第2話 『天然少女と水』
第2話 『 天然少女と水 』
ザアァァァァ!!!
午後4時半,俗に言う下校時間である。
総牙は立ち尽くしていた・・・。
「くそっ!カサを忘れるとは・・・。」
しかし,助けようとするものはいない,学校での根暗な性格を演じている効果が大きいのだろう・・・。
残る方法は2つ,濡れて帰るか,カサを買うか,だ。
「しかたがない,濡れながら帰るか・・・。」
・
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「っく,買うべきだったか・・・。」
雨脚は収まるどころか勢いを増し,総牙へ猛威を振るうのであった・・・。
「・・・おかしい,この雨,僅かだが魔力が感じられる・・・。」
ちょうどその時である,
ズッガーン!!!
町の外れにある丘の上で大きな爆発がおこった。
「!!!!!」
(これはっ,魔力!なぜこんな所に・・・。)
その時,2つの影が丘から1つの空き家へと飛び入るのが見て取れた。
とはいっても,並の人間には風が通ったぐらいにしか感じないが。
「いったいこの町で何が起こっているんだ・・・。」
(まぁ,俺には関係ない,さっさと帰るか・・・。)
言葉とは裏腹に彼の中ではもう既に興味の対象ではなくなっていた。
((((おいっ!この魔力,あの時と似ているぞ!!!))))
翔魔と堕魔に言われ,心臓を鷲づかみにされるような感覚に陥った。
(あいつらが復活した・・・?いやっ,そんなはずがない!あいつらはオレがこの手で・・・。)
「兎に角,見に行って見るか・・・。」
総牙は影が入っていった空き家へと消えていった・・・。
中では,大柄な男と自分と同い年ぐらいの可憐なる美少女が対峙していた・・・。
しかし,双方は大きく異なっていた。
大柄な男は下劣な嘲笑を浮かべ,少女は,恐怖と愕然が見て取れた。
「クックック,先程の爆発にはちと驚いたが,詰めが甘いわ!」
「っく・・・。貴様っ!!!」
どちらが優勢かはもう言わずとも分かるだろう・・・。
(近づいて分かったが,この魔力,微妙に違う・・・,いや,武器自体が発している。なるほど,奴らが作った聖武器か・・・。)
一通り状況を把握した総牙だったが,当然疑問が沸く。
(奴らはオレが潰したはずだ・・・。何故あの武器が残っている・・・?)
総牙の中では疑問が沸いては消え,沸いては消えしていた・・・。
その頃,2人は・・・
「貴方,何者よ・・・。この雨といい,その力といい一団員ではないでしょう・・・。」
少女は疲労困憊したように言った。
「クックック,ああ,確かに私は『sickle』の幹部である。四天王の操水といえば有名だと思うが?」
『sickle』の四天王とは組織内で1番上に位置する位で,全員で4人しかいない大幹部である・・・。
「!!!」
(何ですって・・・。よりによってあの四天王だったなんて・・・。・・・勝てない・・・わね・・・。)
少女は初めて死を覚悟した・・・。
((((おいっ,総牙やばいぞ!))))
「・・・どうした?」
総牙は思考を中断させられた所為か,怒気をはらんだ様子で答えた・・・。
((((見ろ!!!))))
そこには今にも殺されそうになっている少女と相変わらず下劣な笑いの男が見て取れた・・・。
「フンッ,オレにどうしろというんだ?オレには関係ない・・・。」
そう言った瞬間,総牙の脳裏にいつかの光景が蘇ってきた。
「ソウガ・・・。シ・・・ネ・・・。」
「ウオォォォォォ!!!」
キィーーン,
ズガァァァァーン!!!
総牙が絶叫した直後,一筋の光の刃がその空き家を直撃した。
「なにっ!雷だと!」
男は驚きを隠せない様子で総牙を見た。
「貴様!何処にいた?!!そして何をした!!!」
「キ・エ・ロ・・・。サ・モ・ナ・ク・バ・・・。」
総牙はおおよそ人とは思えない声で,搾り出すようにつぶやいた・・・。
「えぇい,黙れ!オレを誰だと思っている!」
どうでもいいがこの時,少女はあまりの展開に言葉を発せずにいた・・・。
「食らうがいい!いくぞ我が秘技!『操水陣』!」
そう男が叫んだ瞬間,降り注いでいた雨が一斉に総牙へと襲い掛かった。
「フ・ン。ヌルイ,ヌルイゾ・・・。」
総牙が手をかざした瞬間,水の塊が一瞬にして弾け飛んだ・・・。
「コノテイドデ四天王ヲナノルトハ,笑止!」
地獄からの響きのような声で総牙はつぶやいた・・・。
「ヨワキモノニ,イキルカチナシ・・・。キ・エ・ロ!」
地獄から響く力よ!いにしえの契約に従い,彼の者に永遠なる暗闇を・・・。
Extinct!(消滅)
グワッッッッ!!!
どす黒い球体が総牙の目の前に出現し,空き家の壁を飲み込んでいった・・・。
そのまま球体は男へ向かって飛翔する。
「ぐふっ!」
球体は男の左腕を消滅させ遠い彼方へと消えていった・・・。
「っく,貴様・・・。・・・この恨み,忘れんぞ!!!」
そう男は言い捨てると雨が一際強く降った。
収まる頃には,もう操水の姿は無かった・・・。
「ちっ,逃がしたか・・・。」
((((総牙,やり過ぎじゃないか?これでは見つかるのも時間の問題だ・・・。))))
「分かってるって,でもあの時の光景とダブっちまってさ・・・。」
((((・・・そうか。まだ吹っ切れてないのか・・・。))))
「・・・ほっとけ。・・・そういえばあの女は大丈夫か?」
総牙は気絶して倒れている少女に駆け寄った。
「おいっ!起きろ!,人が来るぞ。人が来ると色々と厄介なんだよ!」
そういう総牙だったが,少女は起きる気配がなかった・・・。
((((総牙,人が来るぞ,早くしろ!!!))))
「そんなこと言ったって起きないんだよ!!!」
((((・・・仕方ない,つれて帰れ。))))
「冗談じゃない!そんなことできるか!」
((((ならこのまま人に見つかるか?そんなことできんだろう。))))
「っく,人騒がせな奴だな・・・。」
そういうと,少女を抱えながら帰路に立つのであった・・・。