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【デランドのぼやき】

 グラスタイガーを狩った次の日の朝、コルの街の冒険者ギルドに出向くとギルドの1階は冒険者で溢れていた。


 俺とロレン、ティナが中に入ると響めきが起こり、受付嬢までの道が開けた。

『おいおい、俺はモーゼじゃ無いっての!なんなんだいったい・・・』


 ギルド内の???な状態を受付嬢に聞いてみた。

「何これ?何かあったの?」

受付嬢「この冒険者達は今をときめく芙蓉峰のみなさんを見に来たみたいです。」


「「「はぁ?えっ!ウソ!・・・」」」


 受付嬢の言葉に驚き3人で後ろを振り返ると『おぉーー』と声が上がった。


「クッソー!あんな若さでクランだと!巫山戯るな!」

「馬鹿野郎!この世界は実力が全てなんだよ!」

「おいあれか?ハーレムパーティーヒイラギの骨喰は!」

「すでにB級らしい!怒らせると骨を喰われるって話だぜ!」

「あっちがロレン?いい男じゃない!」

「黒剣はハーレムじゃないんでしょ?なら・・・ペロ!」

「あれがティナ嬢か?可愛いな!」

「俺にもっと冷たい視線を・・罵って・・ああ、たまらん!」


 呟きが其処彼処から聞こえる。妬みやら誤解やら、中には変な奴もいるみたいだ。

 背中がゾクゾクすると思ったらロレンやティナもらしい。


ティナ「シグレ様、ロレンさん、早く出ましょう!」

ロレン「賛成だ!」

「ああ、そうしよう。」


 査定額は若いグラスタイガーが白金貨3枚、マザーグラスタイガーが白金貨15枚になった。

 一々受付嬢が査定額を言う度に『おぉーー』と歓声が上がる。

 居心地が悪すぎる。


 グラスタイガーの買い取り金は、ロレンとティナ達にはパーティーの稼ぎにしてもらい、俺は白金貨5枚の硬貨を受け取って残りをクランの口座に入れた。


 ギルドを出ようとすると『俺達がクランに入ってやっても良いぞ』と声がした、気がするがどうでも良い。

 相手にする気も無いのでギルド前の馬車に飛び乗ってコルの街を脱出した。


 昨日の夜は芙蓉峰の噂話にHPを削られ、夕食を食べお風呂に入って寝室でサクラ達を待っている間に危うく寝てしまうところだった。

 逆に嫁達はグラスタイガーを討伐しデザートで満足したおかげでテンションが高く、なんとか2回戦をこなして事なきを得た。

 でも、朝起きて鏡を見たらほっぺたが赤かったんだよな。サクラ達に『俺の頬赤いよね?』と聞いてもそんなことないですと元気に言われたけど・・・ボタンだけは視線を逸らすし。


 休憩時間に聞いたらロレンも危うくなにもしないで眠る寸前だったそうだ。

 そうそう、ロレンのところは毎晩4plus1回戦らしい。カタリナ達全員と1回戦をこなした後、その日の当番1人と2回戦をこなすんだそうだ。因みに昨日の当番はシュゼと言っていた。うん、ロレンも頑張ってる!



 コルの街を出てから数度の休憩を挟み俺達はニケス村の手前で夜を明かして翌朝の8時に再び馬車を走らせた。


 そして17日ぶりにサラケスに戻った。


 三の鐘の前に東門から入りいつもの南門にロレン、ティナ達と一緒に馬車置き場を確保した。


「着いたな。」

ロレン「ああ、何か随分久しぶりな気がするよ。」


「ロレン、昼を食べたら辺境伯のところに行ってその後サラケスのギルドに行こうか?」

ロレン「そうだな。報告を済ませてしまおう。」


ティナ「デランドおじ様のところならご一緒しても良いですか?母からの頼まれ物もあるので。」


「なら、一緒に行こう。1時出発でどうだ?」

「「了解。です。」」



 各々馬車で昼食をとり、1時に俺の馬車に全員を乗せてデランドの屋敷に向かった。何故か貴族街の門を守る警備員に名前を告げるだけで通された。

 良いのか?俺がテロリストだったらどうするんだ?


 デランドの屋敷の守衛も名前を告げただけで門を開けた。良いのか?俺が・・以下略。


 人数が多いのとフジナがいるので俺とロレン、そしてティナだけが屋敷に入った。


ティナ「みんな楽しそうにお話ししてたんですよ!私も残りたかったです。」

「しょうがないよ。頼まれごとがあったんだろ?」

ティナ「はい・・・」


 屋敷に入ると、俺達はデランドの執務室に通された。


―― トントン! 「入れ!」

 デランド・ラディス辺境伯は書類と格闘していた。


デランド「座って待ってろ。」


 ソファに腰を降ろして待つ事数分、デランドが俺達の向かいに座った。


「辺境伯。今日戻りました。」

デランド「知ってる。東門から連絡が来なかったら出かけてたところだ。」


「そうなんですか。出直しましょうか?」

デランド「今更遅いわ!」


「機嫌が悪そうですね?」

デランド「誰のせいだと思ってる!まったくお前らは・・・」


「えーと、俺達何かしました?依頼はちゃんとこなしましたよ。」


デランド「何かしましたじゃねえよ!

 シグレ、お前セグルドでクラン立ち上げただろ?俺はお前らが依頼を成功させて帰ってきたらサラケスでクランを立ち上げさせようと思ってたんだ!」


「はぁ、なんで?」


デランド「なんで?なんでだと?」

 ここからデランドのぼやきが始まった。


 デランドのぼやきは、一言で言えばエイステンに美味しいところを持って行かれたって事らしい。


 冒険者ギルドは公王国の統治機構とは関係ない独立した組織だ。その独立組織に所属する冒険者には貴族、領主と言えど原則強制は出来ない。冒険者ギルドが最初に対応すると取り決めのあるスタンピードを除けば、冒険者を動かす場合は基本は依頼でなければならない。

 とは言え、魔物の討伐や護衛等々、冒険者に頼りたくなる案件は多い。そこで、貴族や有力な商会などは有望な冒険者を見付けては取り込みをはかっている。特に現在有力と言われているクランのほとんどが後ろに貴族や商会がセットで付いているそうだ。


 フジナの火傷を治しモーガンの事件も俺だと踏んでいるデランドからすれば、セレゴスの勇者召喚から1人逃亡をはかった俺の力を取り込んでおきたいと思うのは当然のことかも知れない。

 セグルドへの護衛依頼もデランドの想定以上にこなし俺自身はB級にまでなった。これはもうサラケスに帰還したら一気にクランにさせて拠点を構えさせようとあれやこれや考えていたら、セグルドでクランは立ち上げるは、アラクネを討伐して名を上げちゃうは、クランハウスまで手に入れちゃうしと、奥歯が何本か折れたと文句まで言われた。知らんわ!


デランド「エイステンの奴『ごめんねー!でも僕からは何もしてないよ。クランを立ち上げたのもシグレくんだし、アラクネの件も彼が自分から引き受けてくれたんだ。クランハウスに至っては提供したのは商業ギルドだから。』とかぬかしながら、通信の魔道具の向こうで高笑いしやがった!クソ!」


ロレン「確かにクランハウスは貰いましたけど、だからって拠点というわけではないですよ。」


デランド「表向きな!表向きクランやパーティーの拠点ってのはその時いた場所になる。しかしだ――ドン!」

 うぉ!デランド、机叩いちゃったよ!


デランド「俺達貴族や領主には暗黙の了解があるんだ。クランハウスのある場所を優先するって言うな!」


「「なにそれ?」」


「ティナ知ってた?」

ティナ「知りませんでした。私の父はそう言うのが疎いので。」


デランド「昔、何世代も前の話だが貴族同士が競って同じ依頼を同じ冒険者クランに出したんだ。かなりな揉め方をして王家まで巻き込んだ結果、出された結論がクランハウスのあった領主を優先するって事になったんだ。

 これは冒険者には関係ないことだ。依頼を出す側、貴族の勝手な決め事だがこれ以降少しでも有望な冒険者にクランハウスを提供するのは早い者勝ちって事になったんだ。

 俺はこれからお前達に依頼を出すときエイステンにお伺いを出さなきゃならんのだ!」


「いやいや、そんな事を言われましても・・・」


デランド「いいか?お前達はどう思ってるか知らんが、お前達芙蓉峰の後ろにはセグルド領主アルバータス侯爵家、そしてセグルドの商業ギルドが付いてると思われてるんだ。

 エイステンはああ見えて自身の政治力とセグルドの経済力を背景に王宮内でかなりの発言力を持ってる。

 そして商業ギルドだ。本部は王都にあるが、公王国一の経済規模を持つセグルド商業ギルドの発言力は抜きん出て強い。それをまとめてるのがアムガルド商会の家宰コールだ。お前達はその2人からクランハウスを渡されたんだ。

 お前達はとんでもない後ろ盾を持ってるんだよ!」


「はぁ、そんな事言われても意識もしてないし、嫌な依頼なら断るし。」


デランド「解ってるよ!お前はそう言う奴だ!

 シグレ!エイステンとコールに新しい飲み物を売らせてるそうじゃないか?何つったっけ・・」


「アルバータスコーヒー?」

デランド「そう!それだ!実演販売のたった1日でセグルド中の話題をさらったそうじゃないか?」


「えっそうなんですか?じゃあ俺達がこっちに向かってからだ。」


デランド「なんで俺に言わないんだよ!」

「えー、だってセグルドの市場で見つけたから。その流れで。」


デランド「エイステンが言ってたんだ。紅茶以上に普及する飲み物になるって。あの天下のアムガルド商会も商品を扱わせて貰ってる立場なんだって?それでお前らに無理なこと言えるわけ無いだろ!はぁはぁ・・・」


「まあまあ辺境伯、落ち着いて。」


デランド「お前なー・・・お前らのようなクランが自領にいると王都の社交界でもてるんだ・・・」

「「オイオイ!」」

ティナ「おじ様!」


デランド「しょうがない・・・シグレ、ロレン、ティナも。明日もう一度来い!午後が良い、午後2時だ。みんなで来い。これは命令だ!権限はないが命令だ!良いな!」


「まあ良いですけど、その前に侯爵からは報酬があるから辺境伯に会いに行けって言われたんですが?」


デランド「ああ、そうだった。えーっと・・・」

 ソファから立って執務机に向かったデランドが布袋を持って戻ってきた。


デランド「これだ。王宮政務局からの報酬、白金貨で10枚ずつ入ってる。今回の件は公王国としても重視しててな、お前達の働きは公王にも伝わってる。公王も大層褒めていたそうだ。規定でこれ以上は出せないがいずれ王都に呼びたいと言ってたそうだ。」


「お断りします!行きたいならロレンは勝手に行ってくれ。俺は無理!」


ロレン「俺もいいかな・・・息が詰まりそう。それに俺はまだ褒められるような実力じゃない。」


ティナ「ふふ。2人らしいですね。」


デランド「お前らな・・・そう言うと思ってたよ。特にシグレは無理強いすれば他国に行くだろうからな。そこは俺とエイステンで王宮に強く言っておいた。」


「ご配慮ありがとうございます!」

デランド「お前なー・・・俺の気苦労も察してくれよ。はぁー。」


ティナ「デランドおじ様。母から預かり物を持ってきました。」


デランド「そうか。手間を掛けたな。にしてもティナ、また雰囲気が変わったな。顔に自信が見て取れる。」


ティナ「そうですか?シグレ様やみなさんといると頑張るしかなんです。気を抜くと置いて行かれちゃうので。」


デランド「良い刺激を貰っているようだな。励めよ。」



 デランドのぼやきから解放され馬車をサラケスの冒険者ギルドに向けた。

 馬車の中でサクラ達みんなにデランドのぼやきを話して聞かせたがメンバー達には何処吹く風だった。要するにリーダー3人で宜しくね、らしい。まあ、俺でもそう思う。面倒くさいし。


 指名依頼の報告なのでロレンと2人で中に入ると今度はジャネットに捕まった。


 ジャネットの主張その1。どうしてセグルドでクランを立ち上げちゃうの?どうしてロレンやティナの二つ名をセグルド職員が付けちゃったの?だそうだ。


ジャネット「セグルドのラセリアから上目線で報告が来たんです。クラン芙蓉峰の噂はセグルド発よって!ロレンさんやティナさんの二つ名もセグルド発信よって!うっうっうっ・・・」


「あの受付嬢ラセリアって言うんだ。」

ジャネット「シグレさん!」


 ジャネットの主張その2。どうして通りすがりのコルでグラスタイガーを狩っちゃうの?それも新記録になるような大きい奴を?だ。


ジャネット「コルのホルリアからも、うちも噂話を足したので宜しくねって上から言われたんですよ!うっうっうっ・・・」


ロレン「ああ、あの子はホルリアって言うんだ。」

ジャネット「ロレンさん!」


 まだその3が続く。この噂を聞いたネールのメリンダが噂話を足したんだそうだ。


ジャネット「メリンダが『伝説はネールで始まった。芙蓉峰の4パーティーはヨスの森のスタンピードに集結していた。』ってちゃっかり上書きしてるんですよ!

 私達乗り遅れちゃってうっうっうっ・・・」


「まあまあ、所詮俺達なんて大したことないから。」

ジャネット「そんなこと思ってるのシグレさんだけです!」

 怒られた。


ジャネット「ああー査定が・・・」

「「結局それかい!」」


 しかし、噂話が査定に影響するって、ギルドのシステムがまったく良く解らん。うん。ファンタジーだ!


ジャネット「ギルマスが上の会議室で待ってます。ああ、全員だそうです。」

「「早く言わんかい!」」


大変励みになりますので評価やブクマを宜しくお願いします。

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