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【脱出とステータス】

「こっちだ。付いてこい。」


 前を行く騎士団長が階段を下っていく。

『階段に窓がなくなった。召喚された部屋は1階か。』


 階段を降りると、どうやって光っているのか廊下の壁の上で光を放つ石がある。

『ファンタジーだ!』


 騎士団長の向かう先に数人の騎士の姿が見える。


「何処まで行くんですか?此処は地下ですよね。出口があるとは思えないんですが。」

「良いから黙って付いてこい!」


『さて、そろそろヤバいかな。』



 重吾は女神の話を思い出していた。


『セレゴス王国は、召喚魔道具の星の巡りに合わせ異世界召喚をしては召喚した者達を他国に売り払うのです。他国の王家や貴族の奴隷としてです。

 それ以外にも、あの国はエギンバラの人族や他の種族を襲っては攫い奴隷として売り払うのです。

 霜月重吾。これは二つ目の願い。出来るならセレゴス王国を滅ぼしてください。その為の力はあなたの仲間、家族を作ることで適います。』


『この国が女神の話した通りなら、勇者じゃ無かった俺は問答無用で奴隷として売り払うつもりだろうな。あの場で王の指示を王女が止めたのはあの2人に悪感情を与えないためかな。

まあどうでも良いか。頃合いだな。』



『霜月重吾。ポケットに《転移の宝玉》を入れておきます。この石は私の加護が施されています。たとえどんな障害があっても大丈夫です。

 転移先はカールスブルク公王国ネールの街。そこで第一の、()()()()()を叶えてください。』


 騎士団長が振り向いた。俺が止まったからだ。

「おい!早くこんか。」


「いや止めておくよ。」


「なんだと?」

 騎士団長が腰の剣に手を掛けた。


「剣を抜かれたら恐そうだな。王に言っとけ。あんまり阿漕なことはするなってな。」


「なんだと?貴様、まさか逃げようとでも思っているのか?ハハハ笑止!剣もなく、何のスキルも持たないやつがこの城から逃げられるとでも思っているのか?」


「思ってる!」

 ポケットに入れていた手を出す。俺の手には女神特製の転移の宝玉が握られている。


『飛べ!』




 目が覚めると、草原の岩に背を預けていた。空が高い。


「今日、何回目の目覚めだ?」


 周りを見渡すと、視界の先に城壁らしきものが見える。その逆側には異世界定番の森が見えた。


「無事脱出できたんだよな。まさかあの城壁がセレゴスなんて事は無いと思いたい。お願いしますよ、女神様。」


 この世界が魔法有りのファンタジーな世界だとは女神様から聞いていた。もちろん魔物付きだが。

 その魔物がいないか廻りを確認して、あらためてステータスを開いた。


ステータス


名前:霜月 重吾

種族:人族

年齢:17

レベル:1

称号:異世界から召喚された者

スキル:【多言語理解】


「さてこの▼マークって言ってたな。でもどうやって・・・」

 ステータスの▼マークをクリックするように意識した。


―― カチ!


ステータス


名前:霜月 重吾

種族:人族

年齢:17

レベル:1

称号:英雄

スキル:【偽装】【高速思考】【並列処理】【多言語理解】

【パーティー】

アイギス:【全魔法才能】【全スキル才能】【次元収納】


「偽装しておくって言ってたのはこの【偽装】スキルのおかげか。これからも役立ちそうだ。英雄って柄じゃないしな。

 時間が無いからって無理矢理押し込んできたのが【高速思考】と【並列処理】か。頭の中が1回転した感覚だったな。

 次は【次元収納】・・・えーとこれも頭で思えばいけるのかな。」


 なんとなく頭の中で次元収納と唱えると目の前にリストのようなものが出てきた。


白金貨10枚

金貨20枚

大銀貨30枚

銀貨30枚

銅貨30枚

アイギスの籠手

旅人のセット

黒蚕のローブ

世界樹の雫

コーラ


「コーラ?コーラって・・そう言えばおまけもしておきますって言ってたな。」


「お金も結構入ってる。価値基準がわからないけど、白金貨が有るからかなり金持ちな気がする。

 ああ、最初のお願いのためか。」



「まずはアイギスの籠手か。そう言えば、次元収納はアイギスの能力だって言ってたな。自分を収納できる変わった籠手だって笑ってたけど。」


 頭の中で籠手をイメージして出ろと願うと目の前に現れた。


「これがアイギスの籠手?左手だけなんだ。確か山羊革だったような・・・うん。見た目は茶色の普通の籠手だ。」


『神器【アイギスの籠手】を授けます。』

『神器?そんな物頂いて良いんですか?アイギスって、鍛冶神ヘパイストスが作ったってやつですよね?』


『そうですよ。ヘパイストスが酔って粗相をした罰に取り上げた物です。アテナに渡す物を取り上げたので同じ物を作らされたと言ってました。私の胸を揉んだバツです。知った事じゃありませんよ!』


『ヘパイストス揉んだのか!てことは、姿は見えないけど女神の胸は結構デカいな。』


『地球基準でHです。心が読めるので注意するように!』

『はい・・・』


 アイギスの籠手を左手に付けると、シュルっとサイズが変わった。

 格闘用のグローブのように指先が出ている。不思議と付けてる感覚が無い。


「凄いな。あつらえたみたいだ。・・・あれ・・なんだ視界が・・・目眩が・・」

 不意に目眩が襲い、腰掛けていた岩からズリ落ちそうになる。

 5分ほどして漸く落ち着いた。


「ふー、何だったんだ?あれ・・何だこのインデックスみたいなの。【雑草】?・・【花崗岩】・・鑑定か?」


ステータス


名前:霜月 重吾

種族:人族

年齢:17

レベル:1

称号:英雄

スキル:【偽装】【高速思考】【並列処理】【多言語理解】

【気配探知】【パーティー】

アイギス:【全魔法才能】【全スキル才能】【次元収納】【鑑定】


「やっぱり鑑定が増えてる。それに気配探知に、細かなステータスはないが体が強くなったような身体能力が上がったことが解る。

 鑑定と気配探知、身体能力の上昇はアイギスの恩恵か。スキルの詳細は・・解るかな?まあ、後で良いか。」


 次元収納『収納で良いか』収納から旅人セットを取り出す。

 皮製のショルダーバッグの中に、旅人の服?の上下に革のブーツ。鉄の片手剣。ライフポーションが3本入っていた。

 廻りを確認すると誰もいないようなので、着ていた学生服を脱ぎ服を着替えてブーツを履いた。

 腰に剣を下げると、異世界の現地人が一人できあがりだ。


「さて、あの城壁の街まで行ってみるか。」

 歩き出そうとしたところで、頭の中で何かが点滅したような感覚。

 振り返ると額に角を生やした兎が2匹いた。


ホーンラビット レベル2


「うぉ!吃驚した。」

 どうやらホーンラビットは臨戦態勢のようだ。手前の奴が今にも飛びかかってきそうだ。


『いずれやらなきゃならないんだ。やるか。』


 取り敢えず腰から剣を抜き構えてみた。

 するとホーンラビットが、ちょんちょんと進んで来たと思ったらいきなり大きくジャンプしてきた。


 「うお!」と声を出しながら突き出された角を避けると、今度はもう一匹が横から飛んできた。

 それも何とか躱す。


「ふー、やっぱりなろうのチート野郎みたいに上手くは行かないか。」


 あらためて剣を構え、意を決して今度は自分から手前の一匹に切り込んだ。

 不思議と重さも感じずに剣を袈裟に振れた。


「ギャン!」

「当たった!」


 偶然としか言いようがないが、振った剣がホーンラビットの首を切った。

 ホーンラビットは血を流しその場で動かなくなった。


 様子を見ていたもう1匹が向かってくる。ジャンプする動作が見えたので躱しながら切りつけた。

 

 2匹のホーンラビットが血を流し横たわっているのを見ながら、自分のある心情に気がついた。


「初めての戦闘のわりには血を垂れ流してる魔物の死体に抵抗がない。自分が殺したことにもだ。俺の元々の性格か?それとも女神様の配慮か・・・取り敢えず喉は渇いたな。」

 次元収納からコーラを出してキャップを開けた。


「ゴクゴクゴク・・プハァーーー美味い!さて、ステータス。」


ステータス


名前:霜月 重吾

種族:人族

年齢:17

レベル:2

称号:英雄

スキル:【偽装】【高速思考】【並列処理】【多言語理解】【パーティー】【気配探知】

アイギス:【全魔法才能】【全スキル才能】【次元収納】【鑑定】


「レベルが上がってる。」


 俺はホーンラビットを次元収納に入れて歩き出した。




―― その頃 セレゴス王宮 ――


王「騎士団長どういう事だ?」


騎士団長「申し訳ありません。どんな技を使ったのか、目の前で突然消えました。」


王「貴様の失態だ。どんな事をしても探し出せ!」


王女「お待ちを、お父様。思い返せばあの者、召喚されたというのに随分落ち着いていたような気がします。」


王「ん?どういう事じゃ?」


王女「神田、船本両名から聞き及んだのですが、彼らの世界では最近異世界召喚が珍しいことではないとか。この手の話が横行していると言います。もしかして、事前に何か用意があったのかも知れません。」


王「なんだと?だとしても、大枚を叩いて用意したんじゃ。元は取らねばならん。」


王女「ですが、深く関わりすぎてどんな結果を招くかも知れません。他にも何かしらの用意があったとしたら?こちらの行動を計算に入れていたら?」


王「・・・ではどうする。」


王女「様子を見ましょう。所在がわかり手を出せそうであればお好きにして良いかと。」


王「ふん。様子見というのが業腹じゃが致し方ないか。騎士団長!奴隷を何人か連れてこい!」


騎士団長「はい。(また八つ当たりで殺されるな。)」


新連載も始めてます。

「埒外のものは王道を歩みたかった」https://ncode.syosetu.com/n0693jj/

不定期更新になると思いますが、宜しくお願いします。

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