第1話 『新しい生活と・・・』
第1話 『 新しい生活と・・・ 』
ジリリリリリッ!
「う〜ん・・・うるさいなぁ。」
けたたましい電子音とともに,一人の少年の気の抜けた声が部屋に響いた。
「うるさいって言ってるだろ!!」
そう少年が言った瞬間,電子音という騒音を撒き散らした時計(俗に言う目覚まし時計)が炎に包まれた。
「あっ,またやっちまった・・・」
少年は心底困ったような声を上げた。
「こいつがねえと起きられないのに・・・。」
ちなみにこれで5台目である。
どうでもいいが,炎の横で独り言を言う少年の姿はどこか滑稽であった。
「あっ,自己紹介が遅れたな,オレの名前は 筧 総牙,私立白風学園の1年だ。信じられないだろうがオレには他人にはない力がある。オレはその力を『想力』と名づけた。
この力は自分の想像したことを実際に作り出すことが出来るんだ。さっきの炎もそのせいってわけ。この力のせいで過去には色々あった・・・。」
またまたどうでもいいが今日は9月1日,すなわち2学期初日である。
「って,このままじゃ遅刻だ!!翔魔,堕魔,行くぞ!!」
そう少年が叫ぶと,なんと双剣は総牙の影へと消えていった・・・。
これも総牙の能力のひとつ,『暗納』という技で自分の影に小規模な異空間を作り出すことが出来るとっても便利(笑)な技なのだ。
また,翔魔と堕魔とは代々双牙双剣流正統後継者に継がれる祐所正しき双剣である。
原理までは分からないが自我を持ち,言語を操る。
「おっと,めがね忘れた。根暗を演じるならこれがないとね。」
良く分からない言葉を残しながら総牙は玄関へと消えていったのであった・・・。
場所は変わって白風学園,1年S組
「よっ!」
教室の片隅にある自分の机にカバンを置いたとき,聞き覚えのある声が聞えた。
「・・・なんだ,文哉か。」
「なんだとは何だ!せっかく挨拶したってのに。」
「あれを挨拶というのはお前ぐらいだ・・・。」
いきなり話しかけてきたこの男,名を 『宮本 文哉』という。
なんとあの宮本武蔵の末裔だというから驚きだ。
「毎回思うんだが,そのめがね伊達か?」
「ああ,だったらどうしたんだ?」
「いや〜,超がつくほどダサいぞ・・・。」
「分かっているさ,でもめがねって根暗の象徴って感じがしないか?」
それはない,かなりの偏見である。
「まぁ,わからんではないが・・・。せっかくなかなか良い顔してるんだからさ,コンタクトにしたら良いのに・・・。」
「ふんっ,白風のジャニーズとまで言われたお前に言われるとは光栄だね。」
そう,この文哉と言う男,顔は超S級の美形でしかも剣道部の副将をやっている。
密かにファンクラブまであるとか・・・。
「まぁ,あの力を隠すにはちょうどいいのかもしれないが・・・。」
「ふんっ,分かっているなら言うんじゃない!」
「悪い,悪い」
っとそこに
「「「文哉君〜!そんな根暗ほっといてこっちで遊びましょうよ〜!」」」
見るとクラスの女子のほぼ全員が集まっていた。
「・・・」
「クックック,もてるって辛いねぇ。」
「黙れ・・・。」
「さっさといってきなよ,文哉クン?」
「・・・分かったよ!じゃあな。」
そう言い捨てると文哉は教室の外へと消えていった・・・。
「悪いな文哉,オレは表舞台に立たないと決めたんだよ・・・。」
そう言う総牙の声はわずかに震えていた・・・。