。ああ誰でもは言いすぎかな。まあ、その気になれば誰でも調べる事は出来る。そんな世界だったんだ。」


アカネ「凄い・・・」


「ナナイ!彼奴らが盗賊になったのは彼奴らの責任だ。ナナイには何の関係もない。

 大事な事は、俺は先っちょがツンと上を向いててフッカフカのナナイのおっぱいが大好きだ!」

 星空に宣言するように言い切った。


ナナイ「ちょっ、大きな声で言わないで!周りで見張りが起きてるんだから!」


「「「「「「ふふふ・・・・」」」」」」


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