はちゃめちゃ大冒険!?
東京の夏の夜。高架下のボロアパート。塗料の剥がれたトタン板が長年の風雨に晒されて錆び付いている。きしむ引き戸を開けば、うっすらカビのにおいが鼻をつく。
「東京都建設課です。どなたかおられませんか」
呼びかけてみたが返事はない。薄暗い玄関先を見回すと冬物のブーツが隅にしなって横たわっている。カレンダーがかけれられていたが日付は5年前をしめしている。部屋の奥のほうから真夜中を告げる壁掛け時計の音がなった。私はこのアパートを尋ねることがもう5回になる。しかし、この建物の主に会えたことはない。近所の住人によればこのアパートに出入りする人間を目撃したことがあるようなので誰かがこの建物を管理しているはずである。しかし、東京都の記録を確認しても所有者が行方不明になっている。私は厳密には違法であるがらちがあかないのでおじゃましてみることにした。靴は玄関で脱いでおこう。廊下に足を踏み出せばホコリが靴下にまとわりついてくる。私は足音を立てないように慎重に不法侵入した。廊下の突きあたりに勾配の急な階段があった。手すりにつかまり気をつけて登っていく。
狭い階段をあがると雪国であった。