【襲撃】
ナナイ達が屋敷の探検に行った後、俺とツバキは最初に案内されたダイモンの部屋に来ていた。
ツバキが机の後ろの書庫を開けると金庫が現れた。
慣れた手つきでツバキが金庫を開ける。
ツバキ「どうぞ。」
「・・・お金じゃないか。」
ツバキ「はい。これもダイモンが残した物です。1万年前の帝国が硬貨を統一してからこの世界の硬貨は変わっていません。今でも問題なく使えます。
ここには白金貨で5000枚分が入っています。」
「これも俺に?」
ツバキ「もちろんです。そもそもグレイパッセルの私に硬貨も武器も全て必要ない物ですから。
私が自分の雄に貢ぐのは当然です。」
「貢ぐって・・・」
ツバキ「貢がせてください。そのかわり、大事にしてくださいね。」
「解った。でも女な。俺が死ぬまで大事にする。」
サクラ「シグレ様。3階にとっても広い寝室がありました!」
アカネ「部屋の数も多いし、リビングが広くて素敵なんです!」
ナナイ「シグレくん。お風呂があったよ!それも大きいのが!」
「はいはい。あっ、置いてきた馬車はどうしよう?」
ツバキ「一度戻りますか?私が認識阻害の魔法を掛ければ向こうに置いても大丈夫だと思います。」
「そう言えばツバキに【無属性魔法】が有ったね。色々出来るの?」
ツバキ「そんなには。認識阻害と劣化腐食防止くらいです。」
「それでも凄いよ。じゃあ一度戻ろう――」
ツバキ「シグレ様。湖沼群に冒険者の集団が入って来そうです。」
「結構距離が有るけど、ツバキはどうして解ったの?」
ツバキ「一族の者が数多いますので。それらと全て繋がっていますから。」
「それって凄い情報網なんじゃない?」
ナナイ「そうね。この世界の何処に行ってもツバキの一族が居るんだもの。シグレくん、私達の助言を聞いといて良かったでしょ?」
「そうだね。感謝しています。もちろんツバキにも。」
ツバキ「ふふ。・・・シグレ様。冒険者の動きがおかしいようです。20人ほどの集団らしいですが、湖沼群の入り口で3人ほど斥候を出して馬車を探せと言ったそうです。」
「馬車をさがせ?」
ツバキ「お待ちを・・・奴らは4人。男が1人女が3人。男は殺せ。女は怪我をさせても生かして連れ帰る。だそうです。」
「狙いは俺達なのか?」
ナナイ「どうするシグレくん?」
「馬車に戻ろう。そして馬車の辺りで野営の準備だ。どうせ襲ってくるのは夜だろ?気づいていないふりをしておびき寄せる。いいか?」
「「「「了解。です。」」」」
「なら行動開始だ!」
屋敷を出て馬車に戻った。
俺達は4人パーティーという事なのでツバキは人化を解き森に潜んだ。
ツバキからの知らせでは奴らはまだ俺達を発見していなかった。
「ナナイ。夕食の準備を頼む。」
ナナイ「残念ね。せっかく立派なキッチンで作ろうと思ったのに。」
「しょうがないよ。その怒りはこれから来る奴らにぶつけてくれ。」
アカネ「はい!」
「えっアカネが?」
アカネ「せっかくベッドでねむれると思ったのに。許せません!」
「はは・・・」
夕食の準備中に俺達の場所が特定されたとツバキが知らせてきた。
見張りの順番を決め最初はナナイ、そしてアカネ、サクラ、俺の順になった。
「じゃあナナイ宜しく。何かあったら起こしてくれ。」
ナナイ「了解。でもこんなとこ何もないわよ。」
ナナイの声がいつも以上に大きい。
―― 襲撃者 ――
「この池を二手に分かれて回り込む。位置に付いたら鳥の鳴き声をしろ。」
「それは良いが、最初のあの見張りありゃB級のナナイだろ?彼奴が見張りじゃ難しいぞ?」
「だから彼奴が交代したら襲う。今からなら2時間もすれば交代する。いいか、女はマッフェオ様への献上品だ。くれぐれも殺すなよ。」
「了解だ。勿体ないけど金には換えられねえ。」
―― 2時間後 ――
「そろそろか。」
「ああ、そうらしいぞ。ほら。」
焚火の側に居たナナイがテントの中に入る。
暫くして別の女が外に出てきた。
大きく伸びをした女がまわりを1度見てから焚火の側に座る。
「もう少ししたら行くぞ。」
「ちょっと待て!見ろ?」
テントから半裸の男が姿を出して女に話しかけ手招きした。
すると女がテントの中に入っていく。
「なんだ?何してるんだ?」
「おい、もしかして中で始めたんじゃねえのか?」
「まさか!・・・でもその方が都合が良いな。もう少ししたら合図を送れ。」
鳥が2度鳴く。返すように3度鳴くと木々の間から20人の集団が滲み出てきた。
「やれ!」
男が指示すると2人がテントを切り裂いた。
「ほら出てこい!」
―― バサ!
「あれ・・・」
「居ない!」
―― ドス!ドス!
「グア!」「ギャ・・」
―― ザン!ザン!
「ああ・・」「グッ・・」
「どうした?」
氷の槍と風の刃が4人に突き刺さり、切り裂いてた。
「あーあ、買ったばかりのテントだぞ。弁償は誰がするんだ?」
「お、お前は・・」
俺とサクラ、アカネ、ナナイが襲撃者達を囲むように姿を出す。
「中にいなくて残念だったな。ところで俺達に何のようだ?」
「ふん。応えるか莫迦。人数が違うんだ。解ってるのか?」
「応えないか。なら始めよう。」
俺の提案で【炎渦】と名付けられたアカネの火の渦が襲撃者達を襲う。
炎の渦の外にいた集団には俺の10本の氷の槍が襲った。
突然の魔法の挟撃に驚き、無事だった者は散り散りになる。
そこをサクラの双剣とナナイの斧が容赦なく襲う。
上手く隙間を抜け逃げようとした者をアカネが矢で射貫いた。
勝負はわずか5分でついた。
3人息の有った者を並べて座らせた。
「さて、どうして俺達を襲った?」
「・・・・・」
「あれ?お前見たことある顔だな?誰だっけ・・・」
サクラ「シグレ様。市場で。マッフェオの子分です。」
「ああ思い出した。あの時俺を遮った奴だ。そうかそう言うことか。」
「・・・ははは、わ、私に何かしてみろ、マッフェオ様が黙っていないぞ。」
―― シュ! ゴトッ
三十郎で首を落とした。
「ひっひーー・・」
「お、俺達は雇われただけだ・・」
―― ゴトッ、ゴトッ!
ナナイ「シグレくん?」
「黒幕は解った。3人だけ生かしておいてもしょうがないでしょ。」
ナナイ「・・そうだね。」
サクラ「シグレ様・・」
アカネ「シグレ様?」
「ん?ああ、大丈夫だ。」
どうやら俺は自分で切り落とした襲撃者の首を見ていたらしい。
薙ぎ斬られた傷口から血が溢れ、見開いた目が俺を見ている。しかし、不思議なことに何も感じない。恐いとも気持ち悪いとも、ましてや良心の呵責なんて物も皆無なことに俺は驚いていた。
そしてあらためて、この世界は生きることに貪欲でなければ生き続けられないと強く思い知った。
ナナイ「シグレくん見て!」
「どうしたナナイ?」
ナナイ「ほら冒険者のカードよ。」
掌にカードが出ていた。
「冒険者カードって死ぬと出てくるんだ!」
ナナイ「知らなかった?依頼で死んで遺体が回収出来ない時はせめてカードを持ち帰ってあげるの。でも、こうやって道を踏み外した時は身元の特定になるの。」
「ナナイ。このカードどうすれば良い?」
ナナイ「持ち帰ってギルドに襲われたって報告するのが無難ね。私達にやましいところは無いわけだし。」
「あと遺体はどうすれば良い?」
ナナイ「此処に置きっぱなしだとツバキの一族の繁殖地も近いし、そうねシグレくんが嫌じゃなければ収納に入れてくれる?」
「別に嫌じゃないけど。ああ!嫌がる収納持ちもいるんだ!」
ナナイ「前にね、護衛に付いた商人が収納持ちだったんだけど、盗賊の襲撃で死んだ冒険者仲間を連れ帰りたいってお願いしたんだけど、死体はいやだって断られたことがあったの。」
「まあ、人それぞれか。俺は問題ないよナナイ。」
ナナイ「なら、帰りに適当な森の中に棄てましょう。魔物が処理してくれるわ。」
「了解だ。ツバキ居る?」
ツバキ「はい。ここに。」
「此処を片付けて屋敷に戻るから、用意が終わったら馬車に認識阻害の魔法を掛けてくれないか。」
ツバキ「お任せ下さい。」
それから襲撃者の遺体を収納に納め、壊れたテントを片付け転移でダイモンの屋敷に戻った。
もちろん、テントの中にいた俺達が襲撃者の後ろに出てこれたのも転移のリングのおかげだ。
屋敷に戻るとツバキが手慣れた様子でお風呂の準備を始めた。
準備が出来てお風呂に入る。確かに広かった。
湯船だけでも余裕で7m×5mほどの大きさ。木の桶と木の椅子がセットで8つほど脇に置かれている。
そして、なぜか獅子の口からお湯が出ていた。
「いやいやいや、何処の成金趣味だよ!でもこの湯量、相当大きな魔石なのかな。」
―― カチャ!
サクラ「お湯加減はどうですか?」
獅子の口に感心しているとサクラ達が入ってきた。
アカネ「その口はお湯が出るところだったんですね!」
ナナイ「えっ?本当だ。ほらツバキ。」
ナナイの後ろからツバキが入ってくる。
『うぉ、やっぱりツバキもおっぱいデカ!』
ツバキ「あまり見ないで下さい。人の姿の裸を見られても今まで何も感じたことは無かったのですが、なんだか急に恥ずかしいという感情が――」
「無理!ツバキの体を見ないなんて無理です。」
ナナイ「ねっ言ったでしょ。ジックリ見られちゃうって。ふふ。」
サクラ「シグレ様こちらに。体を洗いますね。」
アカネ「シグレ様。この石鹸ツバキが出してくれたんです。」
アカネが真四角だが乳白の石鹸を手渡してきた。
「この石鹸、随分質が良いんじゃないか?それにしっかり香りがついてる。」
ツバキ「ダイモンにお金があった理由の1つがこの石鹸です。当時から高級な石鹸として売っていました。」
「でもこんな良い石鹸ネールの街で売ってなかったな?」
ツバキ「おそらく、ダイモンが死んで作れなくなったんだと思います。誰にも教えていなかったらしく、ダイモンが死んで出入りの商人が膝を崩して残念がっていましたから。」
「じゃあ、これは取り置き分って事?」
ツバキ「はい。まだ地下の倉庫に沢山有ります。」
4人に体の隅までしっかり洗われた。
お返しに一人ずつ、隅々まで丁寧に洗ってやる。
サクラ「こんなに丁寧に・・」
アカネ「ダメですよ・・明日は馬車で・・」
ナナイ「シグレくん・・洗ってるんだよね・・」
「良し。さあ、ツバキおいで!」
ツバキ「はい・・」
「うちはみんな綺麗だけど、ツバキも肌が綺麗だね。」
ツバキ「ありがとうございます。」
「人化って、本当に何も変わらないんだね。」
ツバキ「あの・・私の記憶ではお風呂で雄が雌を洗うのは・・・見たことがないのですが・・・」
「そうなの?俺は洗いたいから洗ってるけど、他の男のことは知らないな。それに男が女をだ。うん。ツバキは良い女だ!」
ツバキ「あ・・そんな事を言われたら・・・」
「さあ、終わったよ。後は流して湯船に入ろうか。」
湯船に入る。俺の右にサクラ、左にアカネ。向かいにナナイとツバキが居る。
「サクラ。膝を折って座って貰って良いかな。」




