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【竜人の子】

 今日はアカネのキスで起こされた。


「ん・・アカネ?もう1回・・」

アカネ「良いですよ。」

―― ゴソゴソ・・

アカネ「ん?・・あっ胸が出ちゃう・・」


―― ポロ!

「おっぱいが出ちゃったね?」

 今日もアカネのおっぱい攻略だ!


アカネ「シグレ様が出したくせに・・・あん・・ダメ・・」


―― カチャ!

ツバキ「さあさあ終わりですよ!起きてくださいね。」

 そして今日もツバキにベッドから引きずり出された。


 朝食を食べてダンジョンに向かう。

 昨日同様ダンジョンの入り口は混んでいる。

 30分ほどまって初めの門に行くと昨日と同じおっさんに話しかけられた。


「お、今日も来たのか。無理するなよ。」


「ああ、気をつけるよ。て言うか、顔を覚えてるのか?」


「不思議なもんで顔を覚えるやつは必ず名を上げるんだ。名前を教えてくれ。」


「じゃあ初めてのハズレだな。シグレだ。パーティーはヒイラギだ。おっさんは?」


「おっさんってお前・・まあ、おっさんか。ルマルだ。」


 おっさんと自己紹介をして初めの門に触れる。

 頭の中に1から8までの数が出る。『8』と念じ8階層の転移門の小部屋から外に出た。


「草が背丈ほどになったね。おまけに森とまでは言わないけど木が多い。それでも道らしき物は有るんだ。」


サクラ「それにジメジメしてます。休憩の時下着を替えたいです。」


ナナイ「そうなのよ。此処と下の9階層はこのジメジメが嫌なのよ。動くと大量の汗が出るわよ。」


「汗は嫌だけど気を抜かずに進んで行こう!」

「「「「はい!はーい!」」」」


 8階層に入って変わったことは冒険者の数が減ったことだ。

 それでも7階層の3分の2ほどだが戦闘中の冒険者と遭遇する場面が減った。


 もう一つ、俺達も積極的にオークを狩って進んでいる。理由はオークの魔石がお金になる事とオークのドロップ品が目的だ。

 元々食用の肉として需要の高いオークが此処では綺麗な肉の塊をドロップする。おまけに美味いらしい。ガチガチのなろう定番だ!


サクラ「右手の木の陰に4匹居ます。」


「良し狩ろう。ああ、この4匹を狩ったら休憩にしよう。」


アカネ「賛成!もうベトベトなんです。」


 オークを瞬殺して適当な場所にテーブルと椅子を出す。サクラ達は椅子に腰も降ろさずセルフボックスに消えていった。

 1人何か解らない果実のジュースを飲んで待つ。


「ふー、しかし本当にジメジメしてるな。オークには快適な環境なのかな。ん?・・・この先で戦闘してるみたいだな。」


 5分ほど待つと1人また1人と着替えを終えセルフボックスから出てきた。

 全員が椅子に腰掛けジュースを飲み終えたところで行動を再開した。


「サクラ。戦闘してないか?」


サクラ「してるようです。どうかしましたか?」


「ああ、俺達が休憩を始めた時から戦闘してたんだ。随分長いと思ってさ。ちょっと様子を見に行ってみるか。」


 様子を見に行った先では女だけ7人のパーティーがオークと戦っていた。


「7人?ナナイ、パーティーって6人までじゃなかった?」


ナナイ「そうよ。多分あの大きな盾を持ってる竜人の子は奴隷ね。パーティーのメンバーに入ってないのよ。」


「どういうこと?」


 パーティーは通常6人まで。これはこの世界のシステム上の制限で6人までは経験値の共有が出来るからだ。何故か?ファンタジーだからだ。

 じゃあ7人目は何かというと、ナナイの説明では奴隷を連れてきて戦闘を有利にするために使い潰すか特定のメンバーの盾役にするんだそうだ。


 今俺の前で戦っているのはおそらく貴族の娘とそのお付きらしい。

 この世界では15歳で成人になる。貴族の子供は15歳になる前にある程度レベルを上げる風習があるらしく、こうしてパーティーを組んでレベルを上げるそうだ。


 勝手に見ていたわけだが、何とも酷い光景だった。


 オークは2匹居たらしく1匹は既に倒れている。今は残りの1匹と戦っているが、戦闘とよべることをしているのは大きな盾を持った竜人の子しかいない。

 竜人の子は莫迦デカい盾以外粗末な服を着ているだけで剣も持っていない。唯ひたすら健気にオークを盾で押しとどめている。


 数分見ていて攻撃らしい攻撃をしているのが1番小さな女の子だけだと気づいた。

 どうやら魔法で攻撃しているがイメージ構築に時間が掛かるらしく攻撃の間隔が長い。

 他の騎士達も剣は抜いている。と言うか各々牽制でもしているのかオークに剣を突き出しているが届いてるかさえ疑問だ。


「酷いな・・」


サクラ「どうして他のメンバーがもっとオークを削らないんでしょ?」

アカネ「せめてオークを囲めば良いのに。効率が悪すぎます。」


「出来ないんじゃないかな。」

「「「「えっ?」」」」


 そうなんだ。一際質の良さそうなプレートメイルを着込み、竜人の子に怒声を上げている女がレベル17。オークの平均レベルと一緒だ。

 他のメンバーは軒並み14しかない。貴族の娘に至っては


ティナ・ヘンウッド ヘンウッド侯爵家次女 レベル8 14歳


 まあこの子はレベル上げに来たからしょうがないんだが。


「1番レベルが高いのがあの竜人の子でレベル18なんだけど、しかしムカつくな。」


ツバキ「どうされたんですか?」


「ああ、あの子の名前がね、巫山戯てる!」


蜥蜴 レベル18 15歳


サクラ「蜥蜴って・・・」


アカネ「・・・ねえサクラ!あの子。気づいた?」


サクラ「えっ?・・・あっこの臭い!レンドン商会に居た子。」


「そうなのか?」


アカネ「そうなのかって、シグレ様が私達の他に治してあげた子ですよ!」


「そうなの?・・・思い出した!たしかに大きい子を治した!

 しかし、せっかくの戦力を全然使い切ってないな。それに可愛い、いやかなりの美人さんだよね。おまけに胸――」

ナナイ「はいはい。気持ちはわかるけど、勝手に手を出しちゃダメよシグレくん。」


「解ってるよナナイ。でもこんな事ならあの時一緒に連れ帰れば良かったよ。

 ああ、決着が付きそうだ。」


 竜人の子が健気に盾でぶつかりオークを削った事が功を奏し貴族娘の水魔法が当たるとオークが崩れた。

 竜人の子は大きく肩で息をして膝を折っている。それを見たレベル17が後ろから竜人の子を毒づいている。


「もっと効率よく出来ないのか!」


「あのクソ女・・」

―― ガシッ!


サクラ「抑えてくださいシグレ様。」

アカネ「私達もシグレ様と気持ちは同じです。でもダメです!」


 両脇からサクラとアカネが俺の腕を取って制してきた。


「・・・解ったよ。2人ともありがとう。」


 この世界にはこの世界のルールがある。奴隷の扱いは衣食住さえ保証すればそれ以外は主人しだいだ。奴隷の扱いに関係ない者が口を挟むことは出来ない。奴隷制度を維持するためでもある。だから口を出した物が罰せられるという理不尽な法まである。


「行こう。」



 マップ探知を駆使し下に向かう階段を発見し9階層に降りた。

 9階層も8階層と同じ作り同じオークなので積極的に狩りながら進んでいった。

 サクラ達が今日2回目の着替えを終え、暫くして宿部屋を見つけたので昼ご飯をとる事にした。


 中に入ると先客が3パーティー。その中に貴族娘のパーティーが居た。


 あいてるスペースにいこうと貴族娘のパーティー脇を通って見てしまった。


「な、こ、ふ、あぁ、も・・・・・」


 今度はナナイとツバキに両腕を掴まれた。

ナナイ「シグレくん。解る。解ってるから。」

ツバキ「確かにあれは。でもこらえて下さい。」


 俺の怒りが言葉にならなかったのは、竜人の子の食べ物を見たからだ。

 他のメンバーが豪華な物を食べている横で、1人距離を取らされ固そうなパンに水だけだった。


「だから貴族は嫌いなんだ!」


 思わずだったのか、意図的だったのか俺にも解らない。気づいたときにはそこそこ大きな声で言葉が口を突いていた。


「おい貴様!今なんと言った?」


 どうやらレベル17に聞かれたらしい。

 何故だろう、口角が上がる。きっと俺は今ニヤついてるはずだ!


「ああ?何か聞こえたのか?」

 サクラ達が一斉に「あちゃー」の表情をしている。


「貴様!今我らを侮辱しただろ?」


「あんたらを侮辱したつもりは無いな。俺は貴族が嫌いだと言ったんだ。」


「それが侮辱だというのだ!」


「変なことを言う奴だな。俺はお前が誰かも知らないが?そもそも人が生きてれば好き嫌いはある。この国では好き嫌いは法に触れるのか?貴族を嫌っちゃいけないって言う法でもあったか?」


「巫山戯たことを言うな!我らはヘンウッド侯爵家の者だぞ。その我らの前で貴族が嫌いと言ったのだ。それを無礼と言わずに何と言う?」


「お前鑑定持ちか?なら此処にいる奴の名前全員言ってみろ?」


「な、なんだと?」


「言えないのか。鑑定持ちでもなかったら、お前が何処の家の者か知ってるわけないだろ!今どきプレートメイルを着た冒険者はその辺にゴロゴロいるんだぞ。

 それとも何か?お前は四六時中貴族家の者として誰彼構わず気を遣って欲しのか?ああ、貴族ならそうなのか。

 なら御貴族様にお願いだ。鑑定のない下々の平民はあなた様がどこの御貴族様かそれと見て解りませんので胸に札でも下げて頂けませんか?私はヘンウッド家の者ですってな!

 もっとも、そんな事してたら親が泣くぞ。お前の行動が恥ずかしいってな!」


「くくく・・・」

「傑作・・・」


 他のパーティーから笑い声が聞こえてくる。


「貴様!言わせておけば――」

「それとな、お前は貴族貴族って言ってるがお前がその侯爵家の血筋なのか?」


「なんだと?私は侯爵家の次女ティナ様付きの騎士だ。」


「なら尚更こんなとこで大声で叫んでどうする?そのティナ様が狙われることは無いのか?攫われたら?此処はダンジョンだぞ。何かあっても()()()()()()()()ですまされるんだ。お前本気でティナ様を守る気があるのか?」


「き、きさ――」

ティナ「イデリナ。お止めなさい。その方の言う通り好き嫌いは誰にでもあります。それを咎める法もありません。それに此処はダンジョン。貴族であろうと弱ければ命を落とす場所。此処では皆立場は一緒です。」


「ティナ様・・申し訳ありません。」


ティナ「さあみんな食べ終わりましたか?行きましょうか。」

「「「「「はい!」」」」」


 パーティーを引き連れ宿部屋を出ようとしたティナが振り返った。


ティナ「宜しければお名前を教えて頂けますか?」


「ヒイラギのシグレだ。」


ティナ「ティナ・ヘンウッドと申します。ご忠告ありがとうございました。」


 宿部屋を出て行く時竜人の子の視線がサクラとアカネを見ていた。



「ガハハ。良い物見せて貰った!」

―― バシッ!

 丸坊主の大男から話しかけられ背中を叩かれた。痛―よ!


「Bクラスパーティー〈猛群狼〉のマクシムだ。スッキリしたぞ!」


マクシム レベル53 26歳


「ヒイラギのシグレ、D級だ。B級がどうしてこんな上層に居るんだ?」


マクシム「新しいメンバーを入れたんだ。先を考えて若い奴を入れたから、そいつのレベル上げとパーティー連係の確認をしながら降りていってる。」


 マクシムのパーティーは5人。個人でB級が4人の中に1人だけD級の女がいた。


「あんた達なら新人を連れてもっと深い階層に言っても問題無さそうだけどな。」


マクシム「無いな。だが俺達が庇って戦ってるだけじゃ此奴の為にならん。実戦経験を積ませてやらんとな。」


「見た目と違ってちゃんと考えてるんだな。」


「ぷっ・・見た目だって!」

「ははは・・あれで石橋叩く性格だから。」

 マクシムのメンバーから笑いと呟きが聞こえる。


マクシム「うるせえぞお前ら!シグレも見た目って言うな。おりゃこれでも繊細なんだ!」


「すまん。申し訳ない。」


マクシム「じゃあ先に行かせてもらう。気をつけろよ。」


「ああお互いにな。」


 手を出され握手をしてマクシムが出て行った。



ナナイ「シグレくん。手大丈夫?」


「気づいてた?大丈夫だよ。Bクラスのマクシムか・・」



―― マクシム ――


「どうしたリーダー?掌なんか見つめて。」


マクシム「ん?試しに少し力を込めてみたんだ。」


「おいおい、そりゃ拙いだろ!相手はDクラスだぞ。」


マクシム「初めはほんの少しだ・・・お前俺の本気の握手で耐えられるか?」


「巫山戯るな!あんたに本気で握られて・・・ってやったのか?」


マクシム「ああ、一瞬だったが本気になった。そうしないと俺の手がヤバかった。」


「何もんだ彼奴・・・」


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