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【オットマーのぼやき】

―― トントン!

「失礼します。」


 全員と言うことだったので馬車に戻りメンバーとティナ達も引き連れて会議室にやって来た。


オットマー「おう!遅かったな。」


「すいません。下でジャネットさんに捕まってて。」


オットマー「だろうな。」


 何とも反応の悪いオットマーを訝しみながら全員が席に着いた。


オットマー「報告は聞いた・・・」

 声が小さくてよく聞こえない。


「えっと、なんですか?」


オットマー「ん?ああ、C級昇格だ。」


ロレン「それはセグルドで確認しました。」


オットマー「はぁーーーー。そうだったな。」


「あのー、どっか調子悪いんですか?」


オットマー「・・・悪くもなるわ!―― ドン!」

 オットマーも机叩いちゃったよ。


オットマー「サラケスのギルマス就任最初の仕事にお前らのC級昇格試験を企てて、無事昇格したと思ったらネスティーに掻っ攫われるとは・・・このオットマー、一生の不覚だよ!」


「いやいや、ギルマスもですか?」


オットマー「ギルマスもですか?じゃねえ!俺がどれだけお前らに期待してたか!

きっとお前らはサラケスを代表する冒険者になると思って試験に送り出したのに・・・」


ロレン「いやいや、俺なんかまだまだですよ・・・」


オットマー「謙遜するな、ロレン。公にはされてないがお前が倒したアルノルを俺は知ってる。剣の腕は間違いなかった。それを倒したんだ、お前には才能がある。」


「いやー才能ある若手冒険者をギルマスが褒める。良い話だ!

 じゃあ、そう言うことでみんな帰ろうか!」


―― ガタ!

 席を立った。が、


オットマー「またんかい!」

 うっ!アウトレイジ的威圧が・・・


オットマー「本題はこれからだ。ナナイ。お前にA級昇格の申請が出てる。」


ナナイ「えっ!私がA級?」

「おぉー!凄いじゃないかナナイ!」

ロレン「ナナイさんスゲー!」


オットマー「ナナイも知ってると思うがA級昇格の条件は、まず冒険者としての実力と実績がA級に相応しいと判断されること。まあこれは当然だな。

 そして問題は次の条件だ。冒険者ギルドの関係者2名以上の推薦と公王国関係者の推薦が必要だ。

 本来冒険者ギルドと関係ない公王国関係者を推薦人に入れてるのは色々理由はあるんだが、ギルド関係者も公王国関係者も誰でも良いわけじゃない。

 ギルド関係者は支部の副ギルドマスター以上となってるが実際にはギルドマスター2名でしか通らん。

 公王国関係者とは貴族だ。伯爵以上が1名いれば2人で良いが子爵以下なら3名必要になる。

 でだ、ナナイお前のA級昇格をセグルドのギルマスが申請してる。」


ナナイ「セグルドのギルマス?会ったこと無いんだけど。」


オットマー「あるんだよ。お前ら全員。」


「俺達全員?」

 会議室全員の顔をグルッと見たが誰1人頷くこともなく、みんなが一斉に顔を横に振っていた。


オットマー「ネスティーだ。」

「「「「「「「「「「えぇーーー!」」」」」」」」」」

 そりゃー驚くよ!


オットマー「もともとあそこの前任者が引退を見越してネスティーをスカウトしたんだ。ギルマスの交代は既定路線だったのさ。

 お前らがセグルドを発った後ネスティーが正式にセグルド支部のギルドマスターになった。その最初の仕事がナナイのA級昇格申請だ。

 当然ギルド関係者の推薦人はネスティーだ。公王国関係者にはアルバータス侯爵とラディス辺境伯。それとヴィコル子爵も名を連ねてる。子爵はコルでのグラスタイガーの討伐を大きく評価しているそうだ。

 そして、はぁ・・俺にギルド関係者のもう1人になれと言ってきた。」


ナナイ「ギルマス。嫌なら別にならなくても。私もクラスには拘ってないし。」


オットマー「嫌なわけないだろ・・・嫌なんじゃない、悔しいんだよ!俺が申請を出して辺境伯様と通すはずだったんだよ!それなのに、それなのに・・・ああクソ!ネスティーめ!あいつの笑い顔がチラついて腹が立つんだ!」


「「「「「「「「「「「はぁ・・・・」」」」」」」」」」


オットマー「冒険者は移動は自由だ。その時いる場所が本拠みたいなもんだ。だがお前達はクランを立ち上げてクランハウスをセグルドに持ってる。おまけにA級申請をセグルドのネスティーが出したことで、俺はナナイに仕事を頼むとき、あいつの、ネスティーの顔色を見なきゃならん・・・・あいつ昔のことをまだ根に持ってやがったんだ。クソ!」


「昔のこと?はは、恋人だったとか?」

ロレン「変な別れ方をしたとか?」

「「ははは、まさかね。」」


オットマー「えっ・・・・」

「「「「「「「「「「えっ・・・・」」」」」」」」」」


 筋肉マッチョなおっさんが顔真っ赤にするなよ・・・


オットマー「あー、ナナイ。俺も推薦人になる。A級を受けろ。クラン芙蓉峰にもパーティーにもプラスになるはずだ。

 ネスティーめ。ナナイはヒイラギのメンバー、仕事はパーティーリーダーに依頼するもんだ。なあシグレ!お前が受ければA級のナナイが付いてくる!そうだろ?ははは、ざまあみろネスティー!」


「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」

 寂しい。何かが寂しいよオットマー。みんな引いちゃってるし。


オットマー「はぁはぁ・・うぉほん!シグレ。辺境伯様のところへは行ったのか?」


「ここに来る前に行ってきた。辺境伯にも散々ぼやかれて明日また来いと言われたよ。」


オットマー「当たり前だ!それだけお前達には期待してるんだ。

シグレ、明日行ったら辺境伯様の話を受けろ。強制は出来ないが辺境伯様やサラケス支部の職員のことを思うなら受けてくれ。良いな!」




 南門の馬車溜まりに戻ってきたのは4時を過ぎてからだった。ロレンやティナ達も自分たちの馬車に入り、俺達は大門屋敷に来ていた。


―― カチャ!

ツバキ「珈琲をどうぞ。」


「ありがとうツバキ。はー、ぼやきを聞きすぎて疲れたよ。」

サクラ「お疲れ様です。旦那様。」


ナナイ「ねえシグレくん、私A級になって良いの?」


「なるべきだよ。ナナイとボタンは冒険者を続けたいって言ってたじゃないか。なら冒険者として評価されたら受けるべきだと思うよ。」


ボタン「シグ兄。私も?」


「もちろん。ボタンはまだまだこれからだろうけど、ナナイを目標にしていけば良いんじゃないかな。」


ナナイ「ありがとう!旦那様。」

ボタン「旦那様大好き!」

―― ガシッ!

 うぉ、ボタンに抱きつかれた。


ツバキ「あら、ボタンが初めて旦那様って言いましたね。」

ボタン「えっ・・・恥ずかしい。」

「「「「「「ハハハ・・・」」」」」」


サクラ「でも、どうして公王国の推薦人がいるんでしょ?」


「ナナイ。A級になると何が変わるの?」


ナナイ「そうね、貴族じゃないけど扱いが貴族に準じるの。公王国では商業ギルドや冒険者ギルドのグランドマスターが伯爵と同等に扱われてるの知ってる?」


フジナ「ええ知ってます。ですからグスタフはグスタフ・アムガルド卿と呼ばれますから。」


ナナイ「冒険者がA級になると男爵に準じるのよ。」

「「「「「「おおー!」」」」」」


ナナイ「あぁ、誤解しないでね。貴族になるわけじゃないから!」


「でもそのくらいの扱いになるなら、公王国の推薦人も子爵以下なら3人って言うのは納得だな。簡単に増やせないし、当の貴族は自分達と同等の扱いをされる者を簡単に増やしたくないだろうからね。」


ナナイ「昇格条件が面倒くさくて実力だけじゃA級に成れないのが現実なの。だからみんな大きなクランに入りたがるのよ。後ろに貴族が付いてるから。」


シユナ「でも、どうして公王国はそんな扱いにしちゃったんでしょう。」


エリザ「他国に渡さない為じゃろ。」


「俺もそう思う。突出した戦力を公王国に繋ぎ止めておくために考えたんじゃないか。本当なら冒険者ギルドはそんな扱いなんかいらないから実力だけでA級を増やしたいだろうな。まったく面倒くさい話だ。」


ナナイ「それでねシグレくん。オットマーから家名を考えろって言われたの。A級から必要なんだって。私はシグレくんの妻だからシグレくんの家名を名乗りたいんだけど・・・」


「そうだね、じゃあ考えてみるよ。そしてみんなで同じ家名を名乗ろうか?」

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

 何故かみんな涙を流してる。エリザ以外だけど。


アカネ「・・・でも、旦那様が一躍時の人になっちゃいましたね。」


「ああ、影でコソコソ暮らす予定なのに。困ったもんだ。」


エリザ「良く言うわ!」


「さて、明日は半日こっちにいるつもりなんだ。それでエリザに頼みがあるんだけど。」


エリザ「なんじゃ?」


「辺境伯から半径500mの土地を貰えることになってるんだ。それでこの屋敷から半径500mと思ってるんだけど外周を囲む良い知恵は無いかな?」


エリザ「外周を囲む?塀か?」


「例えば塀の代わりになるような高い木で囲むとか出来ないか?」


エリザ「塀の代わりになる木か・・・おおそうじゃ〈石栗の木(いしぐりのき)〉はどうじゃ?」


「石栗の木?」

ツバキ「この辺では見かけませんが、ウリアスの大森の中でみる事が出来ます。

 高さは30mほどにもなる幹の太い木で、石と言うより鉄のように堅くて火にも強く油を掛けても簡単には燃えません。

 名前の通り栗の実を付けるのですが、その実も外皮が堅くて〈アイアンビーク(鉄の嘴)〉という鳥の魔物しか食べることが出来ないと言われています。」


エリザ「ツバキが言ったとおり堅いし火にも強い。塀にはうってつけじゃろ?」


「良いね。その木でグルッと1周囲めるかな?」


エリザ「ふん。やれば良いのだろ?その代わり――」

「その代わり、スイーツ食べ放題か?」


エリザ「それも良いが・・・今晩励め。妾は、な、何回でも構わぬぞ。」


サクラ「ふふ、エリザも随分変わったのね?」

エリザ「シグレに可愛がって貰うのは・・・好きじゃ。」


「じゃあ当然みんなもと言うことで!」

「「「「「「「はーい!」」」」」」」




「ふーーー、やっぱり朝の露天風呂は良いな。特に温泉は最高だ。このまま爺になるまで何もしないで引き籠もっていたいな。」

―― カラカラ・・・


サクラ「ふふ、良いですよ。私が食べさせますよ。のんびり此処で暮らしますか?」


「サクラ?おはよう。ん・・・」

サクラ「ん・・・おはようございます。旦那様。」


「サクラが食べさせてくれるの?それも良いな。」

―― カラカラ・・・


ナナイ「良いわよ。私もA級になるし、冒険者で食べさせてあげるわよ。」

ボタン「シグ兄は此処で本を読んでなよ。」


「みんなおはよう。」

「「「「「「「おはようじゃ。ございます。」」」」」」」


「みんなに食べさせて貰うのも良いけど人としてダメになりそうだからな。歳を取って動けなくなったら頼むよ。」


アカネ「良いですよ。幾らでも頼ってください。私、旦那様より長生きする自信が有りますから。」


ナナイ「私は体の感覚がドンドン若いときに戻ってるのよね。今の感覚は25才くらいの時のかな。」


「それなんだけど、フジナちょっと立ってみて。」


フジナ「今ですか?」

「ああ、立って裸を見せて欲しいんだ。」


フジナ「あらためて言われると恥ずかしいですね・・・」

―― ザバッ!


「うん。やっぱり綺麗だ!みんなも思ってるよね?」

ツバキ「はい。明らかに若くなってますね。」


フジナ「実は私も少しずつですが実感してたんです。」

ナナイ「シユナはどうなの?」

シユナ「私もナナイと同じです。体の感覚が変わってるのを実感してます。」


「そしてエリザだよな。エリザも気づいてるんだろ?」


エリザ「ああしっとる。妾も日に日に夜の体が若返っておるし、変化のときは苦しくなくなってきた。まあ、慣れてきたんじゃろうな。」


「うん。どんどん敏感になってきたもんな。最近はおっぱいだけで――」

エリザ「言うな!恥ずかしいじゃろうが!」


サクラ「良いじゃないですか、みんな旦那様に仕込まれて同じですよ。」


アカネ「エリザは変化の時間も延びてますよね。最近は変わった体のままで順番を待ってたし。でも眠ったり気を失うともとに戻ってますね。」


「それでも、元々の姿に変化はないんだろ?」

エリザ「無いな。まあ、先は長いという事じゃろうな。」


「そうだ、昨日ナナイに言われた我が家の家名なんだけど〈ユキマチ〉にしたいと思う。」


ツバキ「ユキマチ?どんな意味があるんですか?」


「俺の向こうの世界での家名が〈霜月〉なんだけど、霜月は11の月を指すんだ。俺の世界で11の月は冬を告げる雪を待つ月〈雪待月〉とも言うことを思い出したんだ。」


ナナイ「11の月はシグレくんが生まれた月なんでしょ?

 ナナイ・ユキマチ。良いじゃない!私は賛成!」


「「「「「「「賛成!」」」」」」」



大変励みになりますので評価やブクマを宜しくお願いします。

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