【グランドマスター】
サクラ達が服を選び終わると待ってた様に三の鐘がなった。
「じゃあ商業ギルドによって帰ろう。」
サクラ「商業ギルドですか?」
アカネ「紙の納品ですね?」
「そう。10日の内にって約束してたからね。」
商業ギルドに行き受付の女の子にセルジュに会いたいと告げると1階のカウンターに案内された。
待つこと暫し、セルジュが姿を現した。
セルジュ「シグレ様お待たせしました。今日は500束の納品で宜しいですか?」
「そうだ。倉庫に降ろそうか?」
セルジュ「お話しが早くてとても助かります。ではこちらにお願いします。」
倉庫に行って前回と同じく1000枚の束を500束倉庫に収めていると、少し離れたところでギルマスのアンジェラとカイゼル髭を生やした商人らしき男が俺を見ていた。
セルジュ「シグレ様。代金は2階の応接室にお持ちします。君!ご案内を!」
セルジュに指示された事務の女の子に案内され、2階の応接室でセルジュを待った。
―― バタン! 突然応接室のドアが開いた。
「お前がシグレか!あの紙、儂が扱ってやる。良いな!」
入ってきたのはさっき倉庫でギルマスのアンジャラと俺を見ていたカイゼル髭だ。お付きの執事らしい細身の男も一緒だ。
「・・・・・」
名前も名告らない失礼な態度に一瞬呆気にとられていた。
「ふん!言葉も出んか。お前は儂に1枚――」
「帰るぞ!」
ソファから立ち上がり部屋を出ようとしたところでセルジュが入ってきた。
セルジュ「シグレ様。えっ?ヴィリアム様!どうしてここに?」
ヴィリアム「今からあの紙は儂が扱う。良いな!」
セルジュ「はあ?シグレ様、そのような契約をされたんですか?」
「知らんよ。いきなり入ってきて名乗りもせずこれだ。セルジュ。あの紙は持って帰る。」
ヴィリアム「許さん!あの紙は既に儂のものだ。持って帰るだと?巫山戯たことを言うな!」
「じゃあな。セルジュ。」
部屋を出ると後ろから待て!と聞こえた気がするが無視して階段を降りようとするとギルマスのアンジェラがいた。
アンジャラ「お待ちをシグレさん。トラブルのようですね?」
「いやまったくトラブルなんて起こってない。変な奴が叫んでるだけだ。」
アンジェラを無視して行こうとすると、手を差し出されて行く手を止められた。
「どういう事だ?」
アンジェラ「申し訳ありませんが商業ギルド員の揉め事はギルドが仲裁することになっております。お部屋にお戻り下さい。」
「ほう?そう来たか!
一方的に商談にもならない戯れ言をまくし立て、たった其れだけのことをギルドマスターが率先して揉め事にするわけだ。」
サクラ《大きな声。》
アカネ《建物中に聞こえそう。》
ナナイ《誰かに聞かせてるみたいな声ね。》
ツバキ《宣戦布告でしょうか?》
ボタン《シグ兄楽しそう。》
「お前ら初めてじゃ無いな?」
アンジェラ「どういう事でしょう?とにかくお話を聞かせて頂きます。お部屋に!」
「いいだろ。」
ああダメだ。また口角が上がる。
サクラ《あぁもう!怒らせちゃった。》
アカネ《バカなことしなきゃ良いのに。》
ボタン《どういう事?》
ナナイ《シグレくんの顔見て。悪い顔してるでしょ?》
ボタン《ほんとだ!薄ら笑ってる・・・恐い!》
ツバキ《こうなったら止まらないですよ。》
会議室に戻るとカイゼル髭がソファに座っていた。その向かいに座る。
ヴィリアム「時間を取らせるな!あの紙は儂が扱う。」
アンジェラ「こちらはそう仰ってますが?」
「・・・・・・」
俺は黙ってヴィリアムと呼ばれた男の目を見ていた。
ヴィリアム「紙は1枚銅貨5枚だ。グダグダ言ったら3枚――」
「セルジュ。紙の取引は中止だ。グランドマスターの名前の入った契約書にもとづいて前回納品した紙の回収及び違約金を請求する。以上だ!」
ソファを立ち上がろうとすると
アンジェラ「お待ちなさい!商業ギルドの裁定はモーガン商会が扱うことを許可するものです。」
「1つ聞くが、個別に契約の魔法で縛ったものをどう破棄するんだ?」
ヴィリアム「簡単だ。お前が破棄すると言えば良い。」
「なぜ?」
ヴィリアム「破棄して儂に紙を下ろさねばお前はサラケスはおろかこの国で商売が出来なくなるからだ。」
「どうして?」
ヴィリアム「き、貴様・・・儂が商売をさせんと言ってるんだ!儂に逆らってこの国で商売が出来ると思うなよ!」
「なら商売は金輪際しない。セルジュ!紙を回収しろ!今すぐだ!前回納品した紙1枚たりとも不足は許さん!」
セルジュ「お待ちくださいシグレ様!あの紙は既に完売しております。ましてや1枚でも不足は許さないとなれば、個別に買われた物まで回収など不可能です。」
「知ったことじゃない!契約書には全て回収と記したはずだ。それともグランドマスターが結んだと同義の契約に嘘偽りがあるのか?」
ヴィリアム「貴様!商売をしないだと?嘘を――」
「セルジュ!紙の回収代金はこの名無しのカイゼル髭に出させろ。」
ヴィリアム「名無しのカイゼル髭?貴様!儂を誰だと思っておる?」
「知らねーよ!名乗りもせずいきなり大声で捲し立てるような不埒者なんて知るか!」
ヴィリアム「貴様!モーガン商会のヴィリアム・モーガンを知らんのか?」
「ヒイラギカンパニーのシグレだ。お前、親にどういう教育受けてきた!人にはまず名乗れと教えて貰えなかったのか?不憫な奴だな。」
ヴィリアム「ふん!儂を怒らせようとしてるのか?その手に乗るか!お前は儂の言う通りにすれば良いんだ!ただし、紙は銅貨2枚だ!」
「セルジュ。商業ギルドに著しい損害を与えた者はどうなるんだった?」
アンジェラ「だから商業ギルドの裁定は――」
「お前は黙ってろ!この件の担当はセルジュだ!」
アンジェラ「なっ・・・」
「セルジュ!どうなんだ?」
セルジュ「商業ギルドに損害を与えた者には相応の罰則があります。また行き過ぎた行為には商業ギルド員の資格を剥奪、公王国内での商売の禁止です。」
「1枚残さず回収しろ。その経費は全てモーガン商会に付けてやれ。当然だ!一方的に不当な要求を押しつけ商業ギルドの契約を壊し、尚かつ回収に多大な損害を出すんだ。出せなかったじゃ済まされないぞ。」
ヴィリアム「ふん!儂が契約を壊したと言う証拠はあるのか?」
「そこのギルドマスター様が証人じゃないのか?」
ヴィリアム「はははははは・・・。ギルマス!どうなんだ?」
アンジェラ「私はあずかり知らない事ですが。」
ヴィエラ「だそうだ!黙って言うことを――」
「なら儂が証人になろう!」
突然部屋に響いた声にヴィリアムやアンジェラ、そしてセルジュが体を強張らせて驚いていた。
ヴィリアム「誰だ?儂に逆らうのか?」
ゆっくりと部屋に入ってきたのは白髪の60歳は越えてそうな老人だった。腰は曲がってないが杖を持っている。如何にもと言った紳士だ。
「逆らう?聞いたまま、真実の証人になろうと思うがの。」
アンジェラ「ぐ、グランドマスター!」
ヴィリアム「アムガルド卿!どうしてここに・・・」
グスタフ・アムガルド 65歳 商業ギルドグランドマスター
グスタフ「先ほどからの一件、盗み聞きは品が無いと思ったが興味深く聞いていたよ。なにせこの建物に入るなりこれから起こることを教えるような大声が響いたからの。」
そう言って俺に視線を投げてきた。
『大した眼力だな。この爺、唯者じゃないな。』
サクラ《あの時建物に入ってきた人!》
アカネ《あの時って、シグレ様が大声で煽った時?》
ナナイ《そうか!シグレくん鑑定持ちだから誰か解ってたんだ。》
ツバキ《あの大声はこの方に聞こえるようにだったんですね。》
ボタン《シグ兄って抜け目がないよね。》
グスタフ「グスタフ・アムガルドだ。公王国の商業ギルドグランドマスターをしておる。」
「ヒイラギカンパニーのシグレです。後ろにいるのはヒイラギカンパニーのメンバーです。」
大層な人物そうなので立ち上がって挨拶をした。サクラ達も空気を読んでちゃんとお辞儀をする。
「ご丁寧な挨拶いたみいる。先ずは座りませんかな?」
流れるように俺の横、ソファの端にグスタフが座った。グスタフにも執事が付いている。護衛も兼ねているんだろう、さりげなくグスタフの後ろに廻った動きに無駄が無い。
グスタフ「話は聞いていたが、事の経緯を確認させてくれんか?」
「構いません。不躾に私の扱っている紙を自分が扱うと言われまして。当初は名乗りも無く何のことやら。
そこに、そのギルドマスターがトラブルなら仲裁だと割って入って来たんですが、私としてはトラブルにもなっていない話で困惑しております。」
アンジェラ「何を・・私は仲裁を申し立てられたので――」
グスタフ「なら、申立書は有るな?申立書が有るなら当然当事者双方の2通存在するのだな?」
アンジェラ「・・・それはこれから――」
グスタフ「巫山戯るな!」
―― ビク!
スゲーな!アンジェラはもちろん、セルジュ、ヴィリアムにうちのサクラ達まで姿勢を正したよ。
グスタフ「商業ギルドの仲裁は言わば最後の手段。その為に双方からの申し立てを前提にしている。
何よりその仲裁は管轄するギルド支部の理事会に於いて行うことが必須条件だ。
まさかこのサラケス支部ではギルマスが単独で裁定し理事が追認なんぞしていないだろうな?そんなことをしていたら由々しき事態だぞ!」
青ざめた顔で俯くアンジェラ。
ヴィリアム「ふん!もういい。この話は無しだ!」
そう言ってヴィリアムがソファから立とうとする。
グスタフ「まだ話は終わっとらん!座れ、ヴィリアム!」
ヴィリアム「くっ・・・」
―― ドサッ!
『おおー!あれだけ威勢が良かったのに大人しいな。このじいさんよっぽどの人物らしい。』
グスタフ「シグレ殿。済まんが先ほど契約書と言っていたが今お持ちか?お持ちなら見せて頂けないだろうか?・・・ああ食いちぎったりはしないのでご安心を。」
うん。爺ジョークってやつか?
「はは、そんな事心配していませんよ。」
収納から契約書を出してグスタフに渡した。
グスタフ「確かに商業ギルドグランドマスター名を刻み、儂の血で作られた正式な物だ。
内容は・・・売値を契約に?これは面白い。面白いが有効な契約であることは間違いない。
ましてやモーガン商会から正規の商談も無いとか。ヴィリアム。どういう事かな?」
ヴィリアム「知れたこと。その小僧の勘違いだ!」
グスタフ「いい加減にせんか!」
おおー!建物がビリビリ震えたぞ!スッゲー!
グスタフ「今回儂がこのサラケスに来た理由は2つ。1つは辺境伯家の祝事に参加すること。そしてもう1つがアンジェラ、モーガンお主達に引導を渡すためだ。」
ヴィリアム「な、何だと?」
アンジェラ「何を・・・」
グスタフ「お前達2人に不当に商売を邪魔されたという訴えが商業ギルド本部に続いておる。裏を取るのに時間が掛かったがようやく証拠を掴みお主らを処断しに来れば正にその現場に遭遇する始末。お主ら、もはや言い逃れは出来んぞ!」
アンジェラ「わ、私は・・・」
ヴィリアム「儂はモーガンだぞ!ヴィリアム・モーガンだ!このサラケスで、いや公王国でも5指に入る大店モーガン商会の総店主だぞ!グスタフ!その儂をどうすると言うんだ?」
グスタフ「お前達2人の商業ギルド会員の資格を剥奪する。これは商業ギルド本部最高理事会全員一致の決議だ。カードの提示は要らん!儂の、グランドマスター権限で書き換える。」
ヴィリアム「ふ、巫山戯るなーーーーー!」
爺さんの迫力を楽しんでいて気づかなかったが、もう1つ静かな戦いが起こっていたようだ。
「ヤミン殿。下手に動かれませんように。」
グスタフの執事が、ヴィリアムの執事を言葉だけで制していた。 て言うか、グスタフの執事レベルタケー!
ボール レベル63 55歳
グスタフ「シグレ殿。ご迷惑を掛けた。宜しければこのまま契約を継続して貰えないだろうか。」
「私は構いません。」
グスタフ「それは上々!セルジュくん後を頼む。」
セルジュ「は、はい!シグレ様、1階にお願いします。」
爺さんとカイゼル髭、ギルマスと執事達を残して俺たちは応接室を後にした。




