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【階膨れ】

 9階層の宿部屋を出て階段を探しながらオーク狩りを続けていた。


サクラ「シグレ様。何か・・気配が変わりました!」


「ん?どういう事?」


サクラ「この先の気配、オークの匂いが強くなりました。」


 サクラの話を聞いている最中に何組かのパーティーが前方から走ってきた。


「おい!ヤバいぞ!〈階膨れ(かいぶくれ)〉だ!」


「階膨れ?ナナイ!」


ナナイ「階膨れは偶に階毎に起こる魔物の異常発生よ。発生する前に地形が膨れたように見えるからそう呼ばれるの。」


 ナナイが話をしてる間にも何組かパーティーが走ってくる。


「お前達も逃げろ!オークジェネラルまで居るぞ!」

「あの貴族のパーティーには悪いが・・」


 横を走り抜けようとした男の腕を咄嗟に掴んで止めた。

「どういう事だ?貴族のパーティーがどうした?」


「突然膨れてオークが湧いたんだ。その中にオークジェネラルも居て貴族のパーティーが囲まれた。ありゃ無理だ。どうにもならない。」


「チィ・・行くぞ!」

「「「「はい!」」」」


 サクラを先頭にオークの気配に向かって走った。


「あれか?」


 オークの集団が背を向け壁を作っていた。


「こじ開ける!アカネ!ツバキ!」

「「はい!」」


アカネ「【炎渦】!」

ツバキ「【雷】!」

「【氷槍】!」


 俺とアカネ、ツバキの魔法がオークの壁を吹き飛ばした。突然の攻撃に仲間を吹き飛ばされオーク達の視線が俺達に集中した。


 オークは円形にティナのパーティーを囲んでいたようだ。

 中央にしゃがみ込んでいるティナと、その前で大盾を構え大きなオークの攻撃を1人で防いでいる竜人の子が見えた。


「今行く!耐えろ!」


 スピードを上げサクラとナナイが先行する。


「アカネ、ツバキは外から攻撃だ。ツバキ、此処から反対側のオークを攻撃できるか?」


ツバキ「お任せを!」


 走るのを止めたアカネが外側を炎の渦で削っていく。

 同じくツバキがティナ達の向こうのオークに雷を落とす。

 サクラとナナイは中に入ると竜人の子に大剣を振るっていたオークジェネラルを牽制して下がらせた。


「無事か?」


ティナ「シグレさん?ありがとうございます。」


 ティナの廻りにイデリナを初めメンバー達が血を流し横たわっていた。


「息はあるようだな。サクラ、ナナイ時間を稼いでくれ!」

「「はい!」」


「ヒール!ヒール!ええいまどろっこしい【エリアヒール】」

 視界に入る全ての怪我人を淡く白い光が包んだ。


イデリナ「はぁはぁ・・貴様は・・」

「生きてるな!説教は後だ。ティナを守れ!」


 立ち上がって周囲を見た。


「綺麗に囲まれてたな。これだけ居て良く生きてたもんだ。

 ふーーー!【氷槍】20連!」


 オークの壁に向かって氷の槍を一気に放つ。次々とオークが沈んでいく。


ティナ「凄い!魔法をこんなに早く打つなんて・・」


 オークの数を減らしたところでティナの前で膝を着いて息を切らせていた竜人の子に話しかけた。


「大丈夫か?よく頑張ったな。」

―― 【ヒール】!


「これでどうだ?」

「大丈夫。まだやれる。」


「そうか。ならその馬鹿げた盾をよこせ。これを貸してやる。」


 収納から2本の大剣〈土壁〉を出して竜人の子の前に突き刺した。


「これを?」


「あのオークジェネラルに借りを返したかったら貸してやる。付いてこい。

サクラ、ナナイ!ジェネラルは俺がやる。廻りを頼む。」

「「了解!です!」」


 骨喰を抜きオークジェネラルに向かって歩き、瞬間速度を上げて斬りかかった。

 オークジェネラルは慌てず大剣で骨喰を受けた。


「ガ、ガ、ガ・・・」


「お前笑ってるつもりなのか?滑稽だな。」


 そこから二合三合と切り結び横に飛んだ。

 突然横に飛んだ俺にオークジェネラルが訝しむ。


「良いのかこっちを見てて?正面に居るぞ。」


 俺が居た場所に竜人の子が両手に〈土壁〉を構え立っている。


 竜人の子が右手の土壁を袈裟に振り下ろした。


―― ガギン!


 それをオークジェネラルも大剣で受ける。弾けるような大きな音が響く。


「おぉーーーーーー!」

 そこから大声を上げて竜人の子が2本の土壁を振るう。その度に殴り合うような金属音が響き渡る。

―― ギン!ガギン!ガン!・・・


「凄いな!あの〈土壁〉に負けてない。とは言えまだレベル差はあるか。おい!まだ持つか?」


「正直、ちょっとキツイ。」


「素直で良いぞ!タイミングを合わせて下がれ。・・今だ!」


 オークジェネラルの剣をいなした瞬間に竜人の子が距離を取った。

 そこに俺が割って入る。


「ケリを付けるか。伸びろ骨喰!」


 薙刀モードにした骨喰で一気にオークジェネラルを押し込む。

 右手、左足と切りつけ膝を折ったオークジェネラルの首を横薙ぎに切り落とした。


 倒れ込んだオークジェネラルを放置して廻りを確認した。

「まだ居るな。みんな逃がすなよ!」

「「「「「はい!はーい!」」」」」


 竜人の子も土壁を振るってオークを掃討している。


 5分ほどでオークを狩り尽くした。


「おーい!大丈夫か?」


 走って来たのはマクシムのパーティーだった。


「マクシムか。大丈夫だ終わったよ。」


マクシム「階膨れが起きてパーティーが取り残されてるって聞いて急いできたんだが・・・此奴はオークジェネラルじゃないか。お前がやったのかシグレ?」


「ん?ああ、なんとかね。運が良かったよ。」


マクシム「運が良いだけでオークジェネラルを倒せるか!謙遜するな!」


「そうか?そういうもんか。」


アカネ「シグレ様!」


 アカネに呼ばれていくとティナのパーティーメンバーの1人が未だに意識が戻っていなかった。


マクシム「血を流しすぎたんだ。ヒールやポーションで傷は治せても血は戻らんからな。取り敢えずジュースでも何でもいい口から入れてやれ。栄養が必要だ。」


 収納から果実ジュースを出し口から流し込んだ。

「ゲホッ、ゴホッ・・」

 そのまま地面に横にしてイデリナを睨み付けた。


「おい!ティナのレベル上げに来たんだろ!」


イデリナ「貴様、ティナ様を呼び捨てに--」

「黙れ!」

イデリナ「ヒッ・・」

 イデリナが俺の怒気に怖じ気づく。


「このレベル上げの責任者はお前なんだろ?どうしてオークの居る層に来た!」


イデリナ「な、我々のかってだろ!そもそもティナ様にはガードを付けたんだ。」


「巫山戯るな!お前達の戦闘を見たがあの竜人の子以外誰1人オークと戦えてなかったぞ!あの竜人の子1人におんぶに抱っこでなにがティナ様付きの騎士だ!ヘンウッド侯爵家はそんな情けない家臣しか居ないのか!」


イデリナ「お前に言われる筋合いは無い!」


「ねーよ!有ってたまるか!だがそれでティナが死んだらお前が首を吊ってお釣りが来るのか?お前がティナを殺すのは勝手だが廻りを巻き込むな!」


イデリナ「な、私がティナ様を・・」

「お前の判断はそう言うことだって言ってるんだ!」


 そこにティナが割って入ってきた。


ティナ「シグレさん。すいません。私がどうしてもと言ったんです。焦っていたんです。申し訳ありません。」


「それでもだ!だったら家臣としてティナを体を張って止めろ!それが出来ないでお付きの騎士なんぞ務まるか!」


イデリナ「・・・・・」


ティナ「申し訳ありません。お助け頂いたご恩はヘンウッド家の名にかけて必ず。」


「そんな重そうな名で返されても迷惑だ!忘れろ!それよりあの竜人の子の主は誰だ?」


イデリナ「・・・私だ。」


「あの子、何処で手に入れた?」


イデリナ「立ち寄ったネールの街の奴隷商だ。」


「やっぱりな。扱いきれないなら俺に譲れ!幾らで買った?倍払う。」


イデリナ「な・・・」


ティナ「お譲りします!お金は要りません。」


「ダメだ!筋は通す。幾らで買った?」


ティナ「白金貨10枚です。」


 収納から白金貨20枚を取りだしイデリナに掴ませた。


「ツバキ、奴隷契約ってどうすれば変更できる?」


ツバキ「今の主人の血を首輪に付けてもらい、奴隷商でシグレ様の血で上書きして貰えば変更できるはずです。」


「おい!その子の首輪に血を付けろ。」


イデリナ「ああ・・」


 イデリナに血を付けさせ、サクラ達がオークの魔石や素材を回収し終えたのを確認した。


「さて戻ろう。」

 横になっているティナのメンバーを抱え上げた。所謂お姫様抱っこと言う奴だ。


イデリナ「な、何を・・」


「お前達だけでこの子は運べないだろ?関わった以上最後まで面倒は見る。と言っても階段の場所が解らないんだよな・・」


マクシム「ガハハ・・なら俺が知ってる。俺らも今日は戻る。一緒に行こう。」


「助かるよ。みんな用意は良いか?」

「「「「はい。はーい。」」」」


 歩き出そうとすると竜人の子が俺の目の前に立った。


「ご主人様。私が連れて行きます。それとこの剣を。」

 えっ?ご主人様?・・ああ買い取ったからか。


 〈土壁〉を地面に突き刺し、意識を戻さない騎士を俺の腕から受け取るようにお姫様抱っこで抱えた。


 しかし、あらためてみるとデカい。190cmは越えてそうだ。やっぱりサクラ達に負けず劣らずの美形、目鼻立ちのハッキリした美人だが何処か幼さもある。

 濃茶のショートカットに澄んだ琥珀色の瞳。耳の上に髪に溶け込むように2本の小さな角が見えた。


『身長もデカいが胸もデカいな。Eかな。体がデカいから尚更デカく見える。』



 1階層の転移門に出てギルドの出張所に行き、ティナのパーティーはメンバーの意識が戻るのを待つことになった。


 俺達とマクシムのパーティーはダンジョンを後にしていた。


マクシム「シグレ。今日は色々あって楽しませて貰った。どうだ今度一緒に飯でも食うか?」


「そうだな。今日はこの子に名前を付けてやりたいんだ。今度良い店を教えてくれよ。」


「名前を・・」

 竜人の子から小さな呟きが聞こえた。


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