【女神のお礼】
「まずは冒険者ギルドに行って素材を買い取って貰おう。」
ナナイ「じゃあ明日からダンジョンに入る為の登録をして貰いましょう。」
「登録がいるんだ?」
ナナイ「ダンジョンに潜る冒険者の管理をギルドが請け負ってるから注意事項をレクチャーする役目もあるのよ。」
サラケスでは冒険者ギルドもネールの街より大きかった。
「建物は大きいけど・・・中の造りは一緒だね。」
ナナイ「まあ何処のギルドもこんなものよ。」
手の空いている受付嬢を見つけカウンターの前に行った。
「シグレと言います。素材の買い取りをお願いできますか?」
「シグレさん?〈ヒイラギ〉のシグレさんですか?」
「あっはい。どうして俺のことを?」
「ネールの街のギルド、メリンダから申し送りが来てました。ネール期待の新人がサラケスに行くから宜しくと。ああ、申し遅れました私はジャネットと言います。メリンダとは同期で研修が一緒だったんです。」
ジャネット 犬人族 レベル16
『犬人族か。メリンダより少し出るとこは出てるな。』
ジャネット「シグレさん。なにか失礼なこと思ってました?」
『うぉ・・どうして異世界人はこう勘が良いんだ!』
「いやいや何も。それに期待の新人なんて大げさですよ。普通の冒険者ですから。」
ジャネット「何言ってるんですか、登録した日にGからFにそれから数日でEまで上がるなんて、私の記憶でも最短ですよ。」
「たまたま運が良かっただけです。それで買い取りをお願いします。」
ジャネット「そうでしたね。では奥の専用カウンターにお願いします。」
やっぱり此処でも買い取りは奥のカウンターらしい。
サラケスに来るまでに遭遇したオーク38匹を出した。
ジャネット「連絡は来てましたがこれほどの数のオークを収納できるなんて・・・それにメリンダの言う通りメンバーみなさん綺麗な方ばかり。これが噂のヒイラギハーレム・・・」
なにヒイラギハーレムって?
メリンダはどんな報告をしたんだ?
「査定の時間の間に明日からダンジョンに行きたいと思ってるんですが登録をお願いします。」
ジャネット「ではパーティーメンバーみなさんのカードをお願いします。」
サクラ達もカードを出して渡すとジャネットが1枚ずつカードをオーブにかざしていく。
ジャネット「はい。これで登録は終わりました。では注意事項をお話ししますね。」
注意事項とは、まず毎回1パーティー銀貨1枚が入り口で徴収される。1パーティーなので1人でも6人でも銀貨1枚となる。
迷宮に入る時は迷宮入り口に有るギルドのオーブにカードを翳す。これで誰がいつ入ったか管理してるらしい。主に帰ってこない冒険者を特定してるらしい。
ダンジョンの中は自己責任。特別なことがない限り救援隊の派遣はしない。個人で救援を望む場合は資金は自己負担となる。
ダンジョンの中は先着順。魔物は先に遭遇した者に権利がある。宝箱も同じ。先着順の争いにギルドは関与しない。
冒険者狩りは当然厳禁。行ったものは最低でも犯罪奴隷となる。(見せしめとしてほぼ死罪が通例らしい。)
最後に、迷宮コアは破壊してはいけない。しかし此処のダンジョンは未だ何階層まであるかさえ解らないらしく、間違って最下層に行ったらと言うことらしい。
「此処のダンジョンって何層まであるか解ってないんですか?」
ジャネット「はい。現在確認されているのは81階層です。これも50年前のSS級パーティーが到達しただけで、今最も深く潜れるパーティーでも62階層までしか行っていません。
ですから、100階層は有るだろうと言うことで此処のダンジョンは〈百層宮〉と呼ばれています。」
「なるほど百層宮か。」
ジャネット「それと素材ですがオーク38匹でしたので金貨1枚と大銀貨9枚になります。宜しいですか?」
「ええ、硬貨で下さい。」
ジャネット「ふふ。やっぱり硬貨なんですね。メリンダの報告通りでした。それとメンバーのツバキさんがFからEランクに昇格しました。」
ツバキのカードを書き換えて貰いギルドを出て馬車まで街の様子を見ながらブラブラ歩くことにした。
「そうだ。どこかでお茶でもしていこうか?」
サクラ「賛成!せっかくですから美味しいスイーツを食べたいです。」
「じゃあ、お店選びは4人にまかすよ。」
結局女子4人が選んだ店は日本でも男が少ない店だった。
『男だけじゃ絶対入りたくない店だ・・・』
アカネ「シグレ様は何にしますか?」
「珈琲!って言いたいけどないんだよな。お薦めの果実ジュースで。」
メニュー選びに待たされたが結局サクラ達はお薦めのスイーツと飲み物を頼んでいた。
「ツバキ。ルシエラがどこに居るか解った?」
ツバキ「はい。ラディス家敷地内の本館から離れた別棟に居ます。」
「それは好都合だな。」
サクラ「ツバキに調べさせていたんですか?」
「ああ。ダラダラ時間を掛けるのは好きじゃないからね。」
「お待ちどうさまです。」
並べられたスイーツをサクラ達が満足げに食べ始めた。
因みにこの世界、なろう定番のプリンで儲けてやろうと思っていたらプリンは普通にあった。ケーキ類もある。
しかし、総じてスイーツは高い。なぜならケーキの土台となるスポンジ(日本より固めだが)の材料である小麦が少なく高いからだ。そしてクリームの原料のミルクも貴重で高い。その為ショートケーキの様な大きさのケーキ1個より200gほどのステーキのほうが安いと言うことになる。この世界のスイーツは贅沢品なのだ。
「今日この後ルシエラの所に行こうと思う。」
ナナイ「シグレくん。まさか私達に留守番してろとは言わないわよね?」
「えっ?」
サクラ「ダメですよ。1人では行かせません。」
アカネ「当然ね。私達を何だと持ってるんですか?」
ツバキ「私達を毎晩好きにしてるんですから、かっては許されませんよ。」
「なにそれ?ツバキのその言い方だと俺が無理矢理してるみたいなんだけど?えっ?みんな嫌だったの?」
ナナイ「嫌なわけないでしょ!そういうことしてる仲なのにこんな時だけ置いていくなって言ってるの!」
「あー良かった。目の前が真っ暗になりかけたよ・・・みんなで行こう。もっとも最初からそのつもりだったんだ。」
サクラ「そうなんですか?」
「ああ。ツバキに協力して貰わないとラディス家の敷地内には入れないからね。ツバキを連れていくのにサクラやアカネ、ナナイを置いていくわけないだろ。」
アカネ「じゃあデザートを食べたら行動開始ですね。」
サラケスの北東区は領主ゆかりの貴族やサラケスに別荘を構える貴族の屋敷が建ち並ぶ貴族街が存在し、そのまわりを商店主などの金持ちの屋敷が囲むサラケス屈指の高級住宅街となっている。
領主ラディス家はその北東区に広大な敷地を持ち、ひときは大きな屋敷が目を引いていた。
その大きな敷地の一角に建てられた小さな屋敷にルシエラはいる。
今俺達はルシエラの居る屋敷の裏にいた。
サクラ「ツバキがグレイパッセルの姿で現地を1度見てくる。その後転移のマスターリングをツバキが着けて一緒に転移する。考えましたね。」
アカネ「この方法は今後も使えそうですね。」
ツバキ「シグレ様。マスターリングをお返しします。」
「ゲストリングと交換だ。さて此処からは俺の仕事だな。サクラ、人の気配を教えて。」
サクラ「はい。そこの裏口を入った所に1人居ます。おそらく厨房です。2階に2人。同じ部屋に居るようです。」
「そこだな。ルシエラと介護をしているメイドだろう。」
厨房の扉の前に立ちアカネにノックして貰う。
『誰ですか?』という声が聞こえ中から扉が開き、姿を見せたメイドに【睡眠】の魔法を掛けた。
崩れるように眠りこけたメイドを支え厨房の中に入れ、目に付いた椅子に座らせた。
気配遮断を使い2階に上がり同じようにルシエラの部屋の扉をノックして開けた。
「どうしまし・・・誰?」
部屋には窓が1つ。部屋の真ん中にベッドが置かれメイドがベッドの横の椅子に腰掛けていた。
立ち上がろうとしたメイドに【睡眠】を掛ける。床に倒れそうになるメイドを支え椅子に座らせた。
ルシエラはベッドに横になっていた。
ルシエラ「だ、だ、だゃ・・れ?」
《酷いな。生きてるのが不思議なくらいだ。》
サクラ《可哀想・・・》
アカネ《辛いでしょうね・・》
ナナイ《どうしてこんな・・・》
ツバキ《惨い・・・》
顔は火傷でほぼ焼けただれ右耳は無く唯穴が空いているように見える。上手くしゃべれないのは唇が半分無くなっているからだ。辛うじて左目は開いていて眼球が動いているのは解る。
シーツを胸までずらすと・・・言葉にならない。
思わず頭に手を置いて焼けただれた地肌しか残っていない頭を撫でていた。
すると、ルシエラの瞳から涙が溢れだした。
「痛いかもしれないが耐えろ。治ったら女神イサドラ様に感謝しろ。聞こえていたらな・・・」
世界樹の雫の瓶を取りだしスポイトで1滴胸の上に落とした。
ルシエラの体を世界樹の雫の光が青白く包んでいく。
「あ・・ああ・・ああ痛い・・・声が!・・・話せる?・・・」
ルシエラの体がみるみる回復していく。
青白い光が消えると透けるような肌、薄いピンクゴールドの髪に緋色の唇をした女性が横になっていた。
ルシエラ・ラディス 人族 40歳
『うちの4人も綺麗だがこの人もとんでもない美人さんだ。これで40歳はウソだろとしか言えないな。』
「あ、貴方は・・」
痛みに耐え体力を使い切り、何とか話しかけてきたルシエラに睡眠を掛けた。
サクラ「シグレ様。」
「どうした?」
サクラ「このメイドも顔に火傷が有ります。」
眠らせて椅子に座らせたメイドの顔が見えた。顔の右側3分の1が火傷だった。
真っ白な肌に火傷の濃淡が尚更痛いたしい。
耳が細長い。
「このメイドは・・」
ナナイ「エルフね。顔もだけど右手にも火傷をしてる。きっと襲われた時一緒に居たんじゃないかな。」
サクラ達の気持ちが伝わってくる。
メイドにも世界樹の雫を落とした。
「んん・・ああ・・・」
「もう少し眠ると良い。」
メイドの頭を撫でながら睡眠を掛けた。
「さて帰ろうか。」
「「「「はい。」」」」
この日ラディス辺境伯家はルシエラの突然の快癒に騒然となり、〈ルシエラの奇跡〉は日を置かず周囲に伝わることとなった。
今俺はお風呂に入りみんなを洗い倒して湯船に浸かっている。
「明日からなんだけど、早速ダンジョンに行ってみる?」
サクラ「もちろんです。」
アカネ「実はちょっと楽しみにしてます。」
ナナイ「ふふ。まあ初めてだとそうかもね。でも楽しいことばかりじゃないから覚悟しててね。」
ツバキ「私も初めてなので楽しみです。」
サクラ「シグレ様・・・」
突然サクラが湯船で足を伸ばしている俺の上に乗ってきた。
サクラ「ん・・・。」
サクラがキスをしてきた。
「サクラ?」
サクラ「今日はルシエラさんとメイドさんを治してくれてありがとうございます。」
「どうしてサクラが?」
サクラ「2人の気持ちがわかるから。なんだかお礼が言いたくて。」
アカネ「サクラも?ねえ代わって。」
サクラが離れるとアカネが乗ってきた。
アカネ「ん・・・。私もルシエラさんを見てちょっと前の自分を思い出しました。シグレ様。ありがとうございます。」
ナナイ「同じ女としてはね。やっぱりあの姿はこたえたわ。アカネ代わって貰える?」
アカネと代わったナナイが俺の上に乗り両手で顔を押さえてキスをしてくる。
ナナイ「シグレくん。ありがとう。」
ツバキ「私はたくさん惨い死体も見てきましたが、あれで生きているなら死ぬより惨いと思います。ナナイ。」
ナナイに代わってツバキが俺の上に乗りキスをしてきた。
ツバキ「シグレ様。シグレ様に着いてきて良かったです。」
サクラ「シグレ様。今日は沢山サービスします。寝室に行きましょう。」
その後は最高でした。まあいつも最高なんだけど、サービスがムフフでウフフだったと話しておこう。
『起きろ!起きんかーー!』
『ん?・・ああヘパイストス様。どうしたんですか?また酒買っちゃたんですか?』
『違うわ!まったく・・シグレ。お前が三十郎と呼んどるクラーケンの軟甲と〈骨喰〉を出せ。』
『三十郎と骨喰?・・・これですか?』
『どれ。骨喰藤四郎か・・なるほど人が鍛ったにしては上出来だな。それにしても人の身で〈不壊属性〉に辿り着く者がいたか。その方が驚きじゃ。』
『やっぱり不壊属性って言うのはそれほどのものなんですか?』
『考えてみよシグレ。決して壊れぬのじゃぞ?単純にして明快じゃろ?』
『まぁそうですね。』
『辿り着いてしまったものはしょうがないがな。シグレ少し待ってろ。』
―― ガンガンガン!・・カンカン・・ガンガン!
『待たせたな。シグレ、お前は剣より長物が得意だったな。骨喰と三十郎をくっつけてやったぞ。ほれ!』
『くっつけたって・・・前と同じ骨喰ですけど?』
『骨喰の柄に三十郎を仕込んだ。お前の意志で柄から三十郎が伸びる。たしか骨喰は元々薙刀だったな。刀としても薙刀としても使えるようになったと言う事じゃ。
それと、骨喰は所詮鋼。切れ味が心許なかったんで刃にオリハルコンを重ねた。』
『重ねた?不壊なのに?』
『そもそも不壊属性といっても機能を維持し形を変えることに影響等無い。そうじゃな、不壊属性とは壊そうとする悪意や衝撃のようなものへの究極の反作用とでも考えれば簡単かの。』
『なるほど・・・ああ、でもオリハルコンって神器になったんですか?』
『気にするな、神器のカテゴリーからは外しておいた。』
『でもどうしてそこまでしてくれるんですか?』
『そうじゃ、イサドラから伝言じゃ。ありがとう。そう言っておった。良いか伝えたぞ。』
『イサドラ様が?それで何でヘパイストス様が骨喰を?』
『仕方なかろう。儂にあのイサドラが頼むと言うんじゃ。引き換えに2揉み許すとまで言われたら・・』
『それで揉んだのか?』
『見くびるな!あれは隙を突いて揉むから良いんじゃ。はいどうぞと差し出されても嬉しくないわ!
イサドラがそこまでしてもお前に礼をしたいと言うから・・』
『ヘパイストス様。俺に酒を奢らせて下さいよ。』
『・・・ふん。しょうがない!今回は奢られてやるか。
そうだこのあいだの酒が再入荷しとったな。無くなる前に1ダース買っとくか。』
『この前の酒? 1ダースって言ったら・・・白金貨12枚じゃないか!あっおいヘパイストス様?おいちょっと待て!クソッ逃げられた!』




