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1 勇者は性癖を晒される

ーー待ちに待った今日。マモルは生まれながらにして勇者だった。


誕生日には嵐の中マモルの家の上だけ晴れて太陽の日が差し込み、一歳の時には中堅魔道士のレベルの魔法を使えるようになり、初等学校に入る時には学問以外は先生に教わることもなく、まあとにかくチヤホヤされて生きてきた。この地域では高等学校卒業と同時に職業の適性検査をする。ステータス表示をされ、自分の職業が決まるのだ。マモルは自分が勇者だと疑ってなどいない。周りも同じくだ。


「ではマモルさん。この水晶に手をかざしてください。」


算定師に言われた通りマモルが手をかざすと、ヒュイイイイインと水晶は光り出す。自然と笑みが溢れ出す。周りもおおおと皆が驚きを隠せない中、サッと光が止む。


表示します、と空中に文字が浮かぶ。


マモル

職業:勇者 魔力:999 HP:999 攻撃力:999 防御力:999 性癖:ドM


マモルはしばらく開いた口が塞がらなかった。自分のステータスに問題はない。だがその文末にある文字はなんだろうか。周りもざわめきだす。性癖?ドM?新たな何かの力だろうか。


「え?なにこれ。」


「今期からステータス画面に性癖をつけることが決まりましたの。色々パーティ組む際に揉め事が昔から多いので。」


「だからってこれ!プライバシーだろ!てか俺こんなんじゃないけど!」


「あらあら可愛いですわね。地雷を先に避ければなんの支障もないでしょう?さてはちゃんと聞いていなかったのですわね。」


算定師は不敵に笑う。彼女は王家お抱えの魔力算定師だ。違えることがないのはマモルもわかっている。だがこれだけの人前でこの屈辱を受けて平静でいられるほど彼はまだ大人ではなかった。そもそも自分の性癖など考えたこともない年頃だ。


「んなっ俺がそんなんなわけねえだろ!ふざけんな、取り消せよ!」


「このステータスはあなたが世界を変えないことにはどうにもなりませんわ。うーん、例えばせっかく勇者なのですから、魔王を倒してその礼としてそのステータスを消してもらっては?というか、魔王倒すまで全画面皆さんに公開されますので、そうする他ないですね。」


「…!!やってやるよ!魔王倒せばこのインチキステータス消してくれんだろ!」


学校を飛び出していくマモル(とステータス)をみんな唖然として見送る。算定師、リタは恍惚とした表情でマモルのステータス表示をした水晶を見つめていた。

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