【鍛冶神の加護】
野営以外の日は毎日一緒に入ってたのに・・・
サクラ達とお風呂に入るためにその日1日頑張ってるのに・・・
「はぁ・・この浴槽ってこんなに広いんだ。」
ネールの街に戻ってギルドに行ってカードの確認をしたけどどうでも良かった。
反応の悪い俺にメリンダがサクラに視線を送っていた。
サクラが返した視線でメリンダが『何かやらかしたのね』と察したらしい。
女って無言で会話が出来るの?
パーティーボックスに入って夕食を食べ、サクラ達は早々に俺を置いて風呂に入ってしまった。
そして俺は今1人で湯船に浸かっている。
だって大丈夫だって思ったんだもん!
『ラッキー!これで殴れる!』って思ったんだよ!by心の声!
「フーしょうがないか。心配させたのは事実だしな。反省しよう。」
―― ゴボ!ワシャワシャワシャ・・
湯船に潜って思いっ切り頭を洗った。
「あー気持ちいい!よしあがるか。」
―― キイ!
「わぁ、吃驚した!」
サクラ達が脱衣室にいた。
サクラ「もういつまで入ってるんですか?あんまり遅いんで迎えに来たんですよ。」
アカネ「ほら、こっちに来て下さい体を拭きますから。」
「えっ、なに?どうしたの?」
ナナイ「待ってても来ないから。ほら両手挙げて。」
ツバキ「足を拭きます。少し足を開いて下さい。」
「あ、ああ、ありがとう。」
着替えさせられた俺は寝室のベッドの上でサクラ達と車座になっている。
ナナイ「罰はお風呂だけよ。もう心配させないでね。」
「はい!うう・・みんな大好きだ!」
ツバキ「それで、今日は私から、ん・・・」
ツバキは最高でした。
サクラも最高でした。
アカネも最高でした。
ナナイ「シグレくん・・ゴメンね。」
「どうしたのナナイ?」
ナナイ「お風呂の罰のこと。誰かがシグレくんに厳しくしないといけないと思って・・・」
「気にしてないよ。今は俺が悪かったって思ってるし。ナナイに嫌な役目させちゃったね。」
ナナイ「じゃあ怒ってない?これから私だけど・・ちゃんと可愛がってくれる?」
「当たり前だろ!おいでナナイ。」
なんだろナナイが可愛すぎる。何この甘え属性?
スッゲー元気出てきた。
もちろんナナイも最高でした。
『起きろ!起きんかシグレ!』
『ん・・?エロおやじ。』
『じゃから儂は神だと言っておろうが!』
『ああヘパイストス様。どうしたんですか?』
『どうしたって・・・まあ何じゃ、シグレが何か困っとりゃせんかと思ってな。』
『困ってる?・・・別に困ってることは無いですよ。わざわざ気に掛けてきてくれたんですか?』
『その通り!お前のことが気になってな。有りがたいと思えよ、儂ほどの神から気に掛けられておるんじゃからな。』
『・・・酒を買ったな?先に酒を買ったから無理矢理相談に乗ろうとしてるんだろ?』
『な、何を言っとる。儂は神じゃぞ。相談の押し売りなど・・』
『美味しい酒なのか?』
『それが残りが2本しかなくなっておっての、これを逃すと・・っておい!』
『はあー、幾らだ?』
『・・・白金貨2枚。』
『白金貨2枚!日本円で200万?・・・まったく。』
『まあまあ落ち着けシグレ。こうポチッとやるタイミングというのがあるんじゃ。』
『ポチって・・神様が言うことか!はぁ、そうだ聞きたいことがあります。鍛冶や錬金って俺には無理ですか?』
『ほら!儂の助言が必要だったんじゃろ?ん?鍛冶?錬金?知りたいか。しょうがないな。』
『良いから早く話してくれませんか?イサドラ様にチクりますよ!』
『・・・鍛冶も錬金もすれば良かろうに。むしろ何故せん?』
『何故せんって、俺には鍛冶のスキルも錬金のスキルも無いですよ。』
『ああそうか!此処はスキルが全ての世界じゃったの。忘れておったわ。お前には鍛冶も錬金もスキルは必要ない。』
『どうして?』
『そもそも人の身で儂のアイギスを身に付け、儂とこうして話せるお前に最高の鍛冶神の加護が無いわけ無かろう。
それにの、儂は鍛冶神と言っとるが本来は物造りの神じゃ。その儂の加護じゃぞ鍛冶も錬金もスキルなど必要ないわ。』
『でもステータスの項目に加護なんて無かったですよ。』
『イサドラじゃな。この世界には加護という概念が無いんじゃろ。おそらく今この世界で神の加護を持つのはお前とお前のパーティーメンバーだけじゃろうな。だから面倒事が起きないようにステータスから隠したんじゃろ。』
『じゃあ、やろうと思えば俺は錬金術が使えるんですね。』
『まあやってみろ。百聞はってやつじゃ。但し、儂と違ってお前は必要な材料を集めることが必要じゃ。』
『じゃあ大量に作って売ろうと思えば材料の確保が必要になるな・・・』
『ん?なんで?』
『なんでって、石鹸を1個2個売るわけじゃ無いんだ。材料も量が必要になりますよ。』
『そうじゃない。簡単に増やせるだろ。・・・そうかお前【次元収納】を唯の物入れだと思っとるな?あれは儂が造った傑作じゃぞ。ゼロからは造れんが入れた物を分析して増やす事が出来る。原料だろうが造った物だろうがな。
それに狩ったものを入れれば素材に解体出来るし、完成品でも原料に戻すことも加工することも出来る。そもそも【解析鑑定】と【次元収納】でワンセットなんじゃからな。』
『そんな話聞いてませんよ!最初にちゃんと説明して下さいよ!』
『良かった!良かった!これで白金貨2枚分はクリアだな。じゃあなシグレ。
しかしこっそりシグレの財布から拝借できたと思っとったのに、まさかイサドラに見つかるとは・・・』
『ちょ、ちょっと待て!おい!こら!勝手に帰るな・・・』
ナナイのキスで起こされた。
ナナイ「ん・・おはようシグレくん。朝食が出来てるよ。」
「おはようナナイ。」
『エロおやじめ。逃げ足は速いんだよな。』
朝食を食べながら今日の予定を話した。
「急なんだけど今日は休みにしよう。」
サクラ「何か用事でもあるんですか?」
「大門屋敷に行きたいんだ。本を持ってきたいのと、地下をまだ見てなかったと思ってさ。」
ツバキ「そうですね。お見せするのを忘れてました。」
「ダイモンがどんな物を作ってたのか興味があってさ。」
アカネ「いいですね。ツバキもう一度下着の補充しても良い?」
ツバキ「構いませんよ。まだ色々種類もあったはずです。みんなで見てみましょう。」
ナナイ「そうなの?それは楽しみ!」
「決まりだ。午前中は大門屋敷に行って午後は食料品の買い出しに行こう。そして、明日サラケスに発とうと思う。」
ナナイ「そうね。北の森のオークも相手にならなくなったし、此処は心機一転したいところね。」
「「「サンセーイ!」」」
朝食を食べ終わり俺達は大門屋敷に転移してきた。
「ツバキ。地下を案内してくれないか?」
ツバキ「こちらです。」
1階の幾つかある扉の1つを開けると地下へ続く階段があった。
ツバキが扉を開け階段に足を掛けると魔石灯が次々点灯し階段を照らしていく。
「自動で点くの?」
ツバキ「はい。この下にこの屋敷の全ての魔石に魔力を送っている場所があるんです。」
ツバキに案内された場所は階段の真下。メガネの魔法使いが住んでいた階段下の部屋と同じ場所だ。
簡素な扉を開けると壁に嵌め込まれたバレーボールほどの魔石があった。
「大きな魔石だね。どんな魔物から取れるんだろ?」
ツバキ「シグレ様。これは魔石ではありません。〈魔導石〉と言われますが元は〈迷宮核〉です。」
ナナイ「迷宮核?魔導石って迷宮核なの?」
「ナナイは魔導石は知ってるのか?」
ナナイ「魔導石って極偶に迷宮で発見されるの。ゴブリンの魔石より小さい物が殆どだけど価値はまるで違うわ。どんな小さな魔導石でも白金貨100枚にはなるのよ。」
ゴブリンの魔石は魔物から取れる魔石では小さい方で直径はピンポン球ほどしかない。それより小さくて白金貨100枚。一攫千金を画に描いたような代物だ。
ナナイ「でも、その魔導石が迷宮核なんて聞いたこと無いわ。」
ツバキ「ダイモンが言うには、迷宮から迷宮核を回収すると2日もすると石化するそうです。それを魔導石と呼んでいると。小さな魔導石は言わば迷宮核の卵。迷宮内で発生し成長すると転移して迷宮を作り出すそうです。」
「魔石とその魔導石の違いって?」
ツバキ「魔石は魔素を吸収したり私達が魔力を込めることで効果を発揮しますが魔導石は魔力の塊、私達が魔力を込める必要がありません。どんなに小さな魔導石でも数百年単位で使用できます。」
「じゃあこの魔導石は?」
ツバキ「私がここに来た時には既にこの家全体に魔力を供給していました。それでも一向に魔力が枯渇する気配はありません。」
「またスゲーしか出てこないよ。」
ツバキ「こちらに。」
ツバキに案内され階段前の最初の扉を開けると天井に魔石灯が灯っていく。
「何だこの広さ・・・上の屋敷より広いよな。」
屋敷の床面積の数倍は有りそうな部屋の中に棚が組まれている。その棚に様々な物が積まれていた。
ツバキ「ここにある物は全てダイモンが造った物です。こちら側の棚が商品として売っていた物。そして、こちらの棚はなぜか商品にしなかった物です。」
石鹸や下着類の商品として売っていた物はしっかりと量がストックされている。
石鹸は香料を変えた物が数種類、下着はショーツ類はもちろんノースリーブのブラトップってやつまであった。
「女物が多いな。5000年前にこんな物が流通してたのか。」
ツバキ「全て上流階級向けです。ショーツですら金貨で売られていたはずです。」
ナナイ「お金があれば一度着けたら買い続けるわね。それだけ着け心地が違うもの。」
「なるほどな。ああサクラ、アカネ、ナナイ、ツバキも。これ着てみなよ。胸の辺りが良い感じになると思うよ。」
サクラ「良い感じですか?」
「ブラトップって言ったかな。元の世界で女の人に人気があったはずだよ。俺が言うより試した方が良いと思う。インナーだからバトルドレスの中に着ると良い。」
アカネ「インナー?ツバキ。良いですか試してみて。」
ツバキ「構いませんよ。」
「これは塩じゃないか!大門は塩も売ってたのか。この塩しっとりしてるな―― ペロ ――ツバキ、この塩のことダイモンは何か言ってなかったか?」
ツバキ「海で取れる塩だと言ってました。商人が来る前に転移のリングをはめてはどこかに取りに行っていました。」
「この世界のどこかで作ってた?当然海岸に近い場所だな。まあ今となっては仕方ないか。ツバキ、ダイモンはここに有る物を何処で造ってたんだ?」
ツバキ「こちらの部屋です。」
倉庫部屋の横、この世界では珍しい引き戸をツバキが開けると屋敷の敷地面積ほどの部屋の灯りが付いた。
「工作部屋って感じだな。」
簡素な木のテーブルが何台も並べられ素材らしき物が乱雑に乗せられていた。
ナナイ「シグレくん。これ・・金のインゴットじゃないの?」
「そうだね。ナナイが持ってるのが金。アカネが触ってるのが白金。ああサクラ。サクラの前にあるのがアダマンタイトみたいだよ。」
他にも解析鑑定で様々な素材の名前が俺には映し出されていた。
「どれ1つとっても貴重品ばかりみたいだ。」
ツバキ「ダイモンがここに来た時が50歳だったそうです。それまで色々旅をしてこれらを集めてきたそうです。」
「凄い執念だな。」
サクラ「シグレ様。素材がどれ1つ劣化してませんね。やっぱり劣化防止の魔法ですよね。」
「それなんだけど。ツバキもしかしてこの地下、いや階段も含めて拡張空間じゃないのか?そして人が居なくなると時間が止まったりしない?」
ツバキ「お解りになったんですか?ダイモンは【時空間魔法】と呼んでいました。ただ時間を止める魔法はとんでもない魔力を使うそうです。あの階段の下にあったのと同じ大きさの魔導石を使って施したそうですが、その魔導石の魔力はそれで枯渇したそうです。」
「解ったって言うか、さっき違和感を覚えてスキルを確認したら【空間魔法】が【時空間魔法】に変わってたんだ。」
部屋の奥に大きなテーブルがあり、その更に奥に本が積み上げられた机と椅子があった。
「これが作業台か。ツバキこの部屋俺が使っても良いか?」
ツバキ「もちろんです。それに、もう此処はシグレ様の物です。いちいち私にことわりはいりません。」
ナナイ「もしかしてシグレくんって錬金が出来るの?」
「んー多分ね。やってみないと何とも言えないけど。」
「「「チートね!」」」




