挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。
<R15> 15歳未満の方は移動してください。

転愛夢

作者:黒山三木
 最近夢で見たものが忘れられなかったのでなんとなく書いてみました。
 夢なのでおかしな設定になってると思います。
 実際はもっとおかしな内容でしたが少し変えました。
 人が死ねば、肉体は空になり朽ちるのを待つだけになる。魂は新たな肉体へと移る。
 街を歩くあの男の子も、女の子もそこから漏れることのない存在。
 そしてこの二人も例外ではない。

「そっちもう片付け終わったか?」

「もうちょっと。」

 二人は今、この街に引っ越してきたばかりで荷物の整理をしていた。引っ越してきたと言っても全く知らない土地というわけではなく、幼い頃から慣れ親しんだ故郷だ。
 二人は幼馴染で高校から付き合い始め、大学卒業と同時にこの街へ帰ってきたのだ。

「久しぶりにみんなに会うの楽しみだね、てっちゃん。」

「そうだな。俺が付き合ってたこと誰にも行ってなかったから、言ったらあいつらどんな顔するかな。」

 てつは昔の仲間の驚いた顔を思い浮かべて笑った。
 今日は午後から、昔仲の良かったグループのメンバーと久しぶりに会う約束をしていた。

「そろそろ行くか。さち準備できたか?」

「うん、ばっちり!」

「じゃあ行くか。」

 待ち合わせは昔から集合場所になっていた駅前の像の前。何の像なのかよくわからないデザインで、これが芸術だ、わかるやつにはわかるものなんだと言って、学生の間では才能を見極める像として地味に有名だった。
 待ち合わせ場所につくとすでに三人待っていた。

「あ!てっちゃん、さち!」

 二人に気づいた女性が手を降った。

「みんな久しぶりだな。」

「よおてつ!さちも久しぶり!」

「うん、久しぶり。しろくん!」

 しろは幸四郎からとったあだ名。みんなはしろかしろうと呼んでいる。クールで優しく、学生時代はモテモテだった。

「相変わらずちっちゃいなーさちは。」

 そう言って頭を撫でてきたのはりさ。元気いっぱいな女の子。なぜかいつも、さちを動物や子供のように扱っている。

「さちがうざがっているだろ。やめてやれよ。」

 男勝りな雰囲気なアンナ。クールできれいな大人な女性になっていた。

「そんなことないよなーさちー。」

 相変わらずりさは犬を撫でるようにさちを愛でていた。

「あとはせいやだけだな。」

「あいつも相変わらずだな。」

 集合時間を過ぎてもまだ来ないのはせいや。昔から集合場所には遅れてきていた。暗い雰囲気に見られることが多いが根はいいやつだ。

「ごめん。遅れた。」

「遅えよ。お前には一時間早めに伝えたんだがな。」

「一時間早く伝えても遅刻するってわざとやってんだろ。」

「せいやの遅刻にも慣れたよね。」

 何も変わっていない昔の友人を見て、二人は安心していた。

「じゃあ全員揃ったことだし行きますか!」

「どこに行くんだ?」

「りさの友達がやってるレストランがあるんだってさ。特別に安くしてくれるらしいぜ。」

「うわー楽しみー!」

「私についてくればうまい飯が食えるぜ!さあ!ついてこーい!!」

「うるせえ!!」

 調子に乗るリサにアンナが一喝。そんなやり取りをレストランにつくまでに何度もやっていた。そして気づけば店の目の前についていた。

「結構近いんだな。」

「でも二十分くらい歩いたけどね。」

「そんなに歩いてたのか。」

「楽しい時間ってのはすぐに過ぎていくもんだからな。」

 店に入ると中はおしゃれな雰囲気で、自然と背筋が伸びてしまう。

「大丈夫か?俺達浮いてないか?」

 しろうがキョロキョロと挙動不審になっていた。

「大丈夫だよ。周りの人もキョロキョロしてるよ。」

 そう言ったせいやにてつがツッこむ。

「それはお前の格好がこの店に一番あってないからだろ。」

 せいやの格好は半袖短パンにサンダルという、夏の休日のパパのような服装をしていた。

「そうかなー。」

 せいやがとぼけていると奥から店の人が出てきた。

「りさ、いらっしゃい。」

「そうた!ごめんね、無理言っちゃって。」

「全然無理じゃないよ。今日はそんなに人多くないし。奥の席に座って。皆さんもこちらへ。」

 りさには親しげに話していたが他のみんなには丁寧に挨拶をして案内してくれた。大人な雰囲気にてつは男ながらにかっこいいと思った。

「みんな、好きなもの頼んでいいよ!」

「すげえうまそうだな!」

「これは迷うな。」

「私もう決めたよ。」

「私はさちとおんなじやつでいいよ。」

「俺は適当に開いたページの一番右上のやつで。」

 メニューを見るだけでおのおの楽しんでいるようだ。注文を終え一息ついていると、珍しくせいやが会話を切り出した。

「ところでてつとさちはいつ付き合うの。」

「おお確かに!それ気になるぞ。」

 しろが食いついてきた。続いてリサも食いつき視線は二人に集まる。

「ああ……。実をいうともう付き合ってるんだ。」

「やっぱそうだったのかー。」

「だよねー。」

「あれ?なんか思ってた反応と違う。」

 てつのみんなの驚く顔を想像していたが思っていたものではなくて残念な気分になった。

「みんな気づいてたの?」

「そりゃ見てたらわかるだろ。」

「まあ、そりゃそうだよな。」

 言っているとはやくも料理が来た。

「あ、それ私の!」

 始めに来たのはりさの品だった。店の雰囲気から期待される物以上においしそうな皿がでてきた。

「超うまそう!」

「匂いだけでも味わわせてもらうか。」

 リサのさらに続き続々と豪華なお皿が並んだ。みな食事をしながら昔の思い出話や、離れてから何があったのかを話し合った。お酒も入り店を出る頃には外は暗くなっていた。

「よっしゃああ!カラオケ行くぞおお!」

 リサのテンションが来るときよりも上がっていた。そして行きではリサを止めていたアンナも。

「カラオケらああ!うおおお!」

「ろれつ回ってねえじゃねえか!」

「さち大丈夫か?」

「うん、それよりせいやくんのほうが……。」

「ぎぼぢわるうううええ……。」

 以外にもせいやは酒に弱かったらしい。せいやが酔ったらどうなるのか見たさにみんなが酒を勧めていたのもあるかもしれないが。

「お前飲み過ぎなんだよ。お前ら先に店行って部屋取っててくれ。」

「うちの面倒も見てくれしろろん!」

「うちのめんろうも見れくれろろん!!」

「てめぇらは自分でなんとかしろ!!すまん、てつ、さち部屋任せたぞ。」

「わ、わかった……。」

 大丈夫かと思いながらも、りさとアンナが大丈夫なこととしろを信じて二人は先に向かった。

「この辺りも変わったな。都会みたいだ。」

「ほんとだね。こんなに高い建物が並んで。」

 しばらくすると高い建物が見えそこにカラオケという看板が上がっていた。

「しろが言ってたのここか。カラオケにしては随分高えな。」

「はやく中入ろ。」

 さちに押されて受付へ向かった。渡された番号の部屋は十一階にあるらしい。

「十一階!?高すぎだろ!」

 突っ込みながら高い場所のカラオケもいいのかもと思いながらエレベーターに乗った。
 エレベーターの中は二人だけだった。二人きりだからか、さちが目を閉じててつによりかかってきた。
 その瞬間、てつは何か体にどんと響いたようなきがした。同時にエレベーターの電気がチカチカと一瞬消えたような気がした。咄嗟に非常用ボタンをおそうとするが、隣でよりかかっているさちはなにも感じていないようだ。

「飲みすぎたか……。」

「ん?どうしたの?」

「いや、何でもない。」

 酔っているだけだと思い込み、はやく座って休もうと思った。エレベーターが十一階に着き降りるが、渡された番号の部屋が見当たらない。外から見ると大きな建物に見えたが、このフロアは廊下も狭く部屋は小さな部屋が5つほどあるだけのようだ。
 さちは近くの窓から外を眺めていた。
 てつが周りを見ていると近くに受付へつながる電話があった。てつはその電話を取り受付にかけた。電話がつながり部屋がないことを伝えようとすると、受付の女性が必死な声で言った。

「そちらは危険です!早く避難してください!!」

 何がなんだかわからなかった。軽いパニックに陥りながらも非常階段のドアを開けた。そして半階ほど降りたところで煙が上がってきていた。

「なんだこれ!夢でも見てんのか!」

 エレベーターのボタンを必死に押すが停止しているようだった。

「てっちゃん……?」

 外を眺めていたさちもただならぬ自体に気づいたのか、不安そうにてつを見つめる。
 てつは不安そうなさちを見ると涙がこぼれた。なぜだかわからないがとても悔しかった。
 さちはそんなてつをみて抱きしめた。さちの暖かさに少し我を取り戻した。てつもさちを抱きしめようとしたとき。エレベーターの中で聞いたような大きな爆発音が響いた。揺れが収まると、床がの向きが変わっていた。重力は下からやや横向きになり。感じたことのない浮遊感を感じていた。

ーああ、終わったー

 建物は崩壊し、二人は潰されていた。潰される直前、すべてがスローモーションになったように感じた。自分の体が地面に叩きつけられ跳ねたとき、自分が空を飛んだような感覚になった。
 宙に浮かぶ自分の目には、同じく宙に浮いた自分の彼女の姿が目に入った。
 自分が死んだことがわかったとき。目の前は真っ赤になり、耳鳴りのようなピーという音がなり続けた。赤い景色は見えるのに、体は何一つ自由には動かなかった。

 気づくと真っ白な広い空間にいた。何もない、どこまで続いてるかもわからない世界だった。そんな広い場所にもかかわらず、自分と一メートルほど離れた場所に座り込むさちしかいなかった。他には誰も、なにもなかった。
 さちの目は虚ろとしていて、虚空を眺めるようで光が宿っていなかった。しかしその目からは次々と雫がこぼれていた。
 こんな彼女の姿は見たことがなかった。だが今の彼女の気持ちはよくわかっていた。そして、あのときの悔しさがようやくわかった。

「これからだったんだ……。今まで地獄のようだった生活が終わって、これから二人で生きていくはずだったんだ!二人で生活して!仕事に行って帰るとさちが手料理を作ってくれていて!子供ができて!ペットも飼って!二人で子どもたちに見守られて死んで。この場所で二人で……子どもたちを見守ろうと思ってたんだ……。……なのになんだよ。……こんな最期って……ありかよ……。」

 再びさちを見つめた。これでもうさちには会えないと痛感させられたような、誰かに諭されているような気分だった。
 だがてつは諦めきれなかった。

「?……なんだこれ……。」

 突然頭の中に文字が浮かんできた。

ー名前を決めなさいー

 その時誰が教えたわけでも、自分で突き止めたわけでもなく、ただ突然に悟った。
 これからまた、どこかの小さな体に命を宿すために己の魂が使われていくのだと。
 そして、決意した。さちとの二人だけの人生はまだ終わらせないと。
 てつは、さちの肩を力強く掴み涙を流して叫んだ。

「さち!いいか!俺はまたこの名前で、哲也の名でこの世界を生きる!そして、必ずまたこの街に来るから!だからお前も。この街で……。俺を……待っててくれ……。」

 いつの間にか止まっていたさちの涙が再び流れ出した。同じ表情。同じ涙。しかしてつにはさっきの涙とは違うことがわかっていた。てつにはさちが笑っているように見えた。

 二人は無数の光の玉になって白い世界の空に消えていった。記憶は失われ新たな命として生きていく。しかし、記憶などなくても、魂に刻まれた思いがあれば、二人は出会える。

ー魂は新たな肉体へと映るー

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ