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勇者を導く聖母

神にも等しい万能な能力を持つ赤ちゃん、

キリヒトにも唯一弱点があった、

それは今だけのものではあるのだが。


一日の大半を寝ていること。


これはどうやら

どんな能力を持ってしても

赤ちゃんは寝るという

摂理は覆せない

ということらしい。


随分と意外なところに

不変の真理は存在しているものだと

キリヒトは思わなくもない。


今すぐ魔王と戦う訳ではなし、

おそらく乳児の時だけのことであろうから、

今は存分に寝ておこうかと

キリヒトも寝まくっていた。


-


とりあえずまずは

この世界の母であるマリア、

その身の潔白を証明してみせた

キリヒトであったが、

この先どうしようかと考える。


本来、勇者として

転生する筈だったのだから、

魔王を討伐するというのは

与えられたミッションとして

間違いはないだろう。


しかし、行きがかり上とは言え、

神の子やら神の使いやら

余計な呼称がこれからはついて回る、

さてどうしたものか。


そんな難しいことを

マリアの胸に甘えながら

考えているキリヒト。


-


「僕はこれからどうしようかと

考えているんだけどね、マリア」


せっかく喋れるのだから、

マリアに相談してみるのもいいだろう、

この世界のこともいろいろ聞きたいし、

そう思ったキリヒト。


マリアも生まれてすぐの息子に

人生相談されるなどとは

思っていなかったことだろう。



二人であれこれ話をしていると

マリアはいろいろなことを、

自らの願いを口にしはじめる。


「ねぇ、キリヒト、

あなたの不思議な力で

病気の人を治してあげることは

出来ないのかしら?」


確かに病める人を

神の奇跡で治してみせると言うのは

神の使いとしては定番ではある。


「それに、私のような

戦災孤児で苦労している子供達を

助けてあげることは出来ないかしら?」


キリヒトはマリアと

話している内に徐々に気づく。


自分の願いと言いながら、

マリアは自分の為に

何かをして欲しいとは

一言も発さない。


すべてが苦しんでいる人々のことや

困っている人達のことばかりだ。



今まで、たまたま偶然マリアが

転生した自分の母になったと

キリヒトは思っていたが、

おそらくそうではない。


マリアは神に信頼され、選ばれたのだ。


心清く慈愛に満ちた

勇者を正しい道に導く聖母として。


先程、マリアの身の潔白を

証明してみせた時も、

マリアは嬉しそうな顔はしなかった、

むしろ何処か悲しげなような

表情ですらあった。


確かにマリアが母である限り、

自分が増長することも

私利私欲に走ることも

道を踏み外すこともないだろう、

そんなことをすれば

マリアが悲しむから。


マリアはいつも

眩しいくらいに純心で

清く穢れが無い。


確かに神にも等しい

これだけの能力を

与えてもらったのだから、

魔王を倒すだけなんて

そんな小さいことを言わずに、

この世界の世直しに

挑戦するのもいいかもしれない、

この世界の救世主を

目指してみるのも。


キリヒトはマリアの話を

聞いていると、なんだか

そんな気分になって来る。


この世界が平和になって、

それでマリアが、

いやお母さんが喜ぶのなら。







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