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【ヒイラギ】

 オウコとコハクを引き取り東門の中に入った。


 この世界の大きな街は門を入ると馬を預かる厩舎と馬車溜まりがある。

 最近はその馬車溜まりに馬車を置き、そこで生活している冒険者や行商人が増えていた。

 キッチンやトイレやシャワーが付いている空間拡張された馬車が普及しているからだ。


 厩舎に引き取ったばかりのオウコとコハクを預ける。

「お客さん良いバトルホースの番いだね。」


「すまないが雄が他の雄が雌に近づくと嫌がるんだ。」

「ああ、大丈夫ですよ。馬車は大体2頭引きなんで厩舎は2頭ずつで間仕切りしてるんです。」


 馬の世話と飼い葉代が1頭1日銀貨1枚銅貨5枚。馬車置き場の場所借りが1日1台銀貨2枚。1日分か纏めて3日分か6日分の前払いになる。理由は冒険者は全滅すると帰ってこないからだ。

 前金で払うが突然離れることになっても返金は無し。そのかわり前払い中は馬車で出かけても馬車置き場と厩舎のスペースを確保してくれる。

 俺達は6日分銀貨30枚を渡して馬車置き場の指定された場所に馬車を出して固定した。

 うちの馬車は現代日本人の(おそらく)ダイモン製らしくサイドブレーキが着いている。馭者台にレバーがあり引くだけで簡単に馬車の固定ができる。


「さてこれで良いな。サクラ、五の鐘までまだ時間は有るの?」

サクラ「そうですね。30分くらいでしょうか。」


「食料品は大丈夫かな?なんなら買い出しに行くけど。」

ツバキ「そうですね。夕飯が少し遅くなっても良いなら紅茶とか飲み物を少し買い足して貰えれば。」


「良しじゃあ買いに行こう。みんなも途中思いだした物があったら買って良いからね。」

「「「はーい。」」」


 みんなで商店筋に入り目に付いた食料品を買い足していく。


「サクラ。何人俺達を見張ってると思う?」

サクラ「宿を出た時に2人いました。それから1人はずっと同じです。」


「同じ?そこまで解るんだ。」

サクラ「臭いが同じですから。もう1人は時々代わりが来ています。」


「あの店の横にいる奴らか?」

ナナイ「丸見えね。」


ツバキ「シグレ様。マッフェオが人を雇うようです。」

「一度集めてるからな。今日のものにはならないだろう。」


 馬車に戻りパーティーボックスに入るとナナイとツバキが食事の用意。サクラとアカネが洗濯を始めた。

 俺はノンビリしていなさいと言い渡されリビングのソファでダイモンの魔法書を読んでいる。おかげで〈麻痺(パラライズ)〉を物に出来た。


 夕食を食べている時にツバキから報告があった。


ツバキ「シグレ様。ルドリックがマッフェオの屋敷に現れました。マッフェオに湖沼群でのことを問い詰めて惚けられたようです。」


「だろうな。正面から聞いたところであの手の奴が正直に答えるわけがないよ。」


ツバキ「ルドリックはラディス家の家人が居なくなったのであれば問題になる。戻らなければ父上に話すことになると言い置いて屋敷を出ました。」


「ルドリックが屋敷を出てからのマッフェオは?」

ツバキ「そこら中に当たり散らしているようです。・・・シグレ様の動向を探れと指示してます。」


「そうか・・・良し。ご飯を食べてお風呂に入ろう!」

「「「「はい。はーい。」」」」


 お風呂は最高でした。

 夜のムフフも最高でした。



 アカネのキスで起こされ、朝食を食べてギルドに行った。


 ギルドで依頼を確認するとオークも常設依頼だ。

オークの肉は美味しいらしくそれだけに需要に供給が追いついていないらしい。

 丁度良い狩り場が歩くと北門から半日かかるらしいので俺達は馬車で向かうことにした。


 言っておこう、オウコとコハクが速すぎる。


ナナイ「何このスピード。普通の馬の倍以上出てるんじゃない?」

「確かにギルドから借りた馬とは全然違うな。でもオウコもコハクも別に無理してる感じじゃないけどな。」


ナナイ「そうなのよ。特にオウコなんかコハクに気遣って走ってるのよ。本気を出させたらどれだけスピードが出るのかしら?」


 サクラ曰く、俺達を付けていた奴らがあっと言う間に消えたそうだ。ついてこれなかったんだろうな。


 30分もせず狩り場に着いてしまった。

 馭者台でイチャイチャする間もなかった・・


 ナナイに受けたレクチャーでは、オークの平均レベルは17ほど、但し結構な頻度で出てくるらしい上位種は一気にレベルが10は上がるらしい。

 むしろ俺達のレベルアップには好都合だ。


 馬車からオウコとコハクを放し自由にする。オウコのレベルだとこの辺の魔物じゃ歯が立たないから問題ない。

 馬車に認識阻害の魔法を掛けて森の中に入っていった。


サクラ「いました。5匹です。」

「じゃあ、ツバキの雷魔法からだ。技名は【(いかづち)】だ。並行処理で本数を増やしていこう。」

ツバキ「解りました。」


 サクラの指示する方に進むとオークが5匹車座になって何かを食べていた。


「ツバキ!」

ツバキ「【雷】」

―― ドン!


 音は1つだが3本の雷の柱がオーク3匹を襲った。

 3匹のオークはそのまま崩れている。

サクラ「行きます!」

 雷を受けなかったオークはサクラが瞬殺した。


ナナイ「【雷魔法】も凄いわね。」

「ああ、初めてでこれなら慣れてきたらかなりの戦力だな。」

ツバキ「頑張ります。」


 その後はオークを刈りまくった。


 今日の目的はツバキを戦闘になれさせることが第一で、その次に新しい武器の性能の確認だ。


 サクラは雷閃に魔力を流すと体に雷を纏い速さがとんでもないことになっていた。もう一つの水鏡は水の鏡を造り刃として飛ばすことが出来る。オークの首を簡単に飛ばしていた。ただ、1番の発見は雷を纏ったサクラはこの水の鏡に反発するらしく空中機動の足場に使えたことだ。おかげで、サクラは壁や木がなくても立体的な動きが出来るようになった。


 アカネのゲドの弓も優れものだ。アカネ曰く初速と飛距離が普通の弓の倍は超えるらしい。ツバキからコピーした【遠見】も効果が大きく200m先のオークを余裕で射貫いていた。


 ナナイの焔は使い続けるほど刃先に熱を帯びていく。その分魔力が消費されるようだが俺のパーティースキルの恩恵で魔力量の上がったナナイには問題はなかった。

 オークを切りつけた時に香ばしい焼き肉の臭いがして全員のお腹が鳴ったのはご愛敬だ。


 ツバキは午前中で【雷】が5本になった。雷は直撃すればオークなら余裕で倒せる。直撃しなくても擦ると麻痺を起こして動きを止めることが解った。これはかなり有効だった。


 午後はツバキに国士無双を持たせアカネの魔法で取りこぼしたオークに向かわせた。国士無双の【筋力強化】と【豪腕】はかなりの物らしく非力だと言っていたツバキがざくざくオークを切り刻んでいた。


 俺はと言えば午前中は骨喰を使っていた。骨喰は刀身は鋼だがさすが不壊属性、切る度にゴリュ!ゴキュ!と骨を切り飲み込むような音をたててオークを切り裂いていく。

 そして午後はアイギスの盾と銀甲を付け肉弾戦の実践強化をしていた。


サクラ「シグレ様。四の鐘が過ぎました。」

「了解。じゃあ今日はこの辺で終わりだね。」

「「「「はい。はーい。」」」」


 馬車に戻ると自然とコハクがオウコを引き連れてやって来た。どうもこの番は雌上位らしい。


 俺達を見失ったマッフェオの見張りは認識阻害の掛かった馬車を見つけられず代わりにオウコとコハクを見張っていたらしい。と言うかサクラが見張りから血の臭いがしますと言ってたので、もしかしたらオウコに近づいて蹴られたのかも知れない。


 帰りも30分と掛からず街に着きギルドに行ってカードのチェックと素材の買い取りをして貰う。

 討伐数を気にしていなかったが74匹狩っていたらしい。自分たち用に4匹残し70匹をギルドに渡すと、オーク1匹の買い取りが銀貨5枚なので金貨3枚と大銀貨5枚になった。


メリンダ「これ1つのパーティーで1日のオーク討伐の新記録ですからね。まったく・・・」

 いや討伐数を更新したのにまったくって・・・解せん。


 冒険者ランクが上がった。

俺とサクラとアカネがDランクに。ツバキがGからFになった。ツバキは一昨日登録したばかりだけど。


 ちなみにパーティーランクもDだ。うちのパーティーにはBランクのナナイが居るが、ナナイ1人ではパーティーランクは上がらない。俺とサクラとアカネの3人がDランクになって概ね平均でパーティーもDランクだそうだ。


「そうだ前に言われていたパーティー名なんだけど、〈ヒイラギ〉に決めました。」

メリンダ「ヒイラギですね。解りました。カードをお願いします。」


 パーティー名〈ヒイラギ〉は昨日お風呂に入りながら話し合って決めた名前だ。

 『俺の生まれた月を代表する花の名前なんだ。』であっさり決まってしまった。


メリンダ「シグレさん。昨日の盗賊のカードですが中に賞金の付いてるのが2枚有りました。と言っても僅かですがこちらがその賞金になります。」

 トレーに乗せられて出てきたのは大銀貨7枚だった。

 んー高いのか安いのかわからん。でも小物には間違いない。


 馬車溜まりに戻り昨日と同じ場所に馬車を止め、オウコとコハクを預ける。

 パーティーボックスでは昨日と同じようにサクラとアカネが洗濯をはじめナナイとツバキが食事の用意を始めている。

 俺は昨日と同じようにソファでノンビリとダイモンの魔法書を読んでいる。うん。〈睡眠(スリープ)〉を覚えた。


 食事の後はお風呂タイムだ。

 俺はこのために頑張ってる!そう言い切っても過言じゃない。


 狩りに出た日は念入りにサクラ達を洗う。

 理由は2つ。1つ目は怪我をしていないか確認する為だ。だから隅々までちゃんと見る。

 2つ目はそうしたいから。()()()()()()()()()()とも言う。


 そしてウフフで素敵な夜を過ごす。



 それから2日間、俺達は北の森に行きオークを狩っていた。

 この3日でツバキは充分以上な戦力になり、他のみんなも新しい武器を使った戦闘スタイルを身に付けていた。

 オークは毎日70匹ほどを狩り、2日目の午後にはオークジェネラルが現れたがパーティー連係の練習台にされて沈んだ。

 問題があったとしたらメリンダの開いた口だったと言っておこう。レベル37魔物ランクCだと言うオークジェネラルは金貨8枚で引き取られた。



 ルドリックに1週間の期限を切ってから4日目、俺達は今日もオーク狩りに北の森へと向かった。


 いつものように狩り場の入り口でオウコとコハクを放し、今日は馬車を収納の中に入れた。

 今日は少し森の奥に行くつもりだ。



 何故か午前中はなかなかオークを見つけられない。


「昨日まであんなに居たのにな。ジェネラルを倒したからなのかな?」

ナナイ「そうかも知れないわね。何処の森も1日でガラッと様子を変えるから。」


 結局昼食前に見つけ出せたのは僅かに3匹のオークだった。


「まあこういう日もあるか。食べ終わったら獲物を見つけながら戻ろう。それで居なかったらしょうがないよ。」

サクラ「そうですね。」

アカネ「了解です。」

ナナイ「結構奥に入っちゃったし、丁度良いかもね。」

ツバキ「問題ありません。」


 昼食を食べ終わり俺達は森の入り口を目指す。


 オークに会うことなく1時間ほど進んだところでサクラが何かを探知した。


サクラ「この先に何かいます。大きい魔物です。私は初めての魔物です。」

「初めてか。みんな警戒して進もう。」


 サクラが先導して進むと、木陰に休むようにブルドック顔の大きな熊がいた。

ナナイ「ブルベアよ。珍しいわねこんなところにいるなんて。」


ブルベア レベル31


ナナイ「もしかして此奴のせいでオークが居ないのかも。私達がジェネラルを狩ったから此奴が入り込んだのかも知れないわね。」


「まあでも問題無さそうだからいただこう。」

「「「「了解。です。」」」」


 はい。問題ありませんでした。素材として肉も毛皮も貴重だというので、サクラが〈雷閃〉一閃!首チョンパで終了でした。


 うちの子達がドンドン強くなって俺の出る幕が減ってるんだよな。おかげで体力も余っちゃって。

 これは夜に使えということか?そうだ!そうに違いない!


 そしてもうすぐ入り口というところで冒険者のBランクパーティーに遭遇した。


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