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【事情聴取?】

 何事も無かったようにいたって普通の夜を過ごし、今日はナナイのキスで起こされた。


「ん・・ナナイ?おっぱい!」


ナナイ「・・・ちょっとだけだよ。――ゴソゴソ―― はい!」


「ああフカフカ・・・ペロ!――」

ナナイ「あっ!ダメ・・・コラ!・・」


―― バタン!

ツバキ「ハイハイ!そこまでですよ!」


 1階のダイニングに行くと香ばしい醤油の焼ける臭いに溢れていた。


「良い香りだ!」


ボタン「シグ兄に言われた通り、昨日作ったおにぎりを焼きながらお醤油塗ってみた。」


サクラ「とっても食欲を刺激しますね。」


ツバキ「お味噌汁も作ってみました。」


「おお!日本の朝食って感じだな。じゃあ、いただきます!」

「「「「「いただきます!」」」」」


―― トントン!

 馬車のドアがノックされた。パーティーボックスにいても馬車がノックされたことが解るなんて・・・ファンタジーだ!


「ん?誰か来たみたいだね。」


サクラ「やっぱり。馬車に近づく気配はあったんですがまさかと思ってました。」


「どれ俺が行ってこよう。」



―― トントン!


「はい。どちらさんでしょう?」

―― カチャ!


 馬車のドアを開けると、グスタフの執事ボールが笑顔で立っていた。

 この表情に騙されれば、今俺の前にいるのは唯の好々爺だ。


ボール「このような時間に大変申し訳ありません。私、アムガルド家の執事をしておりますボールと申します。」


「昨日商業ギルドでお会いしましたね。ヒイラギカンパニーのシグレです。」


ボール「これはこれは、私のような者にまで名乗りをいただき大変恐縮でございます。」


「ご用件は?」


ボール「はい。主、グスタフより伝言を預かって参りました。

 主が本日お昼、是非会食したいと申しております。もちろんメンバーの方もご一緒にとのことです。」


「会食?誘われる理由が思いつかないんですが?」


ボール「主が昨日の件についてあらためて謝罪したいと申しております。また、その後の経過を是非お話ししたいと。」


 この時レベル63のすごみを見せられた。

 和やかな表情とは裏腹な全てを凍らすような視線が俺を刺してきたからだ。


 ボールの視線に気圧されたと思われるのが癪なので俺も反骨の視線を返して応える。


「解りました。わざわざこんな時間に貴方に伝言を頼むんですから断ったら失礼ですね。」


ボール「いやー良かった!実は断られたら主になんと言い訳しようかと思っていたのですよ。ご快諾いただきホッといたしました。」

 ボールが再び好々爺を演じ始める。


ボール「主は三の鐘に合わせて商業ギルドに来て欲しいと申しておりました。」


「承知したとグランドマスターにはお伝えください。」



ナナイ「誰だったのシグレくん?」


「グスタフの執事ボールだったよ。」

ナナイ「えっ?昨日会った執事さん?どうしてこんな朝早く?」


「グスタフが改めて昨日のお詫びをしたいんだそうだ。今日のお昼会食を申し込まれた。もちろんみんなも一緒にね。」


サクラ「それで、お受けしたんですか?」


「ああ。ボールに断るなよって視線で脅されたからね。」


アカネ「でもその程度で受けたわけでは無いんですよね?」


「まあね。グスタフが何を考えてるのか会わないと判断のしようがないからね。」


ツバキ「シグレ様にお任せします。グスタフ殿はサラケスに所有している屋敷におります。監視はお任せ下さい。」


「宜しく頼むよ、ツバキ。」




―― グスタフ  サラケスの屋敷 ――


ボール「主。戻りました。」


グスタフ「済まんな朝早くに。で、どうだった?」


ボール「お約束は承知したと。」


グスタフ「ん?そっちは心配してなかったよ。お前が見たシグレの感想だ。」


ボール「あの者がその気になった時、主をお守り出来るかどうか。」


グスタフ「お前が?そこまでなのか?」


ボール「剣だけであれば今のところ何とでもなりますが、些か得体の知れない怖さを感じました。」


グスタフ「なるほど。なら辺境伯が言う通り良い関係を築くのが賢策だな。」




 食事を終え装備を調え百層宮に向かった。


サクラ「シグレ様。今日から11階層ですね。」


「ナナイ。11階層にはどんな魔物が出るの?」


ナナイ「11と12階層はホブゴブリンよ。但し上位種のホブゴブリンアーチャーやホブゴブリンメイジそれにホブゴブリンソルジャーも普通にいるわ。」


「取り敢えず今日は午前中だけになったから12階層への階段を見付けて終わりたいね。」


 百層宮11階層の転移門に向かう。

 11階層への転移門の待ち時間はグッと短くなり、10分ほど待って11階層に降りることが出来た。


「4階層の回廊と同じだね。ザ・ダンジョンって感じだ。」


ナナイ「()()()()()()()は解らないけど、作りは似てるわね。但し、4階層や5階層より迷路が複雑で広いわよ。」


「了解。【マップ探知】全開で行ってみようか。」


 定番に成りつつある困った時は左側キープで進んでいく。


「サクラ。ホブゴブリンが居たら積極的に狩っていこう。」


サクラ「了解です。ならこの先左に曲がると5匹居るようです。」


 サクラの臭い探知でホブゴブリンを倒しながら進んでいく。

 ほぼ1時間でホブゴブリンが17匹。ホブゴブリンアーチャーが5匹。ホブゴブリンメイジが4匹。ホブゴブリンソルジャーを4匹倒している。主にボタンが。


「ボタン。サクラ達にもまわしてやって。」


ボタン「はーい!シグ兄は柔らかくてもデブはいやでしょ?昨日ご飯が美味しくていっぱい食べちゃったから動かないと。」


「はは、可愛いねボタンは。」


サクラ「それを言ったら私もいっぱい食べたから。その先に4匹居ますからお先です!」

 サクラが言い終わるなり駆け出す。

アカネ「あっ、サクラ私にも!」

 アカネも掛けだした。


 そんな事を繰り返しながら更に26匹のホブゴブリンを狩ったところで12階層に降りる階段を発見した。


「サクラ。今何時頃?」


サクラ「そうですね・・11時頃です。」


「じゃあ、この辺でもう少しホブゴブリンを狩ってそれからダンジョンを出よう。」

「「「「「はい。はーい。」」」」」


 その後15分ほどホブゴブリン狩りを続け12階層の転移門から地上に戻った。


 何処にも寄らずに商業ギルドに行き、すでに見なれた受付の子と顔を合わせるなり4階に連れて行かれた。


―― トントン! 

「シグレ様がお越しになりました。」

――カチャ!


「おお来たか!入れ入れ!」

 聞いたことのある大きな声に誘われて中に入ると商業ギルドグランドマスターのグスタフと執事のボール、そして声の主デランド・ラディス辺境伯がいた。


「グランドマスター、今日はお誘いありがとうございます。辺境伯もご一緒ですか?」


デランド「なんだ?儂が一緒じゃ不服か?ははは。」


「そう言うことではなくて、吃驚しただけです。」


グスタフ「驚かせて済まんな。昼食を君と約束をしていると言ったら付いてきてしまってな。」


デランド「おう!シグレの名が出たんでな、割り込ませて貰った。拙かったか?」

「いえ、グランドマスターが問題なければ俺は特に。」


デランド「じゃあ食事を始めよう。ここは商業ギルドの貴賓室でこの奥に厨房がある。大きな声じゃ言えんが中々他では食べれん物も出せる。まあ楽しみにしてくれ。」


 グスタフの執事が裏の厨房に指示を出すと食前酒、前菜と食事が運ばれてきた。


グスタフ「シグレくん。改めて昨日はヴィリアム・モーガンの件で迷惑を掛けた。」


「むしろ俺の方は未然で済んでますから。そこまで謝罪されるようなことは無いと思ってますが。」


グスタフ「そう言って貰えると助かる。昨日ヴィリアムとアンジェラの商業ギルドの資格剥奪をした。あの2人は昨日と同じやり方で商品を巻き上げておってな、結果廃業に追い込まれた商店もある。」


「なぜほっといたんですか?」


グスタフ「証拠が揃わなかった。サラケス支部の職員はギルマスに逆らえず、不利益を被った商店もヴィリアムの圧力に証言が取れなかった。デランド殿の協力を得てようやく証拠を掴み昨日は勇んでやって来たんだが、まさかその現場に遭遇するとは思っておらんかったよ。」


デランド「そのモーガンだが、昨日夜屋敷に賊が入ったらしく首を切られて死んだよ。」


「そうですか。」


デランド「驚かないな?」


「驚いていますよ。ただ、どうでも良い奴なので興味が無いだけです。まあでも、あれだけ強引なことをするなら裏の商売もしてそうですね?」


デランド「察しが良いな!地下に攫ってきた子供が居たよ。裏で不法な奴隷の売買をしてたようだ。」


「その子供達は保護されたんですか?」


デランド「ああ、()()()()()()。儂が責任を持って返す。

 その中の1人が面白いことを言っててな。執事のヤミンに拷問されて目を潰され手を切り落とされたらしいんだが、目が覚めたら治っていたそうだ。不思議だろ?」


「そのヤミンと言う奴はクズですね。」


グスタフ「クズか。そのクズは額に当人の剣が床にまで突き刺さって死んでおった。殺した相手は余っ程許せなかったのかもしれん。

 あやつは狡猾で残忍でな、そこらのB級冒険者では歯がたたん実力者だった。倒した者は相当な腕じゃな。」


「昨日、グランドマスターの執事が牽制してましたが?」


グスタフ「ははは、そうじゃったな!ボールもかなりの実力者でな、ヤミンもボールの前では大人しかったな。」


ボール「毎回冷や汗を掻きながらでございました。」

 配膳をしていたボールがサラッと言って厨房に消えた。


グスタフ「シグレくん。商業ギルドサラケス支部は今回の件を教訓に理事も入れ替え再出発させる。君のあの紙は素晴らしい物だ。契約も有効であるし、このまま取引を宜しく頼むよ。」


「俺はそのうちサラケスを離れます。と言うか1つ所に居着く考えが無いんです。紙の商売は続けますが今のところ納品は行く先々の商業ギルド支部になります。」


グスタフ「構わん、構わん!ようは商業ギルドと商売を続けて欲しいと言うことじゃ。これからは儂が()()になろう、良い商売を続けてくれ。」


「グランドマスターが?・・・ところで、お二人は特別なおつき合いでもあるんですか?」


デランド「何故そう思う?」


()()()さんですが、昨日辺境伯を迎えに来た方とそっくりなので。」


デランド「ははは、良く見てたな!あれはうちの執事の()()()だ。似ているはずでな、二人は兄弟だ。ポールは儂がラディス家を継ぐ時アムガルド家から譲って貰ったんだ。それにな、グスタフ殿は儂の義父だ。儂の妻ルシエラの父だからな。」


「そうでしたか。」


デランド「この国で困ったことがあったら儂に言えよ。そっち方面は儂が後見になってやるハハハ・・・・」


「あ、お気遣い無く。」


 それから2人は俺が聞いてもいないことを話し始めた。

 まずヴィリアムの店の地下にも違法奴隷がいたらしい。踏み込んだ警邏隊の騎士がヴィリアムの屋敷と同じように本棚を動かしてみたら階段があったそうだ。

サラケスには襲撃された屋敷の他に別宅が2つあったらしいが全て昨日のうちに警邏隊に接収されたそうだ。


 接収と言えば他の街にあったモーガン商会の支店も全て昨日のうちに接収され、王都とセグルドの店からは違法奴隷が発見されたそうだ。

 セグルドの店の責任者だった次男と、王都にいたヴィリアムの妻と王都店代表をしていた娘も捕らえられたらしい。


 まあどうでも良いことだ。


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