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【鈍感?ダメダメ?】

―― カチャ!

「失礼します。」


 ルシエラがエルフのメイドを連れて入ってきた。

 火傷を治した時にルシエラのベッド脇に居たエルフだ。


イルカル ハイエルフ族 レベル12 36歳


デランド「ルシエラは知ってるな?」


「初めてですが?」

 サラッと言いやがって!抜け目のないおやじだ。


デランド「ああそうだったな。ルシエラだ。」


「始めまして。冒険者ヒイラギのシグレです。ここに居るのはメンバーのサクラ、アカネ、ナナイ、ツバキ、ボタンです。」

 サクラ達が揃って頭を下げる。

 ルシエラがサクラを見て微笑んでいた。


ルシエラ「ルシエラです。」

イルカル「イルカルと申します。」


エイステン「ここから僕は席を外そう。それじゃシグレくん宜しく頼む。」

「こちらこそ。ご期待に応えるように頑張ります。」


 ソファから立ち上がり軽く会釈を交わすとエイステンは爽やかな笑顔を残して応接室から立ち去った。

『チッ!これだからイケメンは・・・』


「それで運ぶのは?」


デランド「だから、ルシエラとイルカルだ。」


「奥様をセグルドにお連れすれば良いんですか?」


デランド「そうだ。だがもう奥様じゃないんだ。ラディス家から籍を抜くことは回復の祝いの席で発表した。昨日、全ての手続きも終えてる。」

「「「「「「えっ?」」」」」」


 驚いた!俺はもちろんサクラ達もだ。

 想定外の言葉を聞いて視線がデランドとルシエラを往復してしまう。


ルシエラ「今は唯のルシエラです。」

 驚いた俺が面白かったのか、ニコニコと大したことでもないと言いたげにルシエラが笑っている。


「唯の・・・って?確かお父さんはグスタフさん。あぁ、アムガルド家に戻られるんですね?」


ルシエラ「いえ、アムガルドの家名も名乗りません。これからは家名の無いルシエラです。」

 なんだろう、屈託無く笑うルシエラが()()と感じたのは気のせい?


「アムガルド家も?グスタフさんも納得されたんですか?」


デランド「もちろんだ。まあ色々あってな。ルシエラの希望を通すしかないんだ。」

 ルシエラに反してデランドの表情が暗い。


デランド「ルシエラからどうしても今回同行させて欲しいと言われてな。危険だとは言ったんだが・・・」


ルシエラ「セグルドに母のお墓があるんです。私が火傷を負ってる間に心労で亡くなった母のお墓にこの姿を見せたいんです。」


「お気持ちは解りましたが、辺境伯が仰るように危険かも知れませんよ?」


ルシエラ「構いません。どうせ最近まで生きているのが不思議だった身です。でも、今度は黙って焼かれるようなことだけはしません。あんな悔しさは2度とごめんです!

 それに、1番の理由は一刻も早くこの屋敷を出たいんです。」


 最後の理由が強烈過ぎる。

 デランドは益々悲しそうな暗い顔をして俯いてしまってるし。


ルシエラ「シグレ様!」

「あっ、はい!」

 デランドに注意が削がれていたところに名前を呼ばれて吃驚してしまった!


ルシエラ「どうかよろしくお願いします。」

「は、はい。あっ、返事しちゃった。」


ルシエラ「ありがとうございます!」

 とても40歳とは思えない可愛らしい笑顔で両手を掴まれた。


イルカル「宜しくお願いします。」

 イルカルも静に頭を下げる。


ルシエラ「シグレ様。セグルドまでシグレ様の馬車でご一緒させてくださいね?」


「えっ?辺境伯家の馬車じゃないんですか?」


ルシエラ「私はもう辺境伯家の人間ではありませんので、辺境伯()の馬車などとんでもありません。」

「そうなんですか?」

 視線を向けたデランドは説明を放棄している。俺を見るなと目が訴えている。


ナナイ「良いじゃないシグレくん。私は構わないわよ。」

サクラ「私も良いと思います。」

アカネ「賛成です。」

ツバキ「問題ないかと。」

ボタン「私も良いと思うよ。シグ兄。」


「そうなの?」

 何故だろう、女子達がスンナリ受け入れている・・・


「みんなが良いなら――」

ルシエラ「良かった!断られたらどうしようかと思ってました。」

「えっ、あ、はい。うちの馬車で良ければ。」


 なんて言うか、見た目と違って押しの強い人だ。


ルシエラ「それでは馬車に行きましょうか?」

「えっ、これからですか?」


デランド「ルシエラ!」


ルシエラ「チッ!・・」

『今舌打ちしなかった?したよね?』


ルシエラ「申し訳ありませんシグレ様。本当は今日にでもここを出たいのですがまだご挨拶が残っているようなんです。2日後早朝出発と聞きました。楽しみにしておりますね。」


「はい。宜しくお願いします。」


―― パタン!

 再び可愛らしい笑顔を残してルシエラとイルカルが応接室を出て行った。


『あれ?ルシエラさん、部屋に入ってきてからデランドを1度も見てなかった気がするな。俺やサクラ達にはニコニコしてたけど・・・』


「辺境伯。どういう事なんですか?」


デランド「聞くな!・・・全て儂が悪い。そう言うことだ。」

「はぁ・・・」

 どうも大人の事情らしい。深入りしたら藪蛇だな。


デランド「シグレ。今日はこの後冒険者ギルドに行ってくれ。オットマーが同行するパーティーを紹介するはずだ。

 ああ、くれぐれもそのパーティーにブルーポピの事は話すなよ。」


「解ってますよ。なにか変更があったら知らせてください。」



 俺達は冒険者ギルドに向かってテクテクと歩いている。


「しかし、男と女の関係って良く解らないな。」


サクラ「シグレ様。ルシエラさんの目を見ましたか?」


「目?綺麗な碧色の瞳だったね。そう言えばイルカルは緑、翡翠色だった。」


ナナイ「あの翡翠色の瞳はエルフでも珍しいのよ。」


「そうなの?へー。」


アカネ「だから瞳の色ではなくて、何かに気づきませんでしたか?」


「なにか?・・・解った!決意!屋敷を出たいって言う決意だ!」


ナナイ「シグレくん。本気で言ってる?」


「違うの?じゃあ・・・」


ツバキ「シグレ様。本気で気づいてなかったんですか?」


「えっえっ?ボタン、俺は何で怒られてるの?」


ボタン「姉さん達は怒ってないと思うよ。呆れてるとは思うけど。」


「なにそれ?ねえ?なんで?」


サクラ「イルカルさんも同じ目をしてましたね。」

アカネ「間違いなく。」

ナナイ「私は良いわよ。」

ツバキ「私もです。しかしどうしてこっち方面は鈍いんでしょう?」

ボタン「他のことは尊敬出来るのに・・・」


「ねえねえ、何の話?」

「「「「「自分で考えなさい!」」」」」

「はい・・・」



 冒険者ギルドでジャネットにギルドマスターと約束が有ると告げ、そのまま3階のギルドマスター室に向かう。


オットマー「入れ!・・シグレか、丁度良かった。」


 中に入るとオットマーの向かいに見た顔が座っていた。


「レナスの疾風!」


オットマー「おう、会ったことがあるんだってな。手間が省けて良かったよ。さて、ここじゃ狭いから会議室に行くか。」



オットマー「ヒイラギが来るまでにレナスの疾風には説明はしておいた。シグレ、辺境伯様には会ってきたんだろ?依頼は受けたのか?」


「受けてきた。尤も拒否権は無かったよ。」


オットマー「ははそうか。ところで、辺境伯様が別件も有ると言ってたが何だった?」


「聞いてなかったのか?ルシエラさんを一緒にセグルドに連れて行って欲しいと頼まれた。」


オットマー「良いのか?何があるか解らないんだが?」


「本人の意志が強いんだ。受けてきた。そっちは俺が責任を持つ。」


オットマー「まあそれなら良いが。ロレン、レナスの疾風は試験と依頼を受けるか?」


ロレン「受ける!ヒイラギの骨喰と同じ依頼なんてこの先無いかも知れないからな。みんな良いな?」


カタリナ「良いわよ。ダメって言っても受けるんでしょ?」

シュゼ「反対するだけ疲れる。」

アージア「受けるのは良いけど浮かれすぎないでよ!」

ロレーヌ「シグレさん、みなさん宜しくお願いします。」


ナナイ「宜しくねー!」

「「「「宜しくお願いします。」」」」


「ロレン。護衛は俺も初めてなんだが、ナナイはB級で経験者だ。」


ロレン「それは助かる。」


「ナナイ。何かあるか?」


ナナイ「ギルマス、侯爵の騎士は騎乗?それとうちは自前の馬車で良いのよね?」


オットマー「その話があったな。ヒイラギは自前で頼む。侯爵の馬車は拡張馬車だ。夜は馬車で寝る。まあ当然だな。

 騎士は5人。4人が騎乗、交代で1人が馭者を務める。あと使用人が1人同行するが身の回りのことをするだけで何か有っても戦力にはならんそうだ。

 レナスの疾風は荷を積んだ馬車だ。馬車はギルドの拡張馬車を使う。寝泊まりも出来るから自由に使ってくれ。」


「と言う事は3台だな。先頭は侯爵、中にレナスの疾風、俺達が最後尾だ。」


ナナイ「良いと思うわ。荷の積み込みは?」


オットマー「明日辺境伯家の騎士がやる。そっちは任せてくれ。」 


ナナイ「了解。後は私達で決めて良いのよね?」


オットマー「任せる。これはあくまで試験でもある。評価はアルバータス侯爵にお願いした。印象を悪くするなよ、ガハハハハハ。」


「ギルマス、ロレン達に荷の話はしたのか?」


オットマー「モーガン商会で見つかった盗品だって事は話してある。出発は明後日の8時。1時間前には辺境伯の屋敷に集合してくれ。以上だ。」




 ジャネットと依頼手続きをしてギルドの外に出た。


「ロレン、昼を一緒に行かないか?」


ロレン「良いね!是非一緒に行かせてくれ!」

カタリナ「バカロレン!そこは昨日のお礼に奢らせてくれでしょ!」


「ああ昨日のは気にしなくて良い。何処か良い店を知らないか?出来れば個室が良い。」


ロレーヌ「ならあそこ〈金の鹿亭〉が良いんじゃない?」

シュゼ「そこ!」

アージア「確かに個室が有ったわね。」


「良しそこに行こう。」



 ロレーヌお薦めの金の鹿亭は南西区の市場のそばに有った。


「ロレン。改めて宜しく頼む。」


ロレン「こっちこそだ。なあシグレさん。盗品って言ってるがどんな物か聞いてるか?」


「何か気になるか?唯その前に、何で()()付けなんだ?」


ロレン「そりゃそうだろ!骨喰シグレは俺の憧れなんだ。さんが嫌なら()でも言い!」


「両方嫌だ!そもそもどう見ても俺の方が年下だろ!」


ロレン「俺は20歳だ。て言うか、ロレーヌが18歳で後はみんな20歳だ。」


「なら俺より3っつも上じゃないか。シグレで良い。そう呼ばないとこの依頼断るぞ?」


ロレン「・・・仕方ないな。解ったよ。」


「さっきの話だが、詳しくは知らないが盗品の中に王家の物も有るそうだ。気になるのか?」


ロレン「ん?・・厳重すぎる気がしないか?騎士が5人。ヒイラギの6人で十分だろ。」


「襲撃を警戒してパーティー2つだそうだ。」


カタリナ「襲撃?誰の?」


ロレン「盗品の商売相手だろ。」


「その通り。モーガンが客のために盗んだのか、盗んだ物を預かって売ろうとしてたのか、どっちにしろ相手が居た事は確からしい。」


ロレン「取り返しに来る。か?」

 ロレンは中々察しが良い。話が早い奴は嫌いじゃない。


「辺境伯はそう判断してる。とは言っても盗賊の一団だ、D級2組の試験には丁度良いだろうってさ。」


ロレン「そうなるとセグルドまでの7日間は長いな。」


「俺もそう思う。そこで、レナスの疾風のメンバー構成を確認しておきたい。その前にうちだな。

 うちはアカネとツバキが後衛で魔法を使う。ああ、アカネは弓ツバキは槍も使う。ボタンが大剣使いの前衛で双剣使いのサクラと斧使いナナイが遊撃だ。」


カタリナ「シグレくんは?」


「俺は何でも屋だ。状況で動く。」


ロレン「うちはシュゼが盾と剣で前衛、俺が剣でカタリナは斥候役で短剣の双剣使い。アージアが槍でロレーヌが1番後ろで魔法を使う。」


「バランスの良いパーティーだな。対応はその時の状況次第だが、基本ロレン達は馬車を死守してくれないか。侯爵の廻りには騎士がいるから俺達が広がって距離をとる。」


ロレン「了解した。襲撃は有ると思うか?」


「間違いなく有る。と俺は思ってる。」


ロレン「そうか。骨喰が言うなら覚悟して臨むしかないな。」



 それから昼食を食べながら雑談が始まった。


「なあロレン。本命は誰なんだ?」


ロレン「んあ?本命って?」


「カタリナとシュゼとアージアのさ。ロレーヌは妹なんだろ?」


カタリナ「サクラさん、シグレくん殴って良い?」

サクラ「どうぞお好きに!あと、さん付けは無しで良いですよ。」

アカネ「考え無しに言っちゃうから。」

シュゼ「鈍感?鈍感男だ!」

ナナイ「こういう事は空気読めないのよね。」

アージア「なるほど、そっち系はダメ男なんですね?」

ツバキ「まったくダメです。」

ロレーヌ「うちもそっち系がダメダメで・・・」

ボタン「シグ兄もロレンさんも可哀想・・・」


「な、なんだよ?どうしてそんなにすぐ共闘出来るのさ?」

ロレン「そうだよ。俺は何もしてないだろ?」


 なんだこのジト目は?ロレン。何もしないのが拙いんじゃないか?


誤字報告ありがとうございます。

ブックマーク数もジワジワと増え日々励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

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