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【古代魔法】

 ツバキをメンバー(何の?)に加えた後、俺達は昼食後の休憩を挟みツバキの案内で大池から森を奥に進んでいる。

 ちなみに休憩中女子達は会話が弾んだらしく、既にツバキもサクラたちを名前だけで呼んでいる。


「ツバキ。見せたい物って言うのはまだ先なのか?」


ツバキ「もう少しです。ここはウリアスの大森、その入り口――」

()()()()()()()?」


ナナイ「そうかシグレくんは知らなかったね。ウリアスの大森はこの大陸の西に果てしなく続く森よ。その広さはこの大地に人が住む土地の倍は有るって話よ。」


「凄いな。やっぱりファンタジーだ!」


ナナイ「そうね。ウリアスの大森にはローデリア山脈を遥かに凌ぐ山々が連なってるって言われてるの。」


アカネ「そこに石の魔物〈ロックゴーレム〉がいると聞いたことがあります。」


「なら、公王国は西に開拓を進めてるんじゃないのか?」


ツバキ「開拓しようとしていますが、出来ていないんです。」


「出来ていない?どうして?」


ツバキ「森が広く深すぎて、何より強力な魔物が蠢いているからです。」


ナナイ「ウリアスの大森の開拓、管理を領地を接してる貴族が担ってるんだけど上手くいってないのよ。」


「なるほどね。」


ツバキ「シグレ様。ここです。」

 そこはツバキと会った大池から森の草木を10分ほどかいくぐって進んだ場所だった。


「えっここ?何もないけど?」


ツバキ「認識阻害の魔法が掛かっているんです。」


ナナイ「()()()()()()()?魔道具じゃなくて?」

ツバキ「魔法です。」


「ナナイ。魔法だとおかしいのか?」


ナナイ「認識阻害の魔法って無いのよ。野営で使ってる結界の魔道具も認識阻害を起こすんだけど、あれは魔法じゃなくて魔石に認識阻害の力が宿ってるの。迷宮で取れる物なんだけどね。それに、認識阻害って魔物にしか効かないはずよね?」


ツバキ「魔法での認識阻害は人も魔物も区別しません。そういった疑問にこの先で応えられると思います。」


 そう言ったツバキが行ってはいけない方に向かった気がするとスッと目の前から消えた。

 同じ方向に付いていくと3階建ての立派な屋敷が建っていた。


「こんな屋敷があったらもっと遠くから見えても良かったよな?」


サクラ「何か探知に違和感はあったんですがハッキリとしていませんでした。」

アカネ「凄く立派なお屋敷。」


ツバキ「この建物自体は5000年前から有ります。」


「5000年前?それにしては綺麗なんだけど。」


ツバキ「()()()()()()()()の魔法が掛けられています。中は私が管理していました。」


 ツバキの話を纏めると、この屋敷は5000年前当時ネール付近を治めていた国の貴族が建てたらしい。

 しかし、その貴族の国が滅びてから50年度ほどして1人の男が住み着いた。

 

 男は何かの研究をしていた。

 住み着いた当初はメイドがいたらしいが、辺境生活が嫌になったメイドがあっさり逃げ出し、そこに男のしていることに興味を抱いたツバキが迷い人を装いメイドとして住み込んだらしい。


 ツバキの案内で屋敷の中に入った。吹き抜けの立派な玄関に豪華な魔石シャンデリアが下がっていた。


「これが5000年前のもの?・・で、その男は何の研究をしていたんだ?」


ツバキ「失われた〈古代魔法(こだいまほう)〉です。」


「古代魔法?」


 ツバキによると、この世界には1度魔法が廃れた時代が有った。

 およそ1万年前。この大陸を初めて統一した帝国が存在した。その時の皇帝が強力強大に成りすぎた魔法と魔法使いを恐れ、魔法使いを殺し魔法を禁じて徹底的に魔法の痕跡を消した。

 そして、この世界から魔法は消えた。


 それから僅か500年後統一帝国は崩壊する。

 乱立する国々が覇を争い力を求め長い時間を掛け徐々に魔法を復活させていくのは必然だった。

 そして、8000年程前に今の魔法のスタイルに落ち着いたと言う。因みに当時のツバキは生まれたばかりで生き残ることに精一杯だったらしい。


 復活したと言っても消し去られ忘れ去られた魔法も多く、特に〈無属性魔法〉は未だに多くの魔法が失われたままで、この失われた無属性魔法を〈古代魔法〉と呼ぶらしい。

 ツバキは、この話はこの家で研究をしていた男から聞いたそうだ。


 ツバキに案内されて入った部屋は2階の真ん中、男が使っていた部屋だ。

 大きな机に窓を覗けば壁中に棚があり本がぎっしりと置かれていた。いや、溢れて其処彼処に山積みもされている。


「凄い蔵書だな。この世界って紙は普通にあるんだ。」


ナナイ「昔から紙は貴重品よ。作られてはいるけど産地が限定されてるからとっても高いの。それを考えたら、ここの本だけで相当なお金が掛かってるはずよ。」


 蔵書を眺めていく。

『ん?この棚の背表紙は漢字じゃないか!

 〈雷魔法〉〈睡眠(スリープ)魔法〉〈麻痺パラライズ魔法〉・・・』


「雷魔法って、古代魔法なのか?」


ナナイ「今は使い手がいないわね。雷を具体的にイメージできないからだって言われてるわ。」


ツバキ「シグレ様はこの文字が読めるのですか?」


「ああ、俺は渡り人なんだ。この文字は()()という俺の国の文字だ。この棚の本はその男が書いたのか?」


ツバキ「はい。古代魔法を探求しては纏めていたようです。」


「ツバキ。ここに住んでた男の名前は?」


ツバキ「私はダイモンと呼んでいました。」


『ダイモン・・大門かな。』

「おそらくそのダイモンも渡り人だろうな。」


サクラ「ツバキは此処で生活していたの?」

ツバキ「ダイモンが死ぬまで20年側に居ました。」


アカネ「食べ物はどうしてたの?」

ツバキ「契約した商人が定期的に持ってきました。お金には困っていなかったので高額で契約していたようです。」


「この部屋にはベッドもあるんだな。」


ツバキ「ダイモンは定期的に森に入るほかは、この部屋と地下それとお風呂を往復するだけでしたから。その他は全て私の自由にしていいと言われていました。」


『風呂への拘りね。やっぱり日本人か。』



ツバキ「シグレ様こちらに。」


 案内されたのは1階の一番奥の広い部屋だった。


 目に付いたのは半ば無造作に立てかけられた様々な武器だ。


ツバキ「ここに有るのは()()()()()()()()()()です。私がここに来た時に既に有った物。私が来てから手に入れた物。全て見つけてくるのは先ほど話した商人でした。」


ナナイ「魔法が付与されてるの?」


「ナナイのその反応は、武器に魔法付与は出来ないってこと?」

ナナイ「そうよ・・そんな武器聞いたことがないわ。」


ツバキ「この斧は〈(ほむら)〉。魔力を流すと斧が炎を纏いその熱で全てを融かし切るそうです。

 こちらは〈雷閃(らいせん)〉。雷を纏うショートソードです。【雷魔法】を使えるようになります。それとダイモンは使い手の俊敏を()()()すると言ってました。こちらもショートソードで〈水鏡(すいきょう)〉。【水魔法】で水の鏡を作ります。鏡は刃として飛ばすことが出来ます。

 この大剣は2本で一対の〈土壁(どへき)〉です。魔力を込めて地面に刺すと【土魔法】で土の壁を作れます。使う物の力量で土の壁は何処までも堅くなるそうです。

 そしてゲドの弓〈(あい)〉と〈(あお)〉。既に滅びましたが弓に長けたゲド族が造っていた弓です。放たれた矢は【風魔法】で速さ距離が強化され【命中補正】も付与されているそうです。」


 半分ほどの大きさだが造りが和弓に似ている二張りの弓が立てかけられていた。驚いたのは綺麗な漆塗りだったことだ。深い青色が〈藍〉それより空色に近いのが〈蒼〉らしい。


ツバキ「最後が〈国士無双(こくしむそう)〉。全長240cm刃渡り80cmの槍です。【筋力強化】と【俊敏強化】そして【豪腕】が施されているそうです。

 これらの武器は、素材は全てミスリルとアダマンタイトの合金だそうです。ミスリルは魔法と相性が良いですがアダマンタイトより強度が劣ります。アダマンタイトはオリハルコンを除けば最高の強度を誇りますが魔法と相性が悪い。そこで合金にすることで補っていると言ってました。」


「凄いな。廃れた魔法付与がされてるって事は全て1万年くらいは経ってるんだろ?なのに劣化してないのは、やはり?」


ツバキ「はい。この屋敷と同じ劣化防止に腐食防止が施されています。制作された当時は合金素材も魔法付与も普通のことだったと言ってました。」


アカネ「ツバキ。このリングは何?」


 棚の上に蔦のリーフのような彫金がされた白金のリングが1つと金色のリングが8本。クッションのような物に載せられていた。


ツバキ「それは〈転移の指輪(てんいのゆびわ)〉です。」


ナナイ「転移?【転移魔法】まであるの?」


ツバキ「白金のリングがマスターリング。金がゲストリングです。

 マスターリングを付けた者は1度行ったことが有る場所に転移できます。連れて行けるのはゲストリングを付けた者とリングを付けた者が触れている物です。

 ダイモンは時々このリングを付けて出かけていました。決まって契約した商人が来る前でした。」


「何かを取りに行ってたんだろうな。」


ツバキ「シグレ様。このマスターリングを。」


「えっ俺が?」


ツバキ「はい。ここにある物は全てシグレ様に差し上げます。ダイモンが亡くなる時、私が譲り受けたものですから。」


「良いのかな・・・」


ナナイ「ツバキの好意に甘えたら?譲り受けたツバキがシグレくんに使って欲しいって言ってるんだから。」


「・・・解ったよツバキ。預かる。そうだ!」

 白金のリングを右手の薬指に填めた。サイズは魔法で調節されるようだ。


「サクラ。おいで。」

 サクラを呼び寄せ、サクラの右手の薬指に金の指輪を填めた。

サクラ「シグレ様が直接・・・うれしい!」


「アカネ。こっちに。」

 アカネの薬指にも金のリングをはめる。

アカネ「嬉しい・・・ありがとうございます。」


「ナナイ。」

 ナナイの薬指にも。

ナナイ「あ・・泣いちゃいそう・・」


「ツバキ。おいで。」

ツバキ「私も宜しいのですか?」


「当たり前だろ。ツバキも俺の大事な人になって貰うんだから。」

 差し出されたツバキの薬指に金のリングをはめた。


ツバキ「なんでしょうこの感じは。嬉しい・・・」


ナナイ「シグレくん。リングは後4つもあるわよ。」


「別に全部使うつもりは無いよ。」



ツバキ「シグレ様。こちらに。」

 さらに奥に案内されると馬車があった。


「箱馬車と言うよりアメリカ人が好むトレーラーハウスみたいだな。」

 銀色の車体に後部が半円になっている。触れてみて解ったが車体の素材はアルミのようだ。


「あれ?まって、この車輪タイヤが付いてる・・・あ、うそ!サスペンションまで付いてる!」

 馬車の下に潜り込んでしまったよ!


サクラ「サスペンションって何ですか?」


「凸凹の衝撃を吸収してくれるんだ。このタイヤも衝撃を柔らかくしてくれるんだ。」


ツバキ「中にどうぞ。」


 開けられた扉から中に入ると、空間が拡張されている。


「凄い!空間拡張された馬車だ。ガッチガチのなろう定番だ!」


ナナイ「ねぇねぇ、時々出てくるその()()()ってなに?」


「えっ?・・・」

 何々?と興味津々のナナイの目が俺を覗き込んでくる。


「えーーとっ・・吃驚しちゃったって事かな。ははは・・・」


ナナイ「変なの。空間拡張された馬車なんて珍しくないわよ。貴族や金持ちなら大体持ってるかな。もちろんお金のかけ方で豪華さは違うけどね。」


 前方に馭者席に行く踏み台。そこから両側に3人掛けのソファが1つずつ。馬車への入り口と向かいの扉を挟んで後方にはコの字のソファ。ここだけで10人は腰掛けられそうだ。もちろんテーブル付きだ。


 入り口の向かいの扉を開けると更に空間が拡張されていた。開けた先には広いリビングがあり落ち着いた革張りのソファが数台置かれていた。

 その他に使い勝手の良さそうな広いキッチンと10人掛けのダイニングテーブル。3人なら余裕で入れそうなお風呂に洗面台付きのトイレ。そしてキングサイズのベットが置かれた部屋が1つとツイン仕様の部屋が3部屋あった。

 

ツバキ「この馬車だけ亡くなる前1年ほどかけて作っていました。自分で空間拡張を施し、シグレ様が言ったタイヤを錬成し座席は全てソファ仕様でフカフカだと自慢していました。」


「どこかに行くつもりだったのか?」


ツバキ「解りません。少しずつ組み立てては喜んでいましたけど。」


 大きなプラモデルを作ってる感覚だったのかな。

 それとも死を悟って何か残そうと思ったのか?


「あれっ?これは?」

 大きな寝室の棚に1本の刀が大事そうに置かれていた。


「これは・・・日本刀!」


ツバキ「〈骨喰藤四郎(ほねばみとうしろう)〉と言ってました。その刀を見つけたのが古代魔法の追求を始めた切っ掛けだそうです。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()と酔うたびに話していました。

 シグレ様。ダイモンが探し求めていたのが〈不壊属性〉です。決して壊れない神にも届くと言われる不壊属性をその刀に付与するためにダイモンはここで20年過ごしました。」


 鍔は無く薄い紅色の木製の鞘と柄に組紐が巻かれている。

刀を鞘から抜くと、刀身に龍と梵字が掘られていた。


「たしか龍は倶利伽羅龍、梵字は不動明王のはず。」

 頭の中で俺の鑑定が本物だと告げている。


「本物。ツバキ、ダイモンは不壊属性に辿り着いたのか?」


ツバキ「はい。最初はこの馬車に不壊属性を施し効果を確認してから骨喰藤四郎にも施しました。そして満足したように二日後に亡くなりました。

 残念ですが、ダイモンは不壊属性について記したものは残していませんでした。」


「この馬車も不壊属性付きなわけだ。」


ナナイ「シグレくん。その刀はそんなに凄い物なの?」


()()って言うのは骨を喰らうって意味で、藤四郎は造った刀工の名前だよ。刀としての価値は元の世界ではそうとう貴重な物だ。

 でもそれだけじゃ無いと思う。ダイモンがこの刀に拘ったのは、やっぱり自分と同じ世界の物だから・・・彼は元の世界に戻りたかったんじゃないかな。」


サクラ「シグレ様・・・」


「ああ心配しないで。俺はこの世界が気に入ってるから。みんなを置いて勝手に帰ったりしないよ。」

アカネ「約束ですよ・・」


「ツバキ。ダイモンの亡骸はどうしたんだ?」


ナナイ「この森の奥で荼毘に付しました。ダイモンは自分が死んだ時の事を生前話していたんです。塚の場所も案内されていました。私がダイモンと一緒に森に入ったのはその1度きりです。」


「そうか。」



ツバキ「シグレ様。今日はこの屋敷に泊まりませんか?」


「いいの?」


ツバキ「もちろんです。屋敷は手を入れていましたから問題なく使えます。今日だけとは言わずこの屋敷を使って下さい。リングで転移魔法が使えますからいつでも使えます。」


ナナイ「それ良いわね!サクラ、アカネ。部屋の探検してこない?」

「「はーい!」」


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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと気になったんでツッコみを 過去の文明とか持ち出すならテンプレだと世界的大規模破壊がしっくり来るかと(天災でも人災(戦争)でもどちらでも。神様が居る世界なら神が危惧して・・・ってのもテ…
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